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【華装会・8】 (完)
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。







華装会が始まってから、既に一刻以上は経った正午近く。
日差しもかなり強くなってきており、夕鈴は木陰で涼もうと最初の長椅子に戻るべく立ち上がる。
そして綺麗な所作で卓に杯を戻すと、ゆっくりと歩き出す。
すると、目の前から歩いてきた男性二人に声を掛けられた。

「あの、まだ相手が決まっていないようですね。
実は自分達は王宮で働いているんですが、先程から貴女の洗練された身のこなしが気になって。
どこかの名家のご令嬢なのでは?と思いましてね。是非、この花を受け取って頂けませんか?」

普段の習慣とは恐ろしい。
ちょっと着なれない服を着て髪を結いあげているもんだから、妃演技が不意に出てしまっていたらしい。
しかもこの二人・・・・政務室に出入りしている官吏で見覚えがある。

一応妃だとは、まだバレてはいないみたいだ。
そりゃ、狼陛下唯一の妃がこんなところで集団お見合いをしてるなんて誰も想像できないとは思う。
だけど早く断って立ち去らないと、ロクなことにならないような気がしてきていた。

「あの、その・・・私、想う方がいますので受け取れません。ごめんなさい」

深々と頭を下げると逃げるように、足早にその二人から離れて行った。
その様子をやっぱり木の茂みの陰から隠れて見ていた黎翔は昏い笑みを浮かべ、
明日あの二人には書簡の束を押しつけようと密かに画策していた。

二人の官吏から逃げてきた夕鈴はハァハァ息が上がっており、長椅子に腰かけ息を整えていた。
すると後ろから腕が伸びてきて、その手には冷たい果実水の入った杯が握られていた。
夕鈴は『キャッ』と短く悲鳴を上げ後ろを振り返ると、そこには仮面を被っているもののその立ち姿で誰かは直ぐにわかった。

「李翔さんですよね!何故こんなところにいるのでしょう???」

夕鈴は強気に黎翔に詰め寄る。
しかし全く関係ないとでもいう様に音も立てずに後ろから回ってきて、夕鈴の隣に悠然と腰掛けた。

「まずは、この果実水を飲んでからね」

えらくご機嫌な様子で、笑顔のまま夕鈴に先程の杯を手渡す。

「私は何故?と聞いているんですが・・・・」
「だから、まずはこれを飲んでと僕も言っているよ」
「いえ、結構です!李順さんに何と言って此方にいらっしゃったのでしょう?」
「ほら、飲まないと・・・・喉乾いたでしょ」

二人の攻防は果てしなく続くかと思われたが、ニヤリと笑っている紅い瞳が段々意地悪いモノに変わっていく。
それを見た夕鈴は苦々しい表情になりながらも、仕方なく折れて果実水を受け取り一口だけ飲んだ。
そしてまた黎翔に対峙する。

「はい、飲みましたよっっ!で、先程の回答は?」
「もう夕鈴には敵わないなぁ。う~ん方淵に調査を命じているので、密かに僕も調査をとね」
「それでしたら、先程から方淵殿が仕事熱心に頑張って調査されているようですよ。
李翔さんまで出て来ることはありませんが・・・。」
「それにしても、夕鈴は男性に声を掛けられすぎだよ!どんなに僕がハラハラして見ていたか」

黎翔はこれ以上追及されたくないと、話の途中で話題を変えた。

「そんな事何で知っているんですか?それに私はただ座っていただけですよ。
それに・・・すべて断りましたし」

夕鈴は見られていたのかと思うと途端に恥ずかしくなる。
段々語尾は小さくなっていき、更にカァーと顔が火照り結いあげた項まで熱くなっていく。

「でも大丈夫だよ。これから先はずっと傍にいるから、誰も言い寄って来たりさせないから安心して」
「李翔さんは、方淵殿と同じく調査に来たんでしたよね。お手伝いした方がいいのでは?」
「夕鈴、方淵一人で大丈夫!みたいなことを言ってなかったっけ。だから僕とゆっくりしていようよ。
はい、これ受け取ってくれる?」

黎翔は後ろ手に隠していた朱赤の薔薇を夕鈴の目の前に差し出し、受け取ってくれるのを今か今かと待っていた。
夕鈴は少し躊躇したものの、その薔薇を受け取って香りを確かめる。
微かに高貴な香りが漂ってはいたがその薔薇はまだ蕾だった。
そして夕鈴は、この蕾の薔薇を選んだ黎翔の想いまでは感じ取れなかった。

いつの間にかに、黎翔の大きな手は夕鈴の膝の上に置かれている手の甲に重ねられていた。
夕鈴はさり気ない黎翔の行動に、ビクッと身体を震わせ真っ赤になった。
そのまま流されそうになるのが怖くて、いけないと手を払いのけようとする。
しかし仮面の下の黎翔の妖艶な瞳に吸い込まれ、何も出来なくなり動けなくなった。

身動きしなくなった夕鈴を了承の意味と捉えて、黎翔は更に夕鈴の細い腰に自らの腕を回そうとした時。

黎翔たちのいる場所から遠く離れた所が騒然とし始めた。
夕鈴は黎翔の妖しい罠から解き放たれ、立ち上がって何事かと見てみる。
でも遠すぎて何をしているのかよく解らない。
夕鈴は振り返り、兎さんの素早い逃げっぷりに半ば茫然として座っている黎翔に提案する。

「李翔さん、あちらが騒がしいようですよ。何でしょうか?行ってみませんか?」
「そうだね、行ってみようか」

ヤレヤレ、可愛い兎に逃げられてしまったな。

自嘲気味に笑いながら、黎翔も立ち上がって夕鈴と連れ立って騒ぎの元のへ向かって行った。
騒然としている場所に着くと、人垣が出来ていて中で何が起こっているのか全く解らない。
夕鈴を男性がたむろっている危険な所には近づかせたくはない黎翔は、周りにいる訳知り顔の男性に近寄り鋭い眼を向け質問する。

「一体、何が起きているんだ?」

聞かれた男性は首を竦めて、自分が分かっている事だけを話してきた。

「どうも、この華装会の会場で裏取引をしていた女性がいたらしく、それを偶々参加していた役人が暴いた様ですよ。
それでその女性は連行されているようで・・・・アンタも役人ですかい?」
「まぁ、そんなところだ」

話が終わった黎翔は慌てて夕鈴の元に戻る。

「方淵がどうも、抜け出す口実で私がでっち上げた命令の裏取引を本当に暴いてしまったらしいな。
ふぅ~~~これで王宮に今すぐ帰らなければならないようだ」

独り言のように呟いていた。それを聞いた夕鈴はすかさず口を挟む。

「李翔さぁ~~~~~ん、口実の命令ってどういう事ですか~~~~」

言葉に怒気が含まれている。
黎翔はマズいと思ったのも後の祭りで、夕鈴は静かに怒っていた。

「ごめんね、夕鈴。君がどうしても心配だったから・・・」

黎翔は何度も何度も謝るしか、夕鈴を宥める術を持っていなかった。
そんな真摯な態度で謝る姿を見て、それ以上言えず夕鈴は優しく微笑んだ。

「分かりました・・・・では、直ぐにお戻り下さい」
「夕鈴、分かってくれた?よかった~~じゃあ僕は先に帰っているから、夕鈴も早く帰って来てね」

晴々とした面持ちで黎翔は夕鈴に手を振り、何度も後ろを振り返りながら戻って行った。
それを見送った夕鈴は、小さく溜息を吐きだす。

さてと、私も帰るとしますかっっ!!
まずは家に戻り、服を明玉に帰してから王宮へ、狼陛下の元へと帰らないと。
落ち着かない日常だけど、出来るプロ妃として頑張らないといけないものね。

夕鈴は決意を新たに会場を後にした。

服を返しに行くと待ってましたと明玉に捕まり、会場での出来事を根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもない。
そして夕鈴が戻ったのは黎翔が戻ってから随分と経った夜遅くになってしまっていた。
王宮では夕鈴に待ちぼうけをくらって超不機嫌な黎翔が執務室で、大人しく裏取引の事後処理をしていた。
それも李順にネチネチと嫌味を言われながらなのであった。






終。
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