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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り







「あれ???父さん、悠様は???」

お酒の瓶を抱えて、戻ってきた夕鈴と黎翔。
居間にいたのは、一人でちびりちびりと酒を呑んでいる岩圭だけだった。
その横顔はなんとなく、寂しげであるように見えた。
だが夕鈴の姿を見た途端、表情は打って変わっていつもの飄々としたものになっていった。

「ああ、お帰り~~~お酒は??早くっっ!!!さっきからちびりちびりとしか飲めなくてな。」
「いや、父さん・・・そんなことより、悠様は??」
「悠殿か・・・・急ぎの用を思い出したとかで、帰られたぞ。」
「そうなの??でも人探しはよかったのかしら。」
「そのことだが・・・・。」
「えっ、父さん、何か知ってるの??」

夕鈴は身を乗り出し、今にも岩圭を押し倒しそうな勢いで、食いついてくる。
その姿に黎翔は口元を抑え、くっくっくっと密かに忍び笑いをしていた。

「探し人の『悠那さん』とやらは、偶々同僚の奥さんだったんだが・・・・かなり昔になるが、国外に転任になって今はこの白陽国にはいないんだ。」
「じゃあ、生きてるのねっっ。」
「いやな・・・それが・・・風の噂じゃ、転任先にて病で亡くなったそうだ。」
「・・・・・そうなの。」
「・・・・そうだ。」
「それは、悠様はきっと肩落としだわ。それで帰られたのね。」

夕鈴は自分のことのように落ち込んで、肩を落とす。
その姿を見た岩圭は、一瞬切なげな表情を浮かべたのを黎翔は見逃しはしなかった。
そして、黎翔は一つのことを確信した。

__________岩圭殿は何かを隠している・・・そう、悠那殿のことに関して。
でもきっとあの様子では、この御仁は語るまいな。


「夕鈴・・・・人探しはひと段落したから、僕たちも帰ろうか。」
「そうですね、確かにここに悠様はいないのだし・・・もう探す必要がないのでしたら、帰らないと・・・ですね。」

夕鈴はそう呟くと、王宮から持ち帰った小さな手荷物を持ち、玄関先に歩いていく。
ただしその前に青慎の部屋を覗き、勉強に勤しむ後ろ姿をそっと確認することは忘れずに。

「じゃあ、父さん!青慎にあまり面倒を掛けないでよっっ。あの子は勉強が忙しいんだからね。」
「わかっているよ。まったく、夕鈴の口やかましさは誰に似たのやら。」
「きっと母さんなのよ。それにこれくらい言わないと、父さんはわかりゃしないんだから。」

大袈裟に溜息を吐いて見せる夕鈴。
その親子のやり取りを口元に笑みを乗せ眺めている黎翔は、二人の間の家族の絆みたいなものを感じていた。

「行ってきます。」
「ああ、頑張ってくるんだよ。」
「わかってる。」
「李翔殿は、夕鈴の上司だとか・・・。」
「そうですが。」
「こんな娘ではありますが、宜しくお願いいたします。」
「ええ、夕鈴はすごく優秀ですから、父上殿はご安心を。」
「そう云ってもらえると、安心いたします。」

二人のやり取りは、さながら義父と婿のやり取りのようでもあった。
挨拶を済ませると玄関を出て、王宮へと戻って行った。

その後ろ姿を見ながら、岩圭は呟く。

「いつか・・・夕鈴にキチンと母親の事、そして出自を話さないといけない日は来るのだろうか?
それはあの上司だという李翔殿の元に嫁ぐなんて、あまり考えたくないことが起こり得たりした時なのだろうか?」

父親の直観とでもいうのだろうか・・・夕鈴が密かに育む恋心を察していたのだった。




二人が王宮についたのは、夜も更けて。
待ち構えていたのは、眉間に皺が寄りまくっている側近だった。
ずり落ちた眼鏡を人差し指でズイッと上げ、二人を鋭い眼差しで見つめる。

「陛下、お早いお帰りで・・・大変嬉しく思います。私はてっきり、後二日ほどはお戻りになられないかと。」
「いや・・・李順、そんなことは・・・。」
「そうですか・・・私の思い違いでしょうか?」
「そうだ・・・。」

二人の間に、ピリピリとした張りつめた空気が流れていく。
夕鈴は、もう後宮に下がりたい一心でなりゆきを見ていた。
このまま自分に矛先が向かないことを祈りながら・・・・。

「大体、李順・・・・いなくなった黄陵国の官吏が誰だったのか、それは浩大の報告からわかったのだろう。
それならば、私が出ていかねば収拾がつかなかったと思うのだが。」
「えっ??陛下・・・悠様は実は偉い方だったんですか??」
「・・・・いや、夕鈴、そうではないが・・・。」
「???」

夕鈴には、悠が黄陵国の国王だとは云ってはいなかった______そのことを不意に思い出し、
黎翔は夕鈴の質問を曖昧にした上で、口を噤んだ。

「それにしても、国王自ら行かなくとも、優秀な隠密にでも任せておけば宜しかったと思いますがね。」
「浩大にか??」
「それはまぁ、浩大は、妃護衛の任にもついていることですし。」

―――冗談じゃないっっ。浩大なんぞに行かせていたら、悠鐸殿が夕鈴に接近し過ぎていたではないか!!!

黎翔は、悠が夕鈴を口説いたという事実を不快に思っており、
ここ王宮でもこれ以上、接触させたくはなかった。

「ところで、李順。面白いネタがあるのだが・・・・聞きたいか?」

下町に出かけた事への一件はここまでにしたい黎翔は話題を変えた。

「面白いネタ・・ですか?」
「ああ。」
「それは、是非とも聞きたいですね。」

李順が乗ってきたところで、黎翔は夕鈴に向かってにっこりと笑って見せ、もう下がっていいよ~~と口パクと手振りでその場から下がらせる。

これは、李順のお小言を夕鈴に向けないことと、今から始める話を夕鈴には聞かせない為であった。
夕鈴は黎翔の機転を有り難く思いつつ、李順に深々と一礼すると静かにその場から退いた。
それを苦々しく見ていた李順であったが、黎翔の面白いネタの方が気に掛かり小娘のことなど、どうでもよくなったのだった。

「それで、陛下・・・ネタとは?」
「ああそれか・・・・黄陵国の前王妃だが、どうやらこの白陽国に住んでいたらしい。それも下町で・・な。ただし、今は故人となっているようだが。」
「はぁ??それがどういう・・・。」
「悠鐸殿は、その事実を知らず、自分の母親探しをしていたようだ。」
「それで、夕鈴殿に道案内を・・・。」
「そういうことだ。」
「そのネタはどこから?」
「夕鈴の父親だ・・・それがあの御仁、まだ秘密を隠しているようだが。」
「探らせましょうか?」

李順の眼鏡の奥が光る___________そして、策略の匂いがした。
黎翔は頭(かぶり)を振ってみせる。

「いや、いい・・・・・これ以上は、藪蛇だろうからな。」

二人はそのままこの話は終わりにした。
そうしてニヤリと微笑んだ李順は、静かに卓上に積み重ねられた書簡をを指さし、
お早く政務を!!!と無言の圧力をかけてきたのだった。




続。
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瓔悠

Author:瓔悠

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