【桃色水面・3】
2015年06月22日 (月) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。







黎翔の予言は見事に的中していた。
あの水中着に初めて袖を通した日から、丁度3日後・・・・・・その日はやって来たのだ。

その日は朝早くから蝉がジィーーと大音量で鳴いており、さながら演奏会でも開いている様な錯覚に陥りそうで。
まだ日も高くないというのに背中には汗が流れ、ジトジトベタベタ・・・不快指数はぐんぐん急上昇していた。
恐らく気温もウナギ登りで上がっており、このままいくとあの長雨の後から一番暑い日になりそうだった。
 
「お妃様、今日はお暑い様ですので、冷たいお食事に致しましたが宜しかったでしょうか」
「はい、そうですね・・・有難う御座います」

侍女の方々は私の体調を常に考えてくれる・・・本当の妃でもないのに。
本当に申し訳無いばかり・・・・。

夕鈴は侍女たちに軽く会釈して感謝の意を表していた。
全く以て、感謝してもしつくせないのである。

私は、何度有難うと言えば良いのだろうか?

夕鈴はそんな事をボンヤリ考えながら食事を取っていたので、思ったよりも中々箸が進まない。
傍で仕える侍女はこの暑さでお妃さまは体調が悪いのではないかと心配して夕鈴の様子を見ていたが、
出した食事はすべて食してしまったようなので一安心して、個々の仕事に戻って行った。

朝餉を済ませると暑い事も手伝ってか何もする気が起きないが、
そうも言っておられず掃除バイトにでも行こうかなと侍女に伝えようとしていた正にその時、
陛下の渡りを告げられた。

「夕鈴、今日は暑いが体調は大丈夫か?」

暑さには全く堪えていないというように涼しい顔で、黎翔は静かに入って来る。
もうとっくに政務は始まっている時刻。

何故陛下は、後宮の寵妃の部屋なんぞに居るというのだ。

よっぽどポカンと呆けた顔をしていたのだろう・・・黎翔はニヤリと口角を上げ、寵妃の頬を掠める口づけを攫う。
予測通り夕鈴は目を白黒させ口をパクパクしている様を、
黎翔はクックッと忍び笑いをしながらしっかり観察しつつ楽しんでいた。

「夕鈴、侍女達が見ているよ」

黎翔が耳元で囁くと、夕鈴は顔を真っ赤に染めながらもみるみる背筋がピンとなり見るからにお妃然となった。
そんな様子を微笑ましく見ていた黎翔だが、可愛らしい夕鈴を独り占めしたくなりそそくさと侍女達を下げる。
二人っきりになると、夕鈴は先程の黎翔の所業に対して直ぐに抗議を入れる。

「陛下、侍女がいるにしても・・・あれはやり過ぎです!」
「たまにはあれくらいしないと、寵愛が薄くなったなんて思われてはいけないからね。
何事にも念には念を入れないと」

ニッコリと笑顔を見せながら、夕鈴の手を取るとワザとらしく手の甲に口づけを落とす。
ビックリして慌ててと手を引っ込めようとするものの、力強い黎翔に阻まれ夕鈴は大きな溜息と共に断念したのだった。
ドキドキし徐々に高まる鼓動を体中で感じつつも自分ではどうする事も出来ず、黎翔に手を取られ窓辺まで移動した。

「夕鈴見てごらん、今日は晴れて雲一つないよ。先日の約束には絶好のお天気だよね~」
「先日の約束?」
「覚えてない?ほら、一緒に水浴びしようと・・・・」

決して忘れていた訳じゃない・・・あの水中着を着ないといけない事を考えると、
さすがに恥ずかしくて誤魔化そうと悪あがきをしてみただけ。

「あっ、そうでしたね。ただ陛下は政務がお有りなのでは?
李順さんがそろそろいらっしゃりそうですが。」
「それが今日は大丈夫なんだよ!ここ何日か夕鈴の顔も見に来たいのも我慢して頑張って、
一通り政務に目途はつけたんだ。だから今日は休暇だよ」

語尾に『ルン』とでもつきそうな程上機嫌で話している黎翔を見ていると、
小犬が盛大に尻尾を振ってご褒美を強請っている幻覚まで見えそうである。
そうなると、これ以上は何を言っても駄目なんだろうなぁと諦めの境地に陥ってくる。

「分かりました!!では、水遊びに行きましょうか・・・」

踵を返し、戸口に向かう夕鈴の腕を黎翔は素早く掴む。

「夕鈴、何処に行くの?僕が贈った水中着は?」

逃がさないよ・・・と妖しい笑みで夕鈴に迫る。

「えっ、着ないとダメですか?」
「ダメっっ!!僕が折角夕鈴の為に選んだのに・・・。
凄く思案したんだよ、夕鈴に一番映える物をと骨を折ったんだからね。
来てくれないと、水中着が勿体無いよ」

『勿体無い』・・・この言葉に夕鈴は敏感に反応する。
正しい庶民感覚が『勿体無い事をしてはイケナイよ~~』と夕鈴を追い立てる。

「分かりました・・・そうですね・・・勿体無いですよね・・・では着替えて参りますので、少しお待ちください」

足取りは少し重そうだが、そそくさと寝室に入っていく。
そんな夕鈴を長椅子に腰かけながら、ニヤニヤと眺める黎翔の背中には黒い羽が生えているようである。

寝室に入ると夕鈴は過日箪笥の奥底にしまい込んだ水中着を取り出し、姿見の前で当ててみる。
いきなり着るのでは恥ずかしくて、まずは姿見で自分の姿を慣れさせる為である。
でも今一歩なのに、中々着る勇気が出来ない。

この前は他の人には見られる事はないと解っていたから、直ぐに着れたのよね。
でも余り陛下をお待たせする訳にはいかないし・・・・でも・・・・恥ずかしいし。

陛下を待たせるのはマズいという理性と恥ずかしいという羞恥心がせめぎ合う。
でも夕鈴は意を決して、女は度胸よ!と覚悟を決め・・・短く一言、掛け声を掛けた。

「えいっ」

気合いを入れ、妃衣裳をするりと脱ぎ右足から入れてみる。
両足を入れるとなんだかもう慣れっこになってしまい、スルスルと着れてしまう。
やはり肌にぴったりと張り付いて、大きくも小さくもない丁度いいサイズだった。
そして後残すは頸の後ろの紐を結ぶだけとなった。

その時、居間から黎翔の声が発せられる。

「ゆうり~~ん!着てみた~~~?首の後ろの紐は、僕が結ぶんだからね~~~結ぶ前に出てきてよ~~~」

何ともまぁ上機嫌で、夕鈴の恥ずかしさを堪えて着ている苦労なんて全く気付かず一人楽し気である。
夕鈴はと言うと・・・今から結ぼうとしていた手が止まり、水中着からすらっと伸びた両足まで真っ赤になって姿見の前でカチコチに固まっていた。
寝室の中の気配が消えたのを察知した黎翔は、帳の向こうで夕鈴が固まっている様子を容易に想像できクスッと笑みを漏らした。

「ゆうりん~~~大丈夫?」

なんともまぁ、原因を作った発言をしていて全く悪びれていないのである。

このまま結ばずに出て行くべきなの?
陛下には申し訳無いけど聞こえてなかった振りをして、自分で結んでいくべきなの?

黎翔の声で正気に戻った夕鈴は、さてどうするべきなのだろうと真剣に考えていた。

でも陛下の手を煩わせるのは忍びないと・・・そう、夕鈴は黎翔が結んでくれるのは、
ただ単に自分では結びにくいであろうと親切心で言っていると物凄い勘違いをしており、
黎翔が下町の女の子が言っていた『彼女と仲良し作戦』を実行しようとしているなんて、
全くと言っていいほど考えも及んでなかった。

夕鈴は素早く紐をキュッと結んでしまうと、そのまま部屋を出ようとした。
キラッと窓辺から差し込む光に輝く姿見に映しだされたのは、
桃色の水中着を身に纏いほんのり薄桃色に染まった肌が露わになった自分の姿。
余りの露出にこのままではイケナイと兎の防衛本能が夕鈴に教えてくれている。

狼に食べられてしまうと・・・・

夕鈴はう~んと唸りながら、狼対策を考え込んでいた。





続。





*************




この先、分岐します。

通常バージョンと禁断(?)の裏バージョンとへ。

裏バージョンの記載先は、新ブログ『水晶の夢、瑠璃色に染めて』となっております。
新ブログは裏バージョンの作品のみとなっておりますので、鍵付きとなってます。
鍵につきましては、このブログの記事の 
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ご興味のあるゲスト様は、そちらへお回りくださいませ。

宜しくお願いいたします。

瓔悠。
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