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【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り






黎翔はいつになくご満悦であった。
そしてサクサク進む処理に満足していたのは、言うまでもなく李順だった。
ここで一番の被害をこうむっているのは、先程から膝に乗せられ身動き一つ出来ない夕鈴であろう。
そしてその様子を見せつけられている若い独身官吏達もきっと被害者である。

「あの・・・・陛下・・・そろそろ降ろして下さいませ」
「何故だ?」
「どうも落ちつかないのですが・・・・」
「私はこの方がいいのだが・・それに誰も気にすまい」

そんな訳はないでしょ!!!
さっきから官吏の皆さんの視線が気になっているんですが。


「それに、私がここにいては政務のお邪魔でしょうし」
「そんなことはない!!現に書簡の山も確実に減っているが」


李順に助けを乞おうと視線を移してみるも、『耐えて下さい』と無言でプレッシャーを掛けるのみで。

「陛下・・子ども達も気になりますから」

夕鈴は最後の手段で子ども達を引き合いに出してみた。

「子ども達?好きにやっているさ!!たまには放っておいた方がよい」

黎翔は知っていた。
優秀な隠密からの報告で、公主二人はここぞとばかりに町に繰り出している事を。
そして、更に言うならば・・・公子までも町に出掛けたと事も。

「夕鈴・・・・ほら、私の為に、更にこの国の為に」

甘い声で囁かれれば、もう為されるがまま・・・・しかない。
夕鈴は仕方無いとばかり、短く嘆息を吐き出した。



********


「おんやまぁ、久し振りじゃな、嬢ちゃんたち」
「おばば様、お久し振り~」
「ご機嫌如何ですか?おばば様」
「元気じゃよ、ヒャヒャヒャ~~それよりお前さんたち、ウチの几詠の嫁御にならんかの~~」
「またぁ~おばば様は・・・・冗談ばっかり!!相変わらずだね~~」

二人の目の前に立つのは、小柄で元気なおばば様。
実質的な几商店の実力者。

現在は若旦那と呼ばれる几詠の父が当主で有るが、其れは表向き。
この大棚の老舗商店を取り仕切っているのは、このおばば様。

「元気じゃなぁ、嘩音(かのん)は。そう言うところがいいじゃがね。そういや、嬢らのかかさんは元気かの?」
「母さま?元気よ」
「そうか・・・・あの娘っ子が欲しかったのじゃがな~ウチの嫁御に。
あの時、あの御仁が邪魔立てせねばな・・・」

未だにおばば様は夕鈴が几鍔の嫁にならなかった事を残念に思っているらしく、
嘩鈴達が来るたびに愚痴をこぼす。

それを黙って聞くのが嘩鈴達の常であった。

「ほら、嘩音!行くよ・・・ひいばぁ、その話はそのくらいにしなよ」

嘩鈴の手を引っ張って奥に連れていこうとする几詠。
その後ろでゴニョゴニョ言っているおばば様は無視したまま。

「まぁ・・・いいさの。詠には絶対二人のうちのどちらかを貰うんだからね!!」
「そうはいきませんよ、おばば様」

後ろから声がかかり振り返ると、あの時の黎翔が・・・・・・いや、黎翔によく似た面差しの遥翔が立っていた。

「おばば様、二人は几詠にあげるつもりは有りませんよ。僕がシッカリと吟味してからでないと!!」
「あいかわらずじゃの~お前さんは」

二人のニヤリと笑い合う姿は、けっこう不気味なもので・・・影から覗き見している几鍔は怪しきには近寄らずの態度だった。

「なんなら、坊のかかさんでもいいぞ~鍔の後添えに。鍔の嫁御が亡くなってもう何年もなるしの」
「それも遠慮しておきます・・・さらっと危険な事、言わないで下さい(そんなことしたら、この国が滅ぶよ)」
「そうか???結構似合いじゃったぞ!!鍔と坊のかかさんは」
「・・・・・それを、公言しないで下さいよ。こわ~~い御仁が出てきますからね」
「ほんに・・・最近、坊はあん時のととさんに似てきてるのぉ~」

「ばぁさん、それくらいにしておけよ。遥慎も困っているだろ」
「几鍔さん!!!」

遥翔の顔がぱぁ~と明るくなり、傍に駆け寄っていく。
その様子を見て、はぁ~~~~と大袈裟に溜め息を吐き出す。
そしてもう何も言えないなと、おばば様は奥へと引っ込んだ。

「几鍔さん、お久し振りです!最近の商売は如何ですか?」
「相変わらず、子供らしくない口ぶりだな、遥慎は。
「やはり机で抗議を聞くより、実際に町の声を聞いたほうが役に立ちますから・・・」
「???」
「いいえ、此方の話です」

几鍔は遥翔に捕まり、最近の商売の事や下町の治安なんかの話をさせられていた。
そしてその間に三人は裏戸から抜け出し、町に出ていた。

「表からじゃ、恐らく遥慎に捕まるだろうからな」
「にい様、来てたみたいね」

三人連れ立っていると、周りの視線が集まってくる。

「おや、珍しい取り合わせだね。今日は何か買っていくかい?」

馴染みになったお店のおかみさんが、声を掛けてくる。

「じゃ、三個くれよ!!」

几詠が先頭立って、注文する。
こういう所がオトコらしくて、嘩鈴が好きな所だ。

「几詠、優しいね~~大好き!!!」

何気なく、満面の笑みをこぼしながら言う嘩鈴に几詠が、
照れ隠しで乱暴に買ったお菓子を差し出す。

「ほらよっ、食べろよ!!」
「うん!」

ニコニコ顔の嘩鈴を横から優しく見詰める秦鈴。

全く・・・・・周りの人がどうこう言おうが、二人は少しづつ距離が縮んでいるのよ。
お父様や遥翔はどうするのかしらね。

三人は買ったお菓子を頬張りながらフラフラ下町を散策し、下町の外れで別れる。

「じゃあ、几詠またね~~~~今度は私がお菓子作って来るから、楽しみにね~~~」
「おうっ!楽しみにしてるからな!!」

背の後ろでは沈みかけた太陽からの影が大きく伸びる。
下町へと帰って行く几詠を、大きく手を振りながら見送る嘩鈴と秦鈴。

「さぁ、私達も帰りましょう」
「それより、ねぇさま・・・」
「なぁに?」
「几詠って、オトコらしくていいわよね」
「まぁ、いいヒトでは有るわね」
「いつかホントの事言えるかしら?」
「そうね・・・・・それは、嘩鈴仕第よ」

二人は顔を見合わせ、ニッコリ微笑む。

「それよりも、この事は二人の内緒事にしてね、ねぇ様」
「ええ、そうね」

王宮までの道のり。
長くて短い道のり。

それは二人のこれからの道を示している様で。
沈みゆく最後の輝かしい陽の光りが眩く照り付け、素敵なこれからを指し示している様だった。



終。





2013.08.02 初出
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瓔悠

Author:瓔悠

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