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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。





方淵が会場内に入ってから遅れる事、半刻後。
ようやく夕鈴が会場の受付所に到着した。

夕鈴が到着した時には受付所はかなりの人が溢れかえり、記入卓も所狭しとなっていた。

「あら、汀さんとこの夕鈴ちゃんじゃないの。
まぁ綺麗になって・・・今日は頑張ってイイ男を捕まえるんだよ。
じゃあ、これに書いてね。」

偶然にも受付所にいたのは、下町の商店街で商売している金物屋の女将さんだった。

あぁ、もう恥ずかしいっっ!!
いい男だなんて・・・・私は仕方なく参加しているって言うのに。

その時チラッと陛下の姿が頭によぎってきたのだが、夕鈴はチクンとする小さな胸の痛みと共にすぐに打ち消して考えないように努めようとした。

「さてと、釣書ね・・・何々・・・姓名は汀 夕鈴っと。
住まい所は章安区と・・・勤め所は、う~~んと(さすがに狼陛下の臨時花嫁とは書けないし、家事手伝いも微妙に違うし)どうしようかしら・・・・そうだわ、掃除婦なんてのはどう?!」

夕鈴はブツブツと小声で呟きながら釣書を書いていく。
そして完成させると受付所に持っていくが、先程より更に人は増えており人の波に流されそうになった。
それを避けつつ前に進むが人の波は途切れるところか、更に大きく膨れ上がっていた。
そんな最中。

『ドンッッ』

後ろにいる女性達から押され夕鈴は転びそうになったが、
寸での所で大きな逞しい腕に抱きとめられ転ばずに済んだ。

「大丈夫?」
「ええ・・・・いえ、はい、お蔭様で」

夕鈴はお礼を言わないと・・・・と後ろを振り返ったが、小柄な女性ばかりで該当しそうな人影はなかった。
キョロキョロ周りを見回してみたが、その場にはやはりいない様だった。

「御礼を言いそびれてしまったわ。あんな紳士的な男の人もいるのね」

正体も分からない男性なのに、夕鈴は何故か好意を抱いていた。
そのまま人の波をかき分けて受付所に辿り着くと、直ぐに手続きをしてゆっくりと会場内に歩き出した。
途中で仮面も付ける事を忘れずに・・・・。


******


会場に入るとん、あちらこちらに卓が置いてあった。
その卓上には赤色、黄色、白色、青色と色とりどりの花が一輪ずつに包装され、
水の入った桶に差し込まれて用意されていた。

「わ~~凄く綺麗・・・色々な花がいっぱいある~」

夕鈴は桶に近寄り、中に入っている花を確認する。
薔薇、金鶏菊、百合、菖蒲・・・・・と様々な花があり、あたかも私を取ってと自己主張しているようだ。
夕鈴は取り敢えずは目立たない様にと、木陰の脇に置いてある長椅子の端に腰かけて会場内を眺めていた。
まるで自分には関係ないと傍観者の様に。

ホントに綺麗な女性が多くて、色とりどりの着物が行き交っている。
まるで水槽の中で優雅に泳ぐ熱帯魚のようだ。

よく見てみると色々な女性がいて、独りで参加するのが心細いのか二,三人で行動している女性達。
すでにお目当ての男性がいて、その男性に気付いて欲しくて後ろからついて行っている女性。
積極的に声を掛けて貰おうと、目立つ場所の長椅子で優雅に腰かけている女性。
・・・・・・様々な人間模様が見え隠れしている。

夕鈴は何処からか視線を感じて長椅子の反対の端を見てみると、一人の男性が此方を見ていた。
一応会釈してみると、その男性は少しずつすり寄って来た。
そしてついには夕鈴の真横にストンと腰かけてきた。
夕鈴の生来の生真面目さがこんなときにも出て、隣に座った男性に何か挨拶くらいした方がいいのかな?と真剣に考える。

「こんにちは・・・・・」

明玉先生に『その気のない男性には、声は掛ける必要無し!!』とご教授頂いた事などすっかり忘れて、
気がつけば夕鈴は身についてしまっているお妃笑顔と共に、その男性に声を掛けていた。
その言葉を聞いた男性は頬を紅潮させ、スッーと両手で捧げるように、夕鈴へと白い百合を差し出した。

「あのぅ・・・貴女が・・・先程から気になっていまして。是非お話したくて・・・・これを受け取って頂けませんか?」

そこで初めて、夕鈴はこの華装会がこういう『決まり事』だった事を思い出した。

しまった~~。
これは結構マズイ展開なのかも・・・・・。

そう思ったが、それは後の祭りで。
男性は、百合の花を夕鈴に捧げたまま頭まで下げていた。
目の前に差し出された百合の強い芳香が鼻を擽り、眩暈を起こしそうになる。
その百合には罪はないけれど、受け取る事は出来ない・・・。
夕鈴は小さく息を吐き、その男性に断りを告げる。

「すみません・・・・もう心に決めた方がいますので・・・本当にごめんなさい」

嘘ではないんです・・・本当に心の中で密かに想っている人がいるんです。
口に出しては言えないけれど、夕鈴は相手の男性に向って申し訳なさげに頭を下げた。

「そうですか・・・・それならば、仕方ありませんから諦めます。どうぞその方と幸せに」

男性は真摯な眼差しで、夕鈴に一礼すると立ち去っていった。

『その方と幸せに』・・・そうなれればどんなにいいか。
でもそんなことは、例えお天道様が西から昇ってくるような事が起こってもあり得ない。
夕鈴は先程感じた胸の痛みがぶり返してきていた。

陛下の甘い言葉や態度は演技なんだから、勘違いしちゃダメ!
それに私も借金を全て払い終われば、家に帰るんだからそれまでのバイト妃だし・・・。
ずっとこのままというわけじゃない、いずれは相応しい方が正妃として陛下の隣に立つのだから、
この気持ちは誰にも・・・・益してや陛下に気付かれる訳にはいかないの。

夕鈴は下を向いて、暫くの間考え込んでいた。
気がつけば、仮面の下に隠れた薄茶の瞳は微かに潤んでいた。

一人きりで俯いたまま肩を微かに震わせている女性。
そんな憂うる姿は男性にとって庇護欲を駆られないはずはなく、
案の定・・・・夕鈴の周りには何人もの男性が、我先に声を掛けようと牽制しあっていた。

それを少し離れたところで男性達を忌々しい顔で眺めているのは、先程受付所で夕鈴を助けた紳士的な男性であった。
それは勿論黎翔であり、夕鈴の傍にやって来る男性達を射殺してしまいそうな殺気を解き放っていたのである。

全くさっきから、夕鈴の周りをうるさい奴等がチョロチョロとしているな。
私が出て行って蹴散らしたい所だが、夕鈴に見つかると厄介だし・・・。
はぁーーもう早く諦めて何処かに行ってくれ!!

そんな黎翔の黒い気配が伝わったのか、男性達は次々に夕鈴に断られて一人二人と立ち去って行く。
程なくして六、七人はいたであろう男性達はすべていなくなり、また夕鈴は一人きりになった。
黎翔が眼を向けると夕鈴は「疲れた」と一言呟き、深い溜息を吐いて立ち上がると飲み物の置いてある卓に歩いて行った。



続。
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瓔悠

Author:瓔悠

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