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【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り








僕の名前は、珀 遥翔。

父上はこの国の王で、民からは『狼陛下』と恐れられた存在であり、
そして母上は・・・・ここだけの話、父上が切望して迎えた庶民出身の正妃。

僕はその二人の間に生まれた第二子で、この白陽国の次期王たる公子だったりする。


だけど・・・・今日は、ただの下町の男の子。
そう、お忍びで。
父上、母上には黙って出て来たんだ!!


「おう、そこの坊主、迷子か?」
「いえ、大丈夫です。母はその辺りにいると」
「そうかい!!」

余りにも下町の活気が珍しくてキョロキョロしていたので、露店の店主に迷子と間違えられた様だ。

まぁ、仕方ないか・・・・・7歳のガキが一人で、ブラブラと当ても無く歩いているんだもんな。
今日、下町に出てきたのには訳がある!!

僕は、あの二人に抗議したいんだ!!!
あの二人????
それは・・・・・・・僕の両親。

いつでもどこでも、子どもたちがいたとしても父上は母上を離そうとしない。
最近では、政務室にも必ず連れていき・・・・僕たちと過ごす時間を奪っていくんだ。

四つ上の姉上はもう諦めたのか、その事については抗議も何もしない。
つまり、抗議したいのは僕だけの様だ。

「まぁ、僕がいないとなると・・・・さすがにあの二人も慌てるだろう。ただし・・・・・」

独り言を呟いて、傍の民家の屋根上を見上げる。

いた!!!僕の警護としてついて来た隠密の姿がそこにはあった。
捲かないとな。

僕は民家の軒下に入り、屋根上からの死角と為る所を殊更通り素早くその場を離れる。

―――これで、大丈夫!!!上手に捲けたみたいだな。

先程の場所からはかなり離れたので、もう付いて来てくれていた隠密も僕の行き先は掴めなくなったと思う。


「さてと、何処に行こうかな~」

ブラブラするのも悪くない。
お金もたんまり持って出て来たから、不自由する事も無い。

さぁ、自由散策満喫だ!!!

『グぅ~~』

あ~~、お腹空いた。
考えたら、昼餉の前に出て来たからお腹も丁度空く頃だ。

そんなことをボンヤリと考えながら、懐から財布を取り出した。

『ヒュン!!』

僕の回りを風が吹き抜けて・・・僕の手の中から財布が無くなっていた。

―――スリだ!!ヤバい!!

「おいっっ、返せ!!!」

前を駆け抜けていく年若いスリであろうアンちゃんに、声を張り上げて制止する。
でも止まる筈なんて無い!!!

それでも諦めてなるものかと、僕は走って追いかける。

スリのアンちゃんは角を曲がった。
それでは僕も!!!

『ドンッッ』

誰かにぶつかって、僕の走りは止まった。

「坊主、大丈夫か??」

見上げると、そこには陽に焼けた精悍な顔立ちの青年が。
少し強面に見える青年・・・・それは右目の眼帯のせいだろうか。
そして手には、すられた筈の財布。

「あ~~~~、それ僕の!!」
「お前のものか、子供のくせに随分と大金を持っているんだな。ほらよ!!」

そう言うと、直ぐに僕の手に渡してくれた。

「ありがとう・・・・ございます」
「お前、一人か?母ちゃんは?父ちゃんは?」
「・・・・・・・・・・・」

『僕は家出中で、父上、母上は王宮です』なんて言える筈はない。
返答に困った僕は、だんまりを決めることにした。

「家出じゃねぇだろうな・・・ここいらは結構治安も悪いんだから、ガキの一人歩きは危ねぇんだよ!」

頭を掻きながら、困った感じの青年。
僕は何となく、この人は信じられると確信した。

「あの・・・・・僕の名前は汀 遥慎です・・・・実は、家出だったり」
「汀??」
「えっ?僕の名前、ヘンですか?」

僕は咄嗟に考えた偽名が、マズイのかと冷や汗が出てくる。

「いや・・・・・」

眼帯の青年はいぶかしげに、僕を見ている。
そして、思いついたようにポンッと両手を合わせた。

「ああ、おめえの母ちゃんは汀 夕鈴だろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・お兄さん、誰?」

僕は身構えた。
母さんのことを知っている。
もしかして・・・・刺客???

「おい、何構えてるんだよ!!何もしやしねぇよ。オレは几鍔って言って、おめえの母ちゃんとは昔なじみなんだよ」

僕は安心して、ふぅ~~と息を吐く。

「その紅い瞳は父ちゃん譲りだな。アイツは元気かよ」
「父上ですか?母上ですか?」
「どっちもだよ」
「元気ですよ・・・・しかも仲良し過ぎてこっちが見ていられないくらい」
「どうせ、父ちゃんが、母ちゃんを追いかけてんだろ!それを見てるのが嫌で家出でもして来たのか?」
「ど、ど、ど、どうしてわかるんですか??」

几鍔とかいう青年に見透かされ、僕は顔を真っ赤に染める。

この人なら僕の話を聞いてくれそうだ。
何故かそんな気になって僕の不満をぶちまけることにした。

「じゃあ、聞いてくれますか・・・僕の両親の話」
「おう、坊主がそれで気が済むなら、とことん聞いてやるよ」

まずは路上で聞いてもらうのも何だからと茶館か飯店でもと誘ったが、
几鍔さんは近くだからと自分の家に招待してくれた。
そこは、商家で・・・店先には一体いくつなのかと思うほどの、すっごいオババがいた。
僕を見ると、ニヤニヤしてきて思わず食べられるかも・・・と少しびくついてしまった。

そして通された居間に入ると、几鍔さんはお茶と茶菓子でもてなしてくれた。
僕をいっぱしの客と認めてくれているようだ。

「さぁ、話聞くぞ」
「・・・・・・几鍔さん、ウチの両親の事は知っているんですよね」

再度、確認をする。
知り合いなのかを確認しておかないと、滅多なことも言えない。

「ああ、母ちゃんの実家は章安区にあって、弟は汀 青慎。そして青慎は今、王宮の官吏様だよな。下町きっての期待の星だよ。そして父ちゃんは李翔・・・役職なんかはわかんねぇが、王宮の官吏様でお貴族様だな」
「はい・・・そうです」

大丈夫そうだ。
この人は本当に父上と母上の下町での知り合いだ。
安心しきった僕はツトツト話し始めた。


「・・・・僕の両親はそれは仲がイイです。それは子どもにとって、いいことだろうとは僕だってわかります。仲違いしている両親に育てられるほど、子どもにとって不条理はありませんからね。ただ、それも程度モノです。仲がイイにも程ってもんがあるんです!!!あの二人ときたら、朝から子どもの目の前で口付けはするは、父上は母上に構い過ぎて仕事をしなくて、側近・・・いや、部下にたしなめられる始末。僕はあんな堕落はしたくはありませんね!!」

一気に捲し立てる僕に几鍔さんはお茶を勧めてくれる。
僕は一口飲んで、続ける。

「更に・・・・僕たちはまだ母上が恋しいんです。なのに、もうお前たちには十分母上は貸し出したから、返してもらうことにすると僕たちの前で父上は断言するんです!!!こんな事はあってイイことでしょうか!!」

胸につかえていたものを吐き出せたからか、僕はかなりスッキリしていた。
そして、目の前で聞いてくれていた几鍔さんを見てみると・・・・・顔を真っ赤にしていた。

「あいつら・・・・・・子どもの前で何やってんだ」

小さく呟いている。

―――マズい・・・暴露し過ぎた??

「あの~~~几鍔さん。大丈夫ですか???僕はもうスッキリしたので帰ります」
「はぁ?帰るのか?お前、両親に抗議するんじゃねぇのか??」
「なんかもう、どうでも良くなりました。なんか話していたら、僕がいくら家出しても、父上はきっと変わらないでしょうし、そんな父上を母上はいくら怒っても許してしまうんですよ。だから子どもは賢く生きていくべきだと、何となく悟りました。几鍔さん、有難うございました」

僕は丁寧にお辞儀をして、几家を後にした。
後に残れされた几鍔さんがどう思ったのか・・・僕にはわからない。

でも、後々・・・・筆頭隠密である浩大が興味深い話をしてくれた。
父上と母上が二人して下町へお忍びでお出掛けした際、
几家の現当主・・・つまりは几鍔さんにこっぴどく言われたらしい。
『もっと子どもと過ごす時間を作れ』と。

僕の家出も悪いもんじゃないらしい。
それからは・・・殊更、父上と母上は僕たちにも構う様になったのだから。

僕はいずれこの国の王になる。
その時には・・・どんな正妃がいいのだろうと、今から遠い未来に思いを馳せる。


終。











2013.10.02 SNS初載
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瓔悠

Author:瓔悠

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