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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。














夕鈴は、上機嫌に部屋を後にした黎翔の去った戸口を見詰めて再度嘆息を吐いた。
心境は、どんよりと今にも雷雨にでもなりそうな灰空色と言う感じであった。
手に持った水中着をしげしげと見詰め、眉間に皺を寄せていた。

いつしか侍女も戻ってきており、長椅子で難しい表情で水中着を見詰めている夕鈴を遠巻きに見ていた。

「お妃様、恐れながら其方は陛下からの贈り物で御座ますか?」
「ええ、陛下が先程いらした際に頂きたのですけど・・・」

頬をポッと赤らめ言葉を紡ぐ夕鈴に、周りの侍女たちは『お妃さまは本当にお可愛らしくて素敵だわ』と感動に似た感情を皆が感じていた。

「その水中着は、街で話題の最先端のもので御座いますね」
「そうなの?そういうものに私、疎くて・・・よく分からなくて」
「首で紐を結ぶものは今年の流行だそうで、売り切れ続出だそうです」
「お妃様、そのお色とお柄も素敵ですね。桃色の水玉模様は今年初めて出たものらしいですわ」
「まぁ、そうなのね・・・」

侍女さん達は本当によく知っているわね~しかし一体何処でそんな情報を仕入れるのかしら?
下町では今まで本格的に泳ぐ機会なんてなったから持ってなかったけど、これが今年の流行りなのね。
確かに可愛いけど、これを陛下の前で着るの?
恥ずかしくて、穴があったらではなく穴を掘ってでも入りたいぐらいだわ。

キャイキャイ盛り上がっている侍女たちを尻目に、夕鈴は一人考え込む。
そして近日中に・・・いや下手したら明日にでも着ないといけない日が来る事を想像して、
夕鈴は気が重くなっていくのを感じていた。


*******


そんな夕鈴の様子なんて知らない黎翔は、自分の策略を楽しげに思い足取りも軽やかであった。
政務室に戻ってきた黎翔はいつになくご機嫌で、うず高く積まれた書簡の山も不平不満一つ言わず精査して印を押捺していた。
そんな黎翔の様子を一番喜んでいたのは、他の誰でもない李順であった。

夕鈴殿のところで何があったかは分かりませんが、政務をこなして頂けるのは有りがたい事ですが。
しかし先日の様に急にどちらかに出掛けられても困りますから、キチンと監視しておかないといけませんね。
あっ、そうそう!この上ないほどの上機嫌な内に、決済頂く書簡を揃えておくことにしませんと。
残りは何処に置いてありましたかね・・・・・・。

側近殿はこの好機にと眼鏡を拭き拭き眼を光らせ、
『陛下仕事詰め込み作戦』を実行に移そうと密かに画策していた。

李順が更に用意した書簡も二刻程であらかた押捺して官吏に指示も出し終わった黎翔は、
執務室に場所を移して夏の少雨対策を講じる為に資料に目を通していた。
ふと、頭を上げて見ると此方をいぶかしげに見ている側近の視線がとかち合った。

「李順、どうしたの?さっきから視線を感じるんだけど」
「いえ、今日はいやに政務に精が出ていらっしゃるなと思いましてね。
夕鈴殿と何かありましたか?」
「ああ、それは昼に水中着を渡して約束を取り付けたからな」

急に狼の気配を醸し出していた。

「そんなもの・・・・いつの間にご用意してらしたのですか?」
「先日、下町へお忍びで下った時に」
「先日とは?もしかして・・・」
「ああ、お前が血眼で私を捜していた日だ。それはそれは楽しいものであった。
女性物のみを取り扱っている店だったから若い娘に取り囲まれ、
『あれがいいだ』の『これが今年の流行だ』のと色々と世話を妬いてくれ、
挙句に『彼女に贈るのですか?』と問われ『ああ愛しい人へと贈るのだが』と答えると、
奇声が上がり更に店がどよめいて店主は苦笑いをしていたぞ。」

黎翔はたった今の事の様に楽しげに話して聞かせていたのだが、
李順はというと眉間に深い皺を寄せずり落ちた眼鏡を指で直しつつあきれ果てた表情を浮かべていた。



************



その日は直ぐに訪れるかに思われたが、連日の振り続く雨で小川は濁った茶色の水が流れ、
水嵩も増しており水遊びどころではなかった。
夕鈴は鈍色の空を仰ぎつつ例の水中着を着なくて良いという安堵感と、
折角陛下が用意して下さったのにという申し訳なさとが半々で心を占め、奇妙な感覚が鬩ぎ合っていた。

黎翔も中々晴れない空を忌々しく感じ、窓越しにチッと舌打ちをしていたのであった。
更に降り続く雨により道路が冠水してしまい流通がマヒしているとの報告がきたため、
その対応に追われそれどころではなかった。
そのせいで政務室に缶詰め状態が続き、後宮に足を向ける事も叶わず五日間も夕鈴に逢っていなかった。
その為か、いやそのためであろうが政務室には夏だというのに冷たい空気が始終漂い、
雷雲は遥か彼方に過ぎ去った筈なのに怒号が響き渡っていた。

官吏たちも連日の雨の対応で急ぎの案件処理に忙殺され、
ついには体調不良を訴える者が続出し、それにはさすがの李順も頭を悩ましていた。
そして優秀な補佐官の二人・・・そう方淵と水月は、方淵はいつにも増して眉間に皺を寄せつつも黙々と抜けた官吏の穴を補完すべく文字通り走り回っていた。
一方の水月は雨が2.3日振り続いた時点で王宮で姿を見たものは誰一人としておらず、
自宅に引き籠って長期休暇を満喫していたのであった。
しかし余りにも忙しかったせいもあり水月が出仕していない事に気がついていたのは、
ごくわずかの官吏だけでそれすらもどうでもよい事として認知されていた。
それくらい皆忙しい日々を送っておりそのお陰もあって迅速な対応となり、
滞っていた物資流通も早くに解決しまた冠水被害もそこまで拡大せずに済んだのであった。

全てが解決した日の夕方、嬉々として後宮へと向う黎翔の姿が回廊のあちこちで目撃され、
これで政務室も陛下の機嫌急降下による異常気象も解消されると官吏たちは胸を撫で下ろしていた。

「夕鈴、このところの雨で気分が塞ぎこんでいるのではないのか?」

後宮唯一の妃の部屋に着くなり、愛しの妃の腰をガシッと強く攫いながら軽く抱くと温もりを確かめた。
夕鈴は侍女がいる手前、拒絶するなんて叶わなかった。
黎翔の胸の中で自分の体温が急上昇していくのを自身では止める事が出来ずに、
次第に震えていく身体を自分でも持て余しジッと銅像の様に耐えていた。

侍女一同は国王夫婦の仲睦まじい様を久方振りに見たことで相変わらずの寵愛に安堵したのか、
スッと音も立てず退出して行った。
侍女の気配が無くなると同時に満足したかのように夕鈴から離れ、優雅に長椅子に腰かけて夕鈴をジッと見詰めると悠然と微笑んだ。
余りの鮮やかさに意表を突かれ、夕鈴は先程の行為について追及する気もすっかり失せて隣にストンと腰かけた。
ただまだドキドキする鼓動を鎮めようと目の前にある桃を手に取ると、
慣れた手つきで素早く剥くと長めの楊枝に突き刺し黎翔へと差し出した。

「陛下、冠水対策が緊急を要しているのだと女官の方より聞きましたが、ひと段落ついたのですね。
本当にお疲れ様でした」
「そうだね。あらかた終わったし、そろそろ多雨の時期も終りを告げる頃だと思うからゆっくりと出来るだろうね」
「それは良かったです。官吏の方も随分と大人数が療養休暇を取っていると聞き及んでいますし・・・まぁ方淵殿は相変わらず精力的にお働きのご様子だったとの事ですが」
「誰から聞いたんだ?」

急に声が鋭利になったことで、夕鈴は桃を持つ手が自然に小刻みに震えてきた。

「いえ・・・侍女の中に官吏とお知り合いの方がいるらしくて・・・陛下がお見えでないからお寂しいでしょうからと。
少し皆さんの様子を教えてくれて・・・方淵殿はやはり柳家の方で憧れている侍女も多いらしくて。
情報が沢山入ってくるらしいので・・・それで・・・」

夕鈴はどう説明すれば誤解なく解ってもらえるのかを考えながら話しているので、
しどろもどろになってしまっていた。
そんな夕鈴の誠実さを伺いしれて自分の嫉妬心が恥ずかしくなり、
黎翔は夕鈴の白い手を取ると叱られた小犬の様に項垂れる。

「夕鈴、ごめんね。あんまりにも方淵や他の官吏の事を気にしているから・・・夕鈴は僕のお嫁さんなのに」
「いや・・・陛下、私は臨時花嫁ですよ」

殊更に『臨時』に力を込めて、自分にも再認識させるように言い放つ。

「臨時だろうと何だろうと、僕の妃に変わりないんだからね。
だから、僕の前で他の男性の話はしないように。いいね!!」

黎翔は夕鈴の言葉を疑いはしなかったが、一応釘は刺しておく周到さを如何なく発揮していた。

「あっそうそう、先日約束していた事だけど・・・もう2、3日晴れが続けば、
あの小川も元の清涼な流れに戻ると思うから楽しみにしているよ。一緒に水浴びしようね」
「は、はい。そうでしたね」

うわ~~なんか陛下の目キラキラしてない?
すっごく嬉しそう・・・・これは逃げられないという事なのよね。
そろそろ覚悟を決めないといけないようだわ。

しばらく他愛のない話をしてまた政務に戻った黎翔を見送ると、
夕鈴は直ぐに箪笥の中から例の水中着を取り出して姿見の前で自分に当ててみる。
確かに桃色の水玉で可愛いとは思うし、着てみたいという興味も少しはある。
ただ下着のように露出している部分が多過ぎるのが恥ずかしいだけ・・・。

でも私の為に用意してくれているのだから着て見せないと申し訳ないし、
直しっぱなしにしておくことのは勿体無いわよね。

寝室に入り人払いを済ませると深く息を吸い込んで静かに吐く。
そして意を決したように踝まである衣裳をするりと脱ぐと、
誰も居ないのだからと自分を安心させ下着も外し寝台の上に丁寧に置いて代わりに水中着を手に取った。

両足をまずは入れて見て、少しずつ上へとあげていく。
どうしてサイズが解ったのか疑問が残るがぴったりとしており、まるであつらえた様であった。
上半身まで綺麗に着てしまうと後は首の紐を結ぶだけ。
両手を後ろへ回し器用に結ぶと姿見で自分の姿を映してみたが、恥ずかし過ぎて直視する事が出来なかった。
取り敢えずサイズはぴったりだったのは解ったので、直ぐに妃衣裳に着替え水中着はそのまま箪笥の奥底に直し込んだ。



続。
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気の毒な李順さん・・・。
めがねもずり落ちますわね・・・。
さてお天気が数日続いた後は・・・狼が舌なめずりをしながら獲物を狩る・・・のだろうか(笑)
続き、待てるね~♪
お手数おかけします^^
こんばんは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
一番の苦労人はやっぱり李順さんなのですよね~
ホント気の毒。
彼にもいつかいいことがあるといいのですが~~
さぁ、お天気になった時にどうなることか!!
夕鈴お覚悟をっっ!!!(笑)
うふふ、マァマもお楽しみに~~~
いつも応援ありがとね。
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瓔悠

Author:瓔悠

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