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【設定】

夫婦設定 ・ 原作寄り 

【注意事項】

こちらのお話は、
【側近李順の頭の痛い厄介事】の続きとなっております。
単体でも読めるとは思いますが、
そちらをお読みの上、こちらを読まれた方がお楽しみいただけると思います。





噂なんてシロモノは、一体誰が最初に言い始めたのかなんて、
分からないことが多い。
そして色恋沙汰の噂ほど、急速に広まることが多いのである。
更に言うなら、噂は広まっていくにつれて尾ひれがついて、
当初とは違うモノになったり誇大広告のように飛躍した噂へと発展することもある。

人の噂も七十五日。
とは言うものの・・・そんな長い期間、放置しておくほど狼陛下の優秀な側近は甘くはない。

手を打つ。
その方策とは・・・・。




*********




「なぁ、最近のお妃様っていいよな」
「いいって何が?」
「ほら、艶っぽいっていうか・・・・・これまでに無かった色っぽさが堪らなくいいんだよ」
「おい。そんな余計なことを言っていると、陛下に睨まれるとかでは済まないぞ」
「そうは言っても、いいものはいいんだよっっ」


最近、官吏たちの間に流れる噂話。
それは、少し前に後宮に戻って来た妃の事について、である。
それだけだったら、放置も出来た。
それだけじゃないから、厄介なのだ。

放置できない噂。
それは・・・・・・・・・。

「それにしても、お妃様が以前にも増して艶めいたとなれば、
俺はきっと陛下との間に何かが有ったと思うんだ」
「何かって?」
「それは・・・・・・よく分からないけれど」
「分からないって何だよ」
「それが分からないから、最近気になってついお妃様を目で追ってしまっているんだ」
「それは、マズイと思うんだが・・・・・陛下に知られでもしたら」
「じゃあ、誰かお妃様に何があったのか、教えてくれよ」
「もしかしたら・・・いや、そんなはずは無いし」
「言ってみろよ、ここだけの話にしておくし」
「いや、だから・・・・・もしかして、陛下とお妃様の間には、
今まで・・・・・」

2,3人で立ち話をしていたが、次第に人垣が出来てくる。
短い休憩時間にこうも人が集まるものか?と言うかのように。
群がる官吏たちが一斉に生唾を飲み込んで、次の言葉を待つ。
それを遠巻きに見ている者がいた。


「あれは何だ!」
「何って、官吏たちだね」
「それくらい、分かっている。
何故、あんなにも人だかりが出来ているんだ」
「う~~ん、何だろうね。
案外『お妃様は最近お綺麗になられた』なんて言っていたりして」
「はぁ?あのお妃がか?」

眉間に皺を何本も寄せて、首を捻る方淵。
それに対して、涼やかな表情で穏やかに微笑む水月。

両手に書簡を持ちつつ移動する際に見かけた光景。
看過するには、少々気になる。
方淵が思うことは、盲目的に敬愛する陛下に対することであるならば注意する必要があるという一点のみ。
それは『不敬罪に値する!』と・・・・。

「方淵、君が何を考えているのかは何となく想像がつくけれど、
僕が思うに関わらない方が懸命だと思うよ。
それに彼らの論じている事は、君のその優秀なおつむで考えても答えは出ない事だと思うし・・・」
「何だと!!!私の陛下に対するこの忠誠心を疑うというのか?」
「だ・か・ら、陛下の事ではないよ。
それだったら、僕の危険回避センサーが警告を鳴らすと思うし」
「ならば、私が行って確かめてくる!!」
「ちょ、ちょっと!方淵」

ズンズンと靴音を鳴らし、勇み足で彼らに近づく方淵。
それを見送りながら、大きな嘆息を吐き出す水月。

「おい、きさまら!何をそこで論じている。
この回廊は陛下もお通りになる所だ!邪魔だろうが。
それに、何の話題なのだ、こと陛下に関してならば不敬罪となることも有るのだ。
その事を弁えているのか?」

方淵の厳しい口調に、官吏たちがタジタジになっていた。

「はぁ~~方淵。全く分かってないね、君は・・・言い方ってものがあると思うんだけどね」

柔らかい口調で官吏たちの後ろから話しかけたのは、水月で。

「君たち・・・・・・大体何を論じていたのかは想像がつくけど。
お妃様の事だよね・・・お綺麗になられた理由は何かって」
「これは、水月殿!!!我々にその秘密を教えてはくれまいか?」
「ふふっ、知りたいのかい?」

「「「はい!!!勿論です!!!!!」」」

人垣の中の官吏たちは口を揃えて返事をする。
その表情は、皆興奮して上気しており。

「それはね・・・・・・」
「それは・・・その先を早く!!」
「私が言うよりも、いいモノがここにあるのだけど」
「いいモノとは?!」

差し出したのは、桃色の綺麗な紙で包まれた巻物だった。
大よそ、政務に関係のある書簡だとは考えにくい。

「これを読めば、君たちもお妃様の秘密を知ることが出来るよ」

傍にいた巻物を手渡すと、方淵に目で合図してその場を立ち去った。
その去り際、水月はボソリと呟く。
誰にも、そう、隣に並ぶ方淵にも聞こえない囁き声で。

「お妃様は、ついぞ最近、陛下のお手つきになったんだよ。
まぁ、これは誰も知ることもないことだけどね」


その場からある程度離れたところで、方淵が徐に口を開く。

「おい、あれは何ったのだ」
「あれ?ああ、あの巻物ね・・・・あれは、我が妹が書した物語の巻物だよ」
「お前の妹が書した?」
「まぁね。そういえば、方淵は知らなかったね。
我が妹はお妃様を心酔する余り、陛下とのめくるめくロマンスを書し出してしまったんだよ」
「はぁ?」
「フフフ、まぁ、こんなところであの巻物が役に立つなんて思わなかったけど」


*************


その後。
臨時妃であったことを暴かれる心配は無くなった。
李順の頭の痛くなることも無くなった。

それは水月の功績であり・・・それを命じた李順の手腕。
李順は知っていた、女官たちの間で広まっている紅珠先生による壮大なロマンス物語なるものを。
それを使って、陛下とお妃様の脚色されたロマンスを官吏たちに植え付けるという策。


それは見事に功を成し・・・・・。
官吏たちの間にお妃様ファンクラブなるものが密かに作られた。
そして政務室に現れる夕鈴に対して、
官吏たちの視線が温かくも何とも言えない尊敬の眼差しとなった。

そして。
官吏たちが水月に物語の続きをせがんだことは、
その当事者たる夕鈴と黎翔の全くあずかり知らぬ事である。


********


「ねぇ、夕鈴。僕たち、最近政務室で注目を集めているような気がするんだけど」
「注目ですか?それは、当然だと思いますが・・・・。
だって、黎翔様は狼陛下なのですし」
「いや、僕が!じゃなくて・・・・・僕たちが!だよ」
「私も入るのですか?」
「うん」

そう、あの官吏たちが夕鈴を見る目つきが気になるっていうか。
まぁ、色目ではないから放っておいているけど。

「そうですか・・・・私、少し政務室通いは止めておきますね」
「えっ?なんで??」
「だって、官吏の方々の事が気になって黎翔様のお仕事が進まないと困りますし」

・・・・だって、そんな事にでもなると、私が李順さんに怒られることになるんだから!!

「そんなぁ~~それじゃあ、僕頑張れないよ」
「大丈夫です!!」

夕鈴は寝台の上にちょこんと座り、上目遣いで黎翔を見詰める。

「だって、黎翔様はこの国の発展や民の暮らしの向上を願って政務に励んでいらっしゃることは、私が一番知っていますから。
だから、そんな私がいる、いないなんて関係ないですよね」

花も恥じらうような、艶やかな微笑み。
それは黎翔にしか見せない、極上のモノで。

そして、それは合図でもあった。
本物の夫婦となった時からの・・・夜の儀式。

「夕鈴・・・・・・・」

黎翔が夕鈴を抱きすくめて、優しく寝台へと押し倒す。
二人の視線が絡み合い、唇が重なり合う。
それは、息が続かなくなるまで。
互いを感じ合う。

そうして、今宵も長い夜が始まりを告げた・・・・・。


「お早く、支度をなさいませんと!
朝議に遅れてしまいます!!!」
「え~~、行きたくないよ」
「何を言っているのですか??
李順さんに叱られるのじゃありませんか!!!」
「じゃあ、あと1刻だけ!」
「先程から、そればかりです!!」

騒々しい朝。
それはいつもの事であり。

今頃、ハラハラしながら執務室で待っているであろう李順に、
夕鈴は心の中で詫びる。


・・・・・・スミマセン、全ては私が陛下を拒めないのが原因なんです。
今宵こそは、今宵こそはキチンと拒みますから。


そんな事を思っていても、黎翔に流される事は必至で。
夕鈴の思いなんて、黎翔には分からない。


そんな国王夫婦に・・・・特に夫の方に振り回される李順は、
今日も頭痛を覚えるのであった。




終。





2016.08.03 SNS初載





**************

先日、SNSの日記でUPはしたものの、
直ぐに下げてしまった話。
少し付け加えて、こちらにUPしました。

糖度も無く。
誰得にもならなかった話。

文章力の無さに、頭を抱える日々です。

ご拝読、有り難うございました


瓔悠。




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こんばんは!!

先週の週末から今週の週初めに掛けて、
小学校の運動会の開催に振り回されヘトヘトに疲れ果ててます。

土曜日開催が朝雨が降っていて日曜日に延期。
しかし、そうそうに雨も上がり時折小雨が降るものの、
途中陽も差し開催可能だった・・・・。
お弁当はキャンセル不可のお弁当を頼んでおり、泣く泣く取りに行って夕食にしました。

そして日曜日、朝は雨が降っておらず雨が少々降っても開催するとのメールを受けてお弁当を作り、早々に雨が降り出し延期のメールが入った時には完璧にお弁当は完成してました。
それを持ってドライブに行き温泉に入って帰宅。

もういい加減して!!!と思う親も多い中、
ようやく月曜日に開催されました。

ここまで延期が重なることはこれまでになく、
振り回された運動会として、子供たちが大きくなっても忘れることは無いでしょう・・・・。




さてさて、
最近は、SNSにUPして皆様に構っていただけてるのが嬉しくて・・・・・。
少しウキウキ気分を味わってます。


でもこちらのUPも忘れてませんよ。
【奇跡の欠片】書いてるんですけど、中々自分の納得のいくものにならず
困ってます。
でもきちんとお届けしますから、お待ちくださいませ。

最後の締めの10行くらいは出来ていて、
そこが一番気に入っているので・・・・・そこにきちんと到達させる様に頑張りますっっ!!!

それでは、お話をどうぞ~~~
余り中身が無いかもしれませんが、軽いお気持ちで読んでくださいませ。








【設定】

夫婦設定 ・ 原作寄り 





「陛下!今日という今日は、言わせていただきますっっ!!」
「何を~~??」
「まずは、その腑抜け切った顔を止めていただけますか?」
「どうして~~??」
「私が、これから話すことを真剣に聞いていただきたいからです!!」
「だってさ~夕鈴がさ~今日も可愛くてさ~~」
「陛下っっ!!!!!」
「はいはい、分かったから」

ここ、執務室には只今たった二人だけが在室していた。
それはそう、この国の王『狼陛下』とその有能な側近だけ。

その側近は眉間に皺を寄せて、今にも脳内の血管が切れそうであった。
勿論、怒りで以て・・・・・・・・。

「で、何だ?李順」

ようやく、本来の狼陛下たる表情に戻った黎翔が、面倒くさげに李順へと質問を投げかけた。

「はぁ~~~全く。
では、お話させていただきますが」
「ああ」
「昨今、官吏たちの間に流れている噂についてです」
「噂?」
「はい・・・・・・それは、陛下とお妃様のことです」

自分たち、夫婦の事についての噂。
黎翔は首を捻りながら考えるが特に思い当る節も無い。

「陛下、官吏たちは以前のお二人のご関係がいかなるものであったのかを、論じているようなのです」
「以前の私と夕鈴の関係?」
「はい・・・・・・その、言いにくい事ですが、夫婦生活が有ったのか?無かったのか?と」
「はぁ??なんだ?それは」
「ですから!お妃様がここにきて急に艶めいてこられたとか、何とか」
「分かった!!これから夕鈴を政務室に連れて行かないことにする!!!」
「それはどうして?」
「李順、考えてみろ!!!政務室は飢えた独身男どもの巣窟なんだぞ。
そんな中にあんなに初々しくて可憐な夕鈴が居るとなると、アイツらの目の毒にしかならん。
アイツらの中の誰かが不埒なことでも考えてみろ!!
考えただけでも、腹が立ってくる!!!」
「夕鈴殿ですよ・・・・・・・それは、無いと思いますが」
「李順っっ!!!お前、我が妻を愚弄するのか?」

腰に差した剣の柄を掴んで、黎翔は抜こうする。
それを気配で察した李順は、ゴクリと息をのむ。

「いえ、そうではありませんが・・・・。
ただ、夕鈴殿が臨時妃だったことが露見することだけは避けねばなりません」

李順は、特に黎翔の問いには答えることはせず、サラッと話題を変える。
それが、まさに狼陛下の側近たる手腕と言うべきものであろう。

「では、お前はどうすべきだと思う?
私がもっと夕鈴を可愛がればいいのか?」
「これ以上、夕鈴殿に何かすれば、夕鈴殿が下町へと逃げ帰ることになりかねませんよ」
「え~~~そんなぁ~~~僕が何をしたんだよ」
「はぁ・・・・・・・・・」

李順は大きくため息を吐き出しながら、最近の黎翔の夕鈴への執着ぶりを思い浮かべる。

朝も朝議に出る時間になっても寝所から出ようとせず、たまりかねた夕鈴が黎翔を寝所から叩きだしていたり。
政務室では勿論夕鈴の指定席は黎翔の膝の上で、
更には食事時にまで膝の上に座らせようとして、夕鈴に窘められている始末。

正直、夕鈴は辟易していることを李順は承知していた。

「これ以上、親密な夫婦でいなくて良いです。
臨時妃だった頃くらいで、丁度良いと」
「あんなのは、所詮演技だったのだから、夫婦とは言えないよ。
やっと夕鈴を僕だけのものにしたのに」

夕鈴が足りない!!と黎翔は李順へと文句を垂れる。

「もう、いいです。
陛下に言っても埒が明かないことは分かりました。
では、この問題は夕鈴殿に相談することにします」

そう言うと、李順はそそくさと執務室を出ようとする。

「おい、待て李順」

ドス黒いオーラを放ちながら、狼陛下たる黎翔の低い声が響く。

「何でしょう」

それには負けじと、李順は涼しい声で黎翔へと応える。

「お前、夕鈴に何を言うつもりかは分からぬが、夫婦の問題に口を挟むな」
「はい?これは夫婦だけの問題ではありませんが」

窓から入り込む夕日の光に反射する李順の眼鏡のレンズがキラリと光る。
そのずり落ちそうな眼鏡をツイッと指で押し上げ、李順は黎翔にモノ申す。

「陛下・・・・・・兎に角、官吏たちに気取られないように、手を打つことに「あの・・・・失礼いたします」」

そこへ入って来たのは、黎翔の唯一の寵妃である夕鈴だった。
李順は短く息を吐き、自分の助っ人となるべく人物を招き入れた。

「これは、お妃様。
ご足労をお掛けしました」

一応の礼節で、李順は夕鈴に軽く一礼をした。

「李順さん、先程の申し出は確かに考えるべきことだと思いました。
私も、協力いたしますね」
「おい、李順!夕鈴に何を言ったっっ」
「いえ、何も」
「陛下・・・・・・これまでの事は、私も配慮が足りませんでしたわ。
ですので、ほどほどにいたしましょね」

ニッコリと微笑む夕鈴にがっくりと項垂れる黎翔。
見えるはずの無い小犬のしっぽは、だらりんと床に垂れていた。

これで、官吏たちの噂は一掃されるはずだった。
そして、李順の頭の痛い問題も片付くはずだった。

でも、官吏の中には、恋愛観の鋭い観察眼を持つ者もいた。
その者の一言が、更に噂に噂を呼んだのだった。



【優秀な官吏にだって知らないことはある】へ、続く。













こちらの話は診断メーカー『3つの恋のお題ったー』で『瓔悠』で診断して出てきた
『ドキドキして眠れない/
ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった/
薄暗い部屋で二人きり』
のお題で書いたお話の2話目です。

後1話、ありますが・・・・宜しければ、どーぞ。







【設定】

夫婦設定 ・ 原作寄り





迷い。
戸惑い。

それでも手を取った。
伸ばされた温かな手を。
両手で。
しっかりと、握りしめた。

『そして、お姫様は王様といつまでも幸せに暮らしました』
物語であるならば。
それで締めくくられ、ハッピーエンドとなるはずだけど。

現実は、そうはならなくて。
沢山の問題もあり・・・・。
だから、ここからすべてを始めないといけないのだ。


*********



「聞いてますか?お妃様」
「はっ、はい!!」
「この忙しい私がわざわざ時間を割いて講義しているというのに、
ボンヤリなさっているとは・・・・・」

手ほどき書を握る指に力を込めて、李順は夕鈴を睨みつけた。

「・・・・・・スミマセン」
「これでは、いつまで経っても一人前の妃とはなりませんよ」
「はい・・・・・・」

李順が言うことも尤もなことであり、夕鈴は一言も言い返すことは出来ない。

自分が選んだ道なのだから、しっかりとしないといけないのはよくわかる。
でも。
どうしても。
考えてしまうことがある・・・・。


これで本当に良かったのだろうか?・・・と。
陛下にはもっと、相応しい女(ひと)がいるのでは?・・・と。
自分ではなくて。

李順の声が遠くに聞こえる気がする。

『ガタンッッ』

大きな音を立てて、椅子が倒れる。
そこに座っていた夕鈴もろとも。

「お妃さまっっっ!!!!」

自分を呼ぶ声が聞こえど、それは遠くへと流れていく。



*********


「夕鈴・・・・・・・・・夕鈴・・・・・・・・・・・・・・・夕鈴」

誰かが呼んでる。
私の名を必死に。
哀し気な声で私を呼ぶ、陛下の言。


私は応えなきゃいけない気がした。
この声にキチンと応えないと。

だって、こんなにも私を呼んでくれているのだから。
誰に何と言われようと、私が本当に大切な人だと思ったのだから。
それは手放すべきものではない。
成り行きでこうなったのではないのだから。

私は陛下が大好きで、
ずっとずっと大好きだったのだから。
溢れ出した想いを抑えることは出来なかったのだから。




「陛下、落ち着いてください。
ただの暑気あたりだそうですから」
「ただの、だと?
夕鈴が倒れたのに、『ただの』で済ませるなっっ」

誰かが怒鳴ってる。
この声は。

「・・・・陛・・・下」
「夕鈴っっ!!大丈夫なのか?」
「はい」

起き上がろうとする夕鈴を、黎翔はすぐさま抑えつけた。

「まだ、寝てていいから」
「でも、もう大丈夫です」
「夕鈴は、頑張りすぎなんだよ。
何も倒れるまで頑張らなくても・・・・・・・・・」
「だって、私は陛下に何もして差し上げられませんし。
せめてお妃らしいお妃になるくらいしか、私には出来ないのだから」
「そんな事は、私は望んでないっっ!!」

「でも、だって、私には何もないから・・・「君は何もしなくていい!!」」

夕鈴の必死さは、黎翔にも分かっていた。
自分の為にしてくれているということも、全て。

愛しいと思った。
そんな夕鈴がたまらなく・・・・・・・。


夕鈴はゆっくりと起き上がって、黎翔の心配げな深紅の瞳を安心させる様にニッコリと微笑んだ。
黎翔は夕鈴をそっと抱き締めて、ハラリと流れる薄茶の髪を優しく撫でつけた。

「夕鈴、そんなに頑張らなくてもいいんだよ。
私は今のままで十分満足しているのだから・・・・ねぇ夕鈴、少し前の話をしようか」
「少し前の話ですか?」
「そう・・・・・僕が夕鈴を手放して後宮から下町へと返した時のこと」
「はい」
「僕があの時に感じた感情は、一つだけだったんだ。
それは、『後悔』・・・・・・・・・・・だけ。
手放して初めて思い知ったんだ、『ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった』と」
「・・・・・・陛下」
「だから夕鈴、これからもずっと傍にいて。
この先、お互いに歳をとって沢山の家族に囲まれる、その時まで」
「はい、陛下」

開け放たれた窓からは涼しい風が入り込んで、夕鈴の薄茶の髪の揺らす。
その髪を黎翔が掌で押さえたまま、二人は口づけを交わした。

甘くて、深く。
口腔の中でまろやかに。
それは、互いへの約束の証。




終。






おはようございます!!

またSNSでSSSをUPしまいました。
というのも、『3つの恋のお題ったー』にハマってしまったんです。

で、今回は『瓔悠』で診断してみました。
すると、
『ドキドキして眠れない/ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった/
薄暗い部屋で二人きり』
となりました。

これなら書けるかも?!と
また、調子に乗って書いてみたんです。

いやぁ~取りあえず1話だけですが。
楽しかった~~~

宜しければ、お付き合いくださいませ。



**********


【設定:夫婦設定】




「やっぱり、陛下って端正な顔立ちなのよね・・・・・・」

静かな寝所に響く夕鈴の声。
そんなに大きな音量ではないはず。
なぜなら、黎翔は寝入ったままだから。

窓の隙間から差し込む月明かりを頼りに、先程から隣で眠る黎翔の横顔を夕鈴は見詰めていた。


*******


今はまだ、満月が中天に輝く時刻。
夢の狭間で、夕鈴は不意に目が覚めた。
だから、すぐにまた眠りにつくつもりだった。
でも隣に眠る黎翔の寝顔を見たいと思ったのが、そもそもの間違いだった。

本物の妃になってからずっと夕鈴には、ひとつ気になることがあった。
それは、夫の寝顔。
自分が夜中に起きると、その気配を読んでいつも直ぐに目を覚ます陛下。
だから、寝顔を見ることなんて皆無であった。


でも、今日は違った・・・・。
このところの激務に身体が睡眠を欲しているのか、
夕鈴が目を覚ましても黎翔が起きることは無かった。


これは、絶好のチャンス!とばかりに、
夕鈴は寝台の上に寝そべって両肘を立てる。
そして横目で見る視線の先には、お目当てが。

「キレイ・・・・・」

思わず、声に出してしまっていた。
男の人に対して『キレイ』って言うのはおかしな表現なのかも知れない。
でも、その言葉が何ともしっくりとくるのだ。

夕鈴はホォ~とため息を吐き出した。
ホントにこんなに素敵な人が、自分の夫であることが信じられなくて。
しばし見惚れていたが、いい加減眠らないと明日に響く。


でも、こんな機会もそうそう無いのだし・・・。
そう思い直して、夕鈴は黎翔の頬に手を伸ばす。

少しでいいから。
触れてみたい。

そっと。
ちょっとだけ。
指先に触れるだけ。


「僕のお嫁さんは、大胆だね。これは夜這いかな?」
「・・・・・・・っっっ」

まさか陛下が起きるなんて・・・・。
ギョッとして、夕鈴は絶句する。

「い、い、いえ、そんなんじゃ、ありませんっっ!!」
「なら、どうして僕の頬に触れようしたの?
お誘いなんでしょっっ!!」
「ち、ち、ち、違います」
「そんな事なら私が全力で応えてあげよう」

一瞬で回りの空気が変わり、小犬から狼へと変貌を遂げる。
ニヤリと微笑む口元は、妖艶さを纏い。
月明かりでも分かる深紅の双玉は、挑戦的に輝く。

夕鈴は、起き上がって敷布にくるまり寝台の端へと退避する。

「あの、まだ夜中ですから、寝ましょう」
「夕鈴・・・・・夜だから、いいんだ。さぁ、私の傍へ」

黎翔がにじり寄る。


『ドキドキ・・・・ドキドキ・・・・・ドキドキ』

心音が煩いくらいに耳奥で響くのを、夕鈴は感じていた。
妖艶な黎翔に当てられた・・・・・・のだ。

キレイ。
確かに綺麗である。
先程とは違う意味で。

このままでは、寝れなくなる。
きっと私も、陛下も・・・。
それはマズい!と思った夕鈴は・・・・・・・。

黎翔へと近づいて。
形の良い唇へ、自分の唇を重ねた。

それは、短い口付け。
そっと唇を離した夕鈴は、黎翔へとフンワリと微笑みかけた。

「陛下、また明日もお忙しいのでしょう?
今宵はこれでお終いです。さぁ、もう寝ましょう」

そう言うと、さっさと敷布に潜り込んで黎翔に背を向けた。


・・・・・自分からの口付けは、あまり無い。
いつもは陛下からの甘い口付けに応えるだけで。

だから、顔から火が出るくらい恥ずかしい。
それにドキドキが止まらない。

「夕鈴からの口付けは、普段無いから・・・・・嬉しいよ」

黎翔の優しい声音。
そしてフンワリと包み込むように、ゆったりと夕鈴の背を抱き締めていた。

少しすると、寝息が聞こえてきた。
黎翔はそのまま眠りに就いたようである。


でも、夕鈴は・・・・・・・『ドキドキして眠れない』


誰か、この激しい鼓動を止めて。
幸せなドキドキを。
だって、また陛下が起きてしまうから。


窓から差し込む月明かり。
それを夕鈴はジッと見続けていた。



終。





おはようございます!!

先日はリレーSSにお付き合いいただき、有り難うございました!!
楽しかった~~~と言うのが、私の感想で。
またあんな楽しい企画をしたいなぁ~と意気込んでます。


さて。
昨日、SNS内のあるコミュに参加させて頂きました。
そこで興味の惹かれる診断メーカーがございまして・・・・
『3つの恋のお題ったー』っっ!!
そこで、『よゆまま』(・・・・あっ、このHNは瓔悠の前のHNでして。←知ってるよって方もいますね)
で検索してみました。
すると、素敵なお題が出ましたので、
それに沿ってSSSを書いてみました。
普段、『お題』で書くことが無いので新鮮で、スッゴク楽しくて。
更には、SNSでは久々のUPにも関わらず、沢山の方が温かく迎えて下さったのが
めっちゃ嬉しくて・・・・。
やっぱり何と言っても、SNSは『実家』なのだなぁ~と思いました。
原点はSNSですからね。

では・・・・参ります。
(久々にお話の前に前書きを書きましたが、私が書くと長くなるんだよね~~)


**************


【設定:本物夫婦】

『振り向いた君を強く抱きしめた』




朝の眩しい陽光が瞼に感じる。

「もう、朝か・・・・・・」

朝が来ていることに気づかなかった。
珍しいことも有るものだ。
いつもなら、陽が昇り始める頃には目が覚めているが。

夢見が悪かった訳ではない。
寧ろ・・・・・・目覚めたくない程だった。

それはそう、夕鈴が僕に全てを委ねてくれていたんだ。
その艶やかで、麗らかな肢体を。
余りにリアルで、現実と虚構の区別がつかず。

単なる夢として片づけて良いものかと、
覚醒し切らぬ頭で思いめぐらす。

「・・・・・夢だったのか?
だって、夕鈴はここにはいないのだし」
「陛下?」
「うん??夕鈴???」
「はい」

かすれる声で自分を呼ぶ声は、確かに夕鈴のモノで。
此処にいないはず。
だって夕鈴はバイトのはずで・・・・・。


うん?
いや?
それは・・・・・違う。
今は、違うんだ。

夕鈴は、僕のお嫁さんになってくれたんだった。
全てを僕にくれたんだ。

想いも。
身体も。
未来も。

全部。


僕はガバッと起き上がった。
そこには夕鈴はすでに起き上がって、寝台の上にチョコンと座っている。
僕の前に。

その細い背中が愛おしい。
今すぐに抱きとめたいほどに。
でもそれじゃ、あの花のような笑顔は見れない。

では、こちらへ向かせればいい。

「夕鈴・・・・おはよう。
ほら、可愛い笑顔を僕に見せてよ、お嫁さん」

くるりと振り返ると、朝露に光る花弁のような笑顔がそこに。

「陛下、おはようございます」

はにかむ君が愛しくて。


僕は・・・・・・振り向いた君を強く抱きしめた。


終。








【設定:本物夫婦】

『ずっと忘れない』


陛下の手を取った私は・・・・またここに戻って来た。
そう、後宮。
王を悦ばせる女人が住まう宮。

かつて、あまたの女人が住まわっており、
たった一人の王の寵愛を求めて競い合い、そしていがみ合っていた。
しかし、『狼陛下』の御代では現在たった一人だけ。
花のように綻ぶ笑顔が麗しい妃が。

「陛下、私・・・・・・・・こうして陛下といられるのが夢のようで。
だって、ただのバイトだったはずなのに。
大それた恋だと思っていたのに。
それでも、陛下は私を選んで下った。
心の底から、嬉しかったんです・・・・・陛下、有り難うございます」


私は、陛下の本物の妃になった時・・・・そう言った。
でも陛下は微笑んでくれて、こう言ってくれた。

「僕こそ、夕鈴には感謝しているんだよ。
きっとこの先、大変なことも有ると思う。
夕鈴が辛い思いをすることも有るかも知れない。
でも、臆さずに僕の手をとってくれた。
それだけで・・・・・僕は満足だし、嬉しいんだ。
だから、夕鈴・・・ありがとう」

私は、ただただ嬉しくて。
目頭が熱くなる感覚に襲われた。

そう、私は・・・・・泣いていた。
熱い雫が頬を伝う。

哀しくて冷たい雫じゃない。
嬉しくても人は涙を流す。

「夕鈴、大好きだよ」

陛下の顔が近づいてきて、流れる涙を吸い取ってくれた。
ボフッと音がして、真っ赤になった顔。

恥ずかしいけれど。
でも嬉しさの方が勝る。

「夕鈴、僕はね・・・・・君の言葉、君が流してくれた涙を、ずっと忘れない。
君は生涯、僕の唯一人だけの妃だから」


耳元に囁かれた言葉・・・・・・私、ずっと忘れない。



終。




【設定:本物夫婦】

『もう、だめ。』




毎夜、毎夜。
新婚夫婦の夜は長く。

睦み合う夫婦の想いは同じモノであり・・・・・・。

なんて訳はないっっ!!
あるはずはないっっ!!!

新婚夫婦の奥様の方は、旦那様である白陽国・狼陛下の想いとは違う想いを抱いていた。


これはいくら何でも。
いい加減。
そろそろ・・・・・と。

そう、奥様は・・・・・絶対的な睡眠不足に陥っていた。
旦那様が奥様を眠らせてはくれないのだ。

奥様の旦那様はようやく手に入れた掌中の珠を、
殊の外大切に思っており。
出来得ることならば、四六時中離したくはないのだ。

しかし、旦那様は一国の王であり、
奥様だけと過ごす時間は限りなく少なく。
それがどうやら、不満であるようだ。

だからこそ。
二人きりになれる夜が、それこそ大切にすべき時間なのである。

寝所で過ごす時間は、刹那であろうと無駄には出来ないのだ。


「夕鈴、やっと二人きりになれたね」
「ええ・・・・陛下」
「うん、僕さ、夕鈴とこうして過ごすために今日も執務を頑張ったんだ」
「はい、お疲れ様でした。
では、寝ることにしましょうか」
「ええぇぇ~~そんなぁ。
これからが夫婦の時間だよ」
「明日も陛下には執務もあることですし。
キチンと睡眠をとって、明日に備えないといけませんよ」

夕鈴は、今日は流されない!と決めていた。
今日こそは、絶対に。

「夕鈴、そんな事は言わずに」
「いえ、陛下・・・・ダメです」
「僕がお願いしているんだよ」
「え~~でも、ダメなものはダメなんです」
「僕たち、新婚なんだから」
「もう、だめ」


今宵はぴしゃりと言った。
これで大丈夫なはず。


でも、そんな事で引くような『狼陛下』ではない。





・・・・・・・・・・今宵も、可愛い奥様の喜悦の声が寝所を包む。




終。





2018.05.11 SNS初載







瓔悠

Author:瓔悠

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