【交差しない道標・11】
2017年09月29日 (金) | 編集 |
こちらの話は特殊設定のお話になります。

下記の『彩怜シリーズ概要について』の部分をクリックして、
そちらに明記された記事をお読みの上で
お話へお進みください。
もし、その記事内容に一つでも引っ掛かる事がありましたら
そっとリターンしてくださいませ。
どうぞ 宜しくお願いいたします

彩怜シリーズ概要について



【設定】

未来設定(彩怜シリーズ) ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り

【注意事項】

こちらの話は彩怜クンシリーズの最初のお話、【最奥の鍵】より
以前の話となります。
なので、陛下は全く出てきません。

更に、捏造も甚だしく。
読む方を選ぶ内容になってます。

何でもOkだとお思いのゲスト様のみ
お進みください。






「村長さん、遅いですね・・・・・・」

僕は、いつまで経っても開くことのない扉を恨めし気に見詰める。
浩大さんは、特に気にする風もなく『そうだね~』と呑気な言葉を紡ぐ。
正直、ここで座ったまま待つこと以外何も出来ないままなのは、気が急いて仕方無い。
しかし、村長さんが現れない事には話は始まらない。

「浩大さん、あの・・・・・・少しだけ聞いてもいいですか?」

僕は声を潜めて、浩大さんに質問を投げかける。

「うん?何??」
「村長さんが来たら、どうするつもりなんですか?」
「あん?まずは村長自身がこのこと関与しているか、探りを入れる。
それで、その結果次第で方針を決める」
「えっ?具体的な救出方法は、決めてないんですか?」
「まぁね~~オレはさ、いつも行き当たりばったりな事が多いからさ」
「・・・・・・」

僕は、それで大丈夫なのか少し不安になる。
それを見た浩大さんは、隣りに座る僕の頭をポンポンと軽く叩きニヤッと笑った。

「でもそれは裏返せば、
柔軟な動きが出来て臨機応変に対応出来るってことなんだからな」
「まぁ、確かにそうですね」
「任せときな!って」
「はい!」

僕が返事をした瞬間、ガチャリと扉が開いた。
その音にビクッと身体が震え、ゴクリと息を飲んだ。

「ああ、お待たせして申し訳なかったね」
「これは村長さん!今日はありがとうございます。
ウチん村の村長が是非に聞いて欲しい事があるって事で、
おいが遣わされたんじゃが聞いてもらえんじゃろうか」

表情をスッと変えた浩大さんは、
先程の訛りの強い話し方で村長さんに話し掛ける。
僕はというと、僕だと気づかれない様にサッと立って、
浩大さんの座る椅子の後ろに隠れた。
そんな僕の様子には全くお構い無しに、
村長さんは応接台の一人掛け椅子に腰をドカッと下ろした。

「ええと、何処の村の村長さんからの話でしょうか?」
「これは失礼しやした。
おいは二つ隣の村のもんだが、知っちょるじゃろうか?」
「二つ隣り・・・・・・ああ、禾生村のもんかな?
そう言えば、先月村長が何かごちゃごちゃ言っておったな・・・その事かいな」
「ああ、そうじゃ!禾生村のもんじゃよ。
ウチの村長が急いじょってな・・・おいがここまで来たんですわ」
「それはご苦労さんなことで・・・」

浩大さん、スゴイです!
有りもしない遣いの話を、こうもあっさりと事実にしてしまうなんて。
これが臨機応変の対応って事なんだ!!

僕は浩大さんの後ろに隠れたまま、感心していた。

「それで、時に村長さん。
ここに来る途中で、小耳の挟んだのじゃが」
「なんの話かな?」
「村長さんの息子さんが、嫁さんを貰うとか?」
「うん?その話を何処で?」
「この村の露店通りの店主からじゃが。
それがホントの事じゃったら、ウチの村の村長に報告しなきゃならん。
ほれ、祝いなんかもあるじゃろうし」
「ああ・・・・・まぁ・・・・・・そうですな・・・・・その話はなぁ・・・・・その・・・まぁ、その内にでも」

村長さんは歯切れ悪く、言葉を濁す。
その様子を浩大さんは表情を変える事無く、伺っている。

「そうかい!そいじゃ、それが本決まりになったら、
おいの村にも知らせてくんさい。祝いをどっさり持ってくるんでな」
「はぁ、そうですね」

村長さんは曖昧な笑みを零す。
そして明後日の方向を見詰め、
無意識に口の中でモゴモゴと言葉にならない言葉を発していた。
それを見た僕は瞬時に確信した。

村長さんは積極的には関与してはいないことを。
これは村長さんの息子さんが起こした事なんだという事を。

「そいじゃ、おいの村の村長から託された事を伝えておきますわ。
実はな・・・溜池の件なんじゃが、おいの村が溜池の水が足りんようになったら、
そちらの村長さんとこの溜池の水を借りたいって事なんじゃ」
「溜池の事かの」
「ヘイ!どう、じゃろうか。
是非にお願いしたいんじゃ」
「・・・・・・・まぁ、それは確かにお互い様なところがあるから。
そちらの村長さんに了解したと伝えてくれんかの」
「そりゃ、願ったりじゃが!!ありがとうございますだ」

浩大さんはスクリと立ち上がって、ニコヤカに笑いつつペコペコとお辞儀をした。
僕も慌てて立つと、浩大さんに習ってお辞儀をした。
村長さんは僕達の様子を見て、もう用は済んだとばかりに椅子から立ち上がった。
そしてすぐさま、応接室を出ようと扉に向かって歩き出した。

その時。
僕の隣に立つ浩大さんが僕の背中をポンッと押してきた。

これは、僕に何か行動を起こせって事だと何となく察した。
僕に頑張れってことなんだ!
そう思った僕は、今まさに扉から出ようとする村長さんの脇をすり抜けて廊下に出て走りだした。

「コラッ!!坊主、何処に行くんじゃ!!!」
「父ちゃん、オレ冒険してくる」

浩大さんの叱り声に呼応して、僕はそう答えた。
僕の動きを予想しては無かったであろう村長さんは、身動き出来ずに固まっていた。
そして少しして思い出した様に、僕が角を曲がり切る前に叫んだ。

「そっちは行っちゃっならん!!!」


それで、確信した。
この先に母さんがいる事を。

母さん、僕が行くから。
待ってて。

僕は走りぬけて、角を曲がり切った。
その先には、ある人物がいた。



続く。




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【交差しない道標・10】
2017年09月09日 (土) | 編集 |
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なので、陛下は全く出てきません。

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僕の目の前には、この小さな村からしたら結構豪勢な一軒家があった。
ここは―――僕は知ってる。
村長さんの家だ。

「あの、ここって」
「ああ、おチビ君の母ちゃんがいるところだよ」
「ホントに?」
「まぁな、あの露店商の店主が言っていただろ」
「確かに、面白い話として出てきたね」

そう言うと、僕の隣の浩大さんは目の前の建物を伺う様な鋭い目線を向けていた。
僕はただ黙って、見ているだけ。

それにしても、この浩大さんって何者なんだろう?
母さんの知り合いってだけで、それ以上の事は何も教えてはくれない。
僕も訊くのは憚れる様な気がして、その質問は心の奥に封じている。
でも、いい。
それでも母さんを助けてくれるのだったら、浩大さんが何者でもいいんだ。

「浩大さん・・・どうやって母さんの所に乗り込むの?」
「う~~ん、今考え中」
「・・・・・・」
「母ちゃんに何かあったら、オレの首が飛ぶからな~」
「首が飛ぶ?」
「そっ、おっかない狼にね」
「浩大さんは猟師なの?」
「猟師?はぁ?ハハッ、おチビ君は面白い事言うね~。
オレは猟師じゃないよ。まぁ、言うならば・・・ある人の道具」
「道具?」
「そっ」

浩大さんは、もうそれ以上は何も言わなかった。
そして僕に手招きして、玄関の傍に植えてある植え込みの物陰に誘う。
僕と浩大さんは、そこに座り込んでひそひそ声で話す。

「さて、乗り込む方法が思い浮かんだよ。
こういう時は、裏からとか建物の隙間からとかはしない方がいいんだ。
真正面から乗り込むに限る。
オレはこの村の人間じゃあねぇから、面は割れてない。
だから、村長に話しがあって来た近隣の村の人間の振りをして玄関から入るとするよ」
「じゃあ、僕はここで待ってるの?」
「おチビ君をこのままここに置いていくのは、得策じゃないから・・・・」

浩大さんは、その場にある朝露に濡れて湿った地面の土を一つまみ掴んだ。
そしてそのまま僕の両頬に塗りたくった。
更に浩大さんは自分の被っていた頭巾を脱いでズボンに挟むと、
両手で髪の毛をわざとぐちゃぐちゃに乱す。

「よし、これでいいな」
「僕って分からない?」
「まぁな、これでおチビ君は近隣の村のやんちゃ坊主だぜ。
オレは、村の青年ってとこだな。じゃあ、行くとするか!!」
「うん!!!母さん、今行くからね」

僕は胸を張って、浩大さんの後に続いた。
浩大さんは、扉を叩く前に僕の方に振り返ってニヤッと笑った。
それだけで、僕は安心出来た。
これから起こる事を予感して―――。
そう、母さんを取り戻すんだ!

「スミマセン、村長さんは居ってかな?」

浩大さんは、声音を変えて少し訛った話し方で扉の向こうへと話し掛けた。

「はい?村長に何用で?」

中から、女の人の声が聞こえてくる。
恐らく、村長さんの所に勤めている女中さんだろう。

「へい、ここの村長さんにお願いがあって来たんじゃが、
会わせてもえらえんじゃろうか?」
「面会のご予定だったでしょうか?」
「いやぁ、どうじゃっただろうか?おいは使いなもんでな。
でも確か、おいの村の村長と話がついてる筈なんじゃが」
「分かりました、ではどうぞ」

ギィィーと音がして、扉が開く。
僕と浩大さんは、スタスタと中に入って行った。
扉の向こうには先程から対応していくれている女中さんがいた。
その先導で、玄関へと歩いて行く。
敷地内はとても静かで、そこで何が起こっているのか、全く窺い知る事は出来ない。

母さんはここに居る―――。
何となく、僕にはそんな気配が感じられる。

「あの・・・村長さんは、今手が離せないとの事で少しお待ちいただく事になると思いますが」
「あれま、そうなんじゃね。
まぁ、それは仕方なかね・・・ほんじゃ、おいは待たせてもらうとしようか」
「そうですね、応接室はコチラです」

女中さんの案内で、応接室へと招き入れられた。
こんなにあっけなく、中に通されるとは思わなかった。
応接室に通されたとなると、母さんは何処かに監禁でもされているのかもしれない。
だって、お客さんとして村長さんに呼ばれたんだとすると、
僕達が応接室に通される訳が無いんだから。

「母さんは何処なんだろう」
「そうだな・・・・・まだ勝手には動けないからな。
取りあえずは村長の出方をみるか」
「うん」
「心配か?」
「・・・・・」
「大丈夫!お前の母ちゃんは強いんだから。
なんてったって、あの狼を御しえる唯一の女人なんだからさ。
だから心配すんな」
「狼を御す?それって浩大さんの首を飛ばす狼?」
「ハハハ、まぁな。
狼使いってとこかな」
「?」
「それはいいとして、折角お茶も出してくれたんだから飲んで待ってるとしようぜ」
「うんっっ!」

浩大さんは呑気に笑うと、茶杯を持って一気に飲み干した。
僕はそれを苦笑いで見詰めて、僕もそれに倣った。




続く。





【僕の子守は、てんてこ舞い・前編】
2017年06月27日 (火) | 編集 |
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大体、人には向き不向きがある。
それは解っていたけれど、こんなに顕著に出てしまうなんて誰が思うだろうか・・・。

「公子・・・それでは、公主様が泣いてしまいますよ」
「もうっっ、解っているよ!桃簾お兄さん」
「ふぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ああ、泣かせてしまった。
ごめんね、不甲斐ない兄で。


*********


こうなったのは、僕の言葉からなんだ・・・・実は。


「母上、今日は確かご公務だったはずですよね?
そろそろお出掛けにならないといけないのでは?」
「・・・・・ええ・・・・」

歯切れの悪い母さんの言。

「どうかなさったのですか?」
「ええ、困った事があって・・・・」
「困った事?」

今日は妹公主が生まれてから、初めての公務。
しかし、いざ公務となった時に困った事が起こったんだ。

「それが・・・・誰が公主を見ててくれるのかを揉めていて」
「揉める?」
「ええ、誰もが『公主様のお世話をしたい!!』と申し出て、決めかねているのよ」
「・・・・・なるほど」

普通ならば乳母が付いているから乳母が面倒をみるのだろうけど、
母さんは乳母を置くことを良しとしなかった。

『彩怜も自分自身の手で育ててきたのだから、
この後宮で公主を育てると言えども同様にしたい』
そうきっぱりと告げて、周りの意見を退けた。

だからこんな時に困ったことになったんだ。

「じゃあ、僕が妹公主のお世話をしていますから。
母上は公務に行って下さい!!」
「彩怜が?」
「任せて下さい!!!!」

僕は、胸を張って答えたんだ。

だって、今日の公務再開には色々すったもんだが有ったのを僕は知っている。
だから母さんには心置きなく公務に行ってもらいたいんだ。


********


そもそも公務を再開する事が決まったのは、ホンの2週間前の事だ――。

母さんは妹公主を産んで半年以上経つ今まで、公務はしてこなかったんだ。
その事について、母さんなりに色々と考え込んでいたらしい。
やはり正妃という立場上、公務は大切だと。
キチンと責任は果たしたいとしっかり者の母さんは思うらしく。
しかしそれを阻止しようとする人物がいたんだ。
言わずもがな、それは父さんで・・・・。
産後しばらくは、父さんが命じて公務を入れない様にしていたんだ。


「乳母もいないのだから、夕鈴は休む暇なんてきっとないだろう。
だから公主の世話がない時はキチンと休んでおくべきで、
公務再開を急ぐことなんてないよ」
「でも、そういう訳には・・・・」
「私が『良い』っているんだから、君は夫の言うことを聞くべきだよ」

それで一度は公務再開は先送りになったんだ。
でもそれで終わるはず筈は無く―――。
2週間前に、母さんがそろそろ公務を再開したいと再度父さんに申し入れた。
しかし、父さんは何かと理由を付けて再開させようとしないのを、
いい加減嫌気が差した母さんが父さんを叱り飛ばして、しぶしぶながら再開を了承する事にしたらしい。

父さんは母さんに頭が上がらない・・・・。
だから何のかんの言っても、母さんの言には最終的には従ってしまう。
それは、恐らく父さんなりの優し故の愛情表現なのだろうけど、
しかしその愛情表現は僕にとってみれば複雑怪奇だ。
だって、父さんって官吏の誰もが恐れる『狼陛下』なんだよ。
だから、奥さんである母さんの言葉に大人しく従うなんてね・・・・・。
まぁ、それはいいとして。

母さんは父さんを前にして臆することなく主張する。

「大体・・・出産は沢山の女性が経験することで、
皆出産後も早々に家事を再開するものよ。
それに、私も彩怜が生まれた時なんて誰もいなかったんだから、
寝ていたりはしなかったわよ。
・・・・生まれたばかりの彩怜を連れて、住み込みしていた宿屋から出て行ったくらいだし」

あっ、母さん。
今、何気に父さんの傷をえぐった・・・よ。
父さん・・・マジで悲し気な表情になっているんですけれど。

「夕鈴・・・・・・・・・・・・ごめん。
あの時は本当に、君に辛い思いをさせてしまった。
もっと自分がしっかりしていれば」
「へ、へいか!!!
あっ、ごめんなさい・・・・・あの、その、あの時はそうするしか」
「解っているよ。
でも自分の不甲斐なさが」
「今はこうして家族が一緒にいるのですから、もう大丈夫です」
「いや、でも夕鈴には苦労を掛けたのだし」
「そんなことはありませんから」

あ~~あ、これは二人の世界に入ったよね。
多分。

やっぱり・・・・・だよ。
二人で抱き合っているよ。
あのぉ・・・・・一応、僕がいるんだけど。
お二人さん、気が付いてる?
二人の世界に入らないでよ~~~。
・・・・・ダメだ、これは。
もう放っておくしかないよね。


僕は、ゆりかごの中でむずがり始めた妹公主をそっと抱き上げ、
そのまま部屋を脱出した。
まっ、そんな事があって。
気が付くと、母さんは公務を再開することになっていたんだ。
母さんってば、父さん相手にどんな手を使ったんだか?!


********


「彩怜、大丈夫なの?」
「勿論、妹の面倒くらい見れるよ。
昔、友達たちが弟妹の面倒を見ていたのを、僕だってちゃんと見ていたし。
それ位出来ないと、兄にはなれないからね」
「そう?じゃあ、彩怜に頼むことにするわ。
もし困ったことがあったら、周りの人に頼ってね」
「うん、大丈夫!!
ほら、早く行かないと・・・・父上がお待ちだよ」
「そうね」

そう言って、僕の腕に妹公主を抱かせると母さんは慌てて出て行った。


さて、まずは何をすればいいんだろう・・・・。
僕の腕の中で眠る可愛い妹公主を眺めて、自然と頬が緩んでいた。


しかし、それは束の間の事で――――。
僕は、如何に子守が大変なのかを身をもって知ることになる。




続く。





*****************


こんにちは!!!


まだ続きモノが色々と書き上がってないのに、
新しいものに手を出してしまいました。

何となく、ふんわりした気持ちになりたくて・・・・。

続き物の事は忘れていません!!
はいっっ!!
張り切って書きますので、
今しばらくお待ちくださいませ。


瓔悠。










【交差しない道標・9】
2017年06月01日 (木) | 編集 |
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こちらの話は彩怜クンシリーズの最初のお話、【最奥の鍵】より
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なので、陛下は全く出てきません。

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僕は、母さんが自分からいなくなるなんてことは絶対無いと信じてる。
だから、何かあったのかもしれないと思うんだ。
なら、僕が助けに行かないといけないんだ。
だって、僕には母さんしかいないのだから。


「ほらっ、おチビ君行くよ」
「僕はおチビ君ではないんだけどな・・・・・」

僕と連れ立って歩くのは、僕の家に訪ねて来た母さんの知り合いだと言う男性。

「あのっっ!行くって言っても、あなたは母さんの居場所が分かるんですか?」
「さぁ?分かんないけど」
「じゃあ、何処に行くつもりなんですか?」
「まずは、情報収集だよ」

僕の顔を見て、ニヤッと笑う。
その表情を見て、僕は一抹の不安を感じていた。

こんな事で大丈夫なんだろうか?
悠長にしていて、母さんの身に何かあっていたら・・・・僕は嫌な想像をしてしまい、ブルリと身体を震わせた。

「あの・・・そんな感じで母さんは見つかるんですか?」
「まぁね~。だってさ、この村から母ちゃんは出て行ってはいないからさ」
「うん?どうしてそんな事を知っているんですか?」
「だって、オレの仲間がこの村の出口付近を張っているからさ」
「張っている??」

―――僕と母さんは誰かに監視されているの?

僕の身体は、襲い来る緊張で咄嗟に固まった。
それを目ざとく感じ取った隣にいる大人は苦笑する。

「ホント、おチビ君はあの人に似てるよな~~。
瞬時に変わった空気の変化を感じ取る能力とか、その危機回避本能とか」
「あなたは・・・・一体、誰なんですか?」

僕は恐る恐る訊いてみる。
本当の事を答えてくれる確証なんてものは、無かったけれど。

「オレ?
だから言ったじゃんか、おチビ君の母ちゃんの古い知り合いだって」
「では、質問を変えます・・・あなたの名前は?」
「ああ、オレの名前ね~~オレは、浩大って言うんだけど」
「浩大さんですね」

僕は口の中で何度も範疇してみる。
そしてその名前の人物が過去に僕達親子に会いに来たことも無いし、
母さんからその名前が口に出されたことが無い事を思い返していた。

「どういった知り合いなんでしょうか?
申し訳ないのですけれど、僕は貴方の名前を母さんからは聞いたことは無いですし」
「そうだろうな~。だって、母ちゃんは多分忘れておきたかったんだろうし」
「忘れたかった?」
「まぁね」
「何を忘れたかったんですか?
それに、何故母さんは浩大さんの事を忘れたかったんですか?」」
「わりぃ、オレはそれについては話せないんだわ。
話すとオレの首が飛ぶからね」
「はい?」
「唯一、オレが言える事は・・・敵じゃないって事だけだよ」
「・・・・・」

僕はこれ以上問い詰めても、僕が欲する答えは得られないだろうと感じていた。
だから、僕は腹を括る事にした。

―――この人を信じよう。

僕はゴクリと唾を飲み込んだ。

「分かりました。
あなた・・・いえ、浩大さんに全てを任せます。
僕は母さんが無事に家に帰って来てくれればそれでいいのですから」
「りょ~~かい!オレに任せておけよ!」
「はいっっ!!」

浩大さんと僕は、まず村の外れの露店通りに行ってみることにした。
この露店通りの露天商は朝市もしていて、もう店開きしているだとうと見越してだ。
ここはこの村に住む人達も結構歩いているから、何か不信な事でもあれば露店主達は覚えているはず。
それにここでは村の女性とかとの情報交換の場にもなっているから、
露店主から何か情報を聞き出すことも出来るかもしれない。

陽が登りきってはいないが、やはり朝市が開催されるとあって露店通りではすでに準備が整っている。

「おっ、これは新鮮そうな果物だね~~1個いくらかい?」
「おやっ、見かけない人だね」
「まぁね~ちょいとこの村に用事があって立ち寄っただけだからね」
「そうかい!」
「そうそう、最近面白い話なんてないかい?」
「面白い話?」
「そう!」

僕は浩大さんの背中に隠されていた。
この露店のおじさん達には、母さんと買い物に来た時に会っているから。
ここで僕が前面に出てきていたら、話をしてくれないかもしれないし・・・。

「そうだなぁ~~あっ、思い出したけどよ。
最近この村の村長んとこのどら息子が、村外れの未亡人に求婚しているらしいな」
「未亡人?それは綺麗な女性なのかい?」
「綺麗・・・まぁ、綺麗かどうか、オレにはよく分からないけどさ。
その未亡人には子供がいて、子供の為に受け入れるって話だよ」

はい?
村外れって言ったら、僕の家があるけど。
母さんは未亡人なんかじゃない。
でも村長さんの息子さんって言ったら、昨日僕にしつこく言ってきていた。
母さんを説得して欲しいとか、何とか・・・。
僕は話を最後まで聴かずに、友達とまた遊び始めたんだけど。

「ふぅん、なるほどね~~楽しい話をありがと。
じゃあ、この果物2個もらっていくな」

浩大さんは露店主に果物2個の代金よりも少しばかし多いお金を渡して、
僕を伴ってスゥーと離れていった。

「おチビ君!お前の母ちゃんの居場所が掴めたよ」
「えっ?さっきの話だけで?」
「まぁね~~~~じゃあ、この果物食べて乗り込むとするか!!」
「はいっっ!!!!」

僕は受け取った果物をガブリと一口かじって、浩大さんの後に付いて行った。

母さん!待ってて。
僕が迎えに行くからね。

東の空には明るい陽が昇りつつある。
その方向に歩を進めて行った。


続く。













【交差しない道標・8】
2017年05月25日 (木) | 編集 |
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一体、今は何時なのだろうか?
この部屋の窓の外は真っ暗で―――。
今、ここには誰もいないのに、私はここから出ることが出来無い。

「彩怜・・・大丈夫かしら?
きっと、一人ぼっちで不安に思っているわよね。
このまま留まるわけにはいかないのに、
どうすれば、ここを抜け出すことが出来るのよ・・・・」

抑え気味に潜めた声で呟くと、夕鈴は大きな息を胸から吐き出した。


**********


あの時。
逃げ出すつもりで扉へと手を掛けて、大きく開けた。
でもそこにいたのは、仁王立ちの村長さんで。
いつもの柔和な表情は、その顔から影も形も消え失せていた。
怖い・・・とは思ったけれど、自分の要求は口にしないと!と勇気を振り絞る。

「あの・・・私、お暇したいのですが」

恐々と村長さんに申し出たけれど、
返ってきた答えはやはりと言うか想像したモノだった。

「帰さない。いや、帰せないのだよ」

その言葉尻から、この人は自分の息子には逆らうことは出来無いのだと察した。
でも自分はそんなことを許容する訳にはいかない。
自分にも守りたい存在がいるのだ。

そう、村長と同じ『息子』という存在が―――。
だからこのままここに留まるなんてことは出来ない。
大人しく要求を呑むなんてことはしない!!

「帰せないなんて事は、無い筈では?!
だって、ここは貴方の家ですよね」

こんな事を言っても無駄かもしれない。
それでも。
でも。
私は、声を発するのだ。

「私は、アレには逆らえないんだよ。
だから、夕鈴さん・・・・・アレの言う通りにしてやってはくれないだろうか?」
「はい?私はキチンとお断りしました。
『それは、それだけはお受けすることは出来無い』と。
それなのに相手の思いを踏み躙って、自分の思い通りに事を運ぼうとする行為は、
それこそ自分勝手な事だと私は思います。
村長さんは、これが正しい行いだと思われるんですか?
そうでは無い筈・・・・・ならば、親として息子さんを正すべきではないでしょうか」

凛とした声が、響く。
夕鈴とて、一人の親なのだ。
子どもの過ちは、キチンと正すのが親の役目。
それを疎かにすれば、それこそ『親である』と胸を張って言えなくなる・・・・と。

「それが真理だと、わしも思う・・・・・。
じゃが、わしにはアレを止めることは出来んのじゃ」

苦しい言葉が村長さんの口から洩れる。

これは、駄目だ。
何を言っても、聞き入れてはもらえない。

夕鈴は、悟った。
自分は傍若無人な振舞いをする御仁に、まだ付き合わされるのであろう事を。

「彩怜・・・・・・ごめんなさい」

夕鈴は、俯いた。
その表情は昏く、苦しげだった。
そして薄茶の瞳からは、一筋の涙がスゥーと零れ落ちた。



続く。