つらつらと・・・1130
2015年11月30日 (月) | 編集 |
おはようございます!!

はぁ~~また今日から1週間が始まります。
朝も寒くなり、布団から出るのがツラい・・・です。


さて、この週末は結構忙しかったです。

土曜日は、お昼からショッピング!
イオ〇ショッピングモールへ。
可愛い姪の誕生日プレゼントを、某大手おもちゃ屋さんへ!
(トイザら〇です~~)
クリスマスも1か月を切ったことで、人手の凄いこと!!!!
店の中は人でごった返してました。
でもリクエストはキチンともらっていたので、難なく手に入れられましたが・・・・。

ついでに、息子クンはクリスマスプレゼントを物色。
ドミノをつくるキットが欲しい~~と私に言ってきましたが
『ふぅ~~~ん、そうなん?』と一応そっけない振りしました。
もう小6だからサンタさんの正体くらい分かっていると思いますが、
律儀に『ママ、サンタさんに頼んで!!』と言ってきました。
まだまだ可愛いもんです。

そしてそのおもちゃ屋の前で、ある店がイベントをしておりまして娘が参加しました。
その場でヘアアレンジしてくれるという・・・・。
お店の人は手慣れたもんで、ちゃちゃっとしてくれました。
そして、写真撮影どうぞ~~~と言われたんで、早速旦那と私で撮影会。

DSC_0967.jpg
こんな感じで、お店の売っている小道具をふんだんに使ってしてくれるので、
娘は超ご機嫌!!!で。

DSC_1006.jpg
気がつけば、娘の言いなりに買わされました。

DSC_0974.jpg DSC_0975.jpg
早速、次の日に私がさせられました。
でも不器用な私でも、こんなアレンジが出来るので、まぁ損はしてないかな~と。
今朝もさせられましたが・・・・・。
いつまでさせられることやら。
でもこうしておしゃれに目覚めて、段々お姉さんらしくなってますが
それでも寝るときにはぬいぐるみを抱いて寝るところはまだまだ幼いもんです。(苦笑)
DSC_0939.jpg

そして、ショッピングの最後は、旦那と子供たちはゲームセンターに行ってもらい
リクエストのあったクリスマスプレゼントを私一人で購入。
息子は、ドミノキット・・・。
娘はとうふをモチーフにしたぬいぐるみ・・・。
それを袋の中でうまく隠して、子供たちと合流。
どれだけの荷物なんよ!!!って思いながらも、上手く誤魔化して子供にはバレませんでした。
まぁ、旦那のランニングウェア購入の紙袋やら、娘の靴購入の紙袋なども有りましたから・・。
そして家に帰ると、速攻で押し入れに隠しました。
はぁ~~早くサンタさんを解放されたい・・・・・・。


そして昨日はまたまたスペースワールドへ。
スケートをしてきました。
子供たちは2度目。
前回は手すりを中々離せなくて、滑るのもおぼつかない感じでしたが
今回は結構うまく滑れるようになって、正直びっくりです。

DSC_1000.jpg
中央付近の濃いピンクのジャンバーでスッ転んでいるのが、
娘です。
DSC_0993.jpg  DSC_0994.jpg

子供の成長って凄い!!!
子供の可能性って凄い!!!




では、
そろそろお仕事行く準備をせねば!!!


話は変わりますが、
先日書き始めたシリアス話・・・・・・私的には書かないような話ですので、
正直UPするのもドキドキなんです。
余り反響が良くなかったら、下げますね。
こんな作品でも大丈夫!!という方は、お手数ですがポチリと拍手してくださると、
スッゴク嬉しいです。
それが私の書く原動力になりますから・・・・・・。



それでは、
いってきま~~~す。

ゲストの皆様も
今日一日頑張りましょう~~~ね。


瓔悠。







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【兎と僕の攻防戦・9】
2015年11月28日 (土) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   













黎翔はイライラする気持ちを持て余していた。
部屋にいる夕鈴を警護している筈の浩大の気配は消え、
夕鈴がここから居なくなった事が容易に分かるからである。
それでもそこから離れることはせず、佇んだまま思いを馳せる。

夕鈴・・・・自室に閉じ籠ったと思ったら、今度は一体何処へ行ったんだ。
それほどまでに僕の事が嫌いなのだろうか?
それとも先程の事を怒っているんだろうか?
こんなに僕の心を掻き乱すのはたった一人だけ。
僕の妃である君だけだ。
しかし、このままここに居ても夕鈴は戻らないだろう。
ならば、自分で探すまでの事。
探し出して、そう・・・・赦してくれるまで君に赦しを請い続けるだけ。

ションボリ小犬は瞬時に俊敏な狼へと変貌を遂げる。
黎翔は踵を返して、兎捜索へと華麗に駈け出して行った。


********


夕鈴は回廊から庭園に出て来たものの、
逃げるべき場所を決めかねてその場で足踏みしていた。

後宮内は何処に陛下がぶら付いているか分からないし。
後宮立ち入り区域は酷い目に遭ったから避けたいし。
王宮はあちらこちら官吏が歩いていて、いつ陛下に私の居場所を進言するか分からないし。
それよりも方淵に逢ってイヤミの応酬を受けるのは、もっと御免だし。

腕組みしながら真剣に考えてみるものの、適当な場所は思い浮かばない。
更に『ウ~~ン』と唸りながら考える。

一体何処へ逃げればいいのかしら??
頑張らないと青慎の教科書代が手に入らない。
でも、適当な場所が思い浮ばない。
やっぱり庭園や四阿を転々とした方がいいかしらね、今日は幸い天気もいい事だし。

「よしっっ!!では、行動開始!!!」

夕鈴は気合を入れようと天高く拳を突き上げ、テクテク歩き出した。

そよぐ風は頬を微かに優しく撫でていき、
胸一杯に吸い込む空気は木々の葉から香る青々とした香りで満たされていく。
次第に清涼感が身体を支配して行き、いつの間にか夕鈴は鼻歌を唄っていた。
キレイな歌声は風に乗って運ばれ、空気に溶け込んで周りをパステル色に染める。

しばし歩くと、葉の生い茂る楠の大木の下まで辿り着いた。
夕鈴はそのまま木の根元に腰かけると、徐に天を仰ぎ見てる。
形を変えながらゆったりと流れていく雲をしばし眺めていた。

「ホントにいい天気・・・・このままここに居てまどろんでいるのもいいかもね」

クスッと笑うと、足を伸ばして大きく伸びをした。
次第に心が落ち着いていくが、先程の事が鮮明に頭に浮かんでくる。

部屋に閉じ籠って、更に家具まで移動させたのはあんまりにも大人げ無かったかしらね。
でもどうしていいのか分からなかったから、ああするしかなかった。
このままではさすがにマズイってことくらい理解できる。
だって陛下に一生会わないってわけじゃないんだから・・・・。

そんな事をボンヤリ考えていると、背後でカサッと人の気配と草を踏みしめる音がした。

「誰っ!!」

夕鈴は身軽にスタッと立ち上げると、声を荒げた。

刺客??じゃないわよね・・・。
刺客だったら足音なんか一切立てずに、もう攻撃してきている筈だものね!!

ドキドキ・・・・・・・・・高鳴る胸の鼓動を身体で感じながら、恐る恐る振り返ってみた。
そこに立っていたのは、夕鈴の問い質す声に驚いている氾 水月だった。

「お妃様がこんなところにいらっしゃるとは、思いませんもので失礼致しました」
「いえ、私の方こそ大きな声でビックリなさったでしょうね、ごめんなさい」

お互い軽く礼をして、ホンワリと微笑んだ。
辺りはフワフワキラキラと、穏やかな気配で満たされる。

「そう言えば、陛下がお妃様をお探しの様ですが・・・・どうかなさいましたか?」

特別手当目的で、陛下から逃げているなんて口が裂けても言えないわ!!

夕鈴は瞬時に言い訳を考えて、曖昧な笑みを浮かべる。
これもお妃教育の賜物である。

「ええ、それは陛下と競い合っていますのよ・・・どれほど早く私を見つけられるのか?
それで隠れていましたの。ところで水月さんは如何してこちらに?」

「いえ、方淵殿から聞きたのですが・・・陛下がどうも不機嫌なご様子で、王宮内を歩かれているとか。
それで、ではないのですが(陛下の怒気の対象にはなりたくないもので・・・とは言えませんが)私も私邸の庭を散策してみようかと思いまして、辞してきたのですよ」
「まぁ・・・そうでしたの。
只、水月さんまだお帰りには早いお時間では?」
「そうですね」

キラキラオーラを漂わせながら、ニッコリと微笑み立ち去ろうとする水月の衣をシッカリと掴んで立ち止らせる。

「水月さん・・・私、前にも申し上げたかと思いますが『労働は尊いもの』だと今でも思っております。
ですから、まだお帰りにはならないで下さいね」
「そうでしたね・・・・しかし池の鯉たちは私からしか餌を食べないらしく、餌やりもしたいと思いまして」

やはり水月さんは一筋縄ではいかない人だわ。
でも、ここでこのまま帰す訳にはいかないのよね。

「水月さん・・・事情は解りますが、やはりお仕事も大切だと思いますが」
「お妃様のお考えは正しいと思い・・・」
「あっ、こんなとことに居たのか、氾水月!!
大体貴様はいつでも直ぐに帰ろうとして!!
まだ書簡の山は残っているのだぞ」

頭から湯気を立ち昇らせ怒ってやって来たのは、柳 方淵。
なんのかんの言っても面倒見の良い彼は、
水月が無断で帰宅しようとするのをいつもキッチリと阻止しているのである。

「おや、方淵殿。君が如何してここに?」
「いい加減にしろ!!貴様を探しに来てやったんだ」
「そうですか・・・・しかし、私は体調不良で・・・・」
「何処がだ!!さぁ戻るぞ!!」

方淵は水月の腕を掴んで引っ張って行こうとする。
その二人のやり取りをポカンと見ていた夕鈴に気が付いた方淵は、苦虫を噛み潰したような視線を送る。

「貴方もここで何をしているのか?
後宮に引き籠っておれば、陛下がお探しするなどととんでもない事に為らずに済まれたものを。
陛下に此方に貴方が居ると、報告しておかねばな。
ほら、行くぞ。」
「では、お妃さまごきげんよう・・・・・・」

溜息を付きながら戻って行く水月を眺めながら、
夕鈴は次の行き先を考えていた。

方淵殿は優秀だから、直ぐに陛下を見つけてここに私が居る事を教えてしまうわね。
さて、今度は何処に移動しようかしら?
それにしても・・・・陛下が不機嫌だったって??
何で???
やっぱり私が閉じ籠ったりしたからなの?
だったら、後で謝っておかないと。
でも、私がそんな事した理由は陛下に有るんだし。
あっ、何処に行くか考えているんだった!
そうだわ!!老師も私が迷っていた事は知っているだろうから、謝りに行っておこう!!

「では、いざ後宮管理室の老師のもとへ!!」

夕鈴は、両手を振りながら軽快にリズムよく歩き出した。

まだ、狼と兎の攻防は続く。



続。














【花恋ひ・1】
2015年11月28日 (土) | 編集 |
【設定】

夫婦設定 

【注意事項】

ドシリアス、及び死ネタ有ります。
私が書く中では、ホントに規格外のモノになりますので
少しでも受け入れられないとお思いのゲスト様は
ご無理をなさらぬよう、お願い申し上げます。
但し、私が書くものですからね・・・・・・・とこれだけは申し上げておきます。

こちらの話は、ある方との会話の中で生み出されたお話です。
スッゴク盛り上がって・・・・・その方はすでにお話を書かれたのですが
私のお話も読みたい!とご希望がありましたので、
ここにお届けします。


ゲストの皆様、
覚悟は良いですか?
ホントに読んで後悔しませんね?!

オールOKのゲスト様のみ
この先へお進みくださいませ。


瓔悠。








これ以上の哀しみはないと思った。
これ以上の痛みは感じないと思った。

それくらいの衝撃だった。
君を失うことは。
君の笑顔を永遠に見れなくなることは。

「夕鈴!!!!」
「お妃ちゃん!」
「お願いだから、目を開けてくれっっ!!」
「陛下・・・・・もう、そのくらいに」

李順は黎翔の腕から夕鈴を引き離そうとするが、それは叶わなかった。
くったりと息をすることも無く心臓の鼓動もその動きを止めた夕鈴を、
黎翔は誰にも渡すまいときつく抱き締める。
身動き一つせず。
どれくらい経ったのか?・・・・それすら分からない程に。
その空間だけ、刻を止める。


***********


それは、ある昼下がりの事だった。
それまではホントに普通の、いつも通りだった。
昼餉後の休憩を、風の吹き抜ける四阿で夫婦仲睦ましく過ごしていたのだった。

「陛下、そろそろ戻りませんと。
李順さんが連れ戻しに来ますよ」
「そんなのは、放っておけばいい。
折角、夕鈴と過ごしているのに・・・・・・誰にも邪魔はさせない」

黎翔は、夕鈴から急かされようと柔らかい寵妃の膝枕から起き上がろうとはしない。
気持ち良くて、政務なぞどうでもよくなる。
それに、こうして夕鈴と共に過ごす時間なんて一日の内にどれくらい取れるのか正直分からないから、その時間は大切にしたいのである。
しかし、当の妃はそんなに甘くはない。
自分の膝から丁寧に黎翔の頭をずらして立ち上がり、腕を組むと仁王立ちで黎翔を見詰める。

「陛下!そんな我儘が通ると思っているのですか?」
「勿論!!だって僕は王なのだから」
「そりゃ、そうですけど・・・・・でも、王であるなら、ご自分の責務は果たさなければなりません。
ほらっ、陛下でないと解決しない問題もあるのですから」
「ふぅ、夕鈴には敵わないな。
今宵は早く戻るから、君も笑顔で迎えておくれ」
「・・・・・・・・はい、お待ちしております故、お早くお戻りくださいね」

薄桃色に染める寵妃の愛らしさに、黎翔の口元は自然に緩む。

そんな幸せの構図のような、まどろみの刻だった。
それが突然崩れ去るとは。
黎翔は想像だにしなかった。

「陛下っっ!!!早く、お妃ちゃんとここから離れてっっ!!!」

浩大の緊迫する声に、黎翔は腰にささった剣の柄を握る。

「賊か?」
「そう!!!!」

瞬時に、狼のオーラが立ち昇る。
辺りが緊迫感で包まれる。

「夕鈴!私の傍から離れないように」
「はい!」

その刹那、どこからともなく短剣の雨が降り注ぐ。
それを黎翔と浩大は、自身の剣で次々となぎ落としていく。

「おいっ!賊は何者か?」
「どうも、地方の豪族の手下らしい」
「ほぅ、私の退位を望むのか?」
「退位だけじゃ、済まないみたいだけどね」

剣を振るいながら、浩大は黎翔に端的に事態を伝える。
それまではまだ余裕があった。

しかし、その短剣の雨は降り止むことなく、
更に激化していった。
どうやら、辺りに散らばっていた賊が集結し人数が増えたらしい。

「これって、マジでヤバいよ。陛下はお妃ちゃんを安全な所に避難させた方がいいよ」
「だな!」

お互いが目配せして、浩大と呼吸を合わせる。
その場から逃げ去るにもかなり骨が折れるようで、
更に夕鈴も一緒ということで黎翔が抜け出るその瞬間を計っていた。

でも、抜け出す隙が中々出来ずに足止めを食らっていたのが、
不幸の始まりだった。

「夕鈴・・・・・大丈夫か?」
「はい、陛下の傍にいるから安心です」

夕鈴は目の前で自分を庇う夫へ、笑みを見せる。
これくらいは大丈夫!と自分に言い聞かせながら。


そして、その刻が訪れる。



続。










【アリスの口づけ・7】 未知なる体験
2015年11月27日 (金) | 編集 |
【設定】 

恋人設定 ・ 現パロ設定

【注意事項】

この作品は、某SNSのコミュニティにて開催されたハロウィンパーティに合わせて
『花の四阿』管理人・さくらぱん様とコラボした作品を私なりに加筆したものです。

【設定】に表示しております通り、現代パロディの作品となっておりますので
ご注意の上で閲覧くださいませ。






バイトの内容がガラリと変わってからというもの、それまで週3くらいで良かった出勤も毎日のように本社ビルへ足を運んでいた。

それは何故に?
一重に講義を受ける・・・・それだけの為に。

社長の偽婚約者なんてご大層なバイトを引きうけた私は、
それらしい振舞いを叩き込まれていたのだった。
更には、あちこちで質問攻めになるであろうことを想定して、
その受け答えを丸暗記させられ実際に実技特訓まで受けさせられた。

その講義の合間には、全身のサイズをしっかりと測られて試着三昧。
それはすべて、それらしい恰好をさせる為の服選び。
そして自分に似合うものを何点か貸与された。
あくまで貸与だけど・・・・・。

しかし普段着から、パーティドレスまで。
どれだけ金掛けるのよ、たかが偽婚約者の為に!!と叫びたくなるくらいのモノだった。
それこそ普通の高校生が着ることなんてないであろうブランドもの服で、
正直言って服に縛られているような感覚まで味わう羽目になっていた。

しかも偽婚約者の相手である肝心の社長さんとは会うことも無く、
これで本当にバイト代もらってもいいのかしら?と申し訳無さまで感じる始末。

「はぁ~~~なんで私、こんなバイトを請け負ったのかしら?
肝心の社長さんとは会えないし・・・もしかして、実は偽婚約者なんて必要なくなった?」

私は講義の行われる広い会議室で誰もいないことをいいことに、一人呟いた。

「そんなに社長に会いたいのか?」

私の言葉に間髪入れずに、後ろから掛けられた声。
驚きのあまり、ビクッと心臓の鼓動が跳ねた。

もしかして私の独り言、聞かれた?
誰?ここの社員??
偽婚約者のことがバレた?
これってかなりマズい状況よね!

私は怖くて振り返ることは出来ず、そのままだんまりを決めこんだ。
でもいつまでもこのままというわけにもいかず・・・・・ビクビクしながら振り返ることにした。

そこに立っていたのは、先日フロアで会ったイケメン青年だった。
そう・・・・・・この大企業のトップ、珀社長その人だった。

「あっ、その、あの、いや、そうじゃなくて!
初めまして、私、汀夕鈴と申します」
「知っている」
「ですよね・・・・・」
「社長さん!一つ訊いてもいい「社長さん、ではなくて黎翔さん!」」
「はい?」
「だから、黎翔さん!と呼ぶ!!」

いきなりそんな事言われても、そんな呼び方出来るような器用な私じゃない。
男性と付き合ったこともないし、名前で呼ぶような親しい男性なんていない。
いや、一人だけいたか・・・・・・幼馴染の几鍔が。
でもあれは男性なんてシロモノではないけど。
ただの嫌味でイヤな奴で。
あんな奴は男性ではない!断じて。

私は返答できずに、黙り込む。
実際は、恥ずかしくて・・・・それを打ち消そうと色々別の事を考えていた。

しかし、そのままといいうわけにはいかないはず。
だって目の前の男性は私を凝視しているし。
スッゴク威圧感を感じる。
私はそれに圧倒され、小さく小さく囁いた。
それも、林檎のように真っ赤っかに頬を染めて。

「・・・・・・・・・・・・・・・・黎翔さん」


「聞こえないのだが」
「・・・・・・・いじわるですね!!」

私は頬を染めたまま、口を尖らせ抗議する。

「まぁ、私は『狼陛下』何ぞいう通り名があるから、いじわるなのかも知れないな」

聞いたことがある。
あれは確か・・・フロア清掃していて聞こえてきた会話の中にしばしば出てきた『狼陛下』って単語。
それを聞いて、『陛下』ってどんだけご大層な人なのかしら?
どんな人がそう呼ばれてるのかな?って興味を覚えたことまで、ふと思い出した。

その人が今、私の目の前にいる。
そう呼ばれるに相応しい立ち姿で・・・・・・。
珍しい深紅の瞳が一層力強く輝いている。


私は知らず知らずのうちに、見惚れていた。
視線が外せなくなるほどに。


「さてと、君は私の婚約者になってくれるんだったな。
まぁ、よろしく頼む」

大人の余裕の笑みを浮かべると、私の手を取った。
そのまま自分の口元に持っていき、手の甲にそっと口づけた。


「エっ?
はい?
今、何を、しました?」

私は自分の身に起きたことを一瞬理解できずに、酸素切れの金魚のように口をパクパクさせていた。




続。




【兎と僕の攻防戦・8】
2015年11月27日 (金) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   













浩大に連れて来られたのは、執務室でも李順の自室でもなかった。
しかし執務室と同じ並びの回廊に位置する執務机がキチンと並んである会議室の様な部屋だった。

「李順さん、頼まれたお届けモノだよ」

浩大は相変わらずの軽いノリで、夕鈴を李順に差し出した。
夕鈴はポカンと部屋の中を眺め見て、自分の置かれた状況を把握しようとする。

「夕鈴殿、待っていましたよ。浩大、御苦労様でしたね。
あっ、ついでに頼まれてくれませんか?陛下に執務室に至急お戻りになるようにと」
「え~~~イヤだよっっ!!あんな状態の陛下にそんな事言ったら、やつあたりされるに決まってんじゃん。
そんなのは、オレはゴメンだね!それにさ、もうそろそろ不機嫌モードに切り替わっていると思うし」

命令拒否とも取れる事をサラリと告げると、ヒラリと窓枠から身軽に傍の木に飛び移る。
そのまま器用に枝伝いに隣の木にそしてまた隣に木に・・・気が付くと影も形も見えなくなっていた。

その様子を忌々しく眺めていた李順だが、もう居なくなってしまったものは仕方ないと身体を反転させる。
今度は、夕鈴の目の前に姿勢正しくキチンと立った。


「さてと、夕鈴殿!特別手当の件ですが・・・その前に聞くところによると、貴女、迷子になったらしいですね。
私は迷子になってまで、陛下から逃げて下さいと言いましたか?
全くあなたって人はこんなに騒ぎを大きくしてしまっては、収拾に手間取ってしまうではありませんか」

グチグチブチブチ・・・・とお小言を長々と続ける李順をシッカリと見据え、夕鈴は神妙な面持ちで聞く。
というのも、先程浩大から聞かされた『減給』の二文字が夕鈴の頭の中を縦横無尽に駆け回っていたからである。

「夕鈴殿、聞いていますか?」
「あっ、ハイ。ちゃんと聞いています」

李順は一通り言い終えると、スッキリとした表情を夕鈴に向ける。
そして、そのまま話し続けた。

「先程の特別手当の話の続きですが、貴女が迷子になった為に当初予定していた時間の半分しか調査は出来ませんでした。
陛下が迷子探索に集中してしまったので、行動解析は不十分でデータとしてはイマイチなんですよ。
ですので、今回は途中までとして半分にさせていただきますよ」

李順の厳しい采配に、夕鈴は唖然としてうなだれる。

まさか、こんなことになるなんて・・・・。
確かに迷子になった私に原因があることくらい理解できるけど。
それでも、あんまりよ!!

「えぇ~~~そんなぁ~~~~」
「黙らっしゃい!あなたが迷子になるからでしょう・・・これを自業自得というんですよ」

夕鈴が頼まれた特別任務は、陛下から見つからないように逃げること。
それによっていつも夕鈴を探しに行ってしまい何処へ行くか解らない陛下の行動パターンを詳細に調べ、今後の陛下連れ戻しに大いに役立たせようという訳で。
これも全ては政務を滞らせない為であり、側近たる李順は大いに躍起になっていた。

李順は、守銭奴の様な眼差しで夕鈴を見ていた。
その眼鏡の奥の光る瞳に、夕鈴は身が竦んだ。

如何しよう。
手当が半分じゃ教科書代にするには少し足りないわよ。
ゴメンね、青慎・・・・・姉さん頑張ったんだけど、全部新しいモノを揃えてあげたかったのにダメみたい。
もう陛下には口付けされるし、特別手当は半分にされるし・・・・もう何なのよ!!これじゃ、私が損ばかりじゃないの~~~。

哀しさとやるせなさと怒りの感情が入り乱れ、いつしか薄茶の瞳からは一滴の光る涙が頬を伝っていた。
しかしそのことに夕鈴は気が付いていなかった。

「夕鈴殿、何故、泣いているんです?」
「えっ、泣いて??」

夕鈴は李順に指摘され、頬を掌で触ってみて初めて自分が泣いていたことを認識した。


「うわぁ~~李順さんがお妃ちゃんを泣かしてるぅ~~!!
ヤバいよ~オレ、知らないよ~~。
陛下なんだけど、お妃ちゃんの部屋の前から移動したみたいだから何時こっちにやって来るか分かんないんだけど」

さっき出て行った窓から今度は顔をヒョイと覗かせて、浩大が呑気に李順に恐ろしい事をサラリと言う。
その第三者の声に驚いて、夕鈴の瞳から零れていた雫も一瞬にして引っ込んでしまう。

「泣かしたりしていませんよ、人聞きの悪い。
それより、また陛下が夕鈴殿を探して歩き回っていると?
これは正に好都合っ!」
「多分、そうだと思うよ~~。
それにしても、あの人の耳聡いところは流石というか凄いというか・・・・。
お妃ちゃんが部屋から居なくなったのを察して直ぐに行動しているんだから。
全く何かお妃ちゃんセンサーでも持ってんのかよ!!
でもあの人だったら有り得るかもね~~おもしれ~~」

ケラケラ笑ってこの事態を愉しんでいる風の浩大は、
更に面白い事態にしたいと心の内で願い更に李順をけしかける。

「李順さん、お妃ちゃん目が真っ赤だよね~。
今、陛下に踏みこまれてマズイのはここに二人っきりでいたアンタだよ~。
お妃ちゃんを見た陛下はどうなるか???オレ、考えたくもねぇ~~~」
「そうですね・・・・私も陛下の怒気の対象にはなりたくはありませんね」

なんで、今陛下が来たら困るの??
そして私が泣いたことで、李順さんがどうして陛下から怒られるのかしら??

男性二人の意味不明な会話に付いていけない夕鈴は、しきりに首をひねって考えてみるもののよく理解出来なかった。
電光石火のごとく素早く結論を出した李順は、ニッコリと企み顔を夕鈴に見せ提案する。

「夕鈴殿・・・陛下がまた貴女を探して散策をしていらっしゃる様です。
先程の特別手当が半分になったと嘆いておられた様ですが、ここでまた陛下から見事に逃げきってもう半分を手にしませんか?」

ホントに悪徳商人の様な面構えでニヤリと微笑む。
夕鈴の頭の中はもう半分の特別手当を手に持っている自分自身の姿が映し出されており、
二つ返事で李順の申し出を引き受けた。

「はい!私、頑張りますっっ!!」
「では、夕鈴殿・・・今度は迷子にならないようにして下さいよ。
あと浩大、先程の続きをお願いしますよ!
さぁ、善は急げと言いますし、さっさと行って下さい」

夕鈴は『特別手当!!特別手当!!』と呟きながら軽やかな足取りで回廊を横切り、庭園へと身を躍らせていた。
部屋に残った李順と浩大は二人して、夕鈴の余りの行動の速さと立ち直りの速さに呆気に取られ苦笑いを浮かべていた。

「流石は庶民ですね・・・・ホントに逞しくて頼もしい限りですよ。
では私は仕事に戻りますので、後は浩大!報告お願いしますね」
「へいへい、まずは問題の陛下を探さないとな」

浩大はそのまま窓から姿を消し、後は風の音のみとなった。

相変わらず、早いことですね浩大は。
それにしても、ここに陛下に踏み込まれなくて良かったですよ。
寿命が5年は縮みました・・・・・。

溜息を吐き出しながら、書簡の山制覇に取り掛かった李順であった。



続。













お話の裏話。
2015年11月27日 (金) | 編集 |
おはようございます!!

昨日、終了したSSに拍手及びコメント下さり
有り難うございます!!

此処までの反響があるとは思ってもみませんでした。
正直、あのSSは始めに考えていた展開とは全く違う方向へと進みましたし。
で、結果・・・私が普段書かないような内容に仕上がりましたから。

ここで、裏話として
あのSSを書くきっかけになった話でも・・・・。

あれは、今年の夏休みに
今話題の(?)姫路城へと出かけたんです!
家族で。
旦那の実家に帰省した時に思い切って姫路まで足をのばし、
広島から~~4時間かけて。
8月の上旬!と言うことで、マジで暑かった!!
しかも、夏休みだということで人が多いこと!多いこと!!
暑くて蒸し風呂状態の中、行列に並んでトロトロトロトロと進むのみ。
子供たちと旦那だけだったら、どれだけ退屈して嫌になったことか・・・・。
それが、姫路に在住の白友さんと待ち合せてご一緒したのがホントに幸い。
そちらの娘さんも来てくれて、子供たちはスッゴク懐いて、面倒をみてくれましたから、
私はその友人とおしゃべり三昧でした。

で、その途中で、姫路城内に気になる小部屋があったんです。
それもひっそりと~~
そこで妄想爆発!!!!
まぁ、それはギャグテイストだったんですよ~~
で、帰ってからSSでも書こうと。
なのに、書き始めると・・・・・・何故かしっくりとこなくて。
何度も書き直し。
更には、段々真逆なモノに。
いやぁ~~~~~あそこまでガラリと変わるとは。
あの時話をしていた白友さんもビックリだったかと・・・・。

ははは~~~~
こんなもんです。
私が書くので。

凄く、好奇心旺盛で。
それでいて飽きっぽい。


先日小学校の時の友人に1年ぶりにあってランチしたときに、
昔の話になって・・・・・私の性格を端的に上記のように言ってました。
う~~~ん、今も全く変わってなくて。
苦笑もんです。


で、SSの最初の展開は・・・・・

夕鈴があの小部屋を見つけて、
こっそり覗くと・・・・そこには浩大の姿が。
しかもあの帽子を取った姿で。
『お妃ちゃん、見たね~
これはマズいよ。
隠密の秘密を知られたからには・・・・』
と。
あれやこれや、無理難題を吹っ掛けられ。
夕鈴が奮闘して、
最後には陛下に助けられる!
みたいな予定でした。

それがどうしたら、ああなるのやら。
ハハハハハ~~と乾いた笑いが出てきます。

まぁ、でもシリアスでも
コメントいただけたり、拍手いただけたりと。
私的には有難い!って感じですが・・・・・。



次は、
ある方とネタ出しした話を書くつもりです。
これも長くなりそうで~~~
更には
私が書くことのない内容!!!!!

衝撃的です!!!!

またお付き合いいただけましら
嬉しいです。



その前に!
今日はお仕事。
さぁ~~て、行く用意をしますか!!!!



では、いってきま~~~す。
ゲスト様も素敵な一日でありますように~~~



瓔悠。








【決して見てはならない・6】 完
2015年11月26日 (木) | 編集 |
【設定】

未来夫婦・新婚くらい

【注意事項】

この話・・・どっぷりシリアスです。
いつものホワホワ感のモノしか受け付けられない!と仰るゲスト様は
ここでバックしてくださいませね。

あと、すこ~~し、ある方の過去の捏造有ります!




「へ、へーか・・・」

そこで浩大は言葉を止めた。
狼の纏うオーラがすさまじくて。

『お前は、もう黙ってろ!!』

声にならない命を、口元に乗せる。

『へいへい!』

浩大も黎翔に習い、声に出さずに返事をすると、静かに音も立てずに立ち去った。
黎翔の命は絶対であるから・・・それを承知の上でそそくさと逃げる。
そして夕鈴のことは、すべて黎翔に任せておく方がいいと判断して。

更には老師も場の雰囲気を読んで、すでに立ち去っていた。

夕鈴と黎翔・・・・二人残された墓所は静かだった。
ただそよそよと風が流れていくだけ。
青い空に漂う雲が作る日陰は、ゆっくりと形を変えて移り行く。

ここは俗世から切り離されたような空間だった。
ある意味、王宮と後宮を繋ぐ回廊隅にある小部屋の奥にあるのだから・・・・そういう雰囲気であってもおかしくないが。

黎翔は、静々と泣き続ける夕鈴に触れることすら躊躇した。
こうなると分かっていたから、聞かれた時に素知らぬ振りしてはぐらかした。
浩大と同じく。

夕鈴はこんなこと知らなくて良かったんだ。
ただ自分の隣で、微笑んでいてくれさえすればいい。
どうしてこんなことで夕鈴が心を痛めなければならないのか。

黎翔は真っ直ぐに前を見据えた。
そこに居並ぶ数々の墓碑。
それは、かつてのただの道具が眠っているだけ・・・だとは思えなかった。
以前の自分なら、そう淡々と思えたはず。
だけど、それは自分の前に立って肩を震わせて泣く心優しき妃が教えてくれた。
全てをあるがままに受け入れ、あらゆるものを愛しむ心で、そして何事に対しても逃げることのない強き意志と行動で以って。

黎翔はその小さく頼りなげな背中を包む込むように、ゆっくりと抱き締めた。
そして、耳元に唇を近づけ優しく語り掛ける。

「夕鈴・・・・・・・ありがとう。
君が流すその尊い涙は、そこに眠る者たちにちゃんと届いているから」
「・・・・・・・・へ・・・・いか」
「きっと、喜んでいるよ。王の妃が自分たちを思って涙してくれていることに。
今まで、そんな妃は後宮にはいなかったから」
「こんな・・・・誰にも知られない所に・・・・・・眠らないといけないなんて・・・・。
浩大もいずれは・・・・・そうなってしまうの・・・・・ですか?」
「そうだね、恐らくは、そう。
でも浩大は超一流だから、そうそうヘマはしない。
だから夕鈴と僕の子供たちも護ってくれるよ、だから大丈夫」

黎翔はくるりと夕鈴の身体を回し、自分の胸にスッポリと夕鈴の身体を収めた。
そしてきつく、強く、抱き締めた。

「陛下・・・・私、またここに来てもいいですか?」
「いいけど・・・・」
「私、お花の一本も持って来てないので。
それじゃ、ここにいる方々に失礼ですから」
「そうだね。その時は僕も一緒に来るから」

黎翔は夕鈴を見詰めて、柔らかく安堵した笑みを醸し出す。
それにつられるように、未だまつ毛に涙の珠を湛えたまま夕鈴も微笑んだ。

「では、戻ろうか」
「はい・・・・でも、少し待っててください」

夕鈴は自分の髪に差された簪を、スッと抜く。
それは、花簪。
今朝摘まれたばかりの、小さな桃色の花の束。

それを持って屈むと、浩大が捧げた花の隣にそっと置いた。

「有り難うございます・・・・あなた方が護ってくださっていたから、
未だにこの国がこの国のままでいられます。
これからもどうぞ見守りください」

夕鈴の言葉は、点在する墓碑すべてに届くように風に乗って遠くへと響いた。

「夕鈴・・・・この墓碑の下には、浩大の上司だった者が眠っているんだ」
「そうだったのですね。それで、浩大はここにお花を捧げていたんですね。
浩大を守って下さっていて有り難うございます・・・・今、浩大は私をたくさん護ってくれています。
これからもどうぞ、浩大を見守りください」

ゆっくりと手を合わせて、夕鈴は目を閉じる。
しばらくそのままだったが、気が済んだのか満足気に微笑んで立ち上がった。

立ち上がった夕鈴に、黎翔は優しく唇を重ねた。
安心させるためのキスだったのか?
それとも見せつけるためのキスだったのか?

その答えは、黎翔の心の中にだけ存在するが。




その後、黎翔と夕鈴は連れ立って度々この墓所へと足を運んだ。
それは、夕鈴が正妃になっても変わることなく。
そして、更に子供たちとも訪れるようになり・・・・・黎翔と夕鈴の没後も、子供たちにちゃんと引き継がれていたのだった。





終。



***********


終りました!!!
何とか。
私の中では、すごく満足してます。


ご拝読、有り難うございました。


瓔悠。








【決して見てはならない・5】
2015年11月25日 (水) | 編集 |
【設定】

未来夫婦・新婚くらい

【注意事項】

この話・・・どうもシリアス方向に傾いています。
いつものホワホワ感のモノしか受け付けられない!と仰るゲスト様は
ここでバックしてくださいませね。

え~~と、かなり捏造があります
ご注意くださいませ。









「浩大・・・・・・・ここに眠る人は誰?
知っているんでしょ」
「知っているけど、教えない」
「どうして?」
「それはお妃ちゃんがお妃ちゃんだから・・・」

そこまで言うと、浩大は言葉を切って口を噤む。

お妃ちゃんは優しいから、そいつらのことで心痛めそうだからさ。
だから言えないんだよ。

その後の言葉を口に出すことなく黙り込んだ浩大を見て、夕鈴は首を捻る。

「?」

浩大はもうこの話は終わったと言わんばかりに、手に持った花を一つの墓碑に捧げた。
片膝をついて、その墓碑に頭を深々と下げる。
そして、しばし身じろぎ一つしなかった。
それを夕鈴は、ただ黙って見詰めていた。

スクッと立ち上がると、浩大はそのまま立ち去ろうとした。
しかし、それは出来なかった。
自分の上衣の裾を引っ張る力を感じて・・・・。

「お妃ちゃん・・・・」
「ねぇ、浩大、教えて欲しいの・・・ここの事を。
私、何を聞いても驚かないし、ちゃんと受け止めるから。
それは陛下の妃として、私の役目だと思うから・・・・」
「・・・・・・・・」
「ねぇ、お願いっっ!!!!」

夕鈴の力強く輝く瞳は、断固として聞き出すという意思が現れていた。

「全く・・・・・・・・お妃ちゃんは頑固だね」
「褒め言葉だと取っておくわ」

夕鈴は浩大に向けて、ニッコリと微笑んだ。
狼の妖艶で策略的な笑みではなかった・・・のに、逆らえないモノがあった。

「はぁ~~~~~~~~」

頭をガシガシ掻きながら、浩大は深いため息を吐き出す。

「おぬしの負けの様じゃの」

突然二人に割って入る声。
ここに夕鈴を連れてきた張本人である老師の声。

「全くっ!じぃちゃんが余計なことをしてくれるからさ~。
何で買収されたんだか?!」
「わしゃ、何も買収なんかされとりゃせんわい!」
「じゃあ、なんで?」
「それは、その娘っ子の心意気に負けたんじゃよ」
「ふぅ~~ん」

浩大は、老師に向けてむっすりと機嫌の悪い表情を浮かべた。
仕方ないと観念した浩大は、夕鈴を見据える。

「お妃ちゃん、オレから何を聞いても大丈夫なのかい?」
「ええ」
「ホントに?」
「大丈夫だから」
「じゃあ、言うよ。
心して聞いて欲しい・・・・それが多分こいつらの為でもあると思うからさ」

浩大はそこに点在して並び立つ墓碑を見詰めて、ポツリポツリと語り始めた。

「ここはさ、オレみたいな隠密達の墓所なんだ。
大体隠密なんてやってる奴らは、オレも含めて身寄りなんて無い者ばかりでさ。
例え任務でしくじって死んだとしても、誰も引き取り手なんてないのさ。
だから死んでも、誰も弔ったりはしない。
下手したら、そのまま敵地に野ざらしのままなんてこともあったんだよ。
しかし、ある時・・・・・ある任務で死んだ隠密を不憫に思って、時の王がここに墓碑を立てたんだよ。
そいつは、王都壊滅を防いだらしくて・・・・そいつが自分の身一つで向かっていって、自分を犠牲にしてさ。
それから、ここは隠密たちの墓所になったってわけ。
でも隠密なんて、死んでもその身を俗世間に戻すことなんて出来ないから、
こんなところじゃないと、弔らえないんだよ」

そこまで言うと、浩大は夕鈴を見た。
浩大の言葉を一言一句逃すまいと、必死に耳を傾けていた。
その薄茶の瞳からは、ハラハラと透明な雫を零しながら・・・・・。
そして止めどなく流れる涙を止めようと両手で顔を覆って、必死に受け止めようとしていた。


やっぱりな・・・・・お妃ちゃんの事だからこうなるって予想はついたんだよな。
だからホントは知らせたくはなかったんだよ。
はぁ~~~オレ、狼に睨まれそうでマジでヤバいって感じだな。

「お妃ちゃん、大丈夫かよ?」

そっと肩に手を置こうとした瞬間、その手は払いのけられた。
新たに現れた人物によって。





続。






***************


次でラストです。
お付き合い下さり、まことに有り難うございます。
もう少しだけ、お付き合いくださいね。


続きは今晩UPしたいんだけどなぁ~~
出来るかいな????


そして本誌、いいですね~~~
またネタバレSS書きたくなったんですよね~~
但し斜め45度ほど、私の萌えはズレてますが・・・・。


瓔悠。







【夜明け前に】
2015年11月24日 (火) | 編集 |
【設定】

本物夫婦 

【注意事項】

こちらのお話も、某SNSのコミュの期間限定トピック
『いい夫婦の日 final』へUPしたお話です。









陛下と朝までこうしていたかった・・・・・・。


夜明け前、まだ空も白んでないのに、ふと目が覚めてしまった。
隣で眠る陛下の横顔。
めったに見れないシロモノだから、すごく嬉しくて。
思わず口元に笑みが浮かぶ。

半身を起こして、陛下の端正な顔を見詰める。
その額に掛かる黒髪を人差し指でそっと払ってみた。
それでも陛下は起きる気配もなく、身じろぎひとつしない。

「ホント、私ってこの世の中で一番幸せな奥さんなのかもしれないわね」

ふと独り言が漏れる。

私の大それた想いが叶って、陛下の奥さんになれた時、
正直もうこのまま逝くことになっても後悔しないって思った。

でもホントは・・・・・・違ってた。
もっともっと陛下の事を知りたいって純粋に思った。
もっともっと私の事を知って欲しいって願った。

恋するって、
愛するって、
人をこんなにも欲張りにするなんて・・・・・。

こんなこと、誰にも言えない。
陛下にも知られたくはない。


「陛下、愛してます」

黒髪の隙間から覗く額に、そっと口付けた。
自分の大胆な行動に、頬が熱くなるのを感じた。

真っ赤になっている。
それを自覚した。

はしたないわよね・・・・・いくら陛下が寝てるからって。
でも今日は大丈夫。
だって、こんなことしても陛下は起きないみたいだから。

クスッと笑って、私はまた布団に潜り込む。
だってまだ窓は暗くて、夜明けまで時間は有りそうだから。

陛下の温もりに安心して、私はまた眠りについた。



「全く、君って・・・どうして、こんな時だけ大胆なんだか」

夕鈴が眠りに落ちたことを確認して、黎翔は半身を起こす。
寝ているふりをしてて良かった。

「君から行動を起こしてくれることは余り無いからな」

黎翔は満足気に、口元を綻ばす。
そして掌を自分の額に当てる。
ホンノリ温かい気がして、離せなかった。

「お返しだよ」

黎翔はポツリとつぶやくと、隣で眠る愛しい妃の薄茶の前髪をかき分ける。
露わになった額。
そこに自身の唇を乗せた。

『チュッ』

静かな寝室に、リップ音が微かに響く。

「おやすみ、夕鈴」

黎翔もまた布団に潜り込んだ。
暖かい・・・・自分よりも少しだけ高い夕鈴の体温を感じて、深呼吸すると目を閉じた。




夜明けまで、後少し。
二人きりの寝台は、穏やかな寝息だけが規則正しく響く。


いつまでも、
ずっと、
永遠に、
離れない。

そうして
二人の愛は続く。



終。






【今宵も】
2015年11月23日 (月) | 編集 |
【設定】

本物夫婦 ・ 微エロ

【注意事項】

こちらのお話は、某SNSのコミュの期間限定トピック
『いい夫婦の日 final』へUPしたお話です。
あちらでは、がっつりエロはご法度ですので、寸止めです。
まぁ、ゆる~いお気持ちでお読みくださいませ。










今宵の月も天上で白く輝く。
それは地上の君も同じで・・・。

窓から差し込む月光に浮かび上がる君の身体の線が、僕を誘う。
夜着越しでも分かる、まろやかな曲線。
寝台の上で座り込んで、トロンとした視線を僕に向けている君。
それは反則だよ。
僕の前にそんな姿ををさらけ出す君に、早鐘にように鼓動が響く。
それが煩くて、僕は聞こえない振りをする。

こうして、共に夜を過ごすようになって幾月だろうか。
君が本当の妃になってくれてから・・・・・。

自分の想いを偽って、君との短い夢を紡ぐ。
でもそれはいつまでも続くことなんてないことくらい分かっていた。
その偽りの関係が切なくて。
君が欲しくて。
君のすべてを僕のモノにしたくて。

それらを重ねて・・・・本物にした。

だから
離さない。
互いの命尽きるまで。

「ねぇ、夕鈴。君が大好きだよ」
「私もです・・・・・だから離さないで下さい」

頬を桃色に染めて呟く、君の願い。

「どうして、僕が夕鈴を手放すの?
苦労して君を手に入れたのに、君が嫌がっても離すつもりはないから覚悟して」

僕は、可愛くお願いしてきた唇を塞ぐ。
そしてギュッと抱きしめる。
花の香りがほんのりと漂う。

「夕鈴、いい?」
「はい」

恥じらいながらも、僕の求めに応じてくれる君が愛おしくて。
壊れないように、そっと寝台へと身体を横たえる。


今宵も君を眠らせてあげられそうにないな。
君の存在を何度も確かめるから。
僕の身体全体で。
君の愛を。
そして僕からの愛を君に注ぎたいから。


月は西に傾き、陽が昇るまで。
それはひと時の夫婦の営み。
夜毎紡がれる言葉なき、愛の言の葉。


終。




***************



つらつらと・・・1123
2015年11月23日 (月) | 編集 |
こんにちは!!!

3連休、最終日・・・如何お過ごしですか??
ウチは旦那様が3連勤なおかげで、結構退屈な3連休でした。

昨日は、息子クンはジィジに連れられて
ホークスの優勝パレードに行ってましたが・・・・。
そして娘と私とバァバはショッピングモールへお買い物へ行ってきました。

娘には髪飾りをたくさん買わされました。
やっぱり女子ですね~~
私は台所の便利グッズを買ってウキウキ。
これでまた手抜きが出来そうな・・・・・。


さぁ~~て。
ここでひっそりとお知らせです。
え~~と、先のブログを削除して新しいこのブログを立ち上げましたが、
先日、ブログ名を元に戻しました。
もうアクシデントから結構経ったので、大丈夫だろうとおもいまして。

『翡翠の煌めき、瑠璃の夢』になってます。
ブクマ登録のゲスト様、出来ましたらブクマの登録変更願いますね~
でもまだ検索しても、以前のブログの方に引っかかります。


さぁ、明日は本誌発売日!!!!
加えて白泉社コミックスも発売・・・のはず。
仕事帰りに買ってこよ~~~と。
後、ネットで注文している本も近く来るはず!!!
当分読書三昧が堪能できそうで、今からウハウハでございます。

あっ、でも更新は頑張りますよ~~
だって、早く色々書きたいものもありますからっっ!!!
『傍迷惑な~』や『欠片シリーズ』もね♡


それでは!!!


瓔悠。





【決して見てはならない・4】
2015年11月23日 (月) | 編集 |
【設定】

未来夫婦・新婚くらい

【注意事項】

この話・・・どうもシリアス方向に傾いています。
いつものホワホワ感のモノしか受け付けられない!と仰るゲスト様は
ここでバックしてくださいませね。






長い通路の先。
そこにはまた扉があった。
その扉は重厚な作りでピタリと閉まっており、訪問者を拒んでいるようだった。

「この先なんですね」
「そうじゃ」
「開けても・・・・・いいのですか?」
「それをおぬしが望むのなら」
「はい、私は知りたいんです。
全てを」
「そうじゃな・・・・・・おぬしは知らねばならぬのかも」

隣にいる老師は、眩し気に夕鈴を見ていた。
その視線に夕鈴は後押しされるように、扉の前に立つ。
両手を扉に押し当てて、一気にその扉を押し開けた。

光りが扉の前から差し込んでくる。
そしてそのまま夕鈴の後ろへとスゥーと伸びていく。

この光の正体は陽の光だった。
天から降り注ぐ、柔らかな秋の陽光。
その光が網膜を刺激して、夕鈴は眩しさを感じる。
夕鈴は、目をギュッと瞑った。

暗くて狭い通路からの行き着いた先がいきなりの地上になるとは、
夕鈴は思いも寄らなかった。

やっと光に目が慣れ、夕鈴は恐る恐る目を開けた。
目の前に広がるのは、この王宮で見たことのない風景だった。

名もなき小さな花が、あちこちに点在して無造作に咲いている。
そんなに高くない木が植わっていて、陽の光を避けて日陰を作っている。

ただの四阿に見える。
だけど、四阿にあるはずのないモノがあった。
それは墓碑だった。
それも無数の。

「ここは・・・・・・・・・・・・・・・・」

夕鈴は言葉を失った。

こんなところに何故?
一体、誰のもの?

思いも寄らない夕鈴の脳内は、疑問符が漂う。
これは老師に訊いてもいいのだろうか?

「ビックリしたんじゃろ」
「・・・・・・・・・・はい、まさか、あの小部屋の奥にこんな場所があるだなんて」
「誰のものじゃと思う?」
「分かりません・・・・老師はご存じで?」
「まぁ、長く後宮管理人なんぞしておるとな」
「そうですか・・・・・・・・」

ポツリと言うと夕鈴はそのまま歩き出し、一番手前の墓碑の前で座り込んだ。
衣装の裾が、地面につくことなど厭わずに。
そしてそっと手を合わせ、瞳を閉じた。

風が静かに吹き抜け、夕鈴の長い薄茶の髪を揺らす。
時が止まったように、静寂が包む。

「どなたか分かりませんが、どうぞ安らかにお眠りください」

夕鈴はそう呟いた。
その声に続いて、老師でもない夕鈴でもない第3者の声が夕鈴の耳に届いた。

「嬉しいと思うぜ、そいつ・・・・・・・狼陛下の花嫁が手を合わせてくれるなんざ」
「こ、こ、浩大!」

夕鈴は立ち上がり振り返る。
そこには、神妙な面持ちの浩大がいた。

「お妃ちゃん、ここに来ちゃったんだな」

そう言うと、浩大は空を仰いだ。






続。












【決して見てはならない・3】
2015年11月21日 (土) | 編集 |
【設定】

未来夫婦・新婚くらい

【注意事項】

この話・・・どうもシリアス方向に傾いているようです。
いつものホワホワ感のモノしか受け付けられない!と仰るゲスト様は
ここでバックしてくださいませね。









前を行く老師の歩みに、迷いはなかった。
どこに行くのか?それは夕鈴には分からないけれど・・・。


「しかし、お前さんはそれを知ってもなお、そのままでいられるんじゃろうか」
「えっ?老師、何か言いましたか?」
「いや、何も言っとりゃせんわい」
「そうですか・・・」

老師と共に行き着いた先は、それは問題の小部屋だった。
何故か気になっていた小部屋。
夕鈴は息を飲み込んだ。

「さぁて、ここじゃの」
「はい」
「お前さんは、ここの秘密を解き明かしたいと言ったな」
「ええ、言いました」
「後悔はせんのじゃの?」
「後悔?」
「そうじゃ」
「しません!」
「そうか」

夕鈴の力強い薄茶の瞳に、老師は一瞬気圧される。
視線を逸らすことなく見詰める夕鈴に老師は好感を持ったのか、優し気に口元を緩ませていた。

「じゃあ、見るがええ」

老師は入口を誤魔化す為にはめ込まれた板を外しに掛かった。

『ギィィィ』
鈍い音がして、その戸は開かれた。

「ほらっっ」

老師に促され、夕鈴は戸口をくぐった。
夕鈴は大きく一歩踏み入れて立ち止まると、小部屋の中を見回した。
しかし、何も見えはしなかった。

明かりは無く、音も無い・・・・・そこは暗く冷たい空気だけが流れていた。
しばらくすると暗さに目が慣れてきて、その小部屋の内部が浮かび上がる。
しかし、その小部屋には何もなかった。
調度品の一つもなく、ただの小さな空間が広がっていた。

「何もない・・・・・・・・」

夕鈴は小さな声で呟くが、その声に誰も答えてはくれなかった。
静寂が呟き声を即座に消し去り、暗闇だけがその場を支配する。
夕鈴は恐怖という感情に身体を支配され、一歩も動けなかった。

立ち尽くす夕鈴を奮い立たせるように、老師がゆっくりと入って来た。
そのまま歩を止めることなく、夕鈴の脇を通って部屋の奥へと進む。

「ほれ、小娘!行くぞ」
「行くってどこにですか?だってここには何も無いですよね」
「ここは入口じゃ」
「入口?」
「この奥が、秘めたるものがある場所なんじゃ」

小部屋の一番奥。
突き当りには、何の変哲のない壁が一面に広がる。
それはただの壁のはず・・・・・・・・。

しかし老師は振り返ることも無く壁の前に立つと、両手を壁に当てる。
ペタッと付けた掌を力任せに押すと、ただの壁だったはずのところの一部がズレて、更に奥へと続く扉へと変わったのだった。

その扉の隙間から老師はその小さな身体をすり抜けさせ、中へと進む。
夕鈴も取り残されるわけにはいかないと歩を進め、老師の後に続いた。

入り込んだ扉の入口付近は、薄暗かった。
そしてその入口から伸びる通路。
長く、先へと続いていた。
続く通路の先を見通すと、その先はホンノリと明るくなっていて行く手を照らしていた。

軟らかくユラユラと揺れる光。
優しくフワフワと辺りを照らす光。

夕鈴は、フゥと息を吐きだした。
この通路に先には、自分が求める秘密がある。

浩大は、自分には何も教えてはくれなかった。
陛下は、ご存じない様だった。

「行くわ!私は何としても知らなければならない。
陛下の妃として・・・・それがどんな秘密だとしても」

夕鈴はゴクリと唾を飲み込んで、力強い一歩を踏み出した。



続。


**********


やっと、自分の中でラストまで話が纏まりました。
このお話、正直言って・・・・何度も話の展開・ラストが変わりまくってます。
どれもしっくりこなくて。
でも何とか纏まりそうです。

しかし、後1・2回は続くような気も・・・・・・。

宜しければお付き合いくださいませ。
ただし、結構シリアスですが。

続きはそんなお待たせしないと思います。

では・・・・・・・


瓔悠。
















【アリスの口づけ・6】 出会い・・・そして
2015年11月20日 (金) | 編集 |
【設定】 

恋人設定 ・ 現パロ設定

【注意事項】

この作品は、某SNSのコミュニティにて開催されたハロウィンパーティに合わせて
『花の四阿』管理人・さくらぱん様とコラボした作品を私なりに加筆したものです。

【設定】に表示しております通り、現代パロディの作品となっておりますので
ご注意の上で閲覧くださいませ。












そして始めた清掃のバイト。
このビルは大きくて広くて、結構大変だった。
1フロア終わらせるだけで、息が上がる。
確かに割は良いかもしれないけれど、その分体力も必要だ。

私は中途半端なことが大嫌いだから、やるなら完璧に!を遂行していた。
だからバイトを初めて3か月、このビルで働く人の顔なんて誰一人として覚えることなんてなかった。
あっ、一人だけいた!!
あの時の眼鏡の面接官だけ。

兎に角、それくらい一生懸命にビル清掃に精を出していた。
全ては可愛い青慎の為に。
それだけを考えて・・・・だから、少々キツくても我慢出来た。


****

「君が新しいバイトの子かい??」

フロアの床の頑固な汚れをゴシゴシ拭いていた時に、不意に頭上から声が降ってきた。

俯いたままの私の耳に届いた声は、低いけど温かみのある声質で・・・・。
まず、その声に惹かれた。

その声に導かれ、私はノロノロと顔を上げた。

一番初めに目に飛び込んできたのは・・・印象的な深紅に輝く瞳。
私を見据える瞳は、力強くて視線を逸らすことが出来なかった。
視界に入ってきたのは、すらりとした長身で仕立ての良いスーツに身を包んだ若い男性。
顔だちも涼やかでキリッとした結構イケメンの青年。

きっと女性社員の憧れの的なんだろうなぁ~と容易に予想出来る。
まぁ、私には関係のないことだけれど・・・・・・。

そんなことを考えていた私は、返事が一瞬遅れてしまっていた。
返事待ち顔の男性に向けて、私は慌てて返答する。

「えっ、はいっ、そうです!」
「そう・・・・・君が」
「?」

その人はその一言を呟くと、私を見詰めたまま黙ってしまった。
私はどう返答してよいのか分からず、モップの柄を握りしめたまま固まった。

広いフロアには、私たち二人だけしかない。
お互いが黙りこくったことで、辺りに静寂が漂う。

私は掃除を再開したくても、その人の視線が気になって動きだせない。

「あの・・・・私、ここのお掃除をしたいんですが」
「ああ、どうぞ」

そんなこと言われたって、出来っこない。
見つめられたままだから・・・。
深い紅の瞳に吸い込まれ、拘束される。
一体、この人なんなんだろう。
私に何か用かしら?
用があるなら、さっさと言ってくれればいいのに・・・・・。

「私に何か用ですか?」
「いや、特には」

男性はそう返事する。
ならすぐにでも立ち去るだろうと思い、掃除を再開させるために軽くお辞儀をした。

これで、いいわよね。
私に用が無いのなら、無視してもいいわよね。

モップを動かして床を磨き始めるが、男性は立ち去る気配はない。
それどころか、まだ視線を感じる。
どうも私をまだ見てるみたいだ。

「・・・・あの、私、何かヘンですか?」

彼は私の何が気に掛かっているのか?すごく気になって訊いてみた。

「ヘン?いいや、別に」

男性はそう言うと、微かに口元を綻ばせた。

別に?
そんな事、無いでしょう。
じゃあ、どうしてただの清掃バイトをじっと見ているっていうのよ?

私の中で、疑問符が飛び交う。

ええい!もう知らない!!
私はまたモップを動かし、ごしごし掃除を始めた。
気にしないように努めて、掃除に精を出す。

床がピカピカに磨き上がり顔を上げると、もうそこには誰もいなかった。

「一体、何だったの・・・・・それに誰だったのかな?」

私は静かなフロアでひとりごちた。
それにしてもかなりのイケメンだった。
あの深紅の瞳も印象的で・・・・・・・忘れられそうになくて、私は頭を振った。



***************


それから、数日後。
秘書課のイケメン眼鏡青年に、私は呼び出されていた。

私、何か失態でもした?
イヤ・・・・・そんなことはないはず。
フロアのモノを壊したりはしてないし、通行する方には十分に気を付けて邪魔にならないようにしていたし。
思い当たる節なんて何一つ無い!

「あの・・・お呼びだと聞いて来ましたが」
「ああ、汀 夕鈴さんでしたね。お待ちしてました、どうぞそちらへ」

イケメン眼鏡青年は、スマートに手で指し示して私をソファーへと誘う。
私は言われるまま、浅く腰掛けた。

「さて、貴女に今日は別のバイトをお願いしようと思いまして、お呼びしたんです」
「別のバイトですか?」
「はい!それはもう、破格値のバイトですよ」
「破格値?」

私の頭の中で、お札がちらつく。
イケナイ!イケナイ!!そんな浅ましいことを考えちゃ。
私はすぐさま頭の中のお札を消し去る。

「それはどんなバイトですか?」
「社長の婚約者になってもらいます!!」
「はい?今何と仰いました?」
「だから、社長の婚約者ですよ」
「はぁ??いや、無理です!!!無理でしょ、そんな事。
だって、私…社長さんのお顔すら存じ上げてないんですよ」
「えっ?おかしいですね・・・・社長は貴女に会ったと言ってましたが」

私、社長さんと会ってる?
何処で?
やっぱりこのビルの中で・・・よね。
そんな人いたっけ?

私は必至で記憶のふたを開けて、まさぐるようにそれらしい人物を探す。

元々フロア清掃なんて大体が下を向いているから、思い当たる人なんてそんなにいるわけがない。

じゃあ、もしかしてあの人?
先日、フロアで会ったすっごくカッコよかった人。
でもあの人だとすると、社長にしては若すぎる。
だって、この目の前の社長秘書だというイケメン眼鏡青年よりも若かったし。
この前の事を少し思い出しただけで、あの端正な顔立ちがちらつく。
私は、頬が熱を帯びていることを感じていた。

何を想像しているのよ、私ったら。
こんな大きな会社の社長さんなんだから、あの人なわけないじゃないっっ!
でも私を婚約者の身代わりにするんだったら、社長さんがおじさんじゃ年齢のつり合いが取れない。
じゃあ、誰が社長なのよ?

いくら考えても私の中で納得がいく人物が思い当たらない。
観念した私は、目の前の眼鏡青年におずおずと訊いてみた。

「あの、社長さんって、どんな方ですか?」
「社長ですか?企業家の間では『狼陛下』なんて言われてますけどね。
まぁ、その手腕には、年配の重役たちも一目を置くというか、舌を巻くほどですが」
「えっ??年配の重役さんたちがですか?・・・・もしかして社長さんって、お若い方だったりします?」
「ええ、21歳ですよ」

あの人だ!この前・・・・私をジッと見ていた人。
でもあんなカッコイイ方だったら、私なんかが婚約者のフリなんてしなくてもいいと思うけどなぁ~。

「私なんかで務まるんでしょうか?」
「さぁ、それは分かりませんが、貴女は一応彼氏もいないということですし・・・何しろ社長が『絶対に貴女を!』と希望しているので」

そこでイケメン眼鏡青年はため息を吐き出す。

「私を指名しているんですか?」
「はい・・・・こんなどこにでもいるような高校生を偽婚約者にしなくてもいいと思うんですけどね」

納得がいかない表情を浮かべる眼鏡青年。
私は何と答えていいかわからず、曖昧な笑みを浮かべた。


そうして気がつけば、清掃バイトから偽婚約者バイトにガラリとバイト内容が変わっていた。


続。










【兎と僕の攻防戦・7】
2015年11月19日 (木) | 編集 |
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【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   










夕鈴が黎翔にキスされて怒りながらも救出されている頃。
所変わって王の執務室では。

残された李順はイライラしながら書簡の整理をしていた・・・というのも、
重要任務を任していたはずの小娘がどうも迷子になって陛下が血眼で探していると、後宮管理人たる張老師がワザワザ教えに来たのだ。

はぁ~~~何をやっているんですかね、夕鈴殿は。
迷子ですか?
迷子になってまで陛下から逃げる様に!とは言ってませんがね。

この後の事を考えると片頭痛が起こりそうになり、こめかみに指を押し当てる。
如何に優秀な李順でも、黎翔が『眠り姫』のワンシーンの様に口付けして気絶した姫を目覚めさせ、そのお姫様がオカンムリだなんて思いも寄らない事である。

頭を抱えながらも尚、忙しそうに政務をこなす李順の前に、見知った人物が音も無く佇んでいた。

「えっ!!ビックリしましたよ、宰相殿。お越しなら、一言くらい声を掛けて下さいよ」
「そうですね・・・・・・・李順殿。予言しましょう・・・陛下に置かれましては明日は、政務にならないと思われますよ・・・・・残念ながら・・・・・折角の骨折りもきっと無駄になってしまうでしょう・・・・・」

ジトッと暗い表情で淡々と話す宰相は不吉というか余り考えたくない未来を李順に告知すると、シズシズと足音一つ立てずに出て行った。

後に残った李順は呆気に取られてしばらくボ~~としていたのだが、政務は待ってくれないと慌てて再開する。
しかし余り身が入らずに、政務とは全く別の事が頭の中枢全てを占めていた。

気掛かりなのは、迷子の夕鈴殿が見つかった時ですね。
感極まった陛下がバイト小娘に何をするか・・・抱きつくことくらいはするのかもしれないですし。
そうすると夕鈴殿は烈火のごとく怒って、それを静めるのに陛下が政務そっちのけでとりなしを始めるという構図が浮かぶのは、私の思い過ごしではないのでしょうね。
まぁ、そうなるとは限らないのですが・・・・。
浩大辺りが夕鈴殿と見つけてくれれば問題はないのですが。

李順の予想は、悪い方に当たっており、でも実際は抱きついたどころか・・・・口付けしていた。
そしてやっぱり夕鈴は・・・・・・・怒っていた。

黎翔の前をスタスタスタスタ・・・早足で歩く夕鈴の背中は誰が見ても、
怒りに支配され話し掛けられない雰囲気を醸し出していた。
そんな様子にも関わらず、勇猛果敢に黎翔は夕鈴陥落に挑む。

「夕鈴、大丈夫?頭擦っていたみたいだけど、タンコブが出来てるの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そんなに急がなくても。ねぇ、夕鈴・・・一緒に行こうよ」
「・・・・・・・・・・」

黎翔の頑張りもむなしく夕鈴には届かず、暖簾に腕押し状態で。
相変わらず押し黙りスタスタ歩いて行く夕鈴を、何とか注意を向けようとあの手この手を駆使して努力している黎翔だが、どれも全く効果なくチラリと見向きもしない。

そして後宮の自室にそのまま入ってしまうと、侍女を直ぐに下がらせ中の戸口に棒を噛ます。
更に家具まで動かして戸口に置き、そのまま閉じこもってしまったのである。

ある東の国の神話にある『天の岩戸』状態なのである。
その前で為す術を持たない黎翔は、途方に暮れるだけでその場で佇む。
そして中の夕鈴は更に奥の寝室に入り大きな溜息を吐きながら寝台の上にバタンと倒れ込んで、先程の事を考え始めた。
顔を真っ赤に染めて。

陛下なんか、もう知らないっっ!!
あんなことしといて、軽~~く『ゴメン』と言ったきりで。
大体女の子の始めての口付けを奪っておいて、あれで済むなんて有り得ないっっ!

しかし夕鈴は知らない・・・もう黎翔は何度か寝ている夕鈴の唇に自らの唇を重ねており、今回が初めてではない事を。

寝台に横たわったまま唇にそっと手を触れる。
まだ微かに口付けの余韻が残っている様な錯覚に陥り、
羞恥に顔をそして全身を真っ赤に染め上げ身をよじって丸くなる。

初めての家族以外との口付け。
陛下がイヤって訳じゃない。
むしろ嬉しいと言えなくもない。
きっともう二度と起こる筈もないだろうから、ホントは悦ばしいことなのよね。
でも、なんだかシックリこない。
自分の心の整理が出来ないだけなのよ、恐らく多分。

夕鈴は、ボンヤリと思考を巡らす。
寝台の上ということと迷路から抜け出られた安堵感と疲労感から意識を徐々に手放していく。
次第に規則正しい寝息をたて始め、夢の世界の扉をこじ開けて駆け足で入って行ったのだった。

そして戸口の外では尻尾をダランと床に垂れさせ主人をひたすら待つがごとく、
大人しく中の様子を窺う可哀そうな小犬が佇んでいた。

入って直ぐにガタゴト音がしていたけど、今は静かだな。
あの音は恐らく家具を移動させていたんだろうけど。
しかしそこまでしなくても・・・・そんなにイヤだったのか?
意識が無かったから、人工呼吸をしていただけなのに。
まぁ息はしてたから必要なかったのかもしれないけど、立派な人助けなのに・・・・あそこまで怒る事は無いと思うが。
はぁ~ホントにどうやってこの中から出てきて貰おうか?

如何に君主として素晴らしい資質を持っており、見事にこの国を立て直しをしている黎翔といえども方法を考えあぐねていた。


***********


その頃浩大は夕鈴にこの堅い『天の岩戸』から如何にして出て来て貰うかを考えて、直ぐさま李順の所に駆け込んでいた。
ため息をつきながらも、原因の発端であることを自覚した李順は浩大にある方法を授けていた。
そしてそれを試してみる為に、夕鈴が立て籠る寝室の屋根裏へと浩大は密かに移動する。
屋根裏からこっそり覗いてみると、夕鈴は可愛い寝顔を天井の浩大に披露しながら胸を上下させスヤスヤ夢の中の住人の様である。
どうやら深い眠りに陥っているらしい。

これって結構マズイ?!
こんな緊張感のないお妃ちゃんの寝顔を拝んだと陛下に知られたら、オレ生きて明日の朝餉は食べられないだろうな~~。
さぁて、どうしよっかな~~まずは起こしてみるとしますか。
このまま目を覚ますまで待つのはマジでヤバいし。

試しに小声で夕鈴を呼んでみる。

「お妃ちゃん!起きてよっっ!
李順さんが呼んでいるよ~~~」

ピクリとするものの、まだ起きる気配が感じられない。
それでもめげずにそのまま続けて呼び掛けてみる。

「お~~い、お妃ちゃんってば」
「起きてよ~~~!!ネェ~~~。
「李順さんが呼んでいるんだってば!!!
起きないと減給されるかもよ~~~減給っっ」

『減給』という言葉に敏感に反応し、夕鈴は即座に目を覚ます。
意識が完全に覚醒して天井を仰ぎ見ると、二カッと口角を目いっぱいあげて笑う浩大がこちらを覗きこんでいた。

「浩大・・・・な、なんでそんなところから、出没するのよ」
「だって、お妃ちゃん・・・戸口や窓を堅く閉めてるじゃんか!!」
「・・・・・・あっ、そうだったわね。ところで如何したの??」
「李順さんが呼んでいるんだよ、今回の特別手当の事で来て欲しいってさ」
「そ、そう・・・でも戸口は陛下がいらっしゃるのでは??」
「そうだね~まだしつこくいるみたいだね」

陛下の姿を思い出しながら、浩大はクスッと笑う。

「じゃあ、オレが窓から出してやるからさ。この寝室の窓を開けてよ」
「分かったわ!!」

夕鈴は窓に近づき即座に開けると、浩大に抱きかかえられるように窓から脱出した。
戸口の外の黎翔には気がつかれないように、浩大は気配を消して。


そうして、堅く閉ざされた『天の岩戸』はこうして呆気なくあけられたのであった。



続。





つらつらと・・・1118
2015年11月18日 (水) | 編集 |
おはようございます!!

昨日から降り続く雨は、結構うっとおしさを感じてます。
洗濯物は乾かないし、子供たちは靴をぐちゃぐちゃに濡らして帰って来るし。

はぁ~とため息が出てきます。
しかし、もう11月。
普通なら雨の日なんてことなら、すっごく寒くなって暖房を入れるなんてことになりますが
特に入れなくて過ごせてます。
今年は暖冬傾向なんでしょうかね~~


さてと。
今朝は5時に娘のぐずり泣く声で起こされました。
何事かと、眠い目をこすりつつ
『どうしたん?おトイレ?のど乾いた?具合悪い?』
と訊いてみますが
『ううん・・・・』
とどれも違うと首を振ります。

私が首を傾げると、考えていると娘の一言が。

『歯が抜けた』

はい????
歯が抜けた????
今ですか???

私の頭の中は真っ白。

寝てて歯が抜けることがあるんですね~
正直、びっくりです。

娘から抜けた歯を受け取り、うがいをするのに洗面所へ連れて行きました。
うがいをすると気持ち悪いのが解消されたようで、娘はまた眠りにつきました。
私もようやく安心して、残り少ない睡眠を貪りました。

そして朝起きて、
抜けた歯は無事に『歯のお家』に収められました。


子育てって、ホントに驚きの連続ですね~~
未だに子供たちの成長に驚かされることが一杯です。



ああ、そうそう
一部のゲスト様がご心配いただきました息子の怪我ですが、
打撲で済みました。
ご心配有り難うございますっっ!!!
湿布を貼って、回復待ちでございます。

息子よりも
私の踵の痛みが増してて、今日もバドですが3時間持つのかな~と少し心配だったり。
はははは~~~~~~


さてと、
洗濯物でも干すことにしましょうか・・・・・・・・・・。





瓔悠。







【アリスの口づけ・5】 怪しげなバイト
2015年11月16日 (月) | 編集 |
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この作品は、某SNSのコミュニティにて開催されたハロウィンパーティに合わせて
『花の四阿』管理人・さくらぱん様とコラボした作品を私なりに加筆したものです。

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ご注意の上で閲覧くださいませ。









煌びやかなパレードも終り、周囲はまた静けさを取り戻していた。
でも、まだ私は夢見心地で幸せな気分に浸る。

おとぎ話の登場人物が、まるで万華鏡の中で踊り回るように光の洪水を作り出し、私の瞳に心に余韻を残した。

そんな中で私は、ふと黎翔さんとの不思議な出会いを思い出していた。



*******


彼との出会いは今から考えると、きっと運命だったんだと思う。
だって普通に生活していたならば出会うはずなんてない。
一般庶民と大企業の社長なんて、何の接点もないのだから・・・・・・。

そう、あれは今から3年前。
私がまだ高校生で。
全ては、父のあの一言で始まった。

「夕鈴、話があるんだが・・・」

仕事から帰って来ると、一目散に私が夕ご飯を作っていた台所にやって来た。
珍しいことも有るものだ。
いつもだったら、仕事着から着替えて『ちょっとそこらで、一杯だけ飲んでくるから』と居間から声を掛けて、
さっさと出掛けるところなのに・・・・。
私は夕ご飯を作る手を一時止めて、振り返って父さんを見る。
父さんの目はニヤニヤしてて、正直これは余りいい話ではないような気がしてくる。
また厄介事でも持ってきたのか??
私は身構えて、父さんの話を聞くことにした。

「なぁ、夕鈴・・・・・実はな、割のいいバイトがあるんだが」
「はい?バイト??バイトならしてるけど」
「ほら、お前バイト増やしたいって、前々から言っていただろ!?」
「そりゃ、確かに言っていたけど。でもよく考えてみたら、時間のやりくりが大変かなぁ~って」

これは、食いつかない方がいい。
ロクなことが無いような気がする。

私はそう言うと、また夕ご飯の支度に戻った。
それで終るかにみえたが、父さんは引かずに話を続ける。

「それが、ある会社ビルのフロア清掃なんだが・・・・割がいい!時間の融通が利く!そして高校生でもOK!と、中々条件が良くてな。
今しているバイトを全部辞めても、バイト代が増額になるんだよ。
ほら、中々いいバイトだろっっ」

父さんは得意げに目を輝かせる。
私は短く息を吐き出して、父さんに言い聞かせるように反論した。

「父さん、そんな夢のようなバイトがあるはずないじゃない。
そんな割のいいバイトなんて、そうそうないから・・・・人が好過ぎる父さんだから、騙されたのよ」
「そんなことないぞ!それってウチの会社の本社ビルだし、雇い先は本社の秘書課だから絶対大丈夫だって!!
父さんが保証する!!」

イヤ・・・父さんに保障されたってね。
もっと世の中疑って掛かろうよ。

そうは思いつつも、割高なバイトに少しだけ興味は湧いていた。

「・・・・・・父さん、ホントに大丈夫なの?」
「おう!オレが太鼓判を押してやる!」

だから、それが一番不安なんだってば。

かなり疑う気持ちを持ちつつも・・・私はそのバイトの面接を一応受けることにした。
そして指定された日に、本社ビルへと面接を受けるために出向いた。
スッゴク大きなビルで、入り口前で少し躊躇したほどだった。
そして教えられた秘書課へと乗り込んだ。

私に目の前にいる面接官は、結構イケメンの眼鏡青年だった。
そして社長秘書なのだと簡単な自己紹介をされた。

へぇ~この人、若い人みたいだけど社長秘書だなんてエリートなのね。
てっきり人事部のおじさんが面接官だと思っていたけど・・・。

私は自分の予想が大きく違っていたことに驚き、変に緊張してきた。
ドキドキする自分の心臓の鼓動を、身体全身で感じていた。
面接官の値踏みされているような鋭い眼差しに圧倒されて、綺麗に揃えている両足がプルプル震えているのが分かった。

実はこの人、凄く怖い人なのかしら?
それとも面接官だから、こんなに怖く感じるのかしら?
やだ、手のひらに変な汗が出てきちゃったわよ。
何を聞かれるのかしら?
こんなに緊張してて、キチンと答えられるの私?

相手が話し始めるまで、頭の中でグルグルと思考が駆け回る。
私はごくりと息を飲み込んだ。

「貴女が、応募者ですね」
「はい!宜しくお願いいたします。汀 夕鈴ですっっ!!!」

出てきた声はいつもよりも大きくて、辺りに反響していた。

「元気があって、宜しい!ところで貴女、高校生だということですが・・・・」
「えっ?はい・・・・・そうですが?」

高校生はダメなの?
今更そんな事言わないわよね~~。

私は恐る恐る相手の出方をみた。

「高校生ですか・・・・それはちょっと、例のバイトに採用するというわけにはいきませんねぇ」
「はい??」
「いえ、こちらの話です。一応、確認だけはしておくと致しましょうか」
「確認ですか?」
「率直に聞きますが・・・・・貴女、彼氏はいますか?」

この会社は大丈夫なのかしら?と思ったのは、この時だった。
だって、ただのフロア清掃のバイト面接で彼氏の有無を聞かれるとは思いもしなかったから。

実のところ、私は今までのバイトをすべて辞めてこの面接に臨んでいた。
落とされるのは絶対に困るっっ!!!
食べ盛りの弟がいるウチの家計は、毎月・・・火の車。
父さんが毎晩のように飲み歩くから、正直ウチには蓄えなんてものは殆ど無い!
進学を望む弟の塾代だって、バカにならない。
私の脳裏に可愛い弟の顔が浮かんで消えた・・・・。

絶対に、このバイトを受かってやるっっ!
いや、受かんないとスッゴク困る!

私は、太ももの上で重ね合わせた両手に思わず力が入る
この変な質問が仕事にどう繋がるのか疑問を持ちつつ……分らないまま正直に即答した。

「いいえ、いませんが・・・・それが何か??」
「そうですか・・・・・それならば結構です。
汀 夕鈴さん、貴女を採用いたします!」
「は、はいっっ! 有り難うございます。 私、一生懸命に頑張ります!!」


こうして私は、この怪しげなバイトを始めることとなった。



続。










つらつらと・・・1115
2015年11月15日 (日) | 編集 |
こんばんは。

息子の空手の試合で
朝早くから夕方までお出かけで
かなりヘトヘトでございます。

今日はかなり大きな大会で・・・・・・息子は形と組手の2種目出場いたしましたが、
結果はダメでした。
まぁ、ダメかなぁ~とは思っていたので期待はあまりしていませんでしたし、
勝てないまでも本人なりに頑張っていたので良し!と一応の評価はしてます。
でも1勝はして欲しかったなぁ~というのが本音だったり。
この悔しさをバネに頑張って欲しいもんです。

ただ、試合中に怪我をしたのが心配で。
組手の試合の時に右手の小指を痛めたらしく・・・・。
現在は湿布貼ってはいますが、ひびが入っている可能性もあり・・・・明日一応整形外科に連れて行く予定です。
打撲で済めばよいのですが。


さてと、
今日の更新はお休みします。
疲れ果てて、脳内パンク寸前です・・・・・・。

明日出来ればいいのですが・・・・・・明日は、小学校の個人懇談でして。
さぁ~~て、何を言われることやら。

それでは、おやすみなさいませ。


瓔悠。



【アリスの口づけ・4】 万華鏡のようなパレード
2015年11月14日 (土) | 編集 |
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腰砕けた私を、パークの中央にある大きな広場に黎翔さんは連れてきてくれた。
ここからは、荘厳とそびえ立つハートの女王のお城が見える。
ライトアップされて存在感が半端ない。
私はしばらくお城を見上げていた。

突然、お城の方向から花火が上がった。
赤や黄色、緑や青、紫やピンクといった華麗な花が天上で次々と花開く。
咲き誇るように、天空の花畑は見る者すべてを魅了する。

「わぁ、綺麗・・・・・」

私は瞬きも忘れて、瞳いっぱいに焼き付ける。

「夕鈴~お腹が空いたでしょっっ!!はい、コレ」

黎翔さんの手から、チュロスとコーラが私へと手渡された。

「ありがとうございます!嬉しいですっ!
実はちょうどお腹が空いていたから・・・・・・」

スッゴク嬉しいけど、いつの間に買いに行ったのかしら?

「ちゃんとした食事でなくてゴメンね。でもチュロスがここの名物らしくて、それに・・・・」
「花火を合図にもうすぐパレードがここを通るから、夕鈴と一緒に見たくて。
これなら歩きながら食べられるからね」
「パレードですか?!うわぁ~楽しみ♪」

このパーク、一押しの名物・・・・輝くイルミネーションに彩られたパレードが見れると知って、私は顔を輝かせる。
夕鈴の表情を横目で見た黎翔は、満足気に顔を綻ばす。
そうして黎翔は、やっと自分の手に持ったチュロスを食べ始めた。
途端口の中に甘い味が広がる。

「案外、美味しいな」
「えっ?黎翔さん食べたことないんですか?」
「え?まぁね」

へぇー、そうなのね。
黎翔さんはここのオーナーだから、てっきり食べたことはあるんだと思っていた。
初めて食べる味をじっくりと味わうために会話もせずに、チュロスを頬張る。

「あっ、夕鈴、動かないでっ!」

私は急に掛けられた声に驚いて、動きを止めた。
黎翔さんの顔が・・・・口が・・・・徐々に私の顔へと近付く。

え?

黎翔さんの突然の行為に耐えられなくて、私は薄茶の瞳をギュッと瞑った。
そうすると、私の唇あたりに温かい感触が。
どうやら、ペロッって舐められたらしい・・・・・。

はい??
いま、ペロッて・・・・・・ペロッてっっっ!!!!

私は瞬く間に、一気に沸点へと上昇するかにように両頬が真っ赤に染め上がる。

「夕鈴!ご馳走様っ。可愛いサクランボの唇に粉砂糖ついてたよ」

ウソっ、ヤダ!私、子供みたいっ!
恥ずかしい~~~

身悶える私をよそに、黎翔さんは涼しげな顔で。

「夕鈴、可愛いっ。ほらっ、こっちにも・・・・」

味を占めたようにまた口付けようとする黎翔さんから逃れるのに、私は片手で唇を隠した。

「もう砂糖は、ついてませんよ~~」

口付けしようししていた黎翔さんは私にガードされて、
とても残念そうな表情を醸し出し諦めたように見えた。
私は安心して短く息を吐き出した。

ふぅ~良かった。
これ以上キスされたら、心臓壊れちゃう。

私が油断したその時。
すかさず・・・・チュッと私のおでこにキス。

片手にはチュロス、もう片方は唇で。
逃れる術なんて、無いっ!

「もうっ、黎翔さんっっ!!!!」

私は黎翔さんの突然の行動に驚き、防ぎきれなかった悔しさと恥ずかしさで顔が火照っていくのを感じた。
口付けられたばかりのおでこは軽く熱を帯びている。
私は慌てておでこを手で押さえて、恥ずかしさと熱を少しでも治めようと深呼吸をする。
そして一気に息を吸い込むと、目の前でニヤリと笑う黎翔さんに向かってキッパリと言葉を放った。

「そんなところに、お砂糖はつきませんっっっ。
こんな恥ずかしい事は、もう金輪際お断りです!!!!」

焦って怒る私の絶叫と黎翔さんの明るい笑い声が、静寂のパーク内に響く。
そんな二人の前に、迫りくるパレードの列。

華やかな音楽が高らかに響き、煌びやかなイルミネーションが眩く輝いた。
そして楽し気に跳ねる兎と、整然と行進するトランプの兵たち。
その中で踊るのは、ハートの女王。

煌びやかな一行が近づくにつれて、私の瞳はそこに釘付けになる。
夜のパレードは、七色の吐息。
不思議の国の夢空間。

甘い粉砂糖がけのチュロスを頬張りながら見るパレードに、私は夢中になった。

綺麗に飾りつけられた車には、 不思議な格好をしたおとぎ話の主人公達が。
軽やかなステップを刻み踊りながら、私達に手を降ってくれる。

少し顔を紅潮させてパレードを見つめる私を、隣にいる黎翔さんがさりげなく肩を手を置く。
その所作はごく自然で、私はいつの間にか引き寄せられていた。


ここでデートをすることにして良かった。
円らな瞳をキラキラと輝かせる夕鈴は、凄く楽しそうで。
パレードの音楽に合わせて、リズムをとる姿も可愛い・・・・・・。

黎翔は今回のデート時間を捻出するため今日まで仕事を少々無理してきたが、楽しそうな様子にそれまでの苦労が報われた気がした。

こんなに楽しそうな彼女の姿を見るのは、本当に久しぶりだった。
いつもデートの途中で仕事が入り、『仕方がないですから』と送り出してくれる夕鈴。
でもその瞳は、寂しげな色が宿っていたっけ。
その瞳を見るたびに、ホントに申し訳ない気持ちに苛まされていた。

黎翔はボンヤリと考え込む。
いつも間にか、手に持ったチュロスはすべて無くなり紙屑だけになっていた。

チュロスを食べ終わった黎翔は、そっと夕鈴の耳元へと優し気に囁く。

「夕鈴、楽しい?どうせならパレードに混ざって、僕らも踊ろうか?!」
「いいえ、いいです。 楽しいけど・・・・パレードで踊るなんて恥ずかしいですから」
「そうなんだ、折角なのに、いいの?」
「見てるだけで十分です。だってこんなに綺麗だから」

ニッコリと優しく微笑む、夕鈴。
そして黎翔を見つめる瞳はイルミネーションに彩られ、七色に輝いている。
その瞳に黎翔は、しばし見惚れてしまった。

このまま、ずっと夜が明けずに 君と一緒に過ごせたらいいのに。
こんなに愛らしい君を、ずっと見つめていたい。
朝まで・・・・・いっそ、今夜は帰さないか。

黎翔は、自分の気持ちを実行に移そうかと浅はかな考えがフワリと浮かんだ。

僕の君への想いは、パレードの光のように流れて留まることを知らない。
今日は、僕たちの特別なデートにしたい。
夢のように楽しい、僕たちの最高の夜に・・・・そして思い出に。

僕は、もっと君の笑顔が見たい。
花が咲き誇るような満開の笑顔が。
だからそのための準備を、少しずつ進めてきた。
そして僕の人生をかけた計画は、ここまでは順調だ。
こんなにも楽しそうな夕鈴を見たことは無い・・・・・。

だったら、後は。
最高の時と場所で、『あの計画』を実行するだけ。
失敗なんてするはずはない。
最高へと一段ずつ上り始めているのだから。

待ってて、夕鈴。
君の笑顔を永遠にするから。
だから。

黎翔は、隣でパレードに夢中の夕鈴の腰に手を回してそっと浚う。
今すぐキスしたい衝動を抑える代わりに・・・・・。

パレードの列が、次第にゆっくりと二人から遠ざかり始めた。
光りの洪水が、先へと伸びていく。
その光の一筋が消えるまで、二人は見詰めていた。
そして黎翔は自分の掌に感じる夕鈴の熱を、幸せな気持ちで味わっていた。



続。





つらつらと・・・1113
2015年11月13日 (金) | 編集 |
おはようございます。

久々に『つらつらと・・・』を書きます。
このところ、再録ばかりで申し訳ありません。

どうも、書けない病が完治しないようで・・・・。
2行書いては保存して違うものを書いて、また3行書いては違うものを・・・で完成が全く見えません。

ははは~
と乾いた笑いしか出てきません。

まぁ、しかしながら
コラボ作品の加筆は結構楽しいです。
一緒にコラボしたさくらぱんさんからは『瓔悠の色が出てる』って言われて、何だか嬉しくなりました。
今回のコラボはSNSのコミュ用に書いたものでしたので、
こちらのゲスト様でも一読されていらっしゃる方もいることを念頭に置いて、加筆してますので私色が濃くなるのだろうなぁ~と。
それに今回のコラボは途中からそれぞれ1話ずつ担当して書いたから、加筆している部分は自分が書いてない部分が多いからなんでしょうね~。
最後まで私の思うがままに加筆していきたいと思います。
どうぞ、最後までお付き合いくださると大変嬉しいです。


さてと、話は変わって。
最近、毎週末が子供の行事で埋まっていて
休んだ気がしません。
学校行事に習い事の発表会に試合。
今までが結構ヒマしてたので、あまりの忙しさに目が回りそうです。

先週は学習発表会がありまして、旦那と朝も早よから学校へ。
ウチは3年と6年の二人。
前半と後半で別れていたので、結局最初から最後までいる羽目に・・・・。
でもどちらとも見応えは有りましたが。
特に息子は最後。
口を大きく開けて歌っていたのには感動して、ビデオを撮りながらポロっと涙が零れていたのは、私だけの秘密です。
息子に知られたら、何を言われることか・・・・・・。
まぁ、こういう学校行事って、普段家では見られない子供の成長ぶりを見れるのはホントに良いもんです。

さて、今週の日曜日は息子の空手の試合。
今回はいいところまで勝ち上って欲しいもんです。
その前に土曜日はインフルエンザの予防接種。
はぁ~~~~行きたくない!と思っている母がここにいます。
だって、痛いんだもんっっ!!!!




さてと。
今日は雨の中、お仕事です(雨は関係ないのですが・・・)
頑張ってきます~~~


そう言えば、今日は13日の金曜日。
昔はスッゴク気になっていたなぁ~と、ふと思ったり思わなかったり。



瓔悠。





【兎と僕の攻防戦・6】
2015年11月12日 (木) | 編集 |
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今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   









「なんかもう歩き疲れた~~歩いても歩いても同じ回廊が続いていて更に分かんなくなってきたし、
ここらで休憩しようかなぁ~。
李順さんに頼まれたお仕事も多分上手くいっているだろうし、
何せ記録者は浩大だから、陛下を見失うなんてことはしないだろうし。」

回廊の隅にへたり込んだ夕鈴は、この先どうしようかと思案する。
しかも空腹も覚えてきて、何にも持って来ていないことを後悔していた。

だってこんな場所で迷子になるなんてこと、思いも寄らないし。

夕鈴は疲れ果て壁に凭れ掛かったのだが、運悪くそこが戸口であったこととその戸口が少し開いていたことが原因で、そのまま身体ごとそっくり返ってしまった。
そして夕鈴は埃っぽい床に後頭部をしこたま打ってしまい、そのまま気を失った。


それからどれくらい経ったのか・・・・。
夕鈴は身動きも出来ず、意識の奥で漂っていた。


*****

花の咲き誇る草原で、自分一人が座り・・・いや、隣には穏やかに笑う陛下が。
私は座った傍に咲いている白い花を摘み取り、一輪づつ編んで王冠を作っている。
その顔は大人びており、今よりも少し歳を重ねた自分のようで。
だからこそ分かる・・・これが現実でないことが。
もっとよく見ようと目を凝らしてみると、辺りが霧に包まれ・・・・霧散した。

これは夢だわ。
だったら、誰の?
私?
それを知りたくて、暗闇の中で私は耳を澄まして辺りの様子を感じてみる。

かすかに聞こえてくるのは、元気良くはしゃいでいる子どもの声。
それは少し離れた場所から。
声は・・・男の子一人に、後は女の子二人。

すると辺りがまた明るくなって、私の姿が浮かび上がる。
私が見詰める先は、三人の子供たち。
あのはしゃいでいた声の持ち主たち。

隣に腰かけた陛下は、仲良く走り回っている子供たちを愛おしい眼差しを向ける。
その口元に笑みを乗せて『夕鈴、こんなのを幸せっていうんだよね』と陛下はしみじみと呟いている。
私はニッコリと微笑んで、『はい、そうですね』と返す。
そんな私の言葉に呼応するように陛下は高貴な微笑みを私に向けて、 私の手の上に自らの手を乗せた。

これは幸せな家族の肖像。
訪れるはずのない、私の想いの結晶。
有り得ない未来。


*****



「夕鈴・・・夕鈴・・・・ゆうりん・・・・・・・・」

何処かで、誰かが私を呼んでいる?

「ゆうりん・・・・・夕鈴・・・」 

何だか苦しそうな声。
私、この声を聞いたことが・・・覚えが・・・・。

そしてまた夢の中へ。


*****

明るい日差しの中で微睡む陛下は、やはり今よりも大人の男性だった。
女の子が駆け寄って来て、出来上がったばかりの王冠を私から受取り頭に乗せると一回りして披露する。
『可愛いよ』と陛下が穏やかな声で褒めている。
すると女の子は大喜びで、他の二人に見せる為に駈け出した。

不意に陛下が私を凝視したかと思うと徐々に顔が近付いてきて、唇に暖かい感触が・・・・・・・・・。


*****


「う~~~ん」

なんか暖かい感触と息苦しさに草原の風景は霞みの中に消えて行き、
段々と意識が覚醒してきた。
パチパチと瞬きして目を開けると、真っ先に飛び込んできたのは陛下の紅い双眸だった。

そして、未だ唇にある温かい感触は陛下の唇である。

「きゃぁぁぁぁ~~~~~~」

思わず口から出る悲鳴。
夕鈴の耳をつんざく悲鳴に、黎翔は驚いて飛びのいた。

身軽になった身体を起こすと、後頭部に鋭い痛みを感じて一瞬顔が歪む。
ジワジワ触れてみると、大きなタンコブが出来ている。
どうやら私はひっくり返っていたたしく、床で打ちつけて出来てしまったものらしい。
そんな事を頭の中で整理しながら周りを見渡してみると、
心配そうに揺れる瞳で陛下が私の顔を覗き込んでいる。

「夕鈴・・・大丈夫?」

悲鳴の後、黙りこくっている夕鈴に恐る恐ると黎翔が尋ねる。

「はい、タンコブが出来ているみたいですが、大丈夫そうです」
「良かった~~」

あれ?普通に陛下と会話しているけど・・・・私、何か忘れている様な・・・・。

「あ~~~~思い出した!!!陛下・・・さっき・・・・私に・・・・」
「あっ、ゴメン!僕が何度も何度も読んでも目が覚めない様だから、
口付けでもしたら気が付いてくれるかなぁ~と。
確か、よその国の童話にもあった様にね」

片目を瞑ってニッコリ笑う黎翔に、夕鈴は苦々しい視線を向ける。

「く、くちづけですってぇぇぇぇぇ~~~~~」

夕鈴は驚きの声を上げると、即座に黎翔から離れてワナワナと震えていた。

私の初めての口づけは陛下なの????
しかも意識がない時にぃぃぃ。
私だって、私だって思い描いていた口づけのシチュエーションがあったのよ~~~。

何だかウキウキ顔の黎翔と対照的にどんより沈み返った表情の夕鈴。
二人の様子に背後から笑い声が聞こえてくる。

「へいか、お妃ちゃん、そろそろ戻ろうぜ」

ヒョコッと顔を出した浩大に、夕鈴は慌てて平静を装い部屋を後にしようとする。
その前に黎翔が立ち塞ぎ、そっと腕を差し出した。
その行動に、夕鈴は訳が分からず問うてみる。

「あの・・・・これは、何ですか?」
「いや、疲れているだろうから、抱きかかえてあげようかと」

黎翔は、しれっとすました顔で夕鈴に至極当然だと提案する。

「大丈夫です!私、自分で歩けますから」

夕鈴は申し出を速攻断わり、スタスタ歩き出した。
その様子にお腹を抱えて大笑いする浩大に、黎翔は剣を鞘から少し抜き無言で脅しをかける。
即座に殺気を察した浩大は、笑いを引っ込めて神妙な面持ちで音もたてずに歩く。

それを確認した黎翔は、性懲りもなく今度は夕鈴の手を繋ごうと画策し始めた。
ところが夕鈴はもう流されない!と断固とした覚悟で、その甘美な誘いには乗らなかった。

冗談じゃないわ!!
まだ口付けされたことを忘れてはいないんだから!!
陛下にとっては取るに足りないことかもしれないけど、
私にとってはすっごく重大な事なんだから・・・。

ご機嫌斜めの夕鈴をよそに、黎翔はニヤニヤと口元を緩ませている。

夕鈴の唇って、温かくて柔らかかったなぁ。
これって役得!役得!


そんな二人の想いは交差する事無く、遥か彼方へと離れていったのである。
そうこうしているうちに、やっとこさ後宮立ち入り禁止区域の迷路区域から無事に抜け出すことが出来たのだった。




続。








【アリスの口づけ・3】 光りの中のメリーゴーランド
2015年11月12日 (木) | 編集 |
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この作品は、某SNSのコミュニティにて開催されたハロウィンパーティに合わせて
『花の四阿』管理人・さくらぱん様とコラボした作品を私なりに加筆したものです。

【設定】に表示しております通り、現代パロディの作品となっておりますので
ご注意の上で閲覧くださいませ。








眩しく光るアトラクションが見えるところまで来た時には、繋がれた指は熱を帯びていた。
私はそれが嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、黎翔さんが優しく微笑んでいた。

「ねぇ、夕鈴、アレに乗ろうか?」

駆けてきた衝動でまだ息が整わない私に、黎翔さんが指差すアトラクションはメリーゴーランド。

「えっ?!アレですか?」

私は黎翔さんの指差す先を見詰めて、疑問の言葉で返した。
メリーゴーランドなんて、小さな子供のとき以来乗ったことは無い。

「うんっ!僕、ゆーりんと一緒に乗りたいな!」

手を握られたまま黎翔さんに連れられて、メリーゴーランドの前までやって来た。

そこには、煌びやかな鞍を付けた白馬。
更には、いななき声が聞こえそうな勇猛な黒馬。
何種類もの花があしらわれた馬車。
そして電飾の光にキラキラ輝く七色ガラスで彩られた馬車。

まるでお伽話から抜け出たように美しい色彩に溢れたメリーゴーランド。
煌びやかな電飾に彩られた、メルヘンな光景が目の前に広がる。

「うわぁ~このメリーゴーランド、すっごく綺麗ですね」
「そう??」

自分がデザインさせたメリーゴーランドを恋人に褒められて、黎翔は少し嬉しくなった。

「ではアリス、夢のメリーゴーランドへご案内致しましょう」

ニッコリ微笑んで黎翔さんは、私をさっと軽く抱き上げた。
水色のスカートがフワリと揺れ、私の身体が宙に浮く。
そのままストンと黎翔さんの腕の中にすっぽり納められた。

「キャッ」

急な恋人の行動に、私は小さな悲鳴を上げる。
でも悲鳴くらいで、黎翔さんは私を降ろしてはくれない。
落ちそうになった不安定な身体を、私は黎翔さんの首に腕をまわして支えた。

そして黎翔さんに抱きかかえられたままゲートをくぐり、
一番豪奢な白馬に上にチョコンと降ろされた。

すかさず黎翔さんは私の後ろに跨がると、二人乗りで白馬に乗った。

「なんで?黎翔さん、白馬は他にもありますよ!」
「なんで?って・・・僕は、君と乗りたいんだ!
ねぇ、夕鈴は嫌なの?」
「嫌も何も・・・・・だって今日は貸し切りなのに、何も二人乗りしなくたって」
「夕鈴っっ、こういうのは恋人と二人乗りだから楽しいんだよ!」

後ろから囁かれて、私は耳朶まで真っ赤に染まる。
黎翔さんの低く甘い声に、私はしっかりとつかまっていないと落ちそうになっていた。
そんな私を黎翔さんは後ろからそっと支えてくれていた。

うわっ・・・・ちっ、ちょっっっと、近いっ!!!
恥ずかしい~~。

黎翔の瞳に映る夕鈴は、恥ずかしげに身を捩らせて涙目で訴えている。
それは黎翔にとって、そんな仕草がたまらなく可愛いいと感じられていた。

はぁ、困ったな・・・・あんな可愛い所を見せられたら、ますます困らせたくなる。
もうちょっとくらいならいいのかな。

黎翔の悪戯心は止まりそうもなく、彼女を困らたい気持ちを心の中でたしなめた。


ジリリリ・・・・・
発車のベルが鳴り響く。
夢の世界へと出発。

始まりの合図と共にメリーゴーランドが、ゆっくりと廻りだす。

抱きしめらたままの気恥ずかしさから、私は動きだした白馬から降りようする。
しかしそれを軽く黎翔さんは、抱き直す。

「夕鈴、もう動き出したんだから危ないよ」

黎翔さんは優しく言いながら、どさくさ紛れに私の額にキスした。
私はそのままガタピシと動けなくなっていた。


僕はキスしたとたん真っ赤になった可愛い恋人を抱えて、
くるくると廻るメリーゴーランドを楽しんだ。
何度君を困らせても、このイタズラは楽しい。

僕にとっても、いつ以来のメリーゴーランドだろうか?
久しぶりに乗るメリーゴーランドは、子供の頃とは違う楽しさに溢れていた。

温かくて。
楽しくて。
心躍り。
嬉しい。

きっと、それは・・・・君が僕にくれた贈り物。
僕の恋人、夕鈴。

僕たちは、煌びやかに輝く光の渦に飲み込まれ 、
つかの間の楽しい時を過ごす。
ささやかな愉しみと共に・・・・・。

ここには二人きり。
他に誰もいない。
私の頬を啄む黎翔さんを、誰も止める者も咎める者も居なかった。

メリーゴーランドが止まる頃。
私は、すっかり茹で上がってしまっいた。
腰砕けた私を抱えて、黎翔さんはご機嫌で耳元で囁いた。

「ねぇ、折角だから、もう一回乗ろうか?」

はぁ?冗談じゃないっっ!!!
メリーゴーランドの動く間中、顔にキスの雨を降らせておいて・・・・。
黎翔さんは全くの知らん顔。
こんな恥ずかしい事なんて、二回も出来るはずはないっ。
パクパクと高鳴る心臓が破裂してしまいそうで、
それに恥ずかしさで声さえも出ない。
私は深く息を吸い込んで吐き出した。

「・・・・ぃ・・・・・・いいえ。もう結構です!」

未だ収まらぬ真っ赤な顔で、ピシャリと断った。
黎翔さんは残念そうに、じっと私を見つめてきた。

「・・・・・ダメ?!」

「もう無理です!!なら、黎翔さんだけで、乗ってきてください。
私、ベンチで休んで待っていますから・・・・・」

「夕鈴、それじゃ乗る意味が無いよ。だって、君と乗るから楽しいのに」

黎翔さんは、まだ何か言いたげだったが今度はすぐに諦めたようだった。




続。

【兎と僕の攻防戦・5】
2015年11月10日 (火) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   









その頃。
黎翔は、いくら探しても見つからない寵妃を想いイライラし始めていた。

「大体こんなに探しても見つからないとは有り得ない。
となると、これは李順の仕業だろうな・・・一体何がしたいんだアイツは」

誰もいない回廊で、黎翔は独りごちてみる。
刹那、頭上の木々が騒がしく震え自分だけの気配では無くなった事に、
何かが有ったのだと思わず身構える。
それが知る気配だと気が付くと、剣に軽く触れていた手を離して短く息を吐く。
 
「浩大だな、何があった?」

問い詰める声は、狼独特の鋭利で他人を跪かせる威圧感を醸し出していた。

「いや・・・・なんと言っていいのか・・・・」

浩大も狼の牙の餌食にはなりたくはないらしく、言葉を選んで報告しようとなりシドロモドロになる。
それが黎翔の癇に障ったらしく、更に語尾が強くなる。

「浩大!夕鈴に何かあったのだな。どうなんだっ!!」

浩大もこれ以上隠しておけないし端的に言わないとヘタしたら剣の錆になり兼ねないと懸命な判断をして、即座に黎翔に報告する。

「それがお妃ちゃんの護衛についていたヤツからの報告で、どうやらお妃ちゃん迷子になったらしいです。
後宮立ち入り禁止区域で・・・」
「後宮立ち入り禁止区域か?」
「まぁ・・・・そこなんだけどね~但し・・・・・」
「思いたくはないが・・・もしかして、あの場所か?」
「そう、その場所だったり~」
「あれは侵入者は阻むために作られた、迷路区域じゃないか!
きさま!それを、先に言えっっ!!」

言い終わる前に、黎翔は後宮へと走り出していた。
風を切るように。
かの場所へと。

後宮立ち入り禁止区域の入口に老師が佇んでいた。
それは、迷子になった夕鈴を探索にくる人物を。
しかしそれが珍しく息を切らせながら駆け込んできた黎翔の姿だった事に、老師は目をパチクリさせ驚いた。

あの狼陛下とも呼ばれている陛下が、たかが掃除娘が迷子になったくらいで飛んでくるとはホンに珍しいものじゃ。
これは、臨時じゃの何じゃのと側近眼鏡は言ってはいるが・・・・・・実のところは。

「一体これは、どう言うことなんだ!!!」

老師を見つけると、黎翔は開口一番老師に怒鳴りつける。
その余りの気迫に老師はすっ転んでしまい、お尻を擦る。

「後宮立ち入り禁止区域一帯は、老師の管理下のはずだがっっ。
何故、夕鈴が迷路区域になんぞに入り込んでいるんだ!」

黎翔の怒りに押されながらも、老師は言葉を選びつつ黎翔の様子を探る。

「陛下は、よほどあの掃除娘が心配とみえますな。
わしはあの娘には言っておいたんですがの、余り奥には行かんようにと・・・・」

背には青白い炎を纏い、瞳はいつにも増して深い紅に彩られている。
黎翔の表情は怒りの面となり、視線は老師を真直線に射貫く。
その様子に老師は『クワバラクワバラ』と唱えながら気休めとも取れる一言を黎翔に投げ掛けた。

「まぁ、陛下・・・・あの迷路区域は何日も出れない様な設計には為っておりませんぞ。
この後宮管理人たるわしが太鼓判を押しましょうぞ」
「ほぉ、では老師、聞くが迷路の道順は把握しているのか?」
「道順ですと?・・・・年寄りな故に忘れてしもうたわい。
大丈夫じゃよ、あの娘は頑丈に出来ておるしそのうち出て来るじゃろう」

無責任な言葉に流石の黎翔も口が出せなくなった。
もう老師は当てにならないと悟った黎翔は、そこらに控えているであろう隠密の名を当然の様に呼ぶ。

「浩大、今から奥へ進んで行くので付いて来い!!」

天井から軽々と降りてきた浩大は、神妙な面持ちで黎翔の前に跪く。
夕鈴を見失った件に関しては任命していた隠密の責任であるのだが、
その人選をしたのは浩大であり流石に少し責任は感じているらしい。

「あっそうだ、老師・・・言い忘れていたが、
私が戻って来るまでには道順を示した書簡を見つけておけ!いいなっっ!」

紅い双眸がいつにも増して深紅に光っており、『否』とは言えない状況を作り出していた。
もし見つけられなかったのならただの処罰では済みそうも無く、
老師は慌てて後宮書簡書庫へと文字通り小走りで回廊を右へ曲がって行き、辺りは音もなく静まり返った。

そして黎翔はその後ろ姿を見詰めながら昏い笑みを落とし、そのまま踵を返して奥へと進んで行った。



***********



「はぁ~~なんでこんなに似たような造りなのよ~~全く広過ぎて訳が判んない~~。
昔の王さまは、絶対に迷って目当ての女性じゃなくて別の女性の部屋に入ったりしていたわよ、絶対!!」

夕鈴はここが侵入者を阻む目的でワザと同じような作りにしているなんて、
後宮事情に詳しくないので知る由も無い。
ここが迷路であることなんて思いも寄らない夕鈴は、出口を目指して先に進む。
それがまた奥へと誘われているなんて、気づきもしないで・・・・。

しかしさすがにこうも出口に辿り着けなくなると、夕鈴も不安を覚えてくる。
この状況をどうにかしないと・・・と少し焦っていたのだが『焦りは禁物』と言い聞かせ、
別の事に想いを馳せていた。
そして、歩みは止めずにトコトコ、テクテク長い回廊を一人彷徨っていた。


後宮立ち入り禁止区域の奥深く、迷路地帯・・・・・・そこに二人の男性が入り込んでいた。
老師と別れ、足早にやって来た黎翔と浩大である。
この迷路地帯は幾重にも分かれ道があり、実のところ夕鈴が通った道がどれであるのか?見当もついてはなかった。
だから、しらみつぶしに幾本もの道を辿ることになる。
それでも、黎翔はそれを厭うことなく夕鈴を見つけ出すために進む。
そして不意に思い出したように、後ろから付いて来る浩大に声を掛けた。

「浩大、此処までの道順はシッカリと覚えているんだろうな」
「勿論っすよ。オレに任せて~」
「そうか・・・・では、引き続き頼んだぞ」

そう呟くと黎翔は黙りこくって、ただ先へと歩み続ける。
夕鈴の無事を想い、その花のような笑顔を思い浮かべながら。

ふぅ~ん、どうやら陛下はお妃ちゃんの事を心配の余り、此処までの道のりを覚えてないらしな。
めっずらしい事もあるもんだよ、あの人にしては。
まぁそれだけ本気ってことなのかね~~。

黎翔は後ろから付いて来ている浩大の事なんて全くお構いなしに、かなり早い速度でスタスタ歩いて行く。
浩大も遅れないように、且つ帰りの道順をシッカリと頭に叩き込みながら付いて行くのだった。




続。







【アリスの口づけ・2】 ドレスアップ
2015年11月09日 (月) | 編集 |
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「どうして、誰も出てこないのかしら?」

さっきからの疑問が、つい口から出ていた。
私が不思議顔で考え込んでいると、それに気付いた黎翔さんが説明してくれた。

「あれぇ?!夕鈴に伝えてなかったっけ?
ここは僕が所有する遊園地だよ。
で!今夜は、夕鈴と僕だけの貸切にしたんだ」

嬉しそうな黎翔さんの表情に比べ、私は難し顔に変貌する。
貸し切り?
こんな大きな遊園地を?
しかも今話題の遊園地で、平日とはいえどかなりの集客力があるのを返上してまで?

そんな私に黎翔さんは甘く囁いてくる。

「夕鈴、たまにはこれくらいさせて欲しいんだ。
だっていつも会えなくて寂しい思いをさせているし・・・デートだって満足にできないし。
ホント、ごめんね」

しょんぼりとし始めた黎翔さんを見て、私は慌てて手を振りながらフォローの言葉を発する。

「とんでもないですっっ!!忙しいのは私だって分かっていますから。
別に寂しいなんて、私はひと言も・・・・・・痛っ!!」

ギュッ。
黎翔さんの抱き締める力が一瞬強くなり・・・・・・私は、痛さで悲鳴をあげた。

「夕鈴、強がらなくていいよ・・・僕は知ってるのだから。
優しい君が、寂しい思いを我慢していることを。
それに僕も、君に会えなくて寂しかったんだ。
恋人なのにね・・・・」

ポツリと呟いた黎翔さんの寂しそうな声に 、私は肩越しで振り向いた。
黎翔さんの切なげな深紅の瞳と、私の傷ついたような薄茶の瞳とが絡み合うようにかち合った。
しかし深紅の瞳はいつもの輝きが戻り、小犬のような明るい瞳が見え始めた。

「あのさ、僕は久しぶりのデートだから、今夜を楽しみにしてたんだ!
だから今夜は、いっぱい遊ぼうね、夕鈴!」

私より年上で世界中を飛び回り、その辣腕ぶりで『狼陛下』と呼ばれている黎翔さん。
いつも忙しくて時間の取れない彼がわざわざ私とのデートの時間を作ってくれたのだと思うと、
それだけでジンと胸の奥が温かくなりすっごく嬉しくなる。

「ありがとう、黎翔さんっっ」

ニッコリと微笑んだ私に、黎翔さんが無邪気な小犬のような笑顔を返してくれた。
いつもは大人びた彼なのに、今日はホントに子供みたいで・・・・・そんな彼が眩しく見える。

なんか今日の黎翔さんって、可愛い。

黎翔さんの嬉しそうな様子に、私もつられて嬉しくなる。
ドキドキ……と、心臓が跳ねてウキウキ踊りだす。
ハミングと、スキップを同時にしたい気分!

今から始まる遊園地デートに、いやでも期待が高まってくる。

「さあ、遊ぼう、夕鈴!ほらっ、時間が勿体無いよ!」

黎翔さんは私の手を引きながら、テーマパークのゲートを二人でくぐって中へと入った。

ホントっ、子供みたいだわ。

もう1分1秒ですら待ちきれないといった雰囲気で、今にも駆け出しそうな彼の様子に私はクスリと笑みが零れた。
そして私は考える。

そういえば、外で待ち合わせてのデートって・・・これが初めてかしら?!
いつもだと、黎翔さんが家まで迎えに来るか、学校の近くまで迎えに来てくれていた。
でも途中で仕事の呼び出しが入ったり、いいところで邪魔が入ったりしてデートは中止になっていたのよね。
折角の貸し切りなんだし、今日はそんなこと無いといいな~。

私の胸の奥でチラリと掠めた不安を、黎翔さんの楽しげな笑顔が打ち消してくれた。

今日は黎翔さんの雰囲気が、いつもと思うのは気のせいかしら?!
久しぶりのデートだからかな?
うん・・・・きっと、そうね。だって、私もドキドキしてるもの。

握られた大きな手を握り返して、遊園地のゲートを先に進んだ。
入ってすぐに黎翔さんから握られた大きな手をパッと離されて、私は大きく戸惑った。

「・・・・黎翔さん??」
「夕鈴!ここは不思議の国のアリスのテーマパークだから、 ここからはしばらく男女別々だよ。
ゲストは、アリスの登場人物になりきって遊ぶんだ。 ほらっ、あの建物で着替えておいでよ。
僕も着替えて、向こうの出口で待っているね」

イタズラっぽい笑顔を残して、黎翔さんは男性用の入り口へと姿を消した。
私も促されるまま、女性用の入口へと進んだ。


「「「いらっしゃいませっっ♪
Alice in Wonderlandに、ようこそ!」」」

建物に入ると、コミカルで軽快な衣装を身につけた3人のお針子さんたちが私を待っていた。

「いつもだと、お客様に好きなご衣裳を選んでいただくんですけど」
「今日はオーナー直々の指示がありまして」
「お嬢様には、こちらのお衣装に着替えていただきます」

3人のお針子さん達が代わる代わるこの状況を説明する。
そして手に持った可愛い衣装を手際よく、次々と着用させていく。
その間私はなす術もなく彼女らになされるがまま、身動き一つ出来なかった。
気が付けばあっという間に、私の衣装は見事にチェンジさせられていた。

ふわりとした水色ワンピース。
白いエプロンをつけて、スカートの中にはご丁寧にドロワースまで穿いている。
長い薄茶の髪は丁寧に梳られて、半分だけ結い上げた髪にワンピースとお揃いの水色の大きなリボンが飾られていた。

鏡の中に映る私は、すっかりお伽の国のアリスの主人公そのものだった。


「とても、お似合いですわ♪」
「さあ!オーナーが外でお待ちです♪」
「行ってらっしゃいませ、アリス様」

「「「楽しい夜を!!!」」」

お針子さんたちは楽しげに歌い踊りながら、にこやかに私を送り出してくれた。

煌びやかな夜のイルミネーションと楽しげなBGM。
出口から出た私を待っていたのは、発光きのこが弾む不思議な世界。

そこに佇んでいたのは、シルクハットの背の高い紳士が一人だけ。
柔らかな黒髪を夜風に靡かせて、帽子を取り軽くお辞儀をする私の恋人・・・黎翔さん。

「やっぱり、ゆーりんは可愛いね♪ まるで本物のアリスみたいだよ」
「いえ、黎翔さんもカッコイイですっっ!!!」
「そうかい?ありがとう。
僕は、帽子屋だよ。それも君だけの・・・・夕鈴だけの専属のね」

イルミネーションに優しく煌く黎翔さんの紅い瞳が綺麗で。
微笑む黎翔さんの微笑みが優しくて。

私は思わず、ぽぉっと見惚れてしまっていた。

「さあ、行こうか!僕のアリス。ほら、手を出してっっ!」

差し出された黎翔さん手に自分の手を重ねる。
二人だけのロマンティックなシュチエーションに、否が応でも期待が高まってくる。

近くのカラクリ時計が、賑やかに鳴った。
これはドキドキのアリス・デートの始まりの合図。
煌びやかな色彩に煌く噴水が立ち昇り、それはまるで星が落ちてきたかの様で。

「帽子屋さん!!行きましょうっっ!!」

私たちは、噴水とカラクリ時計が終わる前に不思議の国へと駆け出していった。



続。














【アリスの口づけ・1】 夕暮れの待ち合せ 
2015年11月06日 (金) | 編集 |
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眩い西陽が、私の影を伸ばす・・・もうすぐ陽が暮れようとしている時間帯。
夕闇が迫る空は、淡いラベンダー色に染まり出していた。
凄く綺麗で、私は思わず見上げて暮れ行く空を堪能する。

「この時間帯はいつも忙しくて空なんて見上げてる暇はないから、
夕暮れの空がこんなに綺麗なんて忘れてしまっているのよね~」

まだ空には星はない。
でも灯り始めた街の灯りが、煌く星のように一つずつ増していく。

そんな時刻に何故か私は話題のテーマパークの入り口で、ひとり佇んでいた。
テーマパークの入口ゲート前の時計は、午後5時半を指している。
黎翔さんとの待ち合わせ時間は、確か午後5時だった。
なのに、いくら待っても黎翔さんの姿は何処にも見えない。

段々、本当に今日のこの時間に待ち合わせだったのか?と不安がよぎる。

「遅いなぁ~~ ホントにここで良かったのかな?
黎翔さん、どうしたのかしら?」


左右どちらの道から来るのか分からなくて、首を左右に振りながら待っている。
そんな私の顔は、きっと待ち人顔のはず。

普段忙しい黎翔さんからの急な誘いで来たというのに、誘った本人はまだ来ない。

【明日の5時に遊園地前で】

珍しく 用件だけの短いメール。
メールを読んだ私はクスリと笑みが零れる。

よっぽど忙しいのかしらね~私的には嬉しいんだけど、無理してほしくはないんだけど。
でも久々のデートだから、やっぱり本心は嬉しいのよね。

そう思ってしまうのは、大好きな彼を思うからこそだったけれど。
こうして実際デートの誘いがあると、やっぱり ウキウキしてくる気持ちを私は抑えられなかった。
そんな私は中々寝付けない夜を過ごす羽目になった。

私がボンヤリ昨日のことを思い出していた時だった。


ドン っっ!!!!

「んぎゃ!!だっ・・・誰っ???」

急に背後から、ギュっと抱き締められて大きな衝撃が身体を走る。

もしかして、ち・・・痴漢っ?
えっ、こんな道端で???
私・・・・むね、・・・胸触られてるぅ!!

「ちょっと!いい加減・・・・・・」

私が叫ぼうとした瞬間、私の耳に届く聞きなれた声。

「夕鈴っ、ごめん!!お・ま・た・せっ!」
「黎翔さん!?」

一瞬、心臓が止まったよ~~黎翔さんのバカッ!バカッッ!!


右でも左でもなく突然背後からギュウギュウに抱きしめてきた恋人に、
私は物凄くびっくりしたのだった!

嘘でしょ?!
なんで……後ろからなの?
更に胸触っていたわよねっ!

「黎翔さんっ!驚かさないで下さい!!」


予想もつかない方向からの突然の恋人の出現に、ドキドキ早打つ動悸が治まらない。
まだ治まらない心臓は、自分の耳の奥で耳障りな音を立てていた。
次第に潤む私の瞳は大粒の涙を溜めたまま、彼に抗議した。

「もうっ、心臓が止まるかと思いました!
もっと普通に来てくださいっ!普通にぃぃぃ!」

「で、いつ?いつ、来たんですか?」

「私、左右の道を見てましたけど、車も人すらも通りませんでしたよ?」

「しかも後ろから来たということは、遊園地の中から来たんですよね!
私が 待ち合わせの場所を間違えました?」

矢継ぎ早に黎翔さんに質問をしてしまうのは、この恥ずかしい状況を一刻も早く改善して欲しいから。

黎翔さんの腕の中にすっぽり納められた私の身体を、
即刻離してもらおうと身をよじって努力してみたものの・・・・所詮無駄だった。

私を強く抱き締めて離してくれない恋人は、楽しそうにクスクスと笑いながら私の耳元で囁いた。

「夕鈴は、間違えてなんかないよ。時間に遅れたのは悪かった・・・・・・」

ヒャアアアア~~~~声無き悲鳴。

久しぶりに会う恋人からの生の囁き。
腰砕けそうになる色気ある魅力的な声が、吐息混じりに耳を嬲る。

ここは遊園地の入り口で、こんな往来じゃあ人の目もある!
お願いだから、早く!兎に角早く私を離してちょうだいっっっ。

そんな恥ずかしい状況と久しぶりに出会えた喜びとで、私は林檎のように顔が染まるのが分かった。

しかしふと辺りを見渡すと、何故か私と彼の二人しかここには居ない。
平日の夕方とはいえ、いま巷で話題の遊園地。
何故か園内から出て来るお客さんも、一人も居ないことが不思議だった。




続。












お詫びです
2015年11月05日 (木) | 編集 |
こんばんは!!


ブログ完全放置でスミマセン。
更に少し考えたいことがありまして
閉めてました・・・・。

でも解決なんてしないんです。
それは一番自分が分かっているんですよ。

だから、閉めたからって
何も前には進めない・・・・・だから開けます。

ご心配をしてくださったゲスト様、
有り難うございます。



そしてここでお詫びです。
手首負傷で、しばらくキーボード打ちを控えていたり
サポーターをはめて家事や仕事などしていたおかげで
ほぼ完治しました。

そしてそろそろ返信を・・・・・・と思っていたんですが。
私が手首負傷前から溜め込んでいたコメント返信が
正直、どこまで返信したのか?追えなくなってます。

頂きましたコメントは大切に読ませて頂いてます。
ただ、今回ここでリセット・・・という形で
個別返信を省力させていただきたいんです。

これは私の身勝手な言い分なのですが・・・・。

折角コメントいただいたにも関わらず、
大変申し訳なく思ってます。

でもいただいたコメントは私にとっての宝物です。
本当に有り難く思ってます。


何卒ご理解くださいますよう、お願いいたします。
そして今後ともこちらのブログを宜しくお願いいたします。



瓔悠。