【この恋は手放さない】 (未来家族設定)
2015年03月20日 (金) | 編集 |
【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り









この恋は、私の初めての恋。
そして叶えたい恋。

私だって、お年頃なんだもん。
公主だってことは忘れて・・・ね。
恋する乙女は最強なんだから。

「嘩鈴公主様~~~~どちらですの_??」
「嘩鈴を探しているのかい??」
「これは、公子様」

回廊を静かに歩いている遥翔から声を掛けられ、侍女たちが慌てて拱手する。
今日も忙しそうに、大量の書簡を手にしている遥翔。

「嘩鈴なら、多分後宮にはいないよ」
「いらっしゃらない??それでは、王宮ですか??」
「そこにもいないと思うよ。朝からウキウキして出かける用意をしていたからね」
「えっ??それは困りましたわ。失礼いたします」

侍女たちは『困ったわ、どうしましょう~』と相談しながら立ち去って行った。


全く、嘩鈴は。
こんな事が父上の耳に入ったら、何を言われるか分かっての行動なのだろうか?
いや、嘩鈴の事だからそんな事まで考えている筈はない。
『思いついたら、即!行動!!』が信条だからな。

「そういうとこは、母上譲りか・・・」

遥翔は人知れず溜息を吐く。
そして腕に荷重の掛かってくる書簡を抱え直して、執務室へと向かって行った。


そんな兄の様子も分かる筈もない嘩鈴は・・・生き生きと下町にいた。
恋しい彼に逢うために、足取りも軽やかに。
付け加えるならば、足早に。
露店街を抜けた小高い丘が見え始めると、そこには一人の青年の姿が。


「几詠(きえい)!!!」
「嘩音(かのん)」

嘩鈴は最後のダッシュとばかりに、一気に全力で走り出す。
そして、そのまま彼の腕の中に飛び込んだ。

「久しぶりだね」
「ええ、やっと抜け出せたの」

几詠は、腕の中の嘩鈴の頭の上へと優しく手を置く。

「それは、淑女になるための勉学からなのかい??」
「ふふふ、そんなとこかしら」
「もう、嘩音は立派な淑女だと思うけどね」
「ありがと。でもまだまだよ~~姉さま程じゃないからね」
「それは奏茗(しんめい)が出来過ぎなんだよ」
「でも本当に姉さまは凄いのよ」

二人は柔らかい草の上に腰かけて、会話を交わす。
そして几詠の手には、嘩鈴が作った饅頭が握られている。

「それにしても、嘩音の家は上流お貴族様なんだね。
昔からだけど、未だに行儀作法をみっちりと躾けられているなんてさ」
「そ、そうね・・・・」

実は、まだ言えてない。
私が公主であること。
そして本当の名も『嘩音』では無くて『嘩鈴』であることを。
もう知り合って随分と経つというのに。

言ってしまうと、離れていってしまうんじゃないかという不安から言い出せない。
だって、母様が正妃である事もこの下町では全く知られてない。
知っているのは、青慎おじ様家族と岩圭おじい様くらい。
それだからこそ、言えない・・・言ってはいけないと思えるのだ。

でもこのままじゃ、ダメだということくらいは分かる。
几詠と将来を共に・・・ということになれば、隠し通せることじゃなくなるもの。

この恋は・・・・手放したくない。
几詠が好き。
昔からだけど・・・今抱く想いは、憧れとか友愛とかじゃない。
これは、愛情の『好き』なのだ。
だからこそ、慎重にもならざるおえない。

今は隙を見つけては、こうして会いに来るだけ。
それだけも嬉しかった。
ただ、いつもこうして二人並んで座って、
ポツポツと取り留めの無い話をするだけだけど。


そして会話が途切れた時、ふいに嘩鈴が切り出した。

「ねぇ、几詠・・・」
「何だい??」
「私の母様は知っているわよね」
「そりゃ、ウチの父さんと幼馴染で、何度もウチの店に来た事もあるし」
「じゃあ、父様は??」
「知ってるさ、だって嘩音の母さんが来る時には、いつも引っ付いて来るだろ」
「そうね」
「それがどうしたんだよ」
「・・・・・もし、あの二人が・・・国・・いや、いい!!」
「国(こく)????」
「いや、なんでもない!!!」

やっぱり言えない。
はぁ~~~このままじゃダメなのに。

意気地のない自分に嫌気がさして、嘩鈴は俯いた。
そんな嘩鈴を几詠は心配げな瞳で見つめる。

「どうしたんだよ、嘩音」
「几詠~~~~ごめんなさい!!今はダメだけど、ちゃんと言うから!!
必ず言うから!!」
「何が??」
「私の事・・・とか。だから、待っててね」


「何を待っててもらうというのかな??」

二人の会話に入り込む、第3者の声。

「兄様っっ!!!」
「遥慎じゃないか!!!」
「嘩音、迎えに来たよ。探してたんだけど・・・」
「どうして??」
「忘れていたのかい??今日は・・・・」
「あ~~~~~~~~~~~~~~~忘れてました」
「じゃあ、帰ろうね・・・」

まだ帰りたくはないような素振りを見せる嘩鈴に向けられる、深い深い紅の鋭い瞳。


「はい・・・帰ります」
「だね、それが賢明な事だと思うよ」

うなだれる嘩鈴と勝ち誇った遥翔。
そして、呆気にとられる几詠。

嘩鈴へ先に丘を降りるように促した遥翔は、几詠に耳打ちした。

「もし、嘩音が欲しいのなら・・・まずは僕を納得させるような男にならないとな。
でないと・・・多分、父上の方が手ごわいと思うからね」

遥翔は、父親譲りの端正な顔立ちが冴える微笑みを几詠に向ける。
それに一瞬竦み上がった几詠は、息を飲む。
しかし、几詠はキリっと引き締まった表情を目の前の遥翔に見せた。

「わかった!!!オレは受けて立つよ!!!」
「ふんっ、愉しみにしているからな」



嘩鈴は知らない。
二人の間に交わされた宣戦布告などは。

恋する乙女は、夢見る乙女。
いつの日かと・・・夢を膨らませる。
だけど恋を成就させるには、いつの時だって困難はつきもの。
だからこそ、恋が実った喜びは一塩なのである。


嘩鈴の恋路は、まだまだ厳しく険しい様である。
でも、恋する乙女は奇跡の力をも持ち、自身の力で道を切り開くものである。




終。




2014.05.03 初出
関連記事
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック