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【信じるという事】 

【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り 








太陽が厚い雲の中に隠れ、今にも大粒の雨が落ちてきそうな空。
夕鈴はそんな空を見上げ、一人小さな息を漏らしていた。

自分の気持ちを表しているような。
そんな空模様。

このところ、陛下はお忙しいようでお渡りもない。
寂しい・・・・といえる権利も無いかもしれないけれど、それでも・・・・・・寂しい。

ハッキリ言って陛下のお渡りがなければ、こんな下っ端のバイト妃のやる事なんて何もない。
正妃など高貴な妃であるならば慰問や儀礼・儀式など、王に代わってやる事などもあるのだろうが。

仕方なく夕鈴は午前中、もう一つのバイトに勤しんでいた。
しかし天気が悪いせいか、磨いてもベタベタした感じがして磨きがいも無い。
あまり成果も出ないとなるとやる気も削げ、午後もやる予定だったを早々に切り上げてしまっていた。

自室にいても正直何もすることはなくて手持無沙汰だ。
では書物でも読もうと思って開いてみたけれど、途端眠気が襲って来て断念してしまった。
ならば・・・と窓辺でぼんやりと外を見ていた。

ホント、お妃様って退屈。
この後宮も昔は沢山の妃たちがいたって事だけど、日がな一日何をしていたのかしらね。
それに毎日王のお渡りがあるわけでなく、更にそのお渡りも必ずしも自分の所にお越しだとは限らないし。
昔のお妃様はそれで幸せだったのかしら・・・・・・。
まぁ、私はあくまでバイト妃だから、そんな事を心配する必要は無いけれど。
それでも本当の本当は、陛下には私だけを見てほしいなんて不埒な考えも頭の片隅にあったりする。
そんな自分が堪らなく嫌になる・・・・ずうずうしくて。
大体、陛下は王様で・・・・私は庶民で、本来ならば、えるはずもない雲の上の人で。
こうしている事が奇跡だから、これ以上は望んではいけない・・・・の。

ボンヤリと考え事をしていたせいで、周りにいたはずの侍女さん達がいなくなっていたことなんて夕鈴は全く気が付きもしなかった。
だから、自分の背後に陛下がいたことにも当然気が付かなかった。
それで、出てきた一言。
これを聞かれていただなんて・・・・・。

「私って結構、厚かましかったのね。その内、此処にも居られなくなるのに」

「夕鈴・・・・僕は君を失いたくはないんだ。だから・・・・・」
「えっ?へっ、陛下!いらしていたんですか??」

夕鈴は振り返ると、そこには黎翔が佇んでいて煌めく紅玉の瞳が揺れていた。
その様子をみて夕鈴は、ふんわりと穏やかに微笑む。

「陛下、私は此処にいますよ」

桜桃の熟れた実のような唇から紡がれる言葉は優しく黎翔の耳奥に届くけれども、
険しい表情が晴れることは無かった。

「でもいつかは、君も僕の前から消えてしまう」
「そんな事は有りませんよ。陛下が私を必要としなくなる時まで、私はお傍にいます」
「しかし、それは契約から言っているのであろう」
「そんなことは・・・・・・・有りません!」

夕鈴は言い切って再度微笑んでみるが、その微笑みの意味も想いも黎翔には伝わらない。

どうして・・・・・・伝わらないの・・・・。
本当は私はずっとここに、陛下の傍にいたいのに。
それにしても、陛下・・・・何か様子がおかしい。

「何かあったんですか?」
「・・・・・・・・」
「スミマセン、私が立ち入ることではありませんでした」
「夕鈴・・・・・」
「はい?」
「君には、私の傍にいてほしいんだ」
「だから、いますけど」

フッと黎翔の口元に笑みが浮かぶ。
自嘲めいた笑みで・・・。
そんな黎翔が、夕鈴にはただの青年に見えた。

今だったら、言えるかも。
私の想いを。

「陛下・・・・・・私はいつまでも陛下の味方ですよ」

満面の笑みを黎翔に向けた。
今の自分が出来る事なんてこれくらいしかなくて。
だからめいいっぱいの花も恥じらうような微笑みを黎翔に向ける。
聖母の様な・・・・女神の様な、そんな笑顔。

「夕鈴、ありがとう」
「いえ」
「じゃあ、約束をもらおう」
「約束・・・ですか?」
「そうだよ」

何されるのかしら?・・・・・これは流されてはいけない気がする。

夕鈴は身構えて、一歩後ずさる。
黎翔は一歩進んで、夕鈴との距離を縮める。
それを受けて夕鈴はまた一歩後ずさる。
けれども黎翔もまた距離を詰める。
そうする事、数歩・・・・・・・・・・・・夕鈴は壁際に追い詰められた。

そこに黎翔はニヤリと口角を上げて悪戯っ子のように笑みを漏らす。
壁に両手の掌をドンッと音を立てて押し付けて、夕鈴の逃げ場を奪った。

「ほうら、夕鈴・・・・後はないよ。どうする?」
「・・・・・・・」
「約束してくれるんだろう」
「それは、しますけど」
「では、約束!」

夕鈴は固く目を瞑った。
これ以上、黎翔の紅玉の瞳は見続けることは出来ない。
だって吸い込まれてしまいそうで、身動きが取れないから。

「あはは・・・夕鈴って本当に素直で可愛い」
「へっ?」

うっすらと目を開けると、そこには片手は壁に手をついたままで
もう片方の手は自身の腰に手を当てて笑っている黎翔がいた。

「陛下のイジワルっ!!」

プイッとほっぺを膨らませて、そっぽを向こうとした夕鈴の顎に黎翔の形の整った指先が制止する。
そのまま黎翔は引き寄せて・・・・・・・夕鈴のさくらんぼのような柔らかい桃色の唇に軽く触れる口づけをした。

「あっ、その、何を、陛下、だから」

いきなりの行為に、夕鈴はまともな言葉が出てこない。
そんな夕鈴が愛しいと、黎翔は自分の腕の中に夕鈴の身体を納めた。

「夕鈴、ありがとう・・・・・・これからも傍にいてね。
君の言葉には、裏表も嘘もないのを僕は知っているから信じられるんだ」
「陛下・・・・・・・・」
「僕の周りには嘘つきが一杯だから」
「大丈夫ですよ。私は嘘はつきません!」
「そうだね」

ポツリと囁くと黎翔はもう一度、夕鈴を抱き締めた。

「しばらく、こうしていて・・・・・」

ホンの少しの時間。
でも夕鈴にとっては長い時間に感じられた。

でも自分の中で、私がここにいる事で少しは黎翔の役に立ててるんだ。
そう誇らしく思える自分がいた。





終。
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この記事へのコメント

臨時妃設定ということで、好き。と素直に言葉に出来なくて陛下の味方だと言葉にする夕鈴が痛々しかった・・・。
同じく陛下も言葉に出来なくてつらそう・・・だったのに・・なにーーー?!く、く、口付けをしただとー?!(笑)
ま、これくらいは許して進ぜよう←誰
この後の二人が幸せでありますように♪
このコメントは管理人のみ閲覧できます
おはようございます~ コメント有難うございます
返信お待たせしました!!
この話、途中まで書いてて放置したモノだったんですよ。
また開けるには、何かUPしないとなぁ~と慌てて書き上げたんです。
本誌は素敵な展開になっているというのに、
こうしてジレジレなモノを書くのは、やっぱり私は天邪鬼かと。
しかし、陛下に何があったんだろう・・・・殊更にああいうこと言うなんてさ。
と自分的にツッコミ入れながら書きました。(笑)
まぁ、陛下にも役得がないとねぇ~~
それにしても、実はこの話の中に『壁ドン』を入れてみたけど
中々あの表現はむずい。
漫画だと、ドキドキもんだけどねぇ~~~
こんにちわ~ コメント有難うございます
返信お待たせしました!!
私も、仕事に行ったらそんな感じですね~~
色々なお客さんもいますし、無茶を言う社員と日々闘ってます!
兎に角、笑ってごまかす・・・でもその後の疲労は計り知れないものがあります。
だから私は腹黒い人間なんだと、思いますよ~~
それで結構家に帰ると、モヤモヤ感満載!!
ですから、お話を書くのはある種のストレス解消!
但し私は多趣味人間ですから、これだけに集中できずに更新がまばらになるんですが。
ますたぬ様もお疲れの御様子!
開けたことで、少しは癒しになれればいいなぁ~~
ここが逃げ込み先ですか?!
それは、頑張らないといけませんね(笑)
少しずつでも何かを更新していければ・・・・と思います。
またお越し下さいね。
ありがとございます!!!
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瓔悠

Author:瓔悠

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