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【設定】

未来夫婦 ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り

【注意事項】
此方の作品、確かに夫婦設定ですが・・・・いつものテイストでは有りません。








「夕鈴っっ、お願いだから、眠らないでくれ!!!」

耳元に聞こえるのは、低い聞き慣れた愛しい彼の声。

大丈夫ですから、待っていて下さい・・・・・・必ず私は・・・・・。

自分の意識が、自身の核と云うべき場所へと音もなく滑り落ちていく。
周りの声も音も何も聞こえない、ただの静寂。


しばらくすると、荒い息づかいが何も聞こえないはずの耳の奥に届いて来る。
そして私を、と云うより私の魂を呼んでいる。

『タスケテ・・・・・オネガイダカラ・・・・・ワタシノ・・・・』


そして私は私ではなくなる―――――



「陛下、どうやらまた昏睡状態の様です。」

静かに告げられる侍医の声。

「夕鈴。」

只、名前を呼ぶ事しかできないと言うのか?私は・・・。
愛しい妃一人助けられなくて、何が王だというのだ。
全くお笑い草だ。

『ゴンッッ』

強く握った拳を壁に打ち付ける音。
・・・・・その拳からは血が滲んでいた。


陛下・・・・私は大丈夫ですから、待ってて下さい。

ただそうとしか言えない自分がもどかしくて悔しいけれど、少しも動かせない身体。
そして唇さえも自分の思い通りにはならないのでは、何も伝えられない・・・・この想いさえも。

そして夕鈴という一つの意識は完全に、深淵の底に落ちていった。



どうしてこの様な事になったのであろうか??
それは、10日前の真夜中に遡る。


その夜は風が強く木々がしなる音と、窓には強い雨が叩きつけられる音が止む事無く続いていた。
夕鈴はその風と雨の音で何度も何度も逞しい彼の胸の中で目を覚まし、彼を起こさないように小さく嘆息を吐いてはまた眠りについた。
そんな夕鈴に黎翔も気が付いていたが、彼は気が付かないふりをしていた。

これだけ風が強いのだから、ぐっすりとは眠れまいな。

お互いを気遣いつつ、夜が明けるのをまんじりと待っていた。
そしてもう間もなく夜が明けると云う頃夕鈴はよほど眠かったのか、ようやく深い眠りに誘われようとしていた。
その眠りに誘われる瞬間、そう瞬きするほどの刻・・・・・。
夕鈴は自分を求めて泣き崩れる女性の影が脳裏を掠めていくのを感じた。
しかしその女性の影を捉える事が出来ずに、夕鈴は眠りに落ちた。

その日から昼のうたた寝、夜の情事の後のまどろみ寝・・・・眠ると必ず悲痛に泣き暮れる女性が現れるようになった。
それは夕鈴の心を千々に乱し、いついかなる時もまざまざと思い出されるようになってしまった。
ついには何も手につかなくなり、食事すらも喉に通らなくなってしまった。

そんな妃の様子に、黎翔は政務に専念出来なくなるほど心配していた。
しかし、夕鈴に理由を尋ねても話そうとはしない。
それよりも政務が疎かになっている事を叱咤してくる始末。
狼で脅しても小犬で甘えても、ついぞ理由は話さず仕舞いであった。
そうして、つい10日前には快活に過ごしていた夕鈴はどこを探してもいなくなり、
ただ寝台の上で苦しそうな寝顔で眠っているだけとなってしまった。

侍医も理由が解らない・・・・何処も身体の悪いところは見当たらないと首を傾げるばかりで。
そうして寝たり起きたりの繰り返しで、夕鈴は昏睡状態に陥ってしまった。

心配で夜も眠れず夕鈴に付き添っている黎翔もロクに食事もとらない有り様で、
李順は政務の遅れも気にはなるものの、この状態の二人を心から心配して何度も様子は見に来てはいた。

そして、夕鈴の閉じられた瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

ゴメンナサイ・・・・でも私を信じて・・・お願い・・・待っててください、黎翔様・・・。





********



「あの、起きてますか?怜亜姫。」

怜亜姫?ウン?誰の事よ!!
私は・・・・・・・・・・・・・・・・誰だっけ?思い出せない?
そんなバカな・・・・・。
夢を見ていたの?私は私では無かった様な・・・・そんなはずはない。

私はこの白陽国国王・珀 遥翔の娘であり、あの誉れ高い『狼陛下』と異名を持つ珀 黎翔の孫よ。

自分が寝ぼけていたとしか思えずに身体を起こす。
そして先程少し表面化していた夕鈴の意識は怜亜の意識に取り込まれ、怜亜の魂の核へと押し込まれた。


愛しい夕鈴の心の欠片はいずこにあるのか・・・・・それは黎翔はおろか、未だ誰にも解らなかった。






続。
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瓔悠

Author:瓔悠

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