【傍迷惑な歓迎・25】
2017年06月12日 (月) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り








「もっと・・・もっと・・・・・・」
「まだ、かい?」
「う、うん」

何が『まだ』なのか?
それは、さっきから何度も黎翔が口移しで飲ませている水の事。
酔った身体にはとても心地良いらしく、夕鈴は無意識に強請っていた。

何度も交わされる口づけ。
いや、口付けでは無かったか・・・。
それでも酔い回りの薄い黎翔にとっては、口付けている感覚で。
何とも言えない背徳感に苛まれる。

「夕鈴・・・そろそろ、いいよね」
「うぅん・・・・まだ」

もうそろそろ勘弁して欲しい。
ギリギリに保たれている理性の綱が切れそうだ。

これで最後だと決めて、黎翔は口腔内に水を溜め込んだ。
そして、優しく夕鈴の口元に運ぼうとした刹那―――。

ギュと夕鈴の腕が黎翔の首に巻き付いてきた。

『ゴクン』

驚いた黎翔は、口腔内の水を飲み込んでしまっていた。

「ゴホッゴホッ・・・・ゆ、夕鈴、どうしたの?」
「へーかぁ~~抱っこぉ」
「は、はい?」

自分の首に巻きついたまま、舌足らずの甘えた声が耳奥を擽る。

なに?この可愛い生物は。
一体これは何の罠なんだ。

夕鈴の訳の分からないおねだりに、訝しむ黎翔。
しかし・・・折角の可愛い我が儘を逃してなるものか!とニヤリと自然に口角が上がった。

「後からの、苦情は一切受け付けないからな」

ボソリと呟くと、黎翔はそのまま抱き上げ寝所へ運んで行った。
ユラユラと揺れる感覚が酔った身体には心地良いらしく、
夕鈴は黎翔の腕の中で微笑みを浮かべている。

「ほら、寝所だよ」

一応声を掛けて、黎翔はゆっくりと夕鈴を寝台の上へと降ろす。
そして自分も寝台の端に腰かけた。
寝台が二人の重みで静かに沈む。
黎翔は寝台に広がる薄茶色の髪を愛おしそうに、何度も撫でる。
寝かしつける様に優しく――――。

夕鈴が身じろぎしない事を確認すると、黎翔は名残惜し気に撫でる手を止めた。

「さて、飲み直すとするか・・・・うん?」

黎翔が立ち上がろうとすると、自分の衣に何か抵抗を感じた。
それは、衣の端を掴んで離さまいとする夕鈴の白い手だった。

「いかないで・・・・・・」

夕鈴によってポロリと吐き出された言葉。
寝ているものだと思っていた黎翔が、驚いてクルリと振り返った。
深紅の瞳に飛び込んで来たのは、夕鈴が寂しげにこちらを見詰めている茶色の瞳だった。

「どににも、行かないよ」
「そう?」
「もちろん」
「じゃあ、ここに・・・・・居て。
へーかがほしい・・・の」

上目遣いで見上げる夕鈴。
このまま抱き潰してしまいたい――――。
そんな淫らな願望が、黎翔の頭の中を駆け巡る。

抱きたい。
ダメだ。
相手は、酔っているのだぞ。
黎翔は必至で、理性を総動員して我慢しようとする。
しかし、夕鈴の破壊的色気に総動員した理性はぶっ壊されそうになる。

少しはだけた裾から見える白い生足。
上気した頬。
トロンとした瞳。
どれをとっても、美味しく見えるだけで。

上げ膳食わぬは、なんたら・・・と言う遠い異国の言葉が、フッと黎翔の脳内を掠めた。


「もうっっ、夕鈴のせいだからね!」

黎翔は自分を正当化するような台詞を吐き出した後、
ポスンと自分の身体を寝台に投げ出した。



続く。





************

えっ?ここで『続く??』
と、なりますよね。

ゴメンナサイ~~~~
続きはRが付く可能性も含んでいますので
ここで切ります。

『R』対応をどうするのか?とキチンと決めて
UPしたいと思います。


どうぞ、宜しくお願いいたします


瓔悠。










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【傍迷惑な歓迎・24】
2017年04月22日 (土) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り










さて、ここは二人にあてがわれた客間。
侍女達も早々に下げてしまい、只今は黎翔と夕鈴の二人きり。

二人して長椅子に腰掛けている・・・・・のだが。
果たしてこれは腰掛けていると言えるのだろうか?!
ゆったりと座る黎翔の肩にチョコンと頭を寄せて、しな垂れかかる酩酊状態の夕鈴。
それを、さも当然の様に受け入れている黎翔。
口元には柔らかな笑みが乗せられており、傍から見ればそれはそれは仲の良い夫婦の姿で。
だが、しかし現実は偽物夫婦なのである。

夕鈴の酔いは全く醒めないようで先程からニコニコしっぱなしで、
可愛い仕草で無意識に黎翔の理性をぶっ壊しかねない破壊的兵器になりさがっている。

「あのねぇ~~~~。
へーか、せっかくなので、もっとのみましょ」
「いや、夕鈴・・・・もうお酒は止めておこうよ」
「え~~~まだのめますよ~~~」
「夕鈴・・・・・・・もう夕鈴は飲めないと思うし、
僕ももう飲ませないよ」
「やだっっ!」

ガバッ!と身体を起こすと夕鈴は黎翔に頬を膨らませて見せる。

可愛い――――。
何だ、この可愛さは。

一瞬、黎翔はそのまま押し倒そうか・・・といけない行動を起こそうとして我に返り、
ブルブルと頭を振る。

「夕鈴、お酒はもう終わりだよ。
だからさ、この水飲もうか」
「おみず?」
「うん」
「いらないっっ!!」
「いらない・・・はダメだよ。
ほらっっ」
「いらないぃ~って、いってりゅでしょ。
いやっっ__!!」

夕鈴は水は要らないを繰り返して、黎翔の差し出す杯を押し返す。
これを何度か繰り返すと、黎翔もハァ~と深いため息を吐き出すしかなかった。

「もう、こうなったら、実力行使しかないね。
素面に戻って、僕に抗議しても無駄だよ。
だってこれは不可抗力なんだし、原因を作ったのは夕鈴なんだからね」

黎翔は誰に聴かせる風でもなく、独りごちた。
もしかしたら、少しでも残っているかもしれない夕鈴の理性に聴かせたのかもしれない。

黎翔は徐に卓上の杯を手に取り、自分の口に一口含んだ。
そしてそのまま夕鈴を横抱きに抱くと、柔らかい夕鈴の唇に自分の唇を押し当てた。
舌を小さく出して、夕鈴の唇を割るとひゅるりと入れてそのまま自分の口腔内の水を移していった。
夕鈴はビックリして薄茶色の瞳を大きく見開くが特に抵抗もせずに、
されるがままコクリと水を飲み込んだ。

「ううぅ・・・ん」

夕鈴の口が少し開き、まだ水を強請る様に小さく音にならない響きが放たれた。
どうも喉は乾いていたようで、飲み込んだ水の丁度良い温度が心地良かったらしい。
その様子に黎翔の表情は柔らかく破顔する。

「もっと欲しいの?」

そう言うとニヤリと微笑んで、黎翔はまた一口自分の口に含んだ。



************


所変わって、酒宴場。
朔は苦虫を噛み潰したような表情で、酒杯を煽っていた。
壇上に一人残る悠の表情はいつになく上機嫌で・・・。
今、客間での妹夫婦のやり取りを遠隔から見ているとでもいう様に、
瞳を輝かせている。

一体、悠は黎翔陛下に何をさせようとしているのか?
更には、何が最終目的なのか?

それを朔はハッキリと理解はしていなかった。
なので、悠の真意を測りかねているのだ。

正直、気になっている。
やり過ぎは困るのだ。
黎翔陛下の怒気に触れでもしたら・・・。
今回の貿易条約も破棄されないとも限らないのだ。
それだけは、国王の側近として避けなければならない事項で。
やり過ぎは、是非にでも止めねばならない・・・・・悠の為にも。


その壇上の悠は、ほくそ笑んでいる。
朔の想いなど知りもせずに。

「僕は言ったよね・・・・あの時に。
そう、白陽国から帰国する際に
『黎翔殿、あなたの妃を存分にそして大切に慈しんでください。
そのお妃さまは、僕の大切な妹姫なのですから』と。
その意味が解っていたのかな???
黎翔殿・・・そろそろ覚悟を決めてもらわないと、
僕がその掌中の珠を返して頂くことになりかねませんよ」

そう、この行き過ぎた歓迎は――――。
悠が確かめるためのモノだった。
それは、夕鈴の立場を。
本当に黎翔の妃であるのか?を。

黎翔殿はあの時言ったんだ。
『夕鈴は情報を聞き出すだけの相手だ』と・・・確かに。
だが、その後『庶民出の妃では都合が悪いから、方便として言った』と言い直していたが、
それは多分少し本当の意味を含んでいたと思う。
つまりは、夕鈴さんは本物の妃では無い!と僕は結論付けた。
だからこそ、確かめたいのだ。

黎翔殿は、夕鈴さんをどうしたいか?
どうするつもりなのか?

「フフフ・・・・・・僕をすんなりと騙せると思ったら、
大間違いだからね」


そして―――事態は大きく変化していく。



続く。









【傍迷惑な歓迎・23】
2017年03月24日 (金) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り





これは、マズイ。
かなり、マズイ。
非常に、マズイ。

黎翔が思ったのも、無理もない。
恐らく、誰もが思うはずだろうから・・・。

「夕鈴、大丈夫か?」
「えっ?あたしぃ、らいじょうぶ、ですよ~~~~~」

明らかに大丈夫では無い。
所謂呂律が回っていない話しぶりで。

黎翔はフラフラと歩く夕鈴を心配しつつ、後ろからついていくしか出来ない。

「早めに退出して正解だったな・・・・・」

黎翔は、苦笑いを醸しつつポツリと独りごちた。
酒宴場で夕鈴が酔いつぶれて、醜態を晒す訳にはいかないこともあり、
悠に夕鈴を伴って退出することを願い出た。
すると悠はニッコリと微笑んで、直ぐに承諾した。
何か、あるのか?と黎翔は訝しんだが、そんな事に構っている余裕は無かった。
兎に角、夕鈴をこの酒宴場から離れさせる方が優先事項であり。

そんな黎翔の想いなんてそっちのけで、夕鈴は回廊の端から空を見上げている。

「ねぇ、へいか~~~~今日は、とっても、おつきさまがぁ~キレイですよねぇ~」

舌足らずな言葉が破壊的で、黎翔の理性がぷっつりと切れそうになる。

大体、どうしてここまで酔っているんだ。
酒量はそこまで多くは無かったはずで・・・。
それに自分も飲んでみたが、そこまでの度数は強くはなかったはずだ。

ならば・・・今のこの状況は何なのだ。
明らかに、悠殿が何か策を弄したとしか思えない。

「夕鈴、本当に大丈夫なのか?」
「はぁ~~い、だいじょうぶでぇ~~す」

黎翔の心配はよそに、ニコニコ笑いながら答える夕鈴。
頬をホンノリと上気させその口元が完全に緩んでいる満開の笑顔は、
ドキリと胸を躍らせる。

可愛い・・・・・・・。
食べてしまいたくなる。

黎翔の雄としての本能は、理性を上回りそうになる。

いや、ダメだ。
これは夕鈴であっても、夕鈴ではない。
自分の欲望のままに触れてはいけない。

寸でのところで、踏みとどまる理性。

正直、自分を簡単に籠絡出来る破壊的兵器と言っても過言ではない。

「悠殿は、一体どうしたいんだ・・・・・・」

黎翔は頭を抱えたくなった。




その頃、酒宴場でニヤリと嗤う人物がいた。
それはこの国の王である悠鐸だ。

「フフフ、黎翔殿・・・・・夜は長いですよ。
さぁ、何処まで耐えられるのか?本当に見物ですね」

酒杯を高く掲げた後、一気に飲み干した。
その酒杯の中身は、先程まで夕鈴が飲んでいた赤紫の特別な酒だった。

「これだけで飲めば、特に何も無いんですよね~~。
そこまでの度数は無いし・・・・。
まぁ、普段から酒を飲み慣れている僕や黎翔殿にとっては、だけどね。
だから、あのカラクリは黎翔殿には気付くことは無いよね~。
夕鈴さんには悪いけど、少し酔いやすい様にさせてもらったから。
さぁ~~て、どうなるのか?ホントに楽しみだな」
「本当に、悠のイタズラに付き合わされる黎翔殿と夕鈴姫は気の毒だよな」
「朔っっ!」
「悠・・・・・・黎翔陛下の怒りは甘んじて受けるんだよな」
「え~~~。黎翔殿、怒るかな?」
「さぁ、それはどうだろうか」
「大丈夫、大丈夫!!何とかなるよ」
「はぁ~~~~」

悠は、自分の側近兼幼馴染にホンワリと微笑んで見せた。
これは悠の武器だ。
この笑みを見せられたら、もう何も言えなくなるのだ。

「全くっっ!!悠は困った王様だよ」
「違うよ、僕は妹思いな兄なだけだよ」

朔は、手に持った酒杯に口をつけてコクコクと酒を嚥下する。
その酒の味は、何故か苦い気がしたのだった。


続く。




【傍迷惑な歓迎・22】
2017年03月14日 (火) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り




朔が手に持った例のモノを、悠に手渡した。
悠は満面の笑みを浮かべて、手の中の水色の卓布に包まれた酒瓶を見詰める。

「ご苦労であった」
「いえ、それでは私は下がります故」
「ああ」

短く儀礼じみたやり取りをすると、朔は静かに退座した。

「それは一体何なのだ、悠殿」
「ああ、これですか?夕鈴さんに贈り物です」
「私にですか?」
「そうなんですよ~~これ実は、今我が国の女性の間で流行っている果実酒なんです。
何でも女性用に作られているので、とても飲みやすいらしくて。
折角の酒宴なので、朔に用意させたんです。
(買いに行ったのは、僕なんだけどねぇ~)」

悠は、人好きのする柔和な笑顔を夕鈴へ向ける。
人畜無害な笑みの裏には、策を弄していると誰が気付くのであろうか。

「えっ、私にですか?何だか勿体無い様な気が・・・」
「はい、夕鈴さんの為に用意したんですけれど・・・・・・駄目、ですか??」

悠は、薄茶色の瞳をウルウルとさせて懇願する。
それを見れば、夕鈴は容易に断れるはずも無く・・・。
それこそ夕鈴が断れない様に、悠は先手を打ったのだ。

「いえ、駄目だなんて・・・有難く頂戴いたしますね」
「有り難うございますっっ!!」

夕鈴の返事に、悠はニッコリと微笑む。
先程から百面相でコロコロ変わる悠の表情を、黎翔は胡散臭げに観察していた。

「では、この酒にはこの杯をお使いください」
「これですか?とっても綺麗ですね」

夕鈴に渡されたのは、透明の小さめの酒杯。
この酒宴場の灯りに反射して、キラキラと光っている。

「これは、我が国の新しい特産品で・・・職人たちの手作りなんです。
今回の白陽国との貿易の一品とさせて頂いたものなんです」
「そうだったのですね・・・。
私はこういった物に造詣はありませんけれど、
いつまでも見ていたくなるほど素敵な杯ですね」
「気に入って下さって、嬉しいです。
この酒杯に入る果実酒も気に入って頂けると良いのですが・・・・」

二人は和やかに会話を楽しんでいる。
黎翔は特段割り込みはしないが、あまりいい気はしていなかった。

悠殿は何を考えているのか?
ただの厚意だけでは無いような気がするのだが・・・。
しかし、この公の酒宴の場では、無下に悠殿の厚意を退ける訳にはいかない。
ならば、少し様子見をするしかあるまいな。

黎翔は酒杯を煽りつつ、ボンヤリと考えていた。

「悠様、私はあまりお酒は強くありませんから、少しだけにして下さいね」

杯を手に持った夕鈴が、悠に一応願い出る。

「はい、存じています。だから少しだけ・・・ね」

酒瓶の蓋を開けて瓶を傾ける悠は『大丈夫、大丈夫!』と、
夕鈴を安心させる様に少しづつ注いでいく。
小さめの杯に半分にも満たない位で止めて、瓶を真っすぐに立てる。
透き通る杯に注がれた酒色は、赤紫。
酒色がくっきりと杯に映し出されて、とても幻想的である。

「綺麗・・・・・・・・・・」

夕鈴は、はぁ~と感嘆のため息を吐き出した。

「ねっ、半分も入って無いでしょう~~。
だから、大丈夫ですよ。飲んでみて下さい。
感想を聞きたいですから」
「有り難うございます、それでは」

夕鈴は口元に杯を持っていき、コクリと一口飲んでみた。
甘いけれど少しだけある酸味がアクセントになっていて、
確かに人気があると言うのも頷ける。

「お、おいしい~~」
「そうですか?良かったです」
「はいっっ、甘くて酸っぱくて・・・・絶妙な塩梅です」
「なら、もう少し飲んでみませんか?」
「では、もう少しだけ」

ニコニコ笑って、夕鈴は杯を悠に差し出す。

「夕鈴、余り飲み過ぎるのは・・・・」

黎翔はヤバい事になる前に夕鈴を止めようと声を掛けるのだが、
二人の世界に入っているので聞き耳を持ってはいなかった。

そうして、黎翔が危惧した通り。
一刻もしないうちに、頬をほんのりと桃色に染めた夕鈴が自分の隣にいた。



続。








【傍迷惑な歓迎・21】
2017年01月08日 (日) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り




朔が開けた扉の向こうは、悠の執務室だった。
ここは朔と悠だけしか入れず、殊更に密談をしたり隠したいものがある際にはここを使う。
勿論、普段の執務にも使っているのだが………。

「さぁ~~て、例のモノは何処にしまっていたかな~」

誰もいない室に、朔の気取らない声が響く。
悠の言は、黄陵国の王としてのモノでは無かった。
幼馴染である悠の言。
だからこそ、自分は悠の気持ちを汲んでここまで来た。

「あっ、これだな」

朔が戸棚の中に手を差し込んで取り出したものは、
悠がお忍びで行った酒店で購入した2本の内の1本だった。
もう1本は、岩圭への土産として夕鈴の手に既に渡っている。

「一体これで、悠は何をしようとしているんだろうか……」

その瓶の中身は、酒だった。
それもあまり普段お酒を飲まない人にとっては、度数が高めの酒。
しかしその度数にしてはとても飲みやすく、口当たりとしては爽やかな柑橘系。

「誰に飲ませるつもりなんだか?!」

朔は薄々は気づいているものの、その後の事を思い描くとそれが間違いであれば良いと思っていた。
瓶を剥き出しのまま持っていくのは無作法だと思い、
朔は卓上に置いてあった空色の卓布を巻き付けた。
これで味気ない酒瓶も何とかお洒落に格好がつく。

「さて、戻ろうか………」

朔は颯爽と執務室を出て行った。



所変わって、酒宴場。
二人の王は一人の女性の気を引きたくて、
代わる代わる言葉を紡ぐ。

「夕鈴が注いでくれた酒は、格別に美味しい」
「有り難うございます」
「夕鈴さん!黎翔殿だけでなく、僕にも一献いただけますでしょうか?」
「あっ、はい!私で宜しければ……」
「夕鈴……そう言えば、やはり夕鈴は我が国の衣装の方が、
そなたの美しさが引き立たれるな」
「そうですか?我が国の衣装の夕鈴さんはとても可愛らしくも艶やかで、
目を引きましたけれど」
「……それは、有り難うございます」

素面の夕鈴は、酒が結構入った二人の攻防が少々馬鹿馬鹿しいものである事を、
密かに感じていた。
けれどそんな事は口に出す事なんて出来ずに、
辟易しつつも二人に付き合って相槌を打っていた。

そうこうしているうちに、悠が夕鈴に対して積極的態度に出てきた。

「夕鈴さん、この料理はきっと気に入ってもらえると思うので、
一口どうぞ」

悠は、自ら箸に取り夕鈴の口へと運ぶ。

「いえっ、悠様、これはいくら何でも王様である悠様に対して申し訳ないですっっ!!」

自分の隣から注がれる黎翔の鋭い視線が突き刺さって、
夕鈴は悠の行為を慌てて辞退する。

「悠殿……確かに我が妃の申す通り、
一国の王がする行為としては如何かと思うのだが」

黎翔は、やんわりと言葉を選びながら悠へと牽制してみる。
しかし、悠はそんなことは全くお構い無しにニッコリと微笑んで見せた。

「そんな事は言いっこなしで!僕は夕鈴さんともっと親しくなりたいだけなのですから。
それに、夕鈴さんはなんだか他人とは思えなくて」
「はい?」
「いや~夕鈴さんは僕にとって兄とも慕う黎翔殿の妃。
で、あるならば姉と思っても良いくらいで!
いや、こんなにも可愛いらしい夕鈴さんに姉は失礼ですね。
うん!これは、妹とでも言うべきでしょうか」
「はぁ………それはとても有難いお申し出ではありますが、
私は正妃でも無い、一介の妃ですから。
とても勿体無く思えます。
(って、私は本物の妃なんかじゃなくてバイト妃なんだから、
悠様の申し出は受けられないわよっっ!)」

夕鈴は、顔を引きつらせながらも妃然とした笑顔を悠へと向けた。
それを隣で見ている黎翔はニヤリと口角を上げて意地悪い笑みを浮かべる。

冗談じゃない!
悠殿の好きにさせていたら、あの事を暴露しないとも限らない。
ここで夕鈴が申し出をキチンと断ってくれて良かった……。

「あの……悠様」

夕鈴が何かを言いかけた時、朔が酒宴場へと戻って来た。
すかさず悠の傍まで進み、手に持った空色の卓布に包まれた例のアレを手渡したのだった。


続く。