【春告草に誘われて】・4(完) (未来家族設定)
2015年03月20日 (金) | 編集 |
【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り







「あ~、お母様だ!!」

素早くタ鈴を見つけ、大きく手を振る嘩鈴。

「嘩鈴・・・こんなところに居たのね。秦鈴と遥翔が探していたのよ」

夕鈴は振り返って、後ろから歩いてくる二人に優しく手招きする。

「あら、姉さま兄さま。遅かったですわね!!!父様と春を堪能してましたわよ」

当の嘩鈴はと言うと、ニコニコ顔で黎翔と手を繋いでノンビリと近付いてくる。
どうやら自分の使命はすっかりと忘れて、本当にタダの散策になっていたらしい。
そんな様子を見て、ただただ嘆息を吐く上の姉兄二人。

「まぁ、嘩鈴のやる事ですから」
「そうですわね、私達の出番を残してくれていたと思うことにしましょ!!」

そこで二人は行動を起こす事とした。
目配せをして静かに夕鈴の後ろに回り込むと、
黎翔に近付く事も出来ずにただ突っ立っている夕鈴の背中を軽く押した。
突然の行動に、予期してない夕鈴の身体が前のめりに倒れそうに為った。

「あっ!!!」

小さく声を出して必死に体勢を立て直そうとしてみるが、
上手く出来ずにそのままよろけて・・・気がつけば、夫の腕の中だった。
そのまま逞しい腕に囚われて、夕鈴は頬を真っ赤に染め上げ一言『有難うございます』とだけ囁いた。
黎翔はそんな夕鈴が愛しいのか自分の腕の中で抱き締めた。

両親の睦ましい様子を確認すると『作戦完了』とでも言う様に、
三人の子ども達は黎翔に目配せしてスッとその場を離れて行く。
その際、嘩鈴は片目を瞑って親指を立て無言で父親にエールを贈った。

そこで黎翔も子ども達の作戦が何であったのかを理解して、
三人に狼の紅い瞳を光らせ自信有り気な表情を見せた。

離れて行く三人が完全に視界から見えなくなって、
ようやく夕鈴を自身の腕の中から解放して囁きかける。

「全く、君のそう言うところは変らないな」

フッと蕩けそうな頬笑みで黎翔は夕鈴を見詰める。
その眼差しを避ける様に夕鈴はそっぽを向いた。
そして辺りを見回して見ると、何時のまにやら子ども達の姿が影も形もない。

笑い声が風に乗って聞こえてくるから、そこまで遠くに行ったのではないようだが。
どうやら、二人っきりにされたらしいことくらいは分かる。
でも夕鈴はそのまま俯き、夫である黎翔の顔を見ようとはしなかった。
それを不満に感じた黎翔がすかさず目の前の夕鈴の顎を形の良い人差し指でクイッと上げ、目線を合わせようとする。

「子どもたちなら心配はないよ、浩大も張り付いているだろうから。
私としては、もっと君の顔を見たいのだが・・・そろそろこちらを向いてくれないか?」
「・・・・・・・」
「一体、昨日から何を拗ねているんだ」
「・・・・・・・」
「言ってくれないと分からないよ」
「・・・・・・・・な陛下は、嫌いです」
「うん???前が聞こえないんだけど???」
「浮気な陛下はだいっきらいです!!!!」

夕鈴は辺りでさえずっていた鳥たちが驚き、羽音を立て飛び去って行くほどの大声で叫んでいた。
それには何事にも動じない黎翔と言えど、目をパチクリ開いて驚きの表情だった。

「浮気って・・・・・なんのことだ?」
「いいんです!!!私は何の取り絵も後ろ盾もない、貴方の役には立てない妃なんですから!!」
「だから、心あたりが無いのだが」

頭を捻り、何のことだろうと考える黎翔に苛立ちを増したのか、
夕鈴はクルリと廻れ右して立ち去ろうとする。
ここで逃げられたらヤバい事になると、野性的直感で慌てて夕鈴の腕を掴んだ。


「僕は、君以外、誰も何も要らない!!」

黎翔はそう反射的に叫ぶと、荒々しく抱きしめ柔らかい梅色した紅い唇を奪った。

「あぁ~~」

艶っぽい声音を口元に乗せながらその口付けを受け入れた夕鈴は、
身体の強張りが解けそのまま砕け落ちそうになる。
そして全て・・・・そう先程感じていた怒りも遥か彼方へと追いやって、
口付けで以て己を蹂躙(じゅうりん)している夫を茶色の潤んだ瞳で見詰めていた。

「れい・・・しょう様」
「何?」
「私だけですよね」
「勿論だよ。夕鈴以外誰がいると言うのだ?」
「・・・・・・」

細い腕を黎翔の首に回し、そのまま甘える様な瞳で囁く。

「私は何も持ってはいません。でも、黎翔さまを愛する気持だけは誰にも負けないと自負しています。だから・・・・」
「生涯、君だけだよ。だから安心して」

黎翔が耳元で囁いた言葉は、夕鈴が一番欲しかったモノだった。
夕鈴は安心した表情と共に、気恥しさで頬を周りの梅の木に負けないくらい紅く染め上げ、
ニッコリと微笑んだ。



「夕鈴・・・折角、梅の花が見事に咲き誇っているのだから、このまま散策しようよ。
どうせ子ども達もこちらを窺っていたのだろうから、安心させてやらないとな」
「・・・はい」

夕鈴は差し出された黎翔の手を瞳で了承して、そっと自身の掌を乗せる。
二人は周囲の全てのモノに見せつけるように、仲睦ましく歩き出した。


梅の別名は・・・春告草。

二人に訪れし暗雲をその馥郁(ふくいく)たる薫りで以て吹き飛ばしてくれた。
そして優しく清々しい春を呼び込んでくれている様で、春の訪れを全身で感じられる。

さえずる鳥の声に。
そよぐ風に。
流れいく雲に。

そして花の精如き夕鈴の花簪から薫る匂いに教えられているのだから。





終。



2013.04.16 初出
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