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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。





あの華装会から4,5日後の、霧雨が音もなく降る昼下がり。
掃除バイトは雨で出来ず、特にすることも無く夕鈴は手持ち無沙汰であった。

こんな雨なのだから、大人しく本でも読もうかしら。

珍しく向学心でも高めようとして書棚の扉に手を掛けた時、
聞こえてきたのは遠慮がちに自分を呼ぶ侍女さんの声だった。

「お妃さま、陛下がお越しでございますが・・・」
「わかりました、お通しして下さい」

夕鈴は優雅な身のこなしで戸口へ歩み寄り、目一杯の笑顔で黎翔を出迎える。

「今日は雨だから、君が退屈しているのでは?と思いご機嫌伺いに来たのだが。
此処には雨なんてものは降ってはいないな。君の太陽のような笑顔があるのだから。
しかし、いつ見ても君の笑顔には癒される」

黎翔は唯一の妃を大切にしていると周囲に理解させる為に、殊更に甘い言葉を紡ぐ。

「やはり、わが妃以上に私を癒してくれる者はおるまいな。
少しの間、二人っきりでゆっくりと過ごそうではないか」
「はい・・・陛下」

夕鈴の薄茶の髪の毛を自身の指に絡ませすぐに解く・・・・。
これを何度も何度も繰り返しながら、深紅の眼差しで夕鈴の意識を黎翔だけに向けさせる。
そんな艶めかしい黎翔を目の当たりにして、夕鈴はクラクラして足元がふら付いてしまい黎翔に後ろから支えられた。

「陛下、申し訳ありません」
「いや、気にしなくてもよい」

二人の仲の良い様を見せつけられ、侍女たちはハァ~~~と感嘆のため息を漏らす。
そして国王夫婦に気を利かせて、スゥーーと音も無く退室して行った。
侍女たちが出て行ったのを確認すると、夕鈴はさっさとと黎翔から離れて抗議する。

「大体、陛下は演技が大袈裟過ぎます。あそこまでしなくても、仲の良い夫婦は表現出来ますっっ!」
「でも、念には念を入れてね」

黎翔は片目を瞑って、いたずらっ子のような表情をしながらいつもの様に長椅子へと腰掛けた。
少しして、これまたいつもの様にお茶を持って夕鈴がやって来る。
そして黎翔に手渡した後、定位置である黎翔の隣にチョコンと座った。

夕鈴はお茶を一口飲むと、色々な事をツトツトと話し始めた。
今日の雨の事、昨日見つけた花壇の脇に咲いた可愛い花の事。
ホントに取り留めもない話である。
それでも黎翔は始終笑顔で聞いていてくれた。
そして会話が途切れると、何気なく夕鈴は先日の華装会のことを話し始めた。

「そうだわ、私陛下にお聞きしたことがあったんです・・・先日の華装会での事を」
「何を?」
「それが・・・・・方淵殿は女性に『花は何が好きなのか?』って聞いていましたが、あれはどういう意味だったんでしょう?
私は意味が分からないまま『頂けません』と答えましたが」
「ああ・・・あれね。あれは、華装会は男性が選んだ花を意中の女性に渡すんだったよね。
でもある女性は自分から花の種類を指定してくるらしくてね。
参加していた男性が『変わった女性だな』と話していたようだよ。
それが方淵にとって引っかかったらしくて、聞いて回ったと方淵が報告書に書いていたよ」
「そうだったんですね・・・・でも凄い勢いで聞かれてびっくりしたんですよ。
他の女性もびっくりしてましたし」
「ふうん・・・・」

夕鈴は、やっと喉の奥に刺さった魚の骨が取れた様に安堵しているような納得した表情を浮かべる。
それに反して、黎翔は少し不機嫌そうである。
そんな事には全く気付かない夕鈴は、更に方淵についての話題を続ける。

「それにしても、方淵殿はやはり出来る官吏ですね。ムカつくところは多々ありますがっっ!
だってあの調査は事実があるかないのか解らない調査だったのに、それを暴いてしまうなんて。
ホントに凄いんだなぁ~と思います。まだ若いのに政務付きなのも頷けますよね~それにしても・・・」

夕鈴は熱弁を振るった後に、黎翔を見ると黙っていてウンともスンとも言わない。

何だか怒ってる?先程までニコニコしていたと思うんだけど・・・。
しかも今まさに狼オーラが首をもたげて表面化してきている。
えっ、なんでなんで!?ただ方淵殿は凄いですねって言っただけなのに???

「陛下、どうなさったんですか?何か私・・・マズイ事言いましたか??」
「君は私の妃なのだから、私の事だけを見てればよい。」

何故?こっちが何故って聞きたいよ・・・なぜ君は方淵を気にするんだ!!

黎翔は隣に座る夕鈴の瞳を覗き込み、ゾクリとする声音で囁いた。
夕鈴はビックリして立ち上がってそこから離れようとしたが、
黎翔に手首を掴まれストンと座らせられた。

「今は誰も居ないのですから、演技はいりません・・・・よ」

夕鈴はいつも通りの台詞を言うのだが、黎翔がなんだか怖いような気がして段々声も小さくなっていく。
最後には消え入るように囁くだけしか出来なくなった。
そして、綺麗な薄茶の瞳が徐々にだが、微かに潤んできていた。

やりすぎたっっ!!!
夕鈴が僕を怖がって委縮してる。
ここらでやめておかないとまた家出しかねない。

「夕鈴、ごめんね!でもさ、夕鈴が方淵の事ばっかり気にするから僕だって妬いちゃうよ」
「妬いちゃうって方淵殿ですし、バイト妃の為に焼き餅なんか焼かないでくださいよ」
「そうだね」

バイト妃か・・・・でもね夕鈴、僕の気持ちも解ってほしいよ。
大体華装会の会場でも男性に言い寄られていて、僕はずっとハラハラしてたんだからさ。

「それより夕鈴!いいモノあげる・・・手を出して」

言われるままに手を差し出すと掌に一通の手紙が乗っていた。
夕鈴は宛名の字で誰からなのか直ぐに分かり、満面の笑みで封を切った。

『~姉さんへ~
この前の華装会、近所で有名になっているみたいだよ。ほら金物屋の女将さんが会場に居たんでしょ。
あの女将さんが姉さんが色々な男性から声を掛けられていたって、酒屋のご夫婦に報告したみたい。
それで酒屋のおかみさんが良かった、これで夕鈴ちゃんにも春が来たよ~って言い回っているらしいよ。
今度帰省する時は、色々と聞かれるかもしれないから気を付けておいてね。
それから、、、、、』

嬉しいはずの青慎の手紙なのに、途中まで読んで夕鈴は大きな溜息を吐いた。
次に帰省するときが思いやられそうで・・・・何も無かったって、周りにキチンと説明しないといけない事を考えると頭が痛くなってくる。

夕鈴の顔が百面相している・・・夕鈴の顔をみているだけで面白い。
黎翔はクスッと夕鈴には気付かれないように笑った。

『それから、明玉さんから手紙を預かったから同封します。
では、姉さん!身体にはくれぐれも気を付けて頑張って下さい。 青慎より』

封筒から、パサリと同封された封書が床に落ちる。
それを夕鈴は慌てて拾って、広げてみる。

「明玉からの手紙ね・・・一体、何が書いてあるんだろ」

夕鈴は、手紙を読むことに集中していて僕がここに居る事も忘れているみたいだな。
まぁいいか・・・適度に休憩も出来たし、李順が鬼の形相で探しに来る前に戻るとしようか。

「夕鈴、手紙を読んでいる所に申し訳ないけど、そろそろ僕は執務室に戻る事にするよ」
「えっ、あっっ、すみませんっっ!手紙に集中し過ぎてしまいました」
「いいんだよ。めったにない青慎君からの手紙なんだから」
「はい、有難うございます」

夕鈴は部屋の入り口まで黎翔を見送り、また続きを読み進める。

『夕鈴!!
あの時に聞いたけど、あの朱赤の薔薇の蕾って誰からなのよ!!白状しなさい!!
あのいつも来る上司さんじゃないかとは思っているんだけどね。
でもね、あの蕾の薔薇はあの会場内では用意されていたものではなかったらしいわよ。
だから事前にその男性が準備していたと思うけどさ・・・蕾なのがこれまたいいわよね。
夕鈴知ってる?紅い薔薇の蕾の花言葉・・・純潔、純粋な愛、愛の告白って意味みたいだよ。
もしその男性が花言葉の意味を分かっていて送っているとしたら、ホントに情熱的だよね。
夕鈴っっ!!!それだけ求められているんだったら頑張って確保して離しちゃだめだよ。
じゃあ、また帰って来た時には連絡頂戴ね。
アナタの親友・明玉』

ハァ~~~~~明玉・・・あなた勘繰り過ぎです。
陛下と私はそんな関係ではないし、あの花も偶々です!!
陛下だって、全くそんなつもりで花を送った筈はないわ。
あの時、他に男性がこない為に花をくれただけなんだから、勘違いしては陛下に申し訳ないわよ。

夕鈴は一人きりの部屋で夕暮れ近くなるまで、何度も何度も手紙を読み返しては思い耽っていたのであった。
実のところ・・・・黎翔が夕鈴に贈った薔薇は、花言葉の意味を考えわざわざ用意させた紅い薔薇の蕾だった。
が、しかし夕鈴には全く伝わってはいなかったのである。



まだまだ二人の気持ちの交差する時は遠いのであろうか??
しかしそれは恋愛の神とでもいうものの存在のみが知りえているのである。





終。
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お疲れ様でした^^
すべて読み終えてきました~。
ほんっと懐かしいです。
陛下にはまって始めのほうに読んだお話ですからね。
凄く長いお付き合いですがよろしくおねがいします~。
新作も楽しみにしてますので~。
でも無理はいけませんよ(^_-)
つらつら、にコメ出来なくてごめんね。
またゆっくりしたら、来るね^^
紅い薔薇の色のように情熱的で
まだひらかぬ蕾のように、秘めた陛下の気持ちが伝わってきて、
余韻を感じる、大好きなお話です。
どうもありがとうございました。
おはようございます~ コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
全部読んだ???お疲れ様っっ!!
一気にUPしたからね~
あの日は旦那が遅くてご飯も要らないってことが朝から分かっていたんで、
頑張ってUPしてみたの~~
ホント、初期の話で・・・・・まぁ私は読み返して、結構アタフタしましたよ。
こんなにヘタくそな話を皆さん、読んでくれていたんだぁ~~マジでハズイ!とね。(苦笑)
でもこれからも、マァマとは仲良くしていきたいですので、宜しくお願いしますっ!!!
はい、無理はせずのボチボチいきますよ~~
だから、マァマもゆっくりとついて来てね!!
コメは出来る時だけでOKだから、気にしないでね~~
それでは、早く体調が良くなる事をここから念を送っておくから!!
おはようございます~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
そうですね~ゆらら様は紅い薔薇の意味にいたく感動されてましたものね~
私は・・・・・ゆらら様のメールを読むまで、薔薇の事はすっかりこん忘れてました。(笑)
素敵な感想、有り難うございます!!
そうですね~秘めた陛下の想い。
あの頃の本誌は二人の秘めた恋心が悶々としたり、
ジンワリきたりと感慨深かったような気がします。
またコミックス読み直そう~~
いえいえ、私の方こそ作品をこんなに可愛がって頂きとっても嬉しいです。
再録して良かったです!!
お申し出、有り難うございました!!!
今後とも宜しくお願いいたします。
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瓔悠

Author:瓔悠

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