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【意味などとしての水入らず・15】 

【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り






黎翔の機転により、李順からの追及およびお小言を辛くも逃れられた夕鈴。
しかし、悠と一日中下町を歩き回った疲労が、自室に戻るとドッと出てきていた。

「もう今日は早く寝てしまおう・・・それにしても、悠様はきっと肩落としだわ。
出来ればまたお会いしてお慰めしたいものだけど。」


父から聞いた話を思い返しながら、夕鈴はそのまま眠りについた。
そして次の日の朝早く。
夜が明けると共にいつもより早く目が覚めてしまい、着替えを済ませてしまうと一人庭園へと散策に出て行った。
いつもの習慣からか・・・後宮内の庭園ではなく、王宮内の庭園へと足を延ばしていた。

「今日も天気が良さそう~~朝の空気も澄んでいて気持ちがいいわ。」

夕鈴は天に向かって両手を上げて、大きく伸びをする。
この時間の庭園は気持ちがいい。
風が優しく頬をかすめ、軽く結い上げた髪の後れ毛を揺らしていく。
いつしか足取りも軽くなり、庭園の奥まで来ていた。

「誰もいないっていいもんだわ。気兼ねもなくていいし。」

夕鈴は池のほとりにある四阿の椅子に座って、ぼんやりと考えていた。
どうしても気になる悠様の事。

父さんは悠様のお母上は、知り合いの官吏の奥さんだと云っていた。
でも黄陵国で子供までいた人が、この白陽国の官吏に嫁いだのか。
亡くなったのだったら、悠那様が埋葬されている場所は? 
更に云うなら、その旦那さんだった官吏の方に連絡は出来ないのだろうか。

どうしても気になる。
他人事なのに。
どうにかして差し上げたい・・・この感情は何なのか??

考えてみても答えは出ずに、ただ遠くをぼんやりと眺めていた。

「これは、これは・・・・もしかして、お妃さまでしょうか?」

不意に背後から声がしてきた。
この声に、聞き覚えが・・・・・・・。

「えっ????悠さま???」

振り返ると昨日の官吏の服ではなく、かなり豪勢な衣装を身に纏った悠が立っていた。

「・・・・夕鈴さん??」
「はい。」

あっ、思わず返事しちゃったわ。

「・・・確か、貴女は掃除婦でしたよね。」
「ええ、掃除婦・・です。」
「でも、その衣装は。」


ヤバいっっ。
このなりじゃ、掃除婦だとは押し切れない。
だって煌びやかなお妃衣装だし。
どうしよう・・・・・・・。
思いっきり、身分を偽っていたことがバレバレだわ。

それに・・・・バイトとはいえ、今は一応この国の王妃。
その王妃の出身が下町の庶民だったと知られたのは、すんごいマズイ。
これは減給モノ??
いや、それくらいじゃ済まない・・・かも。

夕鈴はガタピシに固まって、背中には冷汗が流れる。
身体は動かないものの、思考だけがぐるぐる回る。

「その衣装は、黎翔殿のお妃さまのものですよね。」
「・・・・・・。」

否とも是とも云えず、だんまりを決めてみた。
でも・・・待てよ。
今、陛下の事をさらっと『黎翔殿』って云わなかった???

「あの・・・悠様は黄陵国の官吏様ですよね。それが陛下を『黎翔殿』と。」
「う~~ん、官吏・・・・・じゃなかったり。」
「???」

官吏じゃない???
じゃあ、誰??

「では、黄陵国の方ではない?」
「いや、僕は黄陵国から来たんだよ。それに僕の国だし。」
「ああ、僕の国ですか・・・・・・・って、え~~~~~悠様、王様なんですか???」
「うん、そうだよ。」

夕鈴は口をパクパクさせて、驚きの表情を隠せなかった。

「ごめんね、嘘ついてて。」
「いえ、そ、そ、そんな事はお気になさらず。」
「ところで、夕鈴さんの真実は??黎翔殿のお妃??それとも掃除婦??」
「・・・・・・その、あの、だからお妃・・・かな。」
「かな??」
「いや、お妃です。」

それだけ云うとこれ以上追及されるのは御免だと、夕鈴は深々と悠に頭を下げてその場を足早に立ち去った。

「逃げられてしまった・・・。」

悠は、夕鈴の走り去っていった方を眺めていた。

もっと話したかった・・・折角また逢えたのに。
それに僕に残された唯一の肉親だし。

驚愕な事実を聞かされた昨晩、夕鈴さんのご実家から逃げるように、この王宮に帰ってきた。
僕に芽生えた淡い恋心が、肉親だという壁に阻まれたことがどうにも得心いかなくて。

でも・・・これはどんなに努力しても、どうにもならないこと。
自分に言い聞かせて、一晩かけて諦めた。
ならば妹である夕鈴さんの恋を応援してあげよう・・・と思うことができるまでに。

もう一度逢いたい。
そう願って、初めて逢った場所に行こうと朝も早くから向かおうとした矢先。

彼女はいた。
でも・・・・思いもかけない場所に。
王宮の奥の四阿で。

後ろ姿が、何となく夕鈴さんのような気がした。
でも彼女である筈はない。

だって、煌びやかな天女の如くヒラヒラした衣装を身に纏い、
優雅な物腰で腰かけて、空を見上げていた女性。
あれは、きっと黎翔殿の秘蔵のお妃さまだろう。

声を掛けるのに躊躇した。
そこだけ切り取られたような空間が広がっているような気がしたから。

それでも。
一応声を掛けてみる。
もしかしたら・・・なんてことも有り得るから。

「これは、これは・・・・もしかして、お妃さまでしょうか?」

振り返った女性は___________夕鈴さんだった。

どういうことだろうか??
僕はびっくりして一瞬言葉を失った。
掃除婦である筈の彼女。
だけど、目の前には妃然とした綺麗な女性が。
それが夕鈴さんなのだから。

それからのやり取りは、茶番劇の様だった。
語るに落ちる・・・そんな感じだろうか??
まぁ、僕の方も身分がばれたし、お互い様なんだろうけど。

でも・・・夕鈴さんが黎翔殿の妃なのだとしたら。
あの言葉は何だったのか??

『いえ、その・・・・・私、好きな・・・・人が・・・・いるんです。』
『そう、なんだ・・・・・その人とは将来の約束でもしているの?』
『それは・・・・・ないです。私が一方的に思っているだけで。』

一方的に思っている???
狼陛下の唯一の妃なのに??
賓客の僕にすら、逢わせないほど大切にされているのに??

全くわからない。
もしかして・・・庶民だということで、後宮で秘密裏に愛されているのか?
そして表には全く出れずに??
更に云うなら、黎翔殿の唯一の妃というのは別の女性なのか??
だから『かな?』だったのか??

僕の中で疑問が広がる。
もし彼女の待遇が酷いものなら・・・・僕にだって考えはある。
彼女は、黄陵国の国王である僕の妹姫だ。
生まれは、申し分ない。

だから黎翔殿に表にも出されず秘密裏に愛され、遇されていないのは許せない。
僕は兄として、妹を守る義務がある。


「これは、狼陛下と云われている黎翔殿にキチンと物申さなければ!!」

決心した悠はその場を立ち去り、すぐさま側近に命じ酒宴を開いてもらうように手配したのだった。







続。
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瓔悠

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