【ちょこれーとのその味は?】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しをしております。

2月14日はバレンタインデー。
こちらのSSSはその際に書いたモノです。








「ほら、これは大丈夫だから、夕鈴にもお・す・そ・わ・け。
口を開けてっっ」

夕鈴の耳元だけに甘く響く重低音の声。
勿論それは我が夫(仮)の声で。
周りの誰にも聞こえない事をいいことに、小犬のおねだり声。

「はい・・・では、頂きますね」

黎翔の形のよい指先から放りこまれたのは、ちょっとほろ苦くとろけるモノ。
口の中で、直ぐに溶けて喉を滑り落ちていく。

「これは?」
「ああ、これは先程献上された物で異国の菓子『ちょこれーと』と言うものだが。
珍しいモノだから妃にも食べさせたいと思い、まずは私が試食してみたのだ」
「ありがとうございます」

ボフッと音を立て、首筋まで真っ赤に染めながら夕鈴は必死に可愛い妃を演じる。
例によって政務室の定位置の黎翔の膝の上で繰り広げられる、国王夫婦の仲睦ましきやり取り。

それを仕事の片手間に横目で見ている官吏たち。
周りに気がつかれない様に嘆息を吐く者もいる。
あまりの仲睦ましさに、見惚れている者さえいる。

そして。
その中で苦々しく、二人の姿を見ている者は約2名。
それは、勿論李順と方淵である。

全く、陛下のお戯れも大概にして欲しいモノですね。ほら、お手が止まってますよ!!
これじゃ今日の分の政務は進まないではないですか!!!
何のためにバイト娘を政務室に置いていると思っているんです?
それはキリキリ陛下に働いてもらう為なのであって、二人のイチャつきをモテナイ官吏に見せつける為ではないのですよ!!

李順は眼鏡の奥の眼光鋭く、夕鈴目がけて無言で『陛下に仕事をさせなさい』と圧力を掛けていた。

そして、もう一方の方淵は。

あの妃は、全く陛下にあの様にしなだれかかって・・・・陛下はきっと迷惑だとお思いに違いない!!!
もっと陛下の思いを汲み取れないというのか!!

方淵の目には夕鈴が甘えているとしか見えないらしく、
夕鈴に苦々しい視線を送っていた。

陛下の過剰な夫婦演技に辟易しているのは、夕鈴の方だというのに・・・・・。

そして、その後も政務室で繰り広げられた『陛下の寵愛の深さ見せつけ』は永遠と続けられ、夕刻前にやっと解放された夕鈴はヘトヘトで早々に寝室で休んだのだった。

そして夕鈴は夢を見る。
『ちょこれーと』を持った黎翔に執拗に追いかけられる自分を・・・・・。





終。






2013.02.14 SNS初載




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【花散歩を君と】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
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掃除婦のバイトも真冬は身体の芯までもが冷え切って辛かったのだが、
このところの暖かさに春の訪れを肌で少し感じ始めた。

このまま暖かくなってくれれば良いのだけど・・・。

夕鈴は汚れた水を捨てるために、井戸の傍の排水場にやって来た。
この水を処理すれば、今日のバイトは終了だ。

庭に目をやると、今日は眩しい陽光が優しく降り注いでいる。
まだ太陽は中天に達してはいないがそこらかしこに光りを分け与え、
キラキラ眩しく反射している。

「折角の貴重な晴れだから、お昼からは散歩でもして過ごそうかしら」

手にした空の桶を軽く振りながら足取りも軽く、
掃除道具を所定の場所に仕舞い込み素早く着替えたのであった。

自室に戻ると戸口にずっと待機していたらしい侍女さんが私を見るなり、
ホッとした表情を浮かべている。

それがどうも気になり、徐に聞いてみる。
理由は何となく分かっていたのだが・・・。

「あの、如何なさいましたか?もしや・・・」
「お、お妃さま!ようございました、お戻りになられて。
それが陛下が、陛下が・・・お待ちになられていらっしゃるのですが」

夕鈴の話が終わる前に、侍女は慌てて夕鈴の言葉を遮った。
主である夕鈴の話を遮るだなんて事は本当に珍しく、よほど慌てているとみえた。

「そうですか、落ち着かれて大丈夫ですよ。
どちらにおいでですの?」
「は、はい!居間で御待ちでいらっしゃいます」
「分かりました、参りましょう」

最近入ってきたこの侍女は黎翔が後宮にやってくるのを極端に恐れているらしく。
今日も予定外に黎翔がやって来たのに肝心の夕鈴が出掛けていたので、
ずっと夕鈴の帰りを戸口で待っていた様であった。

居間に行くと、長椅子に優雅に腰掛けている黎翔が目に入ってきた。
夕鈴はゆっくりと傍に歩み寄り隣に腰掛けると、甘い声で黎翔に言葉を紡いだ。

「陛下・・・今時分からのお越しとは思いがけないものですから、
出掛けておりました事お許し下さいませ」
「いや、私が触れも出さずに来たのがいけないのだから、気にせずともよい」
「まぁ、有難うございます」

今日の夕鈴のお妃演技は冴えわたっており、周りに控える侍女達もポーと見惚れるばかりである。
その視線に夕鈴も気がついており、ボロが出ない様にと心持ち緊張する。

「ところで陛下、如何なさいましたのでしょうか?」
「いや、今日は珍しく午後から時間が空いたので、愛しい君と過ごしたいと思ったのだが」
「そうでしたの・・・嬉しいですわ。では昼餉は四阿に用意してもううことにいたしますわ」
「そうだな」

黎翔の決定に夕鈴は侍女に目配せをして、お願いをする。
すると二人の会話を聞いていたこともあり、侍女達は直ぐさま準備に取り掛かりその場から居なくなったのだった。

誰も居なくなったのを確認して夕鈴は大きく深呼吸し、黎翔から少し離れて座り直した。
そしていつも通りの声音で、黎翔に話しかけるというか確認したのであった。

「陛下・・・・一つ聞いておきますが、お昼から政務が無いというのは本当なのですか??」
「え~~~夕鈴は僕がサボっているとでも言いたいの??酷いよ~~」

黎翔も二人きりになったので、纏うオーラを狼から小犬へと変化させる。

「そんなシュンとした態度に騙されませんよ!!
またいつものように抜け出して来られたのであれば、
李順さんが探しに来られる前にお戻りくださいねっっ」
「もう、夕鈴は李順の回しものなの??」
「そうでは有りませんが・・・」
「大丈夫だよ。今日提出され書簡はもう一度官吏達で審議する必要が出てきたから、
李順の立席のもと再審議されているんだ。だから僕はその間お休みだよ」
「そうなんですね」

夕鈴は黎翔の嬉しそうな顔を見ていたら、気持ちの奥底が暖かくなるのを感じていた。
そして知らず知らずの内に微笑んでいたのであった。

「では、陛下・・・今日はお天気もいい事ですから、散歩にでも行きませんか?」
「今私から愛しい妃である君を誘おうと思っていたのに、先を越されてしまったな」

知らぬ間に、また隣りにぴったりと寄りそって来ていた黎翔が夕鈴の柔らかい手を取り重低音の声音で甘く囁く。
それを夕鈴も敏感に感じ取り、瞬時に項まで真っ赤にして俯きつつ呟いていた。

「誰も居ないのだから、演技は必要ないというのに・・・・・」

夕鈴の反応を見てると本当に飽きないよね、
可愛くって。
何処か二人だけの所に連れていって日がな一日愛でていたくなる。

「じゃあ、夕鈴!早速行こうよ」
「はい!!!」

同時に立ち上がり、部屋を後にして庭園へと向かった。



肩を並べて歩く庭園は降り注ぐ陽光がまんべんなく包み込み、寒さは感じなかった。
今日は本当に冬の中休みの様で、そよぐ風も心地良い。

「陛下・・・何処に行くんですか?」
「そうだね、夕鈴は何処か行きたい所があるの?」
「私ですか?実は、今日お掃除バイトをしていたのですが、遠くから風に乗って芳香が香って来たんですよ。
それが何か確かめたいんですが!!」

夕鈴は隣の黎翔に向かって、満面の笑みを見せる。

もう、夕鈴!!無意識にその可愛い笑みを振り撒かないで欲しいよ。
目が離せなくなってしまうんだけど。

「じゃあ、そうしようか」
「はい!!」

2人は連れ立って、まずは芳香が香ってきた井戸へと向かう。
井戸につくと、確かに風に乗って優しい香りが漂ってくる。
黎翔はこの香りに覚えがあった。

「夕鈴・・・確かにいい匂いだね。僕、分かったから案内してあげるよ」

そう言うと、黎翔はさり気無く夕鈴の手を取りシッカリと自分の手に絡め、先に歩いて行く。
黎翔の手の温かさを自分の指から掌から感じ取り、
胸の鼓動が早鐘の様に高鳴り耳奥に響いていた。

「・・・・・あの、何の花なんですか?」
「それは、行ってからのお楽しみだよ」

夕鈴は繋がれた手を払いのける事は出来ずに、
ただ先に行く黎翔に付いて行くだけだった。

少し歩くと小高い丘に辿り着き、目に入って来たのは今を盛りと咲き誇る蝋梅の木々であった。

その木々に咲く黄色の花々は、陽光に照らされてキラキラと輝いていた。
小さな可憐な花たちは芳香を放ち、存在感を辺りに振りまいていた。
その花景色に夕鈴はしばし見惚れて立ち止まったまま、
大きく息を吸い込みその香りを胸一杯取り込んだ。

「夕鈴・・・どう?」
「はい・・・・・素敵過ぎて・・・・・案内して下さって有難うございます」
「この花は、蝋梅(ろうばい)といって今時期に咲くんだよ。
『”蝋細工”のような梅に似た花』から『蝋梅』という名になったらしいよ」
「そうなんですか・・・・・・」

夕鈴はそれだけ言うとまた佇み、しばしその花景色を眺めていた。
そして徐に歩き出し、その木々の傍近くに行って愛でていた。
その様子を黎翔は少し離れた所から見ていた。
その紅い瞳に映し出されていたのは、今にも木々に溶け込んでしまいそうな愛しい妖精の姿で。
それは言わずと知れた夕鈴の姿。

「夕鈴・・・・・いつまでも君のその愛らしい姿を眺めていたいよ、花の精の様な君を。
離さないよ、僕は・・・ね。必ず君を僕に向かせてみせるのだから。
覚悟していてね、夕鈴」

黎翔は、気がつけば独り言を呟いていて。
その間も夕鈴は、静かな蝋梅園をゆっくりと散策していた。
黎翔が、そんなことを呟いていたとは気づきもせずに。
ゆっくりとゆったりと時は流れていったのであった。


もしかしたら、可憐な黄色の花々は知っていたのかも知れない。
この何年か先、夕鈴はシッカリとした絆で黎翔と結ばれる事を。

その蝋梅の花言葉の『先見』で以てして。



終。



このSSSに出てくる蝋梅・・・・ソシンロウバイ(素心蝋梅)1月から2月にかけて黄色い花を付ける落葉広葉低木です 




2013.02.08 SNS初載





【自己嫌悪兎に愛の手を】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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「きっと陛下も呆れてる・・・よね・・・」

雑巾用の水汲みに、一番近い井戸を目指すがその足取りは・・・心無しか重い。
井戸につくと、直ぐに備え付けの桶を井戸内に垂らし汲み始める。
これまた結構大変な一労働なので、何度も来なくていい様に少し大きめな桶を持ってきたのである。
そして汲みながら、もの思いに耽る。

今更だけど、久々にやらかしてしまった。
李順さんは半ば呆れた視線を私に向けてた。
陛下も多分・・・きっと。

「はぁ~~~~」

何度目かの大きな嘆息と共に肩が落ちていく。
やらかした事とは、久しぶりに行われた官吏総ぶれでの私がやってしまった失敗を差している。

官吏総ぶれとは、年に2度ほど官吏の転属時期に王宮に仕官している全ての官吏が一同に会し、陛下よりお言葉を賜る王宮では重要な行事。
それには、唯一の妃である夕鈴も普段より着飾って列席するのである。
そこでやらかしてしまったのだ・・・官吏達の前で、すっこけててしまって陛下に支えられるという大失態を!!

思えば、あの鞜と服が原因で。
あの履き慣れない飾りがゴテゴテ付いていた鞜。
そしていつもよりも長い丈の服。
その慣れない二つの原因によって、裾を踏んでしまった。

倒れ込んだ身体は、もう自分の力ではどうすることも出来なくて、
陛下に抱きかかえて貰うなんてみっともないことになった。

居並ぶ大臣や官吏はきっとこんな妃は陛下には相応しくないと騒めき。
だからやっぱりウチの娘や縁者の方がいいと、コソコソと話している声までも聞こえてくる。

また陛下にとって頭の痛い問題がやってきそうだなんて、
李順さんに言わせれば『なんの為の臨時花嫁なのですか?』となるだろう。

考えれば考えるほど、申し訳なさと情けなさがこみ上げてくる。
だからここ・・・・・後宮立ち入り禁止区域に逃げて来たのだ。
ここなら、私は妃で無くていいから。
タダの掃除婦になれるから。

侍女さん達はあの着飾った姿で陛下が来るのを待ってて欲しそうだったけど、
私はもうこれ以上思い出したくなくて直ぐに普段の姿に戻してもらって、
少し散歩に出る旨を伝えて来た。
掃除婦の姿になるとようやく少し落ち着く事が出来た。

この姿が落ち着くし、一番しっくりとくる。
根っからの庶民だからなんてことは自分でもよく分かってる。
所詮紛い物の妃であると言う事が・・・・。

どんよりとした気持ちが、自分を深海の底へと沈めて行く様な感覚に捉われる。

「ここで、こうしてても埒が明かない。
さぁ~て、張り切って掃除!掃除!」

自分に発破を掛けて、汲み終った桶を『よいしょ!!』と掛け声と共に持ち上げる。
しかし手にどっしりと重みが掛かり、ヨロヨロしてしまう。

どうやら、水を汲みすぎたようだ。
でもまた井戸に戻すのも時間の無駄なので、そのまま運ぶ事にした。
それに桶は持てないほどではないので両手に力を込めてシッカリと持ち、
零さない様にゆっくりと回廊を歩き始めた。

ヒタヒタヒタ。
チャプン、ピチャン。

静かな回廊に、自分の歩く足音と桶の中で跳ね上がる水の奏でる音が響く。
その音にもう一つ、静かで微かな足音が加わった。

そして重かったはずの桶が、急に軽くなった。

「・・・・誰っ??浩大??」
「誰が浩大だ!私だ」
「へっ、へいか~~~~~何してるんですか?」

今一番、会いたくない人物だった。
だから『陛下』では無く、『浩大』だったのだ。
その黎翔はと言うと、浩大と間違えられたことが気に食わないらしく、し不機嫌になっていた。

「こんな重い桶を一人で持って、何をしてるんだ」
「何って・・・掃除です。だって今は掃除婦ですし」

夕鈴は余り構って欲しくないと、黎翔の方は見ないで淡々と答えた。

「ほら、私が持って行くから手を離して」
「そんな陛下にこんなものは持たせられませんから、陛下の方こそ離して下さい。
一人で大丈夫なんですから」
「強情を張らないで、ほら!!」
「いいですからっっ」

そこで立ち止って、自分が、いや自分こそが・・と言い合いになっていた。

「どうして、君はそうなんだろうな」

嘆息を吐くと同時に、夕鈴の桶を握った手の甲を優しく撫でる。
そして軽くパシッと叩いて、手を離させた。

そのまま桶を床に静かに置くと、夕鈴の薄茶色の瞳を見据えた。
でも叩かれた当の本人は、目を見開いていた。
そう、夕鈴は黎翔に叩かれた事に驚いていたのだ。
黎翔は紅い瞳に優しさを称え、仕方ないなぁ~と肩を竦め微笑んだ。

その驚きに落ち着く間もなく立ち竦む夕鈴に、黎翔は黙って抱き締めた。
軟らかい薄茶の髪から香る甘い香りにくらくらと為りながらも、耳元に囁いた。

「夕鈴・・・さっきの事は全く気にしなくていいんだよ。僕は可愛かったと思うし、嬉しかったんだから。
君が気にしてるように見えたから後宮に足を運んでみると、
もう着替えた上に散歩に行ったって事だったから・・・探したんだよ」
「でも・・・・あれじゃ、何のためのバイト妃なんだか・・・」

夕鈴は必死に抗いながら、申し訳無さげに小さく呟く。

「僕がイイって言ったら、誰が何と言おうと大丈夫だし、いいんだよ。
分かった?分かったら『はい』と言う!!」
「・・・・・・・・・はい」
「じゃあ、この件はお終い」

そして、その証にと耳朶にそっと唇を落とした。
瞬間・・・・・・夕鈴は、全身の血が耳に集まったかの様に。
赤く。
そう、熱を帯びて真っ赤に染まった。

「陛下、離してください・・・・」
「離せない、だって気持ちいいんだもん」

「陛下っっ!放して下さいーーーーー。
私は今から掃除のバイトなんですから。
さぁ、さぁ、陛下は政務にお戻りください!!!!」

大きな声で怒鳴る夕鈴にちょっとビックリした黎翔は苦笑しつつ、
名残惜しそうに回した腕を離す。


まだまだかなぁ~僕を受け入れてくれるのは。

そんな事をボンヤリ考えながら、桶を持ち運んで行く夕鈴の後ろ姿を眺めていた。
ジッと黎翔に見つめられていることなんて、気づくはずのない夕鈴はと言うと・・・・。

居たたまれなくて、陛下に怒鳴ってしまったけど・・・・本当は陛下の優しさが嬉しいって思ってしまったのよね。
でも私は、所詮バイトの身だからこんなのは不謹慎だってことは重々分かってはいる。
でもね・・・でもね。
それでもね。

夕鈴は嬉しさのあまり顔の筋肉がすっかり緩んでしまっており。
花咲くような笑顔になっていたのであるが、
回廊を歩く夕鈴の後ろ姿を見詰めていた黎翔はこの笑顔をみる事は、ついぞ出来なかった。




終。





2013.02.04 SNS初載





【天と私の想い】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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・・・・眠れない。
もう夜明けも近いはずだけど。
私はこの想いを抱えて、一体幾晩眠れない夜を数えているのかしら?

夕鈴は徐に起き出し、回廊に裸足のまま踊り出た。
見上げた西の空には、沈みいこうとする欠けてない丸く白い月。
静かな夜を包みこみ全ての生物を優しく照らした役目を終え、今、正に沈みゆく。

そして反対の東の空には、一日の始まりを告げるかの様に昇り始めようとする太陽。
全ての活動を支え、新しき生命をも生み出せる陽の光り。

私はどちらなのだろう、あの方にとって。
それともどちらでもない、存在なの?

二つが同時に天に存在し、私を惑わす・・・・。

こんなもの想いに耽るのも、きっと昨夜みた夢のせいで。
あの方の隣に並んでいた、お人形の様にキレイな女性。
あの方に似つかわしくて、一対の雛の様だった。

それを私は目の前でまざまざと見せつけられた。
私は言葉も出なかった。
そう、一言だって発することは出来なかった。

あれは、きっといつかの未来で。
私に訪れるであろう、いつかの現実。

頬に一滴零れ落ちた雫。
そして、次々に溢れだした涙。

只の夢なのに否定できない自分がいる。
それは自分が恐れているから?
いつか別れがくる事を知っているから?

「何を泣いている?」

後ろからふんわりと薫る、香の匂い。
優しく回された腕。

「へいか・・・・・」
「私がいないところで、独りで泣かないでくれ。
その涙を止める事が出来ないのだから」

私の身体が硬直して動けない。
ときめきと自戒がせめぎ合い、私の中を駆け巡る。
でも、この優しい腕から離れたくない・・・・今は。

そして、夕鈴はそっとそのまま目を閉じた。
今ある現実を心の奥で確かめるように。




終。



このSSSは、朝旦那を駅まで送る時にみた空の風景から生まれたモノです。




2013.01.22 SNS初載







【僕のディーヴァ】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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『~~~~~ラララ♪~~~~~』

鈴がキレイな音色を奏でる様な涼やかな歌声が、
四阿から少し離れたこの馬舎まで風に乗って運ばれてくる。

あの歌声は、夕鈴だよね。

黎翔は愛馬の背を優しく撫でながら、その高く澄んだ声に聞き惚れていた。
夕鈴は普段人前で自分の歌声を披露する事はなく、
こんなところにまで聞こえてくるなんてことは稀である。

よっぽど気分が乗っているのか?
何か他に理由があるのか?
そのどちらかであろう。

もっと、近付いて聞いてみたい。
そんな衝動に駆られて少し歩み寄るがその行く手を阻むモノ、いや動物が・・・・。

『ブヒィ~~~~ン』

愛馬がくりくりしている瞳を黎翔に向けて牽制してきた。

「お前は、俺の邪魔をするのか?」

少しムッとしつつも仕方ないと諦め、また馬舎へ愛馬を戻す為に綱を握った。

愛馬を馬舎に戻して急いで四阿に足を運んでみたが、すでに人影はなかった。
夕鈴はどうやら後宮に戻ってしまったようだ。

はぁ~聞きそびれてしまったな。
今度おねだりしてみようかな。

残念に思いつつそのまま執務室に戻ったものの、
どうしてもあの歌声が頭を駆け巡り政務に熱が入らない。

「あぁ~~~~!!どうしても気になる!!!!」
「如何なさいましたか?」
「李順、悪いがどうも気に為る事があるから、あとは頼んだぞっっ、いいな!」
「陛下、どちらへ?案件で気に掛かる事でも?」
「ある意味、案件よりも重大なことだ」
「はぁ?それは??」
「お前は知らなくていい事だ!いいな、任せたぞ!」

李順に後を託し、黎翔は風のごとく颯爽と駆け抜けて出て行ってしまった。
残された李順は訳が分からないものの、あの慌てようからどうせ恐らくあのバイト妃がらみであろう事くらいは容易に分かったのである。
そして直ぐには戻る事は無いだろうと、机上の書簡の山を少しでも増やしておこうと意地の悪い事を考えていた。

その頃夕鈴はというと自室の窓辺の淵に肘を乗せ、流れゆく雲を眺めていた。
本当に今日の天気は心地よく、気分が高揚してきて鼻歌でも出てきそうだ。

室内に目をやると侍女たちはそれぞれ忙しそうに立ち働いており、
元来働き者な自分も手伝いしたくてウズウズしていた。

そして堪らず・・・・おずおずと聞いてみたのだった。

「あの・・・何かお手伝い出来る事は有りませんか?」
「とんでもありませんわ、お妃さま。
もし落ち着きれませんのでしたら、散歩にでも行かれたら如何でしょうか?」
「そうですね・・・」

お散歩って、さっきも行っていたんだけど。
まぁ私がいたら監視人がいるようで、お仕事も捗らないのかもしれないわよね。

「では、行って参りますわ」
「「「行ってらっしゃいませ」」」

ニコヤカに侍女達に見送られ、自室を出てはみたものの特に行くあてなんてない。

どうしようかしら??
ボンヤリ回廊をトボトボ歩いていると、前から急ぎ足で近寄ってくる男性が・・・・。
あれは。

「陛下??如何なさいましたの?随分とお急ぎの様ですが・・・」
「ああ、急いでいたのだ。君に逢うためにな」

妖艶な笑みを向けつつ、黎翔は目の前の愛しい妃に無言で手を差し出した。

ここはだれが通るのかわからない回廊。
妃演技は念を入れて。

夕鈴も黎翔に答え、無言で優雅に微笑を口元に乗せて差し出された手に自分の手を乗せた。

「では、参ろうではないか」
「えっ、参るって、一体どちらへ?」
「それは、私に任せてくれればいい」
「・・・・・・はい」

黎翔の手に導かれ辿り着いたのは、森の入口に建てられた人気のない静かな四阿。
聞こえてくるのは、木々に止まって羽を休めている小鳥の鳴き声くらい。

黎翔は備え付けの椅子を夕鈴に勧めて座らせた。
夕鈴は大きく瞳を見開いて黎翔を見詰めている・・・何か言いたい事があるかのように。

「夕鈴・・・如何したの?」
「いえ、如何したのではありません。
あの・・・・政務は?なぜ、あそこに陛下がいらっしゃったのでしょうか?」
「それは・・・・・実は、気になる事が有るんだ!!」
「気に為る事ですか???」

黎翔は身を乗り出して、質問してきた夕鈴を凝視する。

「そう、気に為るのは・・・・・・・君のその澄んだ歌声を聞きたいのだが。
如何すれば歌ってくれるのかと言う事がだよ」
「エッ・・・・・・陛下・・・・それを何処で??」

夕鈴は瞬時に目をパチパチさせて、ビックリ顔。

それもそうだろう。
誰にも聞かれていないと思ったから、歌っていたのだろうし。

「実はね、今日馬舎にいたんだけど、その時にね。
歌姫(ディーヴァ)のキレイな歌声が聞こえてきたんだよ」
「・・・・・・聞かれていたんですか・・・恥ずかしいです」

消え入る様な声で答える声に、黎翔は破願しつつ夕鈴を凝視し懇願する。

「ねぇ、僕のディーヴァ。
もう一度聞かせてはくれまいか?その美声を」

俯いた夕鈴は、顔じゅうの体温が上がっていくのを感じていた。
それでも黎翔のたっての願いとあれば叶えたい・・・と意を決した。

「上手い訳ではないのですから、あまり期待しないで下さいね」
「そんな事はないよ・・・だって僕が聞き惚れて、政務が手につかないくらいなんだから」
「では、歌いますよ」

夕鈴はスクッと立ちあがると、そのまま四阿から出てその場で立ち止り両手を広げた。
陽光を浴びてキラキラ光る薄茶の髪が風で揺れている。

夕鈴は大きく息を吸い込むと、歌い始めた。

『~~~~~~ラララ♪~~~~~』

この声だ・・・先程の美しい歌声は・・・。
黎翔はウットリと瞳を閉じ聞き惚れていた。

小鳥のさえずる鳴き声が伴奏となって夕鈴の歌声を引き立たせている。
伸びやかな軟らかい美声。
いつまでもいつまでも聞いていたい声だった。

「陛下・・・・終りましたよ」

目を閉じたままだった黎翔に届く夕鈴の言葉。

「有難う!!とってもキレイな歌声だった。
本当に聞き惚れてしまったよ」
「そうですか・・・ありがとうございます」

二人は顔を見合わせ、ニッコリと微笑んだ。
その頬に優しい風がサワサワ撫でるように触れていった。




終。




2013.01.18 SNS初載





【御髪(おぐし)騒動】
2010年07月06日 (火) | 編集 |
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「髪、長くなってきてる・・・それだけここでの生活も長くなってきてるってことよね~~。
それにしてもいい加減この髪切りたい!!」

夜も更け就寝までの一時を過ごしながら、夕鈴は独りごちる。

仮にも今は妃のバイトの身だから、ある程度は長くないといけないことくらい分かるのだけど。
毎日侍女さんたちが絡まった髪の毛を気を使いつつ梳かすのを鏡越しで見てるのは、
申し訳ないなぁ~と思うのよね。

長椅子から立ち上がり鏡台に腰掛けると引き出しから持って来たハサミを持ち、鏡を覗き込んだ。

「ちょっとだけなら、大丈夫・・・よね」

髪を左右に分け、肩から出してまずは右の髪を毛先から10センチ程の所にハサミを差し入れる。

チョッキン・・・・パサリ。

切ってしまった!!!
自分の足元には薄茶の髪の残骸が、バラバラになって散らかっていた。

そして更にもう片方の髪の同じ様にハサミを差し入れて、勢いよく切った。
鏡に映して左右が揃っているかを確認してみると、少し左が長い様だ。
また髪を分け、左の毛先を注意深く少しだけ切ってみた。
今度は塩梅が良いみたい・・・・。

これで少しは面倒を掛けなくて済むだろうと、
夕鈴は安堵して散らかった髪の毛を掃いて屑かごに入れて置いた。

そしてスッキリとなり、夕鈴は満足気に就寝したのであった。

「この屑かごをご覧になってっっ!!」
「これは、どういうことでしょう?」
「お妃さまは、御存じなのかしら?」
「御存じなかったら、きっと哀しまれるでしょうから知らぬふりがよろしいかと」


帳の向こうで、侍女さんが何やらゴニョゴニヨ話し声が聞こえてくる。
内容までは聞こえないけれど。

もう朝みたいだわ。
それにしても今日からは、髪もスッキリしているから面倒を掛けなくて済みそうだわ。

清々しく起き出した夕鈴は、隣りの部屋で待機している侍女さんにニコヤカに挨拶をする。

「おはようございます、今日も一日お願いしますね」

『お妃さまは御存じない様だわ』と其処にいる侍女達は目配せし合う。
優秀な侍女達は先程の事は何事もなかったかのように、
妃である夕鈴の身支度をいつも通り始めた。

いざ、髪を梳き始めると少し髪が短くなったことは容易に分かったものの、
誰一人としてそのことに触れずに結い上げ簪を差していく。

誰も気付いてないみたいだけど、いつもより髪を梳かすのも簡単そうだし良かった。
準備が整うと、夕鈴は意気揚々と政務室へと向かって行った。

残された侍女たちは、その後ろ姿がどうしても無理をしているのでは?と思えた様で、
このままではお妃さまがお可哀そうと側近たる李順に報告をすることとした。

そう、報告した内容は。
『お妃様のお髪を何者かが、勝手に断髪してしまった』と!!!

そしてそれを聞いた李順が思いついたのは、
誰かが切ってしまったのではなく夕鈴が自分で切ったと言うことだった。

李順は侍女達には適当な事を言っておいて更に緘口令まで敷いた上で、夕鈴を密かに呼び出した。
そしてお小言を呈したのは、その日の午後のことであった。

「あのですね・・・夕鈴殿!こんな事は言いたくは有りませんが、
髪を自分で切るだなんて此処では絶対にあり得ません!!
侍女たち総出で、私に訴えてきたのですよ・・・・面倒くさいったらありゃしない。
大体、あなた付きの侍女達の多くは良家の子女達なのですよ!!
彼女たちはまさか自分で切るだなんて思いもよらないのですから、
心配するに決まっているでは有りませんか!!!!
いいですか!今後一切自分で髪を切るなんてことは、無しでお願いしますよ。
全く・・・こんなことを言う日がくるだなんて思いも寄りませんでしたよ・・・ぶつぶつぶつ」

李順は一気に捲し立て、これでも言い足りないと一人でブツブツ呟いていた。
当の夕鈴はというと・・・何故そんな事でお小言を言われているのかをあまり理解しておらず、
ただお給金を頂いている上司の命だから聞いておかねば!!くらいだった。

でも、下町では自分で切っていたし・・・。
それっていけないことなのかしら??
なんで???

いつまで経っても、理解出来ない夕鈴であった。
しかし『人の価値観や生活習慣は、中々相容れないところがあるものである!!』
夕鈴が学んだのは、まさにこれだった。



終。




2012.12.14 SNS初載


【ヤキモチ狼とドンカン兎】
2010年07月05日 (月) | 編集 |
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今日は、どうも周りが騒がしい。
特別な日だったのかしら??

予定表とにらめっこしながら、夕鈴は首を傾げる。

何かの行事?ではない筈よね。
昨日陛下は何も言ってなかったし。

余りにも思い当たる節が無いので、
忙しそうに立ち働いている侍女さんに申し訳ないと思いつつも聞いてみる。

「今日は、皆さん忙しそうにしてらっしゃいますが、
何か予定は組み込まれていましたか?」
「えっ?お妃様、昨晩陛下よりお聞きおよびではなかったですか?」
「ええ、特に何も・・・・」
「そうですか、それが・・・・陛下よりのお達しで、年末に向けての大掃除をと」
「そうなのですね・・・・私も何か致しましょうか?」
「とんでも御座いません」

だよね・・・どこの世界にお妃さまが大掃除をするというのよ!!
でも、侍女さん達がバタバタしているのを見ているとウズウズしてくるのよね~~。
これは、お掃除バイトに行くべきなのかしら??

「では、老師の元に参ります」

一言言い置いて、意気揚々と立ち入り禁止区域へと向かう。
いつもの掃除婦の恰好で、お掃除開始!と腕まくりをしていると、背後に人の気配が。

「誰??」

慌てて振り返ろうとした瞬間、逞しい腕が伸びてきて腰に巻きついて。

「!!!!!」

余りの驚きに声を発する事が出来ずに、その場にへたり込んでしまった。

「夕鈴・・・・・酷いよ!其処まで驚かなくても」

振り返ると、拗ねた瞳を浮かべながら立っている小犬がいた。


「えっ、陛下!何しているんですか?」
「恐らく僕があんな命を侍女に出したから、
夕鈴は恐らく此処にくるだろうと待っていたんだよ」
「どうしてですか?」
「それはね・・・・・」

そこまで言うと黎翔はへたり込んだままの夕鈴を抱き上げて、そのままギュッと抱きしめる。
更には、頬に掠める様な口付けをしてきた。

瞬間湯沸かし器の様にボッと音を立てて、顔が真っ赤に染まる。

「ちっ、ちょっ・・・陛下、なにしてるんですか?
もうっっ、降ろして下さい!今は掃除婦の恰好ですし!!」

降ろして貰おうともがくのだが、そこは男性の力で拘束されているので逃れる事は叶わなった。
ふと見上げて搗ち合った深紅の瞳は、意地悪な色が見えている。

「兎に角、降ろしてください!!!」

やっとのことで降ろしてくれた黎翔に夕鈴は軽く睨んでみた。
それくらいしか自分の意思を示す術が無いから。
だけど黎翔はそれをモノともせずに、余裕の笑みを浮かべそのまま満足気に立ち去ってしまった。

はい?今のは、何だったのよぉ~~~~~~。

残された夕鈴は、訳が解らないままそこに茫然と立ち尽くしていた。

「お妃ちゃん??どしたのさ?」

呆けている私に浩大が話し掛けるまで、私の意識は何処かを漂っていた様だ。

「それがね・・・・陛下が・・・・・ここに来て・・・・私を抱き上げて・・・・それで」

先程の訳の分からない黎翔の行動について、
記憶の糸を辿る様に浩大に話して聞かせた。

「あははははっは~~~~それってお妃ちゃん、あの人為りの仕返しだよ」
「仕返し?」
「そうだよ!覚えて無い?」
「何をよ」
「昨日の会話だよ!!」
「会話?」
「そうだよ、昨日書庫で官吏の数人と楽しそうに話していたでしょ!!」
「話していたって言っても、片付けのお手伝いがてら世間話を少々よ。
それがどうして?」
「ホントにお妃ちゃん、分かんないの?それって、ヤ・キ・モ・チだよ!!」
「如何して陛下がヤキモチなんて焼くのよ?」

はぁ~陛下、お気の毒様だね。
お妃ちゃんはホントに手強いよ~~~。

浩大はここまで言っても気がつかない夕鈴の鈍感さに、
段々黎翔が気の毒にさえ為ってくる。

「まぁ、良いよ・・・兎に角、そう言う事だから」

これ以上は伝えても無駄!と判断した浩大は、窓からヒラリと姿を消す。
そして残された夕鈴は箒を片手に、ただただ浩大の言葉を反芻する。
けれど、決して答えの出ない迷宮を彷徨い続けていたのであった。


そして、執務室に戻った黎翔は・・・・先程の事を思い出しつつ、ニマニマが止まらなかった。
それを李順に怪訝な顔で見られていたのだが、そんな事は全くお構いなしに上機嫌で政務に励んだらしい。

更に黎翔が出した命で後宮の夕鈴の部屋はピカピカになっており・・・・。
立ち入り禁止区域から帰ってきた夕鈴は、侍女達の素晴らしい掃除術を聞き出したくなるのを抑えるのに苦労したとことを知るのは、誰も知り様が無かった。




終。





2012.12.12 SNS初載





【全ての始まり】
2010年07月05日 (月) | 編集 |
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――――待って!!!お願いだから。
あなたは一体誰なの?


私の前を走り去ろうとしているダレカに声を掛ける。
必死に掴もうと手を伸ばす・・・・けれど、実際は右手を天井に上げて掴むが、
空(くう)を彷徨うだけで何も掌には掴めない。
そして、背中を向け前を行く誰かは更に遠く遠くなっていき、
目の前が暗転すると真っ暗の闇に閉ざされた。

そこで夕鈴は目が覚めた――――。
寝ぼけ眼の瞳には、うっすらと涙が滲んでいる。

「今のは・・・・夢だったの??
それにしても、あれは一体誰だったのかしら?」

夕鈴はふと自分が泣いていることに気が付き、
人差し指の腹でスーと拭う。
まだ辺りは真っ暗で・・・・・・夜明けには程遠いらしい。

今眠れば・・・・・。
真相が。
その人物が。
分かるのだろうか?
それが知りたくて、夕鈴は瞼をしっかりと閉じた。


***********


そこはうっそうと木々が生い茂る、うす暗く深い森の奥。
静かで、何も聞こえない。
でも眼を凝らして見ると、小さな湖がある。

その畔に佇む人影が。
あの後ろ姿は先程の人?!

今度は逃がさない!!
夕鈴は思いっきり息を吸い込み、それを声の琴線に変える。

「あのぉ~~~!!!そこにいるのは誰ですかぁ??」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

声は届いているはずなのに、返事は来ない。
もう一度!!!

「誰っ?って聞いているじゃないですか!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

やはり返事は帰って来ない。
でもその代わりにその人は振り返った。

若い男性だ・・・・・でも見覚えなんて無くて。
でも此方をジッと見据えるあの紅い瞳が気になって、瞳を逸らす事が出来ない。

それは人外のモノに魅入られてしまったかの様に。

「一人で何を見ているんですか?
一人は寂しいから一緒に見ましょう」

恐る恐る近寄っていき隣に立つと、
その男性が見詰めている湖面を覗きこんだ。

湖面に映るは、沢山の人・ヒト・ひと。
色々な顔が見える。
嬉しそうな顔、悔しそうな顔・・・苦悶に歪む顔。
そして、何かを企んでいる様な狡猾そうな顔。

その全ての顔が何かを掴むように、それぞれの手を伸ばしていた。

「ここに映る全てのモノを救い、そして幸せに出来ればいいが・・・・・。
しかし出来るのだろうか?自分に」

その男性は静かに呟いていた。
夕鈴は無性に何かを言わなければと焦燥感に襲われた。

「大丈夫・・・・うん、きっと大丈夫ですよ。
一つ何か行動すれば、何人、何十人がきっと救われ幸せな顔に為っていきます。
まずは行動を起こしましょう」
「君が手伝ってくれるの?」
「えっ?私ですか???分かりました!!私に出来る事があるならお手伝いしますよ」
「ありがとう。君かもしれないね・・・・・・・・・僕に光をくれるのは」
「何か言いましたか?」
「いや、なんにも」


そして、目の前が眩しくなっていき光が溢れだす。
それは目覚めを意味していて。


********



「ふぁ~~~~~~~~」

夕鈴は、大きな欠伸をして腕を伸ばす。

「さぁ、起きないと!!!今日から王宮での新しいお仕事だったわ。
でもどんなお仕事なのかしらね・・・・・まぁ割がいいと言っていたから、少しは家計が助かるけどね。
ただ心配なのは、ここに残していく青慎の事だけだけど」

布団からもぞもぞ起きあがる。


そういえば、何か夢を見ていたような。
でも忘れちゃった。
忘れるぐらいだから、大したものじゃなかったんだろうけど。




「あのーー私 短期の王宮仕事って聞いて来たんですけど・・・」
「ええ、ですから・・この1ヶ月間後宮でお務め頂きたいのですよ。
汀 夕鈴殿。国王陛下の臨時の花嫁として」

眼の前には紅い瞳が印象的な狼陛下が玉座に座していた。


そして、夕鈴のバイト妃としての苦難とドキドキの日々が始まった。





終。



この話の元は。。。。子ども達を送り出して、うたた寝していた時に実際に体験した事です。
あっ、でも夕鈴の夢では無いデス!!

夢の中で私が家の勝手口から出て行ったヒトを呼びとめていたんです。
でもそれも呼び止めている夢を見ている私・・・・・・。つまり2重で夢を見ていたんです。

起きてへんてこな気がしました・・・・そしてポッと浮かんだSSSだったんです。

ヒトは時として正夢を見る事がありますものね・・・・。









2012.11.08 SNS初載


【兎さんの美味しい風邪?】
2010年07月05日 (月) | 編集 |
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外では少し肌寒い風が吹いていて、窓がカタカタと震えている。
黎翔は昼餉の後のひと時に、妃の様子伺いと称してお茶をしにやって来ていた。

「うっ、ううん・・・」

お茶を飲み込んだ後に、何かが喉に引っかかった気がして夕鈴は顔を顰める。

「どうかしたの?大丈夫?」

隣に座っている黎翔が心配そうな様子で、夕鈴の顔を覗き込む。

「いえ、何か喉に引っかかった感じがするんです」
「喉が痛いの?」
「まだ痛いとかまでは無いんですが・・・」
「侍医に診せてみたら?なんなら直ぐに手配させるけど」
「そんなまだ痛いって訳ではないので、診せるまではないですよ。
こんなことでお手を煩わすことはありません!!」

言い切ってみるものの・・・やはりヘンな感じがする。

これはもしかして風邪の前兆??
そうだったら、陛下に移したりしたら大変だわ。
夜のお渡りは控えて頂かないと・・・でもなんて言えばいいのかしら?
下手なことを言うと、大げさに心配してしまうだろうし。

どう言えばいいのかを思案している夕鈴を覗き込み心配そうに揺れる深紅の瞳。

ダメダメ、いけないっっ!!
余計な心配を掛けさせたりしちゃ!!

「ほら、陛下・・・お茶が冷めてしまいますよ。
それにこのお茶菓子、甘くて美味しいですね」

心配を掛けないようにと、食べたいわけではないがお菓子を摘まんでみる。

コクン・・・・お菓子を飲みこむと今度は違和感ではなく、喉に痛みが走った。
でも痛い顔をみせたら、絶対に『侍医だ!』なんだかんだで大騒ぎして、
挙句の果ては看病と称して私の寝台の横に張り付いてあれこれ世話を妬いてくる事になりそうだ。

それはそれで結構面倒な事であり。
そうなると恐らく李順さんが怖~~い顔で、『風邪なんてアナタがひくからですよ、ほら政務が滞ってしまって・・・』と無言で抗議してくるんだわ。
それこそイヤだし、何んと言っても、もし侍医に掛かったら・・・幾ら掛かるのか解ったもんじゃない!!
王宮の侍医よ、きっとかなりの高額に決まっているわよ。
それを借金に追加されたりでもしたら・・・。

夕鈴は、何処までいっても借金のことばかりが頭を駆け巡る。
いくらなんでも李順もオニではないのだから、
さずがに診察代までは請求はしたりしないというのに_。

ここはさっさと部屋で休むに限る。
なので早めにお茶を切りあげて、黎翔を執務室へと送り出す。
そして自分はと言えば、自室でお昼寝と決め込んだ。


「あ・・・良く・・・・寝た・・・・ゴホッ・・・」

声が擦れて出ない・・・・。
どうやら本格的に喉にきてしまったらしい。
これは結構マズイ。


隣の部屋で、なにやら騒がしい声がしている。
この声は陛下?
そして足音が此方に近付いてきた。

「夕鈴・・・・起きているのか?」

中を窺う様に静かに声を掛けてくる。
返事をしたいけど、喉がヒリヒリして上手く声が出ない。

「夕鈴・・・・まだ寝てるのか?」

帳を押し上げ、此方に入ってくる気配が。
この声は聞かせられない・・・これはもう本格的な風邪症状。
陛下に風邪を移す訳にはいけないと布団をまた着こんで、
戸口とは反対方向を向いて寝たふりをした。

「なんだ、まだ寝てるのか」

独り言を呟き、寝台に腰かけた様だ・・・寝台がギシッと音を立てたことから、反対を向いてても分かる。
私は起きている事がばれない様に布団のなかで、
殊更寝息を立てて身体を小さく丸めていた。

不意に頭に何かが触れた!!
あっ、これは陛下の手。

身じろぎせずに為されるままの状態を続けると、気が付けば頭をゆっくりゆっくり撫でられていた。

「夕鈴・・・大丈夫?」

優しく響く低い声が余りに心地よくて、ウトウト眠りの淵に呼び戻される。
気が付けば夢の中に誘われ、本当に規則正しい寝息が辺りに響いていた。

可愛い兎さんは、どうやらまた寝てしまったらしいな。

黎翔は始めから、夕鈴がそっぽを向いたまま寝たふりをしている事は分かっていた。
そして夕鈴がそうした理由もすらも・・・・。
完全に風邪が悪化してしまっており、自分に移したらいけないという優しい気遣いからだと言う事が。

そんな夕鈴が愛おしくて自分の方に身体を向けさせ、
その安らかな寝顔をジックリと見詰めた。

どうやら熱も出てきているらしく、頬が桃色に染まっており少し息が荒くなってきている。
額に手を当ててみると、やはり少し熱い様だ。

これは、もう完全に風邪決定!!

「今宵は、僕がシッカリと看病してあげるからね」

そう呟いて、その熱い額と頬に口付けを落としてみた。
そして熱い息が漏れるその口元に、そっと2度口付けた。
満足した黎翔は侍医を呼ぶために、寝室を後にした。


後日。
あの行為がまずかったらしく、しっかりと夕鈴の風邪を頂いていた。
今度は夕鈴に看病される黎翔の姿があった。

しかし夕鈴は看病しつつ考える。
陛下は何故、移ったのか??・・・と。
夜はしっかりと李順に執務室で缶詰状態にされ、夕鈴の看病も出来ずじまいだった。
それは夕鈴が夜中に目が覚めた時、傍にいたのが侍女たちだった事を知っている。
ならば、いつ?どうして??

それは自業自得だったのだが、夕鈴は気付くはずも無い。
あの口付けが原因であったのは、誰も知らない彼女の夫だけの秘密。



終。





2012.09.28 SNS初載 





【夕鈴の叫び!】
2010年07月01日 (木) | 編集 |

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このところ夏の暑さも和らいで過ごしやすくなってきて、
どうやら政務も打ち込めるらしく早めに政務を切り上げた陛下が毎夜後宮にお渡りになってくる。

その事が侍女達にとっては嬉しい事らしく、湯上りの身だしなみも心なしか丁寧に整えられていた。
それはそう、確かに有り難い事なのだが・・・・ひとつ困っている事も。
折角侍女の方たちの心遣いを無駄には出来ないし、
無下にも出来ないから敢えて言わないのだけど。

でも声を大にして言いたい事がある。
だから今宵はハッキリと言おうと心に決めた。
それこそ、一大決心をして!!

そう思いながら鏡台の前の椅子に腰かけて、夕鈴は髪を梳いてもらう。

「お妃様、今宵の香油はいかがいたしましょうか?
お決まりのモノはありますでしょうか?」
「いえ、特に御座いませんので、お任せ致しますわ」

まずは、ニッコリ微笑んでみせた。

さぁ・・・今よ!!
今しかないわ。
言うのよ!!

「あの・・・・・」

小声だった事もあり侍女さんには聞えなかったらしく、
寝衣について提案される。

「お妃様、今宵は此方の寝衣にいたしました。
少し肌寒くなって参りましたがスリットが入ってますので歩きやすく、
お妃様の細いおみ足が綺麗に見えますのよ」
「・・・・・あ、はい。
有り難うございます」


はぁ~~~~~。
今日も言えなかった。
今日こそは!と、思っていたのに。

私が言いたい事はただ一つだけ!
『あまりスケスケで、色っぽい寝衣は勘弁して~~~~~』

どうして言えないのか・・・。
簡単なことじゃないの。
でも。
絶対。
必ず明日こそ、キチンと言うんだから!!

そうきつく心に誓い、今日の寝衣に腕を通す。

 『陛下とは、ホントの夫婦ではないのよ~~~。
 だから、こんな寝衣は恥ずかし過ぎる~~~~~~~~』

今宵も夕鈴の心の声は誰にも届かない。

夕鈴の知らない所で黎翔にお褒めのお言葉を賜っており、
侍女たちは自分たちの仕事っぷりに満足しているのだから。




終。



2012.09.22 SNS初載






【正夢??】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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「おめでとうございます」
「お幸せに~~」
「お綺麗ですよ~~~」

たくさんのどよめき声が聞こえる。
あちこちから。

ねぇ、誰に言っているの?

でも誰も答えてはくれずに、
ただ歓声がさざ波の様に私の耳に押し寄せる。

「おめでとうございます~~」

未だ、聞こえてくる・・・・・・。

「夕鈴・・・・ほら皆が君を見ているよ。
手を振ってあげて」

隣から聴こえる声に聞き覚えが。
耳に残って消えない。
この心地よい声は陛下だわ。

「へ、いか・・・・」

横を向くといつもより豪奢な衣裳を身に纏った男前な陛下が、
怪訝そうな顔で私を見ていた。
自分自身を見てみると私の衣裳もキラキラ煌めく宝石が随所にちりばめられ、
凄く豪華で・・・。
一体いくら掛かってんのよ~~と叫びたくなるくらいの衣装だった。

そして私が今いる場所は、これまた豪奢な屋根無しの馬車の座椅子で。
白い花がそこらかしこで降っていて、まるで季節外れの雪の景色を見ている様。

お祭り?
何かの感謝祭?
収穫祭?

私がポケッとしていると、隣の陛下から頬に軽く口付けの洗礼がきた。
それと同時に、群衆からの歓声が更に高まる。

私は頬を赤らめて、下を向くしか出来なくて。
でも陛下は嬉しそうにただただ私に微笑みかけていて、
そして前を向いたかと思うと陛下は片手を高くあげて群衆に答えていた。

そして群衆の熱は最高潮に上がり、大きなうねりとなって押し寄せた。


***********

そして、そこで周りの景色がグニャリと歪んだ・・・・・・。
フゥッと目が覚め、意識がハッキリと浮上してくる。

何か凄い夢を見ていたような?
でも思い出せない・・・・何だったのかしら??

でもそれは恐らく嬉しい夢。
だって起きぬけの私の頬が緩んでいるのだから。

今は、思い出せなくても。
それでも、意識下で降り積もる。
この恋心と共に。



そして、いつか思い出す。
同じ場面で、既視感を伴って。



終。





2012.09.20 SNS初載





【この想い届くまで。】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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このお話、メチャ短いです・・・・。
これはその書いた時の気持ちのままに、手直しはしてません。





「陛下・・・・今宵は星が綺麗だそうですよ」
「星よりも君の方が何万倍も光り輝いているが」
「演技はいりませんよ」
「いや、本心だが・・・・」
「もうホントに演技上手なんですから・・まったくもう!!」

いつまで経っても、何回いや何十回愛を囁いても気が付かない鈍感兎の君。
そんな君を好きになったのは僕だから・・・・どれだけたとえ何千回愛を伝えても伝わらないのなら更に言い続けるしかない。

それが僕が出来る唯一の事だから・・・。

君が『是』と頷いてくれるまで、伝え続けるのが愛の第一歩だと思うから。

いつになったら、本気にしてくれるというのかい?
届けたいのは僕の心そのもの・・・・夕鈴を愛する気持ちだけ。

戸惑って・・・離れようとする君の手を強く握り、意思表示をするよ。

キミダケヲ アイシテ イルンダヨ。
ダカラ・・・・オネガイ
ボクダケヲ ミテイテ ソシテ アイシテホシイ・・・。


星がツゥーーーーと流れて行く・・・・。
この流星に願いを掛けようか?

願うのはたった一つ・・・・・君にいつか僕の本心が伝わりますように。



終。





2012.09.19 SNS初載





【妹の理想像】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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こちらは元々、9月6日が『妹の日』でして・・・
その時、6日が終わる10分を切ったところで書いたSSSです。

10分クオリティ。
手直しはしておりません。
宜しければ、どうぞ。






夕鈴は考え込んでいた。
____というのも、いま後宮では『もしも』話が大流行との事。

もしもねぇ~~~考えるとすれば、例えば青慎が結婚するとしたら・・・。


結婚すれば妹が出来る。

妹に望むとこはただ一つ。
青慎を大切にして欲しいくらいかなぁ~~。

でもどんな妹が欲しいかしら??

そうね~~まずはお料理が出来ること!!これは絶対よね!!

そして、掃除がキチンとキレイに出来ること・・・・そして金銭感覚がちゃんとしていること。

後は・・・後は・・・そうね~~元気が一番!!これは外せない。

楽しい家庭生活を送ってほしいから~~~~~。

夕鈴は気づいてはいない・・・・すべて自分自身だと言う事を!!!




終。







2012.09.06 SNS初載




【これって棚ボタ??】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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山のように積まれた書簡を一日かけて切り崩しやっと李順に解放され、
一日の最後に夕鈴の顔でも見ておこうかな?!と後宮へ訪ねたというのに、
肝心の妃は居ない。

また何処をほっつき歩いているのやら。

そこら辺で拱手している侍女達に夕鈴の居場所を尋ねてみると、
その内の一人がおずおずと前に進み出る。

「此方へいらして戴けますでしょうか・・・・」

拱手したまま黎翔に断わりをいれると、そのまま黎翔を先導して歩み出した。
どうやらワザワザ案内してくれるらしい・・・。
これは好都合だとそのままついて行くと、着いた先は湯殿だった。

夕鈴は湯あみ中?!なのか・・・・私にどうしろと言うのだ。
もし夕鈴に断わりなしに入って行ったりでもしたら、
どんな叫び声を上げられるかなんて分かりゃしない。

湯殿まで案内した侍女は特に何も言わず綻んだ笑顔のまま、
そのまま部屋へと戻って行ってしまった。

さて、どうしたものか。
このまま帰るのも・・・侍女達に仮夫婦だと思われても困る。
かといって、夕鈴がいる湯殿で一緒に湯あみなど出来るはずもない。

「どうしたらいいんだ」

ドン詰まりとなった黎翔は思わず、声を出して呟いてしまった。

「誰っ???」

中から聞こえてくる声は間違えようもない夕鈴のモノで。

ここで返事をしてもいいのだろうか?
でも此処にいることで、夕鈴になんて思われるか?
『陛下なんて大っきらい』って大声で罵られるのだけは避けたい。

「にゃ~~~」

咄嗟に出たのは、古今東西この様な場合に有効な動物の鳴き声の真似。

「ああ、猫なのね~~~」

中から夕鈴の安堵した声が聞こえてくる。

ふぅ、良かった!!!
上手く誤魔化せたのか??

なんてホッとしたのもつかの間、
中から夕鈴の怒気を含んだ声が間髪入れずに飛んできた。

「なんて、騙されると思ったら、そうは行きませんよ!!!
陛下~~~~~」

抗議のためか湯殿から出てきた夕鈴は、大判の手拭に身体を纏わせていて。
濡れた雫がヒタヒタと流れ落ちている長い薄茶色の髪は身体に張り付き、
何とも言えない艶めかしさが浮き出されている。

僕の視線はくぎ付けとなってしまい、
その場から離れる事もましては夕鈴に近づくことも出来なかった。
ほぅ~~と気が付けば嘆息を吐いていた。
見惚れていると言っても過言ではない。

そんな僕に対して、夕鈴はというと腰に手をあて『私は怒っているんですよ』という合図を無言で送っていた。

「ごめんね、夕鈴・・・・覗こうとは全く思ってもいなかったんだよ。
ただ侍女がここへ案内してくれたものだから!!」

弁解じみているのは自分でも分かるがこれは不可抗力であり、
そこの所だけは夕鈴に分かって貰わねば立つ瀬が無い!!


「そうですか・・・・では、何故今もまだいらっしゃるのでしょうか?」
「そうだね、どうしてだろう???」
「もう!!もう!!!陛下、あっちへ行っててください。
恥ずかしいじゃないですか~~~~~~もう、陛下なんて大嫌い!!」

やっぱり、だよね・・・・言われてしまったか。
でも僕も立ち去ろうと思ったけど、
余りにも夕鈴が魅力的な姿で出てきたから足が動かなくなったんだよ。

「夕鈴、ゴメンね・・・では」

一言だけ謝って、その場を後にした。
歩きながらも僕の頭に中には、湯上りの頬も腕も太股もほんのり桃色に染め上げた夕鈴の肢体が浮かびあがって忘れられない。


夕鈴にはキライって言われたけど・・・なんだか得した様な気がする。

誰もいない回廊で頬が緩んできており、
中々自室へ戻れなかったのは言うもまでも無い。

しかし、あの侍女はどうして自分を夕鈴のいる湯殿まで案内したのだろうか?
これまでそんな事は無かったのだが・・・・・・。

不思議がる黎翔だが。
その裏側の事情には思いつかず。

それは、そう。
後宮管理人たる張老師の策した企みだったのだ。

正しい後宮管理人のお仕事。
国王夫婦にお世継ぎを!
ただその1点のみの為。

いつまでもじれったいバイト妃に既成事実をくれてやるため・・・・。
それは当人たちにとっては甚だ迷惑なことで、余計なお世話なのだが。
でも黎翔にとっては、棚ぼた的な企みとなった。




終。




2012.07.25 SNS 初載





【私の想いと蝉の声】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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『カナカナカナ・・・』

小雨が降りしきる夕刻前。
外では蝉が雨をモノともせずに合奏している。

「蝉の声・・・もう夏、なんですね」

夕鈴は、少し苦めの冷茶を飲み干して呟いた。

「何だか、浮かない顔しているようだが、如何したのか?
君の笑顔が見れないとなると私の心も萎んでしまうのだが。
もし憂いがあるのならば、今ここで告げて欲しい。
私だけに」

卓上に置かれている夕鈴の手を、黎翔はさり気なく擦りながら心配そうに気遣う。
周りに侍女がいる為、このように殊更に甘い言葉と態度で妃を愛している振りをしてくる。
全ては仲睦ましい夫婦を見せつける為に。

一体、私は此処にいつまで居るのかしら?
借金のため、青慎の学費のため・・・それだけの為だけど。
でもそれが終われば帰る事になるのよね・・・そう、帰らないといけないのよね。

蝉の一生は短くて、自分はここに居ると存在感を示すように大きな声で鳴くのだけれども・・・私はどうなの?
陛下への恋心はただ心の奥で燻らせるだけで。
決して表に出してはいけない・・・・そんな想いをこの先ずっと隠せるの?

考え事をしているためか、顔を赤らめる事も無く黎翔のしたいようにされたまま。
これを是と判断して、黎翔は手を擦っているだけに留まらず握りしめたりしてきた。
はたまた、暑いからと結いあげてもらった髪のおくれ毛を自分の指を絡ませたりとご満悦の様子だった。
しかし色々触ってみても、夕鈴は文句一つ言わないどころか反応すらしない。

夕鈴は、一体何を真剣に考えているのか?

黎翔は気も漫ろな夕鈴が段々心配になり、そっと夕鈴の顔を覗き込んでみた。
そこにはいつもの快活な表情は見当たらず、梅雨空のようにどんよりとしたものが鎮座していた。

「夕鈴、何処か具合が悪いのか?」
「い、いえそのような事は御座いませんが・・・」

夕鈴が気がつけば至近距離で黎翔の紅い瞳が揺らめいており、
心此処にあらずといった自分を本心から心配している表情だった。

いけない、陛下を心配させてしまった様だわ。
今は一生懸命に妃を演じる事にだけ集中して、余計な事など考えない方がいいのよね。

今まで考えていたことなど空の彼方へ放り投げて、
今できる精一杯の笑顔を黎翔へと向けた。

今考えても仕方のない事だわ。
陛下を助けたい、味方になりたいという気持ちにうそ偽りはないのだし。
好きな気持ちだけそっと心に留めておけばいいのよね。
うん、出来る出来る!!

何とか自分の気持ちをスッキリとさせて、黎翔に対峙する。
自分の手を見てギョッとした。
そこには、しっかりと黎翔の指が絡まっている。

「あの・・・・その・・・陛下、これはなんでしょう?
それに距離も近すぎます!!
今は二人きりなのですから、演技は要りません。」

そう、いつ侍女さん達を下げたのか?
今ここには二人きりだったのである。

まずは握っている指を丁重に外して頂き、
いつの間にかぴったりとくっついている膝も離して頂いた。

「夕鈴が考え事をしているから・・・・」
「すみません、毎日雨ですから洗濯物も乾かないなぁ~~とか。
青慎が一人で家の事をしているのだろうからこの雨では困っているのよね~~などと、
割とどうでもいい事を考えていました」
「ふぅん、そうなんだ」

黎翔はそんなことであんな表情をするはずはないと思ったが、
頑固な夕鈴は絶対に言わないだろうと踏んでそれ以上は聞かない事にした。

外では、まだ蝉の声が聞こえてきていた。
まだまだ蝉の季節は今からが本番である。


そして、黎翔は思う。
二人の心の距離を縮めるのはきっと時間が掛かるのだろう。
ただ、簡単には離しはしないのだからこれからじっくりと縮めていけばいい。
私たちの一生は蝉の様に短くはないのだから・・・・・・と。









2012.07.11 SNS初載






【あ~~ん!】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しをしております。








「夕鈴、どうしたの?食が進んで無いけど・・・」
「こんな暑い日に、料理長始め房部の方々は大変だなぁ~と。
私はただのバイトなのに、品数が多くて手の凝ったお料理で・・・物凄く申し訳ないなと」
「だったら、残さず食べないと更に申し訳ないよ。
はい、あ~~ん」
「いや・・・自分で食べられますから」
「いいじゃない、珠には・・・人払いも済ませているから誰にも見られたりしないよ」
「いいえ、申し訳ないです。
陛下の御手自ら頂くなんて・・・」
「そんなこと言わずに」
「大丈夫ですから」

夕鈴が何度断わっても、どう断わっても・・・・黎翔は差し出した手を引っ込めることは無かった。
それこそ、黎翔の作戦なのだが。
夕鈴は兎に角、押しに弱い!それを逆手に取るという。
その作戦にまんまと引っかかりつつある兎嫁。
可愛い顔を難しい表情に変え、考え込んでいた。

ここは陛下からの好意を受け取った方がいいのかしら?
もしここで口を開けようもんなら、なし崩しにこのままこの後は何度も『あ~~ん』とさせられそうだし。
でも、断るのは申し訳ないのかもしれないし・・・。
恥ずかしすぎるわよ、子どもじゃないんだし。
やっぱりキチンと断るべきだわ。
言葉で言って駄目なら態度で・・・。

夕鈴はせめてもの抵抗で横を向いてみる。
しかし、黎翔はここが攻め時だと奥の手を出す。
小犬の甘え声を以て。

「夕鈴、手が痺れてきたよ~~ねぇ、早くたべてよ~~」

夕鈴はフゥと短く息を吐き出した。
全くこの声には勝てないのよね・・・・私。

「はい、頂きます」

観念して顔を桃色に染めながら小さく口を開けて、黎翔の箸からご飯を頂いた。
黎翔はしてやったりと、したり顔。

この先は・・・・ご想像どうり、全部食べさせてもらうまで席を立つ事は出来ず、
美味しい筈の料理の数々は味も分からないどころか、何処に入ったかすら分からなかったのである。

策士である黎翔には、夕鈴の可愛い抵抗なんて敵うはずはない。
なすがまま。
全ては陛下の仰せのままに。

兎嫁は、今日も狼に振り回される。



終。



2012.07.10 SNS初載





【プロ妃の修業!!】
2010年07月01日 (木) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しもかなりしております。







「今朝は、夢見が良かったのか、悪かったのか・・・・」

黎翔は執務室で李順と二人で、ひと息ついたところでふと漏らす。

「夢見ですか・・・どんな?」

手は決して留めずにそして余り興味なさげではあるが、一応李順は形式的に尋ねる。

「夕鈴が余りにも積極的でさ、でも違っていたんだ。
起きてすぐに確かめようと思って夕鈴を訪ねて行ったんだけど・・・・もういなかったんだ」
「そんなことでしたか・・・どんな夢かと心配いたしましたが、
どうでもいいですので早くお進め下さい」

どうでもいいって・・・確かに李順は有能なのは認めるけど、
恋愛事に関して興味が無いのはどうかと思う。
はぁ~~、李順に話したのはこちらの間違いだったというわけか。
やってらんない!これは夕鈴にでも会いに行くとするか。

黎翔は李順を此処からいなくする為に審議が足りてない書簡を手当たりしだい探し始めた。
それは、そう、ここを抜け出す算段の為に。

真剣な表情で机上の書簡を目を皿の様にして探しているので、
李順には観念して政務に励んでいる様に見えるらしいが。
そして山の中から何点が見つけ出しニヤリと意地の悪い笑いをすると、
わざとらしく咳払いをして李順の目の前に書簡をすぅ~~と差し出した。

「李順!!この書簡はまだ審議が足りないと思われるので差し戻しだ。
政務室に急ぎ持ち今すぐ審議させ、再提出させるように」

李順は案の定黎翔から書簡を受け取ると、直ぐさま政務室へと届けるために部屋を辞した。
黎翔はシメシメとこの隙に夕鈴の待つ後宮へと急ぎ足で執務室を抜け出した。

後宮では先触れをしていなかった為少し侍女たちが慌てていたが、夕鈴は穏やかに黎翔を招き入れた。
そして片手をヒラリと上げると、さっさと侍女を下げてしまった。

「陛下、今日はお早いんですね。
まだ執務中では?」

隣に座る夕鈴は、微笑みながらお茶を手渡してくれた。
茶杯を手渡す手に、黎翔は自分の掌を重ねて夕鈴の小さな手を覆う。
夕鈴の柔らかい手の感触でこれは夢ではないと感じて、何だか身体の芯が暖かくなった。
上目づかいで夕鈴を見ると恥ずかしそうに頬はほんのり紅く染め上げているものの、
手を払い退ける事はしなかった。

「うん、まぁ、まだ執務中だけど・・・・休憩をしに来たんだよ。
珠にはこうして夕鈴とお茶でも飲まないと、執務に支障が出てしまうよ」
「そうですか・・・それはお疲れでしょう。
ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」

そう言ってニッコリ微笑む夕鈴は黎翔の手を取ると、そのまま自分の両手で包んだ。
柔らかい肌。
温かい体温。
黎翔は心地よさを感じた。

おかしい・・・・・怪しい。
夕鈴は二人きりだというのに、いつもとちがって積極的だ。
これはもしかして今朝の夢は正夢だったとでもいうのだろうか???
それか、白昼夢とでも?
いや、違う!
感じる夕鈴の手の感触は本物だし。

僕の怪訝そうな表情を見て、夕鈴はニッコリと笑うと僕に問いかけてきた。

「陛下?如何なされましたか?」
「いや、夕鈴・・・いつもと違わない?」
「何がですか?」
「いや・・・僕が近くに居て、手を握ってもはねのけたりしないし」
「えっ、何故そんな事をしないといけないのですか?」

やっぱり夕鈴は変だ・・・。
何か怪しげな薬でも飲まされたとでもいうのか?
じゃあ、これを試してみることにするか。

「夕鈴、そこにある桃を僕に食べさせてくれる?」
「桃ですか?」
「うん、そう」

夕鈴は首を縦に振りコクリと承諾すると、桃を上手に剥いて楊枝で突き刺し黎翔の口元へと運んだ。
でもよく観察してみると、桃に突き刺さった楊枝をを持つ手は小刻みに震えているようだ。

でも折角の夕鈴からの据え膳。
これは食わねば、勿体無い。

夕鈴の手首を掴むと、自分の口元に桃が届くところまで持っていく。
そして夕鈴からの桃をパクリと、口へ入れる。

でも、それで終わりでは無かった。
夕鈴の手に桃から滴った雫をぺろりと舌先で舐めてみた。

「えっ、あっっっっ!!
陛下っっ!!!!!
何をしているんですかぁぁぁぁぁぁぁ」

夕鈴は羞恥で赤い顔をして大声で叫ぶ。

「えっ、だって勿体無いよ、桃の果汁って甘くて美味しんだよ」
「それは食べなくていいんですっっ!!!!」
「折角、夕鈴が食べさせてくれているのに~~」

夕鈴は頬を膨らませて、プイッと横を向いてブツブツと呟く。
黎翔は耳を澄ませてその独り言を聞いてみる。

「まだまだ・・・・だわ。
こんな事で動揺してしまうなんて・・・・。
プロ妃には程遠いわ」

くくっ・・・やっぱり夕鈴だ!!
はは~~~ん、なるほどね。
やっと納得した。
夕鈴のこの不審な行動が!!

何だか、いつもの反応でホッとした。
やっぱり夕鈴はこうでないと!!
いつまでも初々しい反応の夕鈴が愛しいのだから・・・。

「ごめんなさい、陛下・・・・まだまだですね、プロ妃は」

申し訳なさげに項垂れる夕鈴を、下から覗き込み黎翔は囁いた。

「夕鈴はそのままでいいんだよ。いつまでもいつまでも僕の傍にいてくれれば」
「何言っているんですか!!
早く借金を返さないといけんですよ、私は。
そうしないと帰れないんですからっっ!!!」

夕鈴は、凛として答える。
黎翔は自分の気持ちなんて夕鈴には全く通じないと少しがっかりしつつも、
それでも今傍に居てくれる幸せを噛み締める。

「へ~~~い~~~か~~~!!!やはり、ここでしたね~~~。
書簡はとうに出来ておりますよ~~~お早く~~~お戻り下さい」

恨みがましい表情で李順が迫りくる。

折角の休憩も、これまでだな。
では仕方ない・・・戻るとするか。

今朝の夢は、やっぱり夢だったけれど。
それでも・・・夢は夢かもしれないが、それはいつか叶えてやると信念をもってすれば夢は叶わぬ事はないのだろうから。

「夕鈴、またね」

名残惜しげに立ち去る黎翔に、向き合う夕鈴は深々と頭を下げる。

「はい、また夜にお待ち致しております」

そして最上級の微笑みで、僕を送り出してくれる。
きっとこれは夕鈴の言うところのプロ妃の見送りということなのだろう。


「はぁ~~~~~~~」
「何を溜め息なんてつくのですか!!
私の方が吐きたいところですのに!!」

大きく嘆息を吐く黎翔に、オニの形相で迫る李順。

「はい、はい!!行くから。
じゃあ夕鈴、夜を楽しみにしてるよ」

李順に急かされ、立ち去った黎翔を見送った夕鈴は腕を大きくあげて伸びをする。
そして一言!

「あ~~~あ、疲れた!!!
プロ妃って肩凝るのよね~~やっぱりいつも通りが一番なのよ」

プロ妃には、ほど遠い夕鈴の姿であった。
その後、当分プロ妃は止めてしまう夕鈴なのであった。

まぁ、それはそれでいつもの夕鈴も可愛いから、
黎翔にしてみたところで全く意に返さないのだったが。

そうして夫婦ごっこは続くのだった。
夕鈴が本物の妃となるまで。





終。






2012.07.09 SNS初載