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【意味などとしての水入らず・16】 完 

【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り





「陛下、黄陵国の側近から酒宴の申し入れがありましたが。」
「・・・酒宴?」
「はい。明日には帰国の途につくらしく、今宵陛下ともっと親睦を深めたいと。」
「親睦を深める???」


書簡に落とした目線を李順に向ける黎翔。
ややいぶかしんだ視線で以て。

「何か意図することでもあるのでしょうか?」
「意図すること・・・か。」

悠鐸殿の母御はもうすでに身罷られていた。
________それに対する、口止めということだろうか?
しかし、身罷られている以上、醜聞とはならないだろうが・・・・。

今更、酒宴を開く意図が分からないが、ここは断固として断る理由も見当たらない。

「分かった・・・今宵、帰国の無事を祈るという名目で盛大な酒宴を開いてやれ。」
「御意!!」

李順はすぐに手配すべく、執務室を出ていこうとする。
その背中に黎翔は言葉を掛けた。
いや、ただ掛けたのではない。
それは、強固な命令であった。

「李順!!!今宵の酒宴は妃の列席は抜きにせよ。」
「それは何か意図がお有りで?」
「勿論だ!!!夕鈴は下町で悠鐸殿と逢っているからな。」
「あっ、そうでしたね。いくらバイトとはいえ下町の庶民の娘が妃では、
こちらの醜聞をさらけ出すところでした。そのように致します。」

今度こそ速足で、李順は執務室を出て行った。


流石と云うべきであろう李順の手際の良さは、誰が見ても感心するばかりで、
数刻もすると、一国の王に対する礼節に相応しい酒宴の場を設けることが出来ていた。

「陛下、すべての準備整いましてございます。」
「そうか。」
「では、黄陵国国王をご案内したく・・・。」
「そうだな、では頼んだぞ。私は少ししてから行くことにするから。」
「畏まりました。」

李順が出ていくと、黎翔はこの宴がもたらす両国間の関係と効果について考えていた。
そして悠がこの宴で持ち出す話題についてをも・・・。

忌避するべきことは、ただ一つだけ。
夕鈴が欲しい・・・・などと云いだした時だ。

悠鐸殿は、夕鈴が掃除婦だと思っている・・・筈。
だとすれば、夕鈴が欲しいとなどと云いだすことも大いに有り得る。
しかし、そうだとしても夕鈴の気持ちは確かめた。
だから悠鐸殿から申し出があっても、突っぱねることは出来る。
_______________大丈夫だ。

黎翔は堅い意志を心に持ち、重い腰を上げて酒宴会場へと足を運ぶ。
全く以て面倒くさいとでも云いたげに、眉間に皺を寄せつつであったが。

それにしても悠とはヘンな場所での遭遇となった後は謁見などもしておらず、
今更酒宴と云われても何だか気まずい感が。

それでも、わざわざ悠からの申し出ともあれば、
無下に断ることなど出来るはずもない。
それこそ、国際問題となり兼ねない。

「それでは、さっさと終わらせて・・・今宵後宮で夕鈴とゆっくりお茶でも飲みたいものだな。」

設えられた会場に足を踏み入れると、すでに互いの国の大臣たちは席につき、
思い思いに歓談していた。
しかし黎翔の登場で空気が一変し、キリッと冷え渡り厳かな雰囲気が漂う。

「これは、陛下。このような盛大な酒宴を開いていただき、歓喜にたえません。」
「さようか。」
「わが王もさぞ喜ばれていることと存じます。」

まず、黎翔の前に進み出てきたのは、この宴の開催を申し入れてきた黄陵国大臣である。
丁重な言葉に黎翔も機嫌良さげな表情を浮かべる。
大臣が深々と拱手したところで、黎翔は歩を進め自らの席へ。

すでに隣には悠が座っており、手には酒杯が乗っていた。
黎翔は軽く会釈して席に座る。


「それでは両国王が揃われたところで、両国の益々の繁栄を願いまして乾盃致したく・・・。」

氾大臣が進み出て、酒杯を高々と頭上に上げる。
その合図で両国の大臣達が一斉に立ち上がり、酒杯を高々と上げてお互いの酒杯をかち合わせた。

それが合図となり、酒宴は正式に開会した。


「悠鐸殿、お待たせして申し訳ない。」
「いえ、このような盛大な酒宴を開いて下さり有難うございます。」
「それでは、まずは一献。」

空になっていた悠の酒杯に、黎翔は並々と酒を酌み入れる。
お返しに今度は悠が黎翔の酒杯に、これまた並々と酌み入れた。
そうして、二人は一気に飲み干す。

「では、もう一献。」

黎翔はすぐに悠の酒杯にお代りの酒を注ぐ。
そして悠は黎翔の酒杯に。
お互い注ぎ合うので、短い時間でかなりの酒量となっていった。

「黎翔殿・・・・実は折り入って、話があるのですが。」

酒も随分入ったことから、悠は黎翔に改まって話を持ち掛けたのだった。


やはりな・・・・・
悠鐸殿は何かしらの話をしたくて、この酒宴を持ち掛けたのだな。
さて、どんな話題であろうか・・・。

黎翔は手の中の酒杯に視線を落としつつ、瞬時に色々と思考を巡らせたのだった。


「黎翔殿・・・昨日は、先に失礼してしまい、申し訳ありませんでした。」
「そのことでしたか・・・(夕鈴のことではないのだな。)いや、お気になさらず。」
「それで・・・その、夕鈴さんのお父上には、話を聞かれたのでしょうか?」
「悠那殿の事であろうか??」
「はい・・。」

そこで、黎翔は安心したかのように手に持った酒杯を口に運ぶ。
一口コクリと飲むと、一息吐いて話し始めた。

「悠那殿・・・いや、悠鐸殿のお母上の事は残念なことにもう身罷られているのだと。それに嫁いだ相手とは、もう夕鈴の父上は連絡が付かないとかで、墓の在処もわからないようで・・・とても気の毒な話であるな。」
「はい、そうですね・・・・(岩圭殿はお二人に自分以外の人の奥さんだったと話したのか・・)」

悠鐸は、岩圭の云った『夕鈴には真実は告げたくはない』という言葉を思い出していた。
まぁ、それはそれでいいのだが。
真実は自分だけが知っていれば良いし・・・例え今は夕鈴さんと兄妹の名乗りが出来なくても、
これからじっくりと時間を掛けてもいい。
そして、いずれ黄陵国に招いても良い事だし。

黎翔や夕鈴に真実を告げることもないと心にしまっておこうと、悠は手に持った酒杯を飲み干す。
そして杯を静かに置く。
そんな悠の様子を見つつ、黎翔は思う。

悠鐸殿の『折り入っての話』とは何であろうか?
お母上の事なのか??友好国とはいえ、自国の醜聞を知られたことに関する口止めか・・・。
この流れであればそうだろうが、どうなのだろうか。

黎翔も表情は変えずに、酒杯を空ける。

「で、黎翔殿!!」
「なんだろうか?」
「母上が民間の者に嫁いだとなると、我が国としても体面がある故、このことについては・・・。」
「そうだな、ご心配めさるな。我が国とて、貴殿の国とは行く末長く友好国でありたいと思っている。それも対等の付き合いでありたいと。」
「それは、有難うございます。私の国も末永く友好国でありたいと思っております。」

二人は互いの酒杯に酒を酌み入れる。
そして酒杯をかち合わせて、互いへの誓いの証とした。


その後はしばし酒を愉しみ、運ばれた料理に舌鼓を打つ。
会話も両国の貿易のことなど、夕鈴の話題が二人の間で上ることはなかった。
黎翔は安心しきっていた。
もう悠鐸殿は夕鈴の事を妃にしようとは考えていないのだな・・と。

しかし、悠が黎翔に話したかった話題は急に持ち上がる。
会話が途切れて、悠が黎翔の酒杯に酒を酌み入れていた時に。

「時に黎翔殿・・・・結局、今回は黎翔殿のお妃さまには逢わせていただけませんでしたね。
実は密かに楽しみにしていたのですよ。今宵こそは、お妃さまも列席いただけるものと。」
「それは失礼をした。妃は気分がすぐれないとのことで。」
「・・・心配ですね。それにしても、黎翔殿の麗しき花は唯一だと聞きおよんでおりましたが、唯一無二ではなく唯一有二であったとは、存じませんでした。」
「唯一有二???」

言葉の意味が分からず、黎翔は再度聞き返す。

「ええ、黎翔殿の花は1輪ではないと。」

そこで黎翔は何のことか分かった。
妃は一人では無いのか??ということが云いたいのだろうと。

「悠鐸殿、その話は何処で聞かれたのだ?」

何処で聞いた???
今、黎翔殿はそう尋ねたのだろうか??
話の出所を聞いているのか??
そうなると、やはり夕鈴さんは隠された花ということか???

悠は黎翔の言葉を完全に誤解しており、表情は変えないものの静かな怒りを覚えていた。

「黎翔殿っっ!!!それは後宮の秘められた花からですよ、それは大層可憐な花でありましたが。
出来れば、私が連れ帰りたいくらいで。」
「可憐な花???」

黎翔はしばし考えていた・・・悠の言葉の意味を。
そして直ぐに気が付いた。
それが、夕鈴のことであると。

いや、待て・・・これは悠鐸殿が夕鈴を貰い受けたいと暗に云っているのか??

ここでも誤解が生じる。

「悠鐸殿、それは出来兼ねる。」
「出来ないとは??秘められた花であれば、陰で咲くしかないのはあまりにも気の毒ではないでしょうか??」
「陰で咲く???(一体、悠鐸殿は何を云っているんだ・・・)」
「そうです、私は花であるならば日の当たる場所で咲かせてやるのが、男性としての役目であると思うのですがっっ!!
黎翔殿はいかがであろうか??」

黎翔殿は、夕鈴さんを秘めた花のままでいさせるつもりなのか??
夕鈴さんは、黄陵国国王である僕の妹姫。
それに見合った待遇をしてもらわねば。

悠は少し興奮気味に熱弁を振るう。
そんな悠の熱弁に耳を傾けていた黎翔は、やんわりと言葉を挟む。

「・・・まず、一言よいだろうか?私の花は1輪だけだ。」
「では、夕鈴さんは??」
「・・・・だから、妃は夕鈴だけだが。」
「???・・・・黎翔殿!!あなたはあの時私に云いましたよね、夕鈴さんは情報を聞き出すだけの相手だと。」
「ああ、そうであったな。」
「そうですよっっ。」
「あれは、流石に妃が庶民出であることを知られるのは拙いと。」
「では、黎翔殿の妃は夕鈴さんだけということで良いのですね。」
「勿論だ、彼女だけが私の妃だ。」

はぁ~~と悠は溜息を吐き出す。
そうすることで、自身の熱を下げていた。

「では、夕鈴さんが妃であるというのなら、ここにお呼びくださいませんか??
明日には帰国しますから、昨日のお礼も申し上げたいですし。」
「・・・では、少しお待ちいただけるであろうか。」

黎翔は悠に告げると、すぐに李順を呼びつけ夕鈴に支度をさせるように厳命する。
李順は少し顔が引きつっていたのだが。



半刻と少し過ぎた後__________艶やかに着飾られた夕鈴が、二人の王の前に進み出てきた。

「お初にお目に掛かります、私は夕鈴と申します。」
「これは、艶やかな・・・・黎翔殿の唯一の妃に相応しい可憐なお妃さまでありますね。」

席上から、悠は満足な笑みで夕鈴を迎える。
今朝ほどに逢った時とは比べ物にならないくらいに、艶やかで豪奢な姿。
この待遇であれば・・・と悠も満足する。

これは、黎翔の指示であった。
李順に命じ、夕鈴をいつも以上に綺麗に着飾らせよ!!と。
兎も角、黎翔は自分の妃は唯一であることを悠に顕示したかった。
でなければ、悠がいつ夕鈴を貰い受けたいなどと云いだすか、わからなかったから。

二人の王は無言で笑みを交わしていた。
一人は満足げに。
そしてもう一人は自己顕示として。


「では、夕鈴、こちらへ。」

黎翔は手を上げて、自分の横に夕鈴を呼び寄せる。
夕鈴が優雅に黎翔の隣へと移動する姿を横目で見ながら、悠はぼそりと呟いた。

「黎翔殿、あなたの妃を存分にそして大切に慈しんでください。そのお妃さまは、僕の大切な妹姫なのですから。」
「えっっ???」

黎翔は聞き返したが、悠はそれ以上は何も云わなかった。
そしてそのまま夕鈴を交えて、宴は最高潮に達し、
上々の盛り上がりを以て、閉会したのだった。



****************


「それでは、黎翔殿。今後とも貴殿の国とは末永い友好国でありたいと思います。
是非、今度は我が国にお妃さまとお越し下さいませ。我が国すべてをあげて歓迎いたします。」
「道中、気を付けられよ。また我が国にもお越し下され。」
「有難うございます。それでは・・・皆の者、出立する!!」

悠はキリリと臣下に号令をかけて、自身も馬にまたがる。
そして、見送りの夕鈴の元に近寄る。

「夕鈴殿、この度は本当にお世話になりました。いずれ、母の墓にはキチンと参りに来ます。」

そう告げると、颯爽と馬を走らせた。

「母の墓??悠さま、悠那様のお墓の場所が分かったのね、良かったわ。」

全く夕鈴は悠の言葉に疑問持たず、良かったわね~と笑顔で見送る。
その横に立つ黎翔は、少し複雑な表情だった。
昨晩、宴の席で呟いた悠の言葉を思い出していたから。


あれは___________宴で呟いたあの言葉は、ある意味挑戦状。
そしてこの狼陛下と呼ばれた自分に対する圧力である。

「さすがに、一国を治める国王ということか・・・・。」

帰りゆく悠を見据えながら、黎翔は感心の言を吐いた。

夕鈴には、このことは告げるまい。
きっとそれが夕鈴の父上の、父親たる想いだろうから。
それが、家族として暮らしてきた絆ということ。

しかしまた黎翔は、身体に流れる血が成すものも考えていた。
血は水よりも濃い_____________と。
しかし自分には縁の薄いものである。


『兄妹、水入らず』・・・・・・いずれは、夕鈴を黄陵国に連れて行かなばならないか。
その時は、必ず正妃としておくこととしようか。

黎翔の決意は、黎翔の心の奥底で固められていた。




終。
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この記事へのコメント

おはようございます。
読みたくて、来ちゃった\(^o^)/
朝、洗車して、朝ごはん食べながら読ませてもらいました(*^_^*) また、仕事がひと段落ついたら、次のお話に行って来ます( ̄^ ̄)ゞ

こんにちは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

タイフーン様でしたのね~~拍手をしてくださったのは!!
拍手数が急に沢山あったので、どなたかな??ご新規様かしら?と思ってました。
でもこうして拍手していただけますと
俄然やる気が出てきます。(厚かましくてすみません!!!)

有り難うございました~~~
この続編も書かないといけないのよね~~とは思ってます。
UPの際には宜しくお願いいたしますっっ!!!

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瓔悠

Author:瓔悠

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