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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り








今日も朝からくだらない意見ばかりが飛び交う朝議も、黎翔の一睨みでようやく収拾を付け執務室に戻ると、李順が清々しい笑顔で詰め寄り、前もって準備していたこれでもかと言うほどの書簡を恭しく黎翔に渡す。

「これは、なんだ?」
「なんだと仰らないでください・・・陛下に精査して頂くべき最優先の書簡ですよ。私は他にすべきことが有りますので、席を外しますがキチンと済ませておいて下さいよ。」

二人の間に刹那的な沈黙が走る_________が、途端に黎翔の纏う雰囲気が小犬に変化すると、じと目で李順を見詰め、不平不満をブツブツ漏らし始めたのだった。

「え~~こんなにぃ~~、頑張れないよ~~~。これは夕鈴が傍にいて応援してくれないときっと片付かないよ~~夕鈴は??」

黎翔は、机につくなり両肘を付いて子どもの様に膨れていた。
其れを李順は聞かない、見ないふりして、黎翔の机の上に置いた書簡の山を一応種類別に整理する。
そしてそれも済ませると、踵を返して立ち去ろうとした・・・・・但し、一言念押しする事は忘れずにだったが。

「では陛下、私が戻るまでにキチンと終らせておいて下さいよ。」

言い終わると、今度は振り向きもせずに李順はスタスタ出て行ってしまった。
残された黎翔はというと、部屋中に冷気を振り撒き不機嫌モードに突入しつつも、誰も当たる人もおらず仕方なしと大人しく書簡の山に手を伸ばしていた。


一方李順は昨日夕鈴に言い渡していた様に『お妃教育強化』の為、指定していた部屋に行くとすでに夕鈴は老師に歩き方を特訓されていた。

夕鈴の目は縋る様に『もう勘弁してください』と、戸口から入ってきた李順に注がれていたが、次の一言でその淡い期待も吹き飛ばされたのだった。

「夕鈴殿・・・姿勢がなってませんよ。もっと背筋を伸ばして、ゆっくり優雅に歩けないんですか?其れではまるで家鴨がお尻を振りながら歩いているようですよ。」
「は・・・・・・い。」
「そうじゃ!!言おうとした事が眼鏡の小僧に言われて仕舞ったわい!!それ頑張って歩くのじゃぞ。ほれ、ほれその調子じゃ。」

―――何なのよ~~。あと何回往復したらいいって言うの??さっきからもう10往復位してるんですけど!!

この二人が揃えば、総監督と副監督の様で息ぴったりに同じ事を駄目出ししてくるのだ。
其れは夕鈴にとってこれ以上無い程の打撃なのである。

そうして気がつくと歩くだけで、そこまで広くは無い部屋ではあったのだが、軽く20往復はさせられたのであった。

「まぁ、いいでしょう。」
「そうじゃな、これ位でいいじゃろう。」

「はい・・・(ゼイゼイ・・)有難うございます・・・。」

やっとこれで開放される~~~~と思ったのもつかの間・・・・・次の言葉を聞いた夕鈴は思わず、『まだするんですか?????』と素っ頓狂な悲鳴を上げていた。

そう李順から告げられた言葉はこうだった__________。

「さぁ、時間が有りませんから、次は座り方・・・其れが終われば、老師からかの国についての講義ですよ。ほらボヤボヤしない!!」

講師たる二人の表情は、全く根性が足りない!!と叱咤しているものだった。

―――負けられない!!!

そこが夕鈴が夕鈴たる所以であろうが、元来の負けず嫌いが出てきて俄然ヤル気が出てきていた。

「では、頑張りま・・・。」

夕鈴が高らかに声を挙げようとしたその瞬間、壊れんばかりの大きな音をたて戸口が開いたのだった。

そこに現れたのは、言わずとしれた狼陛下、その人であった。

「李順!全て終らせたぞ!!特訓かなんか知らないが夕鈴は連れて行くからな!」

大股に歩いて夕鈴に近づくと、その細い腰を抱き上げてそのまま連れて行ったのである。

「そうそう・・・それと言っておくが、夕鈴は王がやってきても、臨席させない事にしたからな!!だから特訓などする必要無し!!_____じゃあな、書簡の山の整理は任せたぞ。」

黎翔は高々と響き渡る声で宣言すると、特訓していた二人に紅い瞳を輝かせて笑ったのであった。
それは見たモノをゾッとさせる・・・・冷たい笑いであった。
残された二人は冷たい雫が幾つも背中を滑り落ちてくる感覚に襲われ、言い知れない震えがきていたのであった。


そしてそのまま回廊を大股で歩く黎翔はご満悦になっていた。
何しろ、夕鈴を鬼の様な講師どもから救い出し、自らの腕に納めているのだから・・・・。

すれ違う官吏達は、緊張した面持ちで拱手していた。
というのも・・・狼陛下と恐れられし黎翔の何時にないご機嫌さを目の当たりにしていたからだった。

彼らが見たのもは、陛下の腕の中で真っ赤に頬を染め、身を小さくして縮み込んでいる寵妃の姿で、どうやらこの状況を嬉々として享受してはいないようだった。
当の本人の夕鈴は、自分をはがゆく思っていた______抱きかかえられたこの状況を変える『お願い』を中々黎翔に言い出せないが自分自身に・・・。

でもこのままではイケナイと感じた夕鈴が意を決して、黎翔に『お願い』をしてみたのだった。


「ちょっと陛下・・・・あのですね、降ろして下さいませんか・・・私、一人で歩けますし・・・。」

ところが聞こえてない筈が無かろうに黎翔は全く返事する気配はみせず、黙ったまま歩いて回廊を横切って庭園へと出た。
手短な四阿に着くとようやく降ろされ、備え付けてある長椅子へと座らせられた。

「もう、陛下!!まだ、特訓の最中だったんですよ。」
「特訓の必要はないから連れ出したのだ。」
「必要が無いわけないですよ。だって相手は一国の王様ですよ。それだったら失敗は出来ませんし。」
「先程、言ったではないか。君は列席させないと。」
「そう言う訳にはいかないのでは?」

黎翔が言う意味がよく解らずに、夕鈴はしきりと首を捻る。

「君にとっての王は、ただ一人・・・・そう私だけだ。だから他の王に逢う必要はない!!」

きっぱり言い放つ黎翔。
夕鈴は益々理解出来なくて、それでも云われた意味を考えようと頭の中で黎翔の言葉を反芻させる。
でもヤッパリ理解出来ない様子。

「そう言う訳にはいかないですよ。私は手当を頂いているんですから、きちんとお妃としてですね・・・。」
「だから、私が必要ないと言っているではないか!!」

―――どうして陛下はあそこまで頑なに、私が列席する事を断わるのかしら?もしかしたら、私が失敗したらかの国に対しての威厳が保てないとか?

夕鈴は、噛み合わない会話に疲れてきて、これ以上は何も言うまいと押し黙ったのだった。
その様子を窺い黎翔も夕鈴は解ってくれたものだと思って、纏う雰囲気がさっきとは打って変わって柔らかいものになった。
そして夕鈴の手を取るとニコニコ顔で言ったのだ。

「妃が列席しないなんてことは良くある事だよ、夕鈴。そんなの『気分がすぐれないから』とでも言ってしまえば、大体の使者や王族は察するんだよ。」
「何を察するんですか???」
「いいんだよ、夕鈴は知らなくて。」

―――そう言う断り方は妃を大事に思う余り、誰の目にも触れさせたくないと暗に言っているんだよ。まぁ、夕鈴は知らなくていい事だけどね。

―――陛下が仰っている意味はよく解らないけど、まぁ列席しなくていいに越した事はないわ。失敗しない様にとお淑やかに振る舞うのは本当に疲れるし。

「あっ、でも李順さんはどうしたらいいんでしょう。」
「僕が言っておくから気にしなくていいよ。」
「そうですか・・・・では、あの・・・・・手を離して下さい。」

夕鈴は、自身の手に伝わる黎翔の体温が程良く温かくて妙に居心地が悪くて、更に先程抱きかかえられていた事も思い出し、真っ赤に顔全体・・・首までもを染め上げており、目を合わさない様に下を向いたのだった。

その恥じらいが、黎翔にとって初々しく可憐に見えて抱き締めたくなる衝動に駆られていた。
黎翔は手を出しかけて寸前で押し留め、紳士然とニッコリと微笑んだのだった。

「夕鈴、もう今日はいいから部屋に戻ったら?」
「そうですね。」

二人は連れ立って、ゆっくりと後宮まで歩いていったのだった。


―――そして、数日後。

かの国から、数人のお付きのモノと共に年若の王様が訪問してきた。
そして見の間に居たのはこの国の王たる珀 黎翔であり、その隣に狼陛下唯一の妃の姿はなかったのだった。


続。
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瓔悠

Author:瓔悠

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