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こちらの話は特殊設定のお話になります。

下記の『彩怜シリーズ概要について』の部分をクリックして、
そちらに明記された記事をお読みの上で
お話へお進みください。
もし、その記事内容に一つでも引っ掛かる事がありましたら
そっとリターンしてくださいませ。
どうぞ 宜しくお願いいたします

彩怜シリーズ概要について





【設定】

未来設定(彩怜シリーズ) ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り









大体、人には向き不向きがある。
それは解っていたけれど、こんなに顕著に出てしまうなんて誰が思うだろうか・・・。

「公子・・・それでは、公主様が泣いてしまいますよ」
「もうっっ、解っているよ!桃簾お兄さん」
「ふぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ああ、泣かせてしまった。
ごめんね、不甲斐ない兄で。


*********


こうなったのは、僕の言葉からなんだ・・・・実は。


「母上、今日は確かご公務だったはずですよね?
そろそろお出掛けにならないといけないのでは?」
「・・・・・ええ・・・・」

歯切れの悪い母さんの言。

「どうかなさったのですか?」
「ええ、困った事があって・・・・」
「困った事?」

今日は妹公主が生まれてから、初めての公務。
しかし、いざ公務となった時に困った事が起こったんだ。

「それが・・・・誰が公主を見ててくれるのかを揉めていて」
「揉める?」
「ええ、誰もが『公主様のお世話をしたい!!』と申し出て、決めかねているのよ」
「・・・・・なるほど」

普通ならば乳母が付いているから乳母が面倒をみるのだろうけど、
母さんは乳母を置くことを良しとしなかった。

『彩怜も自分自身の手で育ててきたのだから、
この後宮で公主を育てると言えども同様にしたい』
そうきっぱりと告げて、周りの意見を退けた。

だからこんな時に困ったことになったんだ。

「じゃあ、僕が妹公主のお世話をしていますから。
母上は公務に行って下さい!!」
「彩怜が?」
「任せて下さい!!!!」

僕は、胸を張って答えたんだ。

だって、今日の公務再開には色々すったもんだが有ったのを僕は知っている。
だから母さんには心置きなく公務に行ってもらいたいんだ。


********


そもそも公務を再開する事が決まったのは、ホンの2週間前の事だ――。

母さんは妹公主を産んで半年以上経つ今まで、公務はしてこなかったんだ。
その事について、母さんなりに色々と考え込んでいたらしい。
やはり正妃という立場上、公務は大切だと。
キチンと責任は果たしたいとしっかり者の母さんは思うらしく。
しかしそれを阻止しようとする人物がいたんだ。
言わずもがな、それは父さんで・・・・。
産後しばらくは、父さんが命じて公務を入れない様にしていたんだ。


「乳母もいないのだから、夕鈴は休む暇なんてきっとないだろう。
だから公主の世話がない時はキチンと休んでおくべきで、
公務再開を急ぐことなんてないよ」
「でも、そういう訳には・・・・」
「私が『良い』っているんだから、君は夫の言うことを聞くべきだよ」

それで一度は公務再開は先送りになったんだ。
でもそれで終わるはず筈は無く―――。
2週間前に、母さんがそろそろ公務を再開したいと再度父さんに申し入れた。
しかし、父さんは何かと理由を付けて再開させようとしないのを、
いい加減嫌気が差した母さんが父さんを叱り飛ばして、しぶしぶながら再開を了承する事にしたらしい。

父さんは母さんに頭が上がらない・・・・。
だから何のかんの言っても、母さんの言には最終的には従ってしまう。
それは、恐らく父さんなりの優し故の愛情表現なのだろうけど、
しかしその愛情表現は僕にとってみれば複雑怪奇だ。
だって、父さんって官吏の誰もが恐れる『狼陛下』なんだよ。
だから、奥さんである母さんの言葉に大人しく従うなんてね・・・・・。
まぁ、それはいいとして。

母さんは父さんを前にして臆することなく主張する。

「大体・・・出産は沢山の女性が経験することで、
皆出産後も早々に家事を再開するものよ。
それに、私も彩怜が生まれた時なんて誰もいなかったんだから、
寝ていたりはしなかったわよ。
・・・・生まれたばかりの彩怜を連れて、住み込みしていた宿屋から出て行ったくらいだし」

あっ、母さん。
今、何気に父さんの傷をえぐった・・・よ。
父さん・・・マジで悲し気な表情になっているんですけれど。

「夕鈴・・・・・・・・・・・・ごめん。
あの時は本当に、君に辛い思いをさせてしまった。
もっと自分がしっかりしていれば」
「へ、へいか!!!
あっ、ごめんなさい・・・・・あの、その、あの時はそうするしか」
「解っているよ。
でも自分の不甲斐なさが」
「今はこうして家族が一緒にいるのですから、もう大丈夫です」
「いや、でも夕鈴には苦労を掛けたのだし」
「そんなことはありませんから」

あ~~あ、これは二人の世界に入ったよね。
多分。

やっぱり・・・・・だよ。
二人で抱き合っているよ。
あのぉ・・・・・一応、僕がいるんだけど。
お二人さん、気が付いてる?
二人の世界に入らないでよ~~~。
・・・・・ダメだ、これは。
もう放っておくしかないよね。


僕は、ゆりかごの中でむずがり始めた妹公主をそっと抱き上げ、
そのまま部屋を脱出した。
まっ、そんな事があって。
気が付くと、母さんは公務を再開することになっていたんだ。
母さんってば、父さん相手にどんな手を使ったんだか?!


********


「彩怜、大丈夫なの?」
「勿論、妹の面倒くらい見れるよ。
昔、友達たちが弟妹の面倒を見ていたのを、僕だってちゃんと見ていたし。
それ位出来ないと、兄にはなれないからね」
「そう?じゃあ、彩怜に頼むことにするわ。
もし困ったことがあったら、周りの人に頼ってね」
「うん、大丈夫!!
ほら、早く行かないと・・・・父上がお待ちだよ」
「そうね」

そう言って、僕の腕に妹公主を抱かせると母さんは慌てて出て行った。


さて、まずは何をすればいいんだろう・・・・。
僕の腕の中で眠る可愛い妹公主を眺めて、自然と頬が緩んでいた。


しかし、それは束の間の事で――――。
僕は、如何に子守が大変なのかを身をもって知ることになる。




続く。





*****************


こんにちは!!!


まだ続きモノが色々と書き上がってないのに、
新しいものに手を出してしまいました。

何となく、ふんわりした気持ちになりたくて・・・・。

続き物の事は忘れていません!!
はいっっ!!
張り切って書きますので、
今しばらくお待ちくださいませ。


瓔悠。










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彩怜シリーズ概要について



【設定】

未来設定(彩怜シリーズ) ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り

【注意事項】

こちらの話は彩怜クンシリーズの最初のお話、【最奥の鍵】より
以前の話となります。
なので、陛下は全く出てきません。

更に、捏造も甚だしく。
読む方を選ぶ内容になってます。

何でもOkだとお思いのゲスト様のみ
お進みください。





僕は、母さんが自分からいなくなるなんてことは絶対無いと信じてる。
だから、何かあったのかもしれないと思うんだ。
なら、僕が助けに行かないといけないんだ。
だって、僕には母さんしかいないのだから。


「ほらっ、おチビ君行くよ」
「僕はおチビ君ではないんだけどな・・・・・」

僕と連れ立って歩くのは、僕の家に訪ねて来た母さんの知り合いだと言う男性。

「あのっっ!行くって言っても、あなたは母さんの居場所が分かるんですか?」
「さぁ?分かんないけど」
「じゃあ、何処に行くつもりなんですか?」
「まずは、情報収集だよ」

僕の顔を見て、ニヤッと笑う。
その表情を見て、僕は一抹の不安を感じていた。

こんな事で大丈夫なんだろうか?
悠長にしていて、母さんの身に何かあっていたら・・・・僕は嫌な想像をしてしまい、ブルリと身体を震わせた。

「あの・・・そんな感じで母さんは見つかるんですか?」
「まぁね~。だってさ、この村から母ちゃんは出て行ってはいないからさ」
「うん?どうしてそんな事を知っているんですか?」
「だって、オレの仲間がこの村の出口付近を張っているからさ」
「張っている??」

―――僕と母さんは誰かに監視されているの?

僕の身体は、襲い来る緊張で咄嗟に固まった。
それを目ざとく感じ取った隣にいる大人は苦笑する。

「ホント、おチビ君はあの人に似てるよな~~。
瞬時に変わった空気の変化を感じ取る能力とか、その危機回避本能とか」
「あなたは・・・・一体、誰なんですか?」

僕は恐る恐る訊いてみる。
本当の事を答えてくれる確証なんてものは、無かったけれど。

「オレ?
だから言ったじゃんか、おチビ君の母ちゃんの古い知り合いだって」
「では、質問を変えます・・・あなたの名前は?」
「ああ、オレの名前ね~~オレは、浩大って言うんだけど」
「浩大さんですね」

僕は口の中で何度も範疇してみる。
そしてその名前の人物が過去に僕達親子に会いに来たことも無いし、
母さんからその名前が口に出されたことが無い事を思い返していた。

「どういった知り合いなんでしょうか?
申し訳ないのですけれど、僕は貴方の名前を母さんからは聞いたことは無いですし」
「そうだろうな~。だって、母ちゃんは多分忘れておきたかったんだろうし」
「忘れたかった?」
「まぁね」
「何を忘れたかったんですか?
それに、何故母さんは浩大さんの事を忘れたかったんですか?」」
「わりぃ、オレはそれについては話せないんだわ。
話すとオレの首が飛ぶからね」
「はい?」
「唯一、オレが言える事は・・・敵じゃないって事だけだよ」
「・・・・・」

僕はこれ以上問い詰めても、僕が欲する答えは得られないだろうと感じていた。
だから、僕は腹を括る事にした。

―――この人を信じよう。

僕はゴクリと唾を飲み込んだ。

「分かりました。
あなた・・・いえ、浩大さんに全てを任せます。
僕は母さんが無事に家に帰って来てくれればそれでいいのですから」
「りょ~~かい!オレに任せておけよ!」
「はいっっ!!」

浩大さんと僕は、まず村の外れの露店通りに行ってみることにした。
この露店通りの露天商は朝市もしていて、もう店開きしているだとうと見越してだ。
ここはこの村に住む人達も結構歩いているから、何か不信な事でもあれば露店主達は覚えているはず。
それにここでは村の女性とかとの情報交換の場にもなっているから、
露店主から何か情報を聞き出すことも出来るかもしれない。

陽が登りきってはいないが、やはり朝市が開催されるとあって露店通りではすでに準備が整っている。

「おっ、これは新鮮そうな果物だね~~1個いくらかい?」
「おやっ、見かけない人だね」
「まぁね~ちょいとこの村に用事があって立ち寄っただけだからね」
「そうかい!」
「そうそう、最近面白い話なんてないかい?」
「面白い話?」
「そう!」

僕は浩大さんの背中に隠されていた。
この露店のおじさん達には、母さんと買い物に来た時に会っているから。
ここで僕が前面に出てきていたら、話をしてくれないかもしれないし・・・。

「そうだなぁ~~あっ、思い出したけどよ。
最近この村の村長んとこのどら息子が、村外れの未亡人に求婚しているらしいな」
「未亡人?それは綺麗な女性なのかい?」
「綺麗・・・まぁ、綺麗かどうか、オレにはよく分からないけどさ。
その未亡人には子供がいて、子供の為に受け入れるって話だよ」

はい?
村外れって言ったら、僕の家があるけど。
母さんは未亡人なんかじゃない。
でも村長さんの息子さんって言ったら、昨日僕にしつこく言ってきていた。
母さんを説得して欲しいとか、何とか・・・。
僕は話を最後まで聴かずに、友達とまた遊び始めたんだけど。

「ふぅん、なるほどね~~楽しい話をありがと。
じゃあ、この果物2個もらっていくな」

浩大さんは露店主に果物2個の代金よりも少しばかし多いお金を渡して、
僕を伴ってスゥーと離れていった。

「おチビ君!お前の母ちゃんの居場所が掴めたよ」
「えっ?さっきの話だけで?」
「まぁね~~~~じゃあ、この果物食べて乗り込むとするか!!」
「はいっっ!!!!」

僕は受け取った果物をガブリと一口かじって、浩大さんの後に付いて行った。

母さん!待ってて。
僕が迎えに行くからね。

東の空には明るい陽が昇りつつある。
その方向に歩を進めて行った。


続く。













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こちらの話は彩怜クンシリーズの最初のお話、【最奥の鍵】より
以前の話となります。
なので、陛下は全く出てきません。

更に、捏造も甚だしく。
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何でもOkだとお思いのゲスト様のみ
お進みください。







一体、今は何時なのだろうか?
この部屋の窓の外は真っ暗で―――。
今、ここには誰もいないのに、私はここから出ることが出来無い。

「彩怜・・・大丈夫かしら?
きっと、一人ぼっちで不安に思っているわよね。
このまま留まるわけにはいかないのに、
どうすれば、ここを抜け出すことが出来るのよ・・・・」

抑え気味に潜めた声で呟くと、夕鈴は大きな息を胸から吐き出した。


**********


あの時。
逃げ出すつもりで扉へと手を掛けて、大きく開けた。
でもそこにいたのは、仁王立ちの村長さんで。
いつもの柔和な表情は、その顔から影も形も消え失せていた。
怖い・・・とは思ったけれど、自分の要求は口にしないと!と勇気を振り絞る。

「あの・・・私、お暇したいのですが」

恐々と村長さんに申し出たけれど、
返ってきた答えはやはりと言うか想像したモノだった。

「帰さない。いや、帰せないのだよ」

その言葉尻から、この人は自分の息子には逆らうことは出来無いのだと察した。
でも自分はそんなことを許容する訳にはいかない。
自分にも守りたい存在がいるのだ。

そう、村長と同じ『息子』という存在が―――。
だからこのままここに留まるなんてことは出来ない。
大人しく要求を呑むなんてことはしない!!

「帰せないなんて事は、無い筈では?!
だって、ここは貴方の家ですよね」

こんな事を言っても無駄かもしれない。
それでも。
でも。
私は、声を発するのだ。

「私は、アレには逆らえないんだよ。
だから、夕鈴さん・・・・・アレの言う通りにしてやってはくれないだろうか?」
「はい?私はキチンとお断りしました。
『それは、それだけはお受けすることは出来無い』と。
それなのに相手の思いを踏み躙って、自分の思い通りに事を運ぼうとする行為は、
それこそ自分勝手な事だと私は思います。
村長さんは、これが正しい行いだと思われるんですか?
そうでは無い筈・・・・・ならば、親として息子さんを正すべきではないでしょうか」

凛とした声が、響く。
夕鈴とて、一人の親なのだ。
子どもの過ちは、キチンと正すのが親の役目。
それを疎かにすれば、それこそ『親である』と胸を張って言えなくなる・・・・と。

「それが真理だと、わしも思う・・・・・。
じゃが、わしにはアレを止めることは出来んのじゃ」

苦しい言葉が村長さんの口から洩れる。

これは、駄目だ。
何を言っても、聞き入れてはもらえない。

夕鈴は、悟った。
自分は傍若無人な振舞いをする御仁に、まだ付き合わされるのであろう事を。

「彩怜・・・・・・ごめんなさい」

夕鈴は、俯いた。
その表情は昏く、苦しげだった。
そして薄茶の瞳からは、一筋の涙がスゥーと零れ落ちた。



続く。












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僕は走っていた。
手には手持ち灯だけ。
身体一つで、母さんを探していた。

いつもの畑。
水汲みの川。
そして、村の中。
更には村から外れた露天商通りまで。

でも何処にも母さんはいなかった。
露天商通りには、もう開いている店は一つもなかった。
誰も通る事の無い道で、僕は茫然とした。

このまま母さんがいなくなってしまったらどうしよう・・・・。
僕は一人ぼっちで生きていけるんだろうか。

嫌な想像ばかりが、頭を過る。
それを振り切るために、僕は頭をブンブンと振った。

もしかしたら自分と入れ違いで家に帰っているかも知れない。
そして『お帰り!彩怜、何処に行っていたの?もうご飯にしましょう』って出迎えてくれるはずだ。

そう僕は思い直して、急ぎ足で家路へと向かう。

家が見えてきた時、僕は大きく肩を落として落胆した。
だって見えてきた家の灯りは寒々と消えていて、
母さんがいない事を物語っていたのだから。

「母さん、・・・・・・・・・・・」

僕は、そう呟くことしか出来なかった。
もう辺りは真っ暗。
これ以上探す場所なんて、もう思い当たらない。
それに子供である自分が探せる場所なんて、たかが知れている。
なら、家の中で待っている方が得策だ。

そう思って、トボトボ家の中へと入っていった。
取りあえず、灯だけは付けた。
でももうそれ以上は何もしたくなくて、居間の長椅子に身体を横たえた。
お腹が空いているはずなのに、何か食べたいって気も起きない。
何も考えたくなくて、そのまま目を瞑った。
次第に襲い来る睡魔に、僕は抗う事無く本能に従った。


『チュン、チュン、チュン』

窓から漏れくる光で、僕は朝がきたことを悟った。

目を開けたくない・・・。
だって、家に母さんが帰ってきている確証なんて無かったから。
それはこの身体に感じられる、敷布ではない椅子の固さが僕に教えるんだ。
そのまま長椅子で寝てしまった事を・・・・。
でも朝なら、もう起きないといけない。
だって、また母さんを探すんだから。

「ふぁあ~~~~」

身体を起こして、大きく伸びをした。
その時、玄関の扉を叩く音が聞こえてきた。

誰?
こんな朝早くから・・・。
僕しかいないけど、出てても大丈夫なのかな?
う~~ん、でも誰かが母さんの事を知らせに来てくれたのかもしれない。

そう思った僕は、恐る恐る玄関の錠を開けた。

「はい、誰ですか?」

そこに立っていたのは、小柄だけど大人の男性だった。
この村の人じゃない。
僕は見た事が無い大人に、サッと身構えた。
それに対してその男の人は気分を害することも無く、僕をしげしげと見詰めていた。

「ふぅ~~ん、よく似てるな」

その男性は僕へと聞かせる言葉では無い様に、ポツリと独り言を呟いていた。

「あの・・・・・・・・・・どなたですか?」
「ああ、オレ?」
「はい」
「オレは、タダの遣いだよ。
母ちゃん、いるか?
って、いないか・・・・・」

うん?
どうして、母さんがいない事をこの人は知っているの?
僕は目の前の男性に、少し警戒心が起こる。
僕が疑いの視線を向けているのだろう・・・その男性は、頭を掻きながら苦笑いをする。

「オレが母ちゃんを何処かに連れて行ったんじゃないからな。
どうして、オレが母ちゃんがいない事を知っているのかは、
実は一晩中、この家の前にいたから」
「一晩中?」
「だって、こんな小さな子供一人で、一晩を過ごすなんて物騒だろ」
「・・・・・まぁ、確かに」
「だからだよ。それで、オレが手伝ってやろうか?
母ちゃん探し」
「ホントにっっ???」

僕は渡りに船とばかりに、正体不明の男性の提案に乗ろうとした。
でも寸でで『お願いします』と言う言葉を封じた。

「あっ、オレの事を怪しんでいるんだよな」
「・・・・・・・」
「オレは、母ちゃんの昔の知り合いだよ。
まぁ、証拠は?なんて言われると特に何も持っていないんだけどな」

僕は、その男性をジッと観察した。
嘘を言っているのなら、何か変化があるはずだ。
でもその男性の瞳は何か信念みたいなものと僕を心配する温かな眼差しが感じられて、
大丈夫だと判断した。

「あの・・・・・・・お願いします」
「よし、任せときな!!」

そう言うと、その男性はニカッと笑った。



続く。















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それは、夕鈴がかなり危機的状況下にあった頃・・・。

この村から少し離れた所にある大きな街の一角の酒場で、
そんなに上等酒ではない酒を酌み交わしつつ頭を突き合せ、
男性二人が何やら話し込んでいた。

「その話は、信憑性があるのか?」
「まぁ・・・自分の中では、かなり信用していいとは思うんだが」
「でも、今までもそんな話はゴロゴロしてたじゃないかよ」

二人の内の小柄な方の男性が、眉間に皺を寄せて小さくチッと舌打ちをする。
それを見てもう一人のかなりガタイのいい男性が、宥める様に愛想笑いを浮かべる。

「それを言われると、俺はもう何も言えないが。
なら『取るに足らない情報』として放置するか?」
「そんな事をして、もし本当にそうだった時がオレは恐ろしいんだよね~。
だから一応、確かめておくよ」
「それがいいだろうよ。でも、もう何年になる?」
「かれこれ、9年は過ぎちまった」
「もうそんなになるんだな」
「全く、どうしてこうもいつも上手く雲隠れされちまうのか。
自分は優秀だと自負していたんだけどな」
「お前さんは優秀だよ。だたあっちも必死って事だけなんだよ」
「はぁ~~~もうそろそろ、捕まえないとオレの首が危ういんだよな」
「そうだな」

小柄な男性が、フゥと小さく息を吐き出す。
そして二人はその後黙り込み、ただ酒を酌み交わすだけだった。


**********


そして、またその頃。
いつまで経っても帰って来ない母を待ちわびて、
暗がりの居間の長椅子で小さく身体を縮こませている少年がいた。

もう陽がすっかりと落ちてしまって少年はどうすることも出来ず、
ただただ母の帰りをジッと待つしか無く・・・・。
次第に心細さから、ポロリとその深紅の瞳から涙の粒を零れ落としていた。

「母さん・・・・・僕を置いて何処に行ったの?
僕が何か悪い事をしたのかな・・・・・・グスン、グスン」

声に出せば余計に切なくなっていき、
最後には嗚咽を上げて泣き出した。

けれど、ここに住んでいるのは自分と母の二人。
誰も助けてなんてくれないから、どうすることも出来無い。

どうして、僕には父さんがいないんだろう。
こんな時・・・父さんがいれば、きっと怖くないに違いない。
それに母さんを探すために、一緒に行ってくれるはず。
だけど、僕にはいない。
だから、一人で耐えるしかない。

「僕しかいないんだったら、僕が探しに行くしかない!!」

そう涙声ながら力強く言葉を発すると、
僕は卓上で煌々と光る手持ち灯を持って外へと飛び出した。




続。




短くて、スミマセン~~~
ただ、今後の話の展開で必要だったんですぅ。

気になる展開のままでスミマセンが
またUPをしばしお待ちくださいませ。




瓔悠

Author:瓔悠

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