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夫婦設定 ・ 原作寄り

【注意事項】

こちらのお話は、青慎からみた視点で描かれてます。
更に、ほんの少しですがオリキャラ出てきます。

前ブログにて連載していたものですので、
現在の夕鈴と陛下の関係性とはちょっと違います。
かなりの捏造入ってますので、それを了承の上お読みくださいませ。






「とうたま・・・このちとだぁ~~れ?」

余り舌の回らずたどたどしく訊いてくる娘の薄茶の髪を撫でながら、
僕はその肖像画の中のこれまた娘と同じ薄茶の髪の女性を懐かしく想う・・・・・。

「ねぇ~~~~~とうたま」
「あっごめんごめん。懐かしい肖像画を持ってくるから、思わず見入ってしまっていたよ。
これは父様の姉さんだよ」
「ねえたま?」
「そうだよ、鈴音のおばさんに当たる人で、夕鈴って言う人だよ」
「ゆうりん?りんねとおんなじ!!」
「そうだよ。君の鈴音の名は姉の名前の一文字を貰ったんだよ」
「ふうん」

納得がいったようで、幼い娘は僕の膝から下りトコトコ母親の所へと向かっていく。


その絵だけが知っている過ぎ去ったあの日・・・・。
兄と呼ぶにはおこがましいが、突然義兄とやってきた姉が言ったのは『この下町で結婚式をあげます』だった。
その時にはもう『李翔さん』は偽名で、この白陽国の狼陛下と近隣諸国からも恐れられる国王陛下と言う事は、僕と父さんには知らされていて更に姉はその唯一の妃になっていた。
3ヶ月ほど前に王宮で高官が列席のなか、妃になる儀式が執り行われ、僕たちは遠く下町の片隅でただ姉の事を想っているだけだった。

そして、手紙でお祝いの言葉をこっそりと贈ったのみだった。
『幸せになって下さい・・・どんな立場になったとしても、いつまでも姉さんは僕の姉さんです。
幸せにと祈る事しかできませんが、元気で過ごして下さい』と。

庶民出身である姉はやはり、出自は誤魔化したまま妃となった。
それは、政治的な事ばかりでなく・・・・僕や父が不審者に狙われたりしない為の配慮でもあったのだ。
だから、僕は大っぴらに『姉さんは結婚した』と周りには言えずにいた。

それがここにきてのイキナリの『結婚式決行宣言』だ!!
僕も父さんも驚かない訳はない・・・・しばらく口があんぐりと開いて、意識は遠くへと飛んで行っていたと思う。

そんな僕らを義兄は、微笑みながら見ていたと記憶している。


「とうたま~~~~~~かあたまが、よんでまちゅ」

バタバタ・・・・大きな音を立てて騒がしく駆け寄ってきた我が子。
僕はその肖像画を卓の上に丁寧に置いて、我が子の小さな手を引いて部屋を後にした。



続。







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かなりの捏造入ってますので、それを了承の上お読みくださいませ。










妻の用事も済ませ、また部屋に戻って先程置いて行った絵をジッと眺める。
そして目を閉じると鮮明に思い出せた。
そう・・・・あの日の姉さんの美しさと幸せに満ちた顔を。


******


「イキナリ、結婚式ってどういう事なの?姉さん・・・・」

やっとのことで聞く事が出来た僕に比べ、父さんはまだ呆けている状態で。

「それがね・・・・」

言い出しにくそうにしている姉の横から、その言葉を遮るように義兄さんが説明してくれた。

「結婚したのが私であるばかりに、父上や青慎君には夕鈴の花嫁姿が見れずじまいであった事が、どうしても気になって。
それで私から夕鈴に提案したんだ。それに友人にもキチンと結婚の報告はしておかないと、
青慎君が町で訊かれても何も言い様がないだろうと」

驚く僕に、義兄さんはお茶目に片目を瞑って答えてくれた。
でも僕は思った・・・・・・それだけでは無いような気がすると。

そう、確かに義兄さんには別の意図があったようで。
・・・・ホントはあの金貸し君に夕鈴は正式に私のモノになったと解らせておかないとな。
そちらの方がかなり重要な部分だったりするのだが。

「そうなんですね・・・・・そこまで私共の事を考えて戴き、どう感謝いたして良いやら。
誠に有難うございます」

いつの間にか、話を聞き入っていた父さんが深々と頭を下げて感謝を述べる。

「それでいつなのでしょうか?」
「今すぐ!!――と言う訳にはいきませんでしょうし、1週間後と言うのは如何でしょう?」
「は、はい・・・・国王陛下の仰せのままに」

父さんはしきりと頭を下げる。
そんな父さんの手を取り、義兄さんはフッと微笑んだ。

「あの父上・・・確かに私はこの国の王ですが、ここでは只の息子だと思って下さい。
私も貴方を父上だと思わせていただきますし。
ただ『黎翔』という名はマズイですので、これまでここで使っていた『李翔』という名で呼んで下さい」
「い、いや!!とんでもありません!!!」

父さんは畏れ多い・・・・と繰り返す。
でもそこは義兄さんは譲れないと最後には父さんに『李翔君』と呼ばせていた。
そこで色々と取り決めて、姉さんを伴って帰って行った。


それからの1週間。
父さんは、自分の仕事なんてそっちのけで僕と共にあちこち走り回った。

僕は明玉さんを始めとして姉さんの友だちに列席をお願いして回って、
几鍔さんに姉さんの結婚を知らせた上で会場の紹介をしてもらった。
その時の几鍔さんの苦々しい顔は、未だに忘れられない。

衣裳は、姉さんの分は昔母さんが着たものを着たいという姉さんのたっての願いでそれにしたが・・・・義兄さんのものは困ったことにどういうものを着て戴いたら良いのかが分からない。
下町で普通婚礼の際に着用するのものでは、余りにも失礼だろうと父さんと二人で頭を抱えていた。
すると計ったかのように王宮からの遣いと言う――背の低くすばしっこい男性が、衣裳を運んで来てくれた。
お蔭でこの問題はキレイに片付いたのであった。

そして料理の方も下町の商店会のおかみさん方が、
『夕鈴ちゃんの晴れ姿が見れるのなら』と全面的に協力してくれる事となった。

これですべての準備が残り一日でなんとか整った。
今、思い返してみてもあの1週間はまともに寝た気がしないし、
毎日毎日駆けずり回った記憶がまざまざと思い出される。


そうして明日はいよいよ結婚式という晩。
義兄さんの遣いだと言う・・・そう、先日義兄さんの衣裳を運んでくれた男性に連れられて姉さんは帰って来た。

その顔は喜びで始終綻んでおり、準備に走り回った僕らを労っていつも通り・・・・そう全く変わらず、当たり前のように美味しい晩ご飯を作ってくれた。

そうして、家族3人水入らずで食事を楽しんだのだった。
ホントに久し振りで、結婚式後は無くなった風景でもあった。

そして・・・・・・・朝が来て結婚式当日。
まだ夜が完全には明け切らない頃に、義兄さんは意気揚々と門を叩いたんだったな。


――――色々当時の事を思い出していたら、いつの間にか長椅子で眠り込んでしまった。
そして、卓上には窓から差し込む光に反射して輝く肖像画がポツンと存在感を醸し出していた。




続。







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「とうたま・・・・とうたま・・・・」

気が付くと幼い我が子が寄って来ていて、
僕の胸をトントンと叩きながら呼んでいた。

「ああ、寝ていたようだね。鈴音、ありがとう・・・起こしてくれて」
「うん、かあたまがおこしてって」
「そうかい・・・・もう起きたよって伝えて来てくれるかな」
「うんっっ」

大きく頷くと、またトコトコ歩いて伝えに行く。
その後ろ姿を眺めて、子供の成長は早いものだと痛感する。

姉さんの子供たちも大きくなったんだろうな。
最後に里帰りしたのはいつだったのかな・・・・・。

そして、また僕は昔に想いを馳せる。


*************


朝も早くから、待ちきれないと訪ねてきた義兄さん。
姉さんは、そのまま招き入れてから義兄に呟いた。

「もう来てしまったんですか?!
此方はまだ準備も整ってもいないんですから、
もう少しゆっくり来られても大丈夫でしたのに・・・・・」

姉さんは、義兄さんの嬉しそうな顔を見つつ大きな溜息をついた。
でも僕は見てしまったんだ・・・・姉さんは困った様な表情もしていたけど、
ホントは嬉しさで頬が緩んでいたのを。

それを隠すかのように頬を桃色に染めて、姉さんはパタパタと台所に入って行く。
直ぐにガサゴソという音と美味しい匂いで朝ご飯の支度をしている事が分かり、
僕は義兄さんを卓へと誘って一緒に腰掛けた。

「夕鈴、ご飯作ってくれているようだね」
「そうですね・・・・姉さん、今日は結婚式だと言うのに朝からご飯の用意だなんて。
自分の支度もまだなのに・・・・でもまぁ、それはそれで姉さんらしいけど」
「らしい・・・か。そうだね、確かに彼女らしいね」

義兄さんはウンウン頷くと卓に肘をつき愉しそうな表情を浮かべており、
どうやら姉さんのご飯を心待ちにしている様に見えた。

そして3人で囲む朝ご飯。
どうも奇妙な感覚で。

この国の王様と食事を共に・・・だもんな。
まぁこれが初めてではなかったけど、李翔さんが国王陛下だと知ってからは初めてだったからなんだか緊張する。
もう何処に入ったかなんて・・・何を話したなんて全く分からない。

朝ご飯を丁度食べ終わってお茶を飲んでいた頃、
やって来たのは明玉さんを始めとする姉さんの友だちの面々だった。
そして、『片付けは頼んだわよ』と言い放って、
『片付けまでは私がする』と言い張る姉さんの言葉には一切聞く耳を持たずに、
そのまま手を引きズルズルと姉さんの部屋に強引に連れ去ってしまった。

後に残された僕と義兄さんは女性パワーの凄さに圧倒されしばらく声も出ず、
ただ連れ去られていった姉さんの部屋の方をボォーと眺めていた。
そしてお互い顔を見合わせ苦笑いをしたのだった。

このままでは僕たちの支度も出来ないと直ぐに席を立つと、僕は朝ご飯の片付けを始めた。
義兄さんは『手伝うよ』と申し出てくれたが、さずがに僕も恐縮して丁寧にお断りをした。
でも結局一人では所在ないと台所までやって来て、僕の片付けを物珍しそうに眺めていた。


しばらくすると、姉さんは居間に出てきて花嫁衣装姿を披露してくれた。
落ち着いた赤を基調とした、桃色が差し色になっている婚礼衣装。
そして高く結い上げた髪に差さっているのは、キラキラ光る紅玉が一つ垂れ下がっている簪。
そんなに豪華ではないものの、いつもの姉さんとは違う艶めかしさが漂っていた。

「わー姉さん、綺麗だよ」

余りの変わり様にビックリした僕は、ありきたりな言葉しか出てこなかった。
確かに元々姉さんは顔立ちは整っているとは思ってはいたけど、
こんなに艶やかになるなんて普段の様子からは想像がつかなくて・・・。
でも義兄さんにとっては見慣れたものみたいで、
さして驚いた様子も無くただ破願微笑で頷いているだけだった。

ああ・・・王宮ではお妃様だから普段からああいう格好なんだろうな。
僕には想像もつかないけど。

僕は妙に納得して、義兄さんの反応も理解してしまった。

青慎の想像は的を得てはいなかった。
夕鈴は後宮でもそんなに着飾ってなどおらず、黎翔にとっても夕鈴のあんな艶っぽい姿はめったに拝めないという事を・・・・・。
だから、実のところ見惚れていてすぐには言葉が出てこなかったのである。

「ほら、見惚れていないで男性陣も早く支度支度!!ところでおじさんは?」

固まって動けない僕たちを、明玉さんの気合の入った声が降りかかってきた。

「父さんなら、昨晩から飲みに行ってます。
恐らく会場にそのまま行くんじゃないかと・・・・だから衣裳は持って行かないといけませんが」

そして姉さんも僕の答えに呼応して『いつもの事よ』と笑いながら答えた。

それならば!と明玉さんは僕らの方を向いて、追い立てるように『早く支度を』としきりに早口で急かす。
そんな様子を姉さんはクスクス笑いながら、見ている。

そして義兄さんの傍に近寄ると、耳元で何かを囁いていた。
その姿が余りにも凄くお似合いで一つの絵画の様に見えたので、
周りの友人が羨望で溜息をつく。

確かに義兄さんは周りが放っておけない程の美丈夫だもんな。
女性陣のあの反応は至極まともだと思う・・・・。

僕は何だか誇らしく思えて、自然に笑っていた。
二人の邪魔はしたくはなかったが明玉さんの鋭い眼差しが『早く』と訴えていたので、
義兄さんを僕の部屋に案内して直ぐさま着換えることとした。

支度をして出てきた義兄さんの姿に、女性陣の視線が集まったのは言うまでもない。
深紅の衣裳に金の糸で龍の刺繍が施され、そして紅玉が所々にはめ込まれていた。
それを身に纏った義兄さんは、やはり王者の風格が滲み出ていて『やっぱり国王陛下なんだ』と改めて思い知らされた。

「李翔さん、凄くイイですね~~~。
夕鈴とばっちしお似合いですよ」

明玉さんは義兄さんの腕を引っ張って姉さんの隣に立たせ、腕をくんでうんうんと納得していた。

それにしてもホントに明玉さんは恐いもの知らずだな。
まぁ知らないから出来るのだろうが、一国の王の腕を引っ張っていくんだもんなぁ~~。

僕がその時に思った正直な感想はそれだった。

そして用意が滞りなく済んだ事を確認して、女性陣は風の様にさぁ~~と帰って行った。
最後に明玉さんが振り返って『夕鈴、おめでとう!!』って一言だけ嬉しそうに呟いたのを、
僕はシッカリと覚えている。


「とうたま~~~おちゃどうでちゅか~~~」

おやおや可愛い伝言人が来た様だ。
折角なのでいただくとしますか・・・・・僕は長椅子から立ち上がり、声のする方へと歩き出した。






続。





**********


昨晩、無事に本誌と14巻ゲットしました!!!!
巻末のおまけ4コマが衝撃でっっ。
未だに興奮冷めやらぬ~でございます。
DXに載った、特別篇も良かったですね~~~~

はぁ~~~~。
やっぱり、本家本元の萌え破壊力はスゴイっっ。

これで1週間くらいは、自家発電しなくてもいいくらい・・・・・。



それでは!!!





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「あら、先程から何をご覧になっていますの?」

ふんわりと頬笑む僕の妻は、お茶を入れながら何気なく訊いてくる。

「ああ、昔の肖像画だよ。姉さんのね」
「夕鈴正妃様の・・・・・」
「その呼び名は、ちょっと」
「ごめんなさい、そうでしたわね・・・あなたにとっては、いつまでもお姉さんですものね」
「まぁ、確かにいつまでも姉さんは姉さんだからね。中々会えないとしてもね」

僕は感慨に浸りつつ、お茶を一口コクリと飲む。
膝の上にちょこんと座った愛しい我が子は、コップを持ったままコクリコクリと居眠りを始めてしまったようだ。
握りしめられたコップを外しそのまま妻に手渡すと、抱っこして寝室まで運んで行く。
寝台に寝かして、安らかな寝顔をジッと見ていると自然に頬が緩んできてしまう。
本当に可愛くて・・・・プっクリと膨らんだ頬に・・・・さくらんぼみたいな唇。
将来お嫁に出すなんて考えたくもない。

父さんはあの時どう思っていたんだろう?
姉さんを義兄さんに嫁がせた事を・・・・。
そしてもう会えなくなるかもしれない、王宮に嫁がせた事を。


*************



「さて、花嫁さん・・・私がお連れ致しますので、参りましょうか?」
「はい////」

手を差しだし、艶然と微笑んだ義兄さん。
頬を桃色に染め義兄さんの手を取った姉さん。 
完璧な一対に見えて、僕までなんだか嬉しくなった。

誰が手配してくれたのか、家の前には豪華な馬車が止まっていた。
馬の手綱を握っていたのは、先日現れた王宮からの遣いの人だった。
あの時、確か『浩大』と名乗っていたような気がする。
僕たちの姿を見ると御者席からスタッと下りてきて、
礼を取りつつ扉を開けて招き入れてくれた。

義兄さんは姉さんの隣でジッと姉さんを見詰めており、その視線に耐えられないのか姉さんは赤い顔のまま俯いて、フルフルと微かに震えている。
そんな様子に義兄さんはそっと姉さんの手を取り、優しく撫でていた。

きっと義兄さんは、姉さんが緊張していて俯いているんだと思ったのだと思う。
でも僕は違う意味で俯いているんだろうなぁと感じていた。
姉さんの性格上、恐らく見詰められているのが恥ずかしくてだろう・・・・。
でも僕は見て見ぬふりを決めて、黙って車外の流れる景色を眺めていた。

会場につくと姉さんが予想した通り、父さんはもうすでに来ていて控室で眠り込んでいた。
この状態から察するに、恐らく朝まで飲んでいたのだろう。
姉さんと顔を見合わせて、『いつもの事だね~全く仕方のない父さん』と無言で笑い合った。

姉さんが父さんの肩を揺すって起こしてみた。

「ねぇ、父さん・・・・・そろそろ支度しないと、招待客が来てしまうわよ」
「うぅ~~~~~ん、夕鈴か?」
「そうよ・・・・私よ」

覗きこむ姉さんの姿を一目見て、父さんは驚いた様な顔をして抱きついてきた。

「なっ、どうしたの?」

驚いた姉さんは目を大きく見開いて、父さんをいぶかしんだ。
父さんはその声で我に返ったのか抱きしめた手を離すと目をパチパチさせ、
更に指でこすってまた姉さんをジィ~~と見ていた。

「ああ、夕鈴か・・・・・・・」
「さっきから私だって言っているじゃないの!!どうしたの?」
「いやな・・・・・・・・その衣裳、母さんが昔結婚式の時に着てくれたものだから。
その・・・・お前が母さんとダブって見えてしまったんだ」

父さんは、頭を掻きながら照れくさそうに話す。
そして更に続けた。

「似合っているよ、凄く綺麗だ・・・・フゥ、気が付かないうちにそんなに綺麗になっていたんだな、夕鈴。
この晴れ姿、母さんもきっと見たかっただろうな」

しみじみと呟く父さんの言葉になんと答えて良いのか分からず、姉さんも黙ったままだった。
その沈黙を破ったのは、義兄さんだった。

「お父上、夕鈴は大切に大切に致します故、御安心して私に任せて下さい。
どんな危険も夕鈴には及ばないように護り抜きます」

ハッキリと通る声で宣言した義兄さんの言葉に、
父さんは目頭が熱くなったのか人差し指で押さえる。
そして、しきりに頭を下げていた『どうか、娘をお願いします』と。

そんな父さんと義兄さんのやり取りを見ながら、姉さんは溢れだした涙を止める事が出来なかった。
そしてそのまま流れ落ちる雫は、窓から差し込む光によってキラキラ輝いていた。

このままではいつまで経っても動きそうになかったので、
僕は父さんの腕を取って更衣室に連れて行った。
その横目に見えたのは、姉さんの流れ落ちる涙を止めようと自らの唇を優しく押し当てている義兄さんの姿だった。




続。









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更衣室に入った父さんは、はぁ~~と大きな溜息をついて一緒に入ってきた僕をじいっと見ていた。
僕は飲み過ぎなのかな?と思い、慌てて水を貰いに行こうとすると腕を引っ張られて、
『大丈夫だ』とシッカリとした口調で止められた。

「青慎・・・・・夕鈴は幸せになれると思うか?」
「えっ?」
「考えてもみろ!王宮だぞ!!あんな怖い所で、夕鈴は笑って暮らせると思うか?」

話が話なだけに、僕は扉を開け周りに誰もいないかキョロキョロ見て確認をした。
大丈夫な事を確認した上で静かに扉を閉め父さんに向き合い、僕は笑って見せた。

「父さん、僕だって全く心配はないと言えばウソになるよ。
でもね、あの真摯な李翔さんを見たら、もう任せるしかないなと思うんだ。
それに姉さんのあの嬉しそうな顔を見ていたら、大丈夫な気がしてくるよ」
「そうか・・・・・そうだな。あのしっかり者の夕鈴のことだ、何処ででも逞しく過ごせるよな」
「そうだよ!!だから今日は笑って送り出してあげようよ。
ほら!皆が待っているよ、早く着替えて着替えて」

僕に急かされながら手早く着替え始めた父さんの手伝いをしつつ、
父親の心配と悲哀みたいなものを何となく肌で感じた。

僕も将来娘を持ったらあんな気持ちになるのかな??

「さぁ、出来たね!!じゃあ、会場に行こう」

僕は父さんと並んで指定された会場へと急ぎ足で向かった。

その会場は、几商店が経営する旅館の中でも一番大きな宴会場だった。
僕が几鍔さんに相談に行くと、シブい顔をしつつもこの会場を紹介してくれたのだった。
しかも会場費はウチの台所事情を考えてくれて、几鍔さんからの『御祝い』と言うことでタダにしてくれたのだった。

これには、ホントに助かった・・・・。
実際こんな大きな宴会場を自腹で借りるとなると、きっと膨大な金額になると思う。
結構下町では顔の知られた姉さんの結婚式となると、ありがたくも出席したいと言ってくれる友人・御近所さんが大勢いて、そこらの普通の会場では入りきれないのだ。

「あら、青慎君!いいところに来たわ。ちょっと見て欲しいモノがあるのよ」

商店会のおかみさんの一人に呼び止められ、僕はそのおかみさんについて行くことにして傍に居た父さんにはそのまま先に行ってもらうことにした。
そして僕が連れて行かれた先は、厨房だった。
厨房には8人ほどのおかみさん達が居て、忙しなく料理の最後の仕上げをしていた。

「わぁ~~~美味しそう」

思わず率直な感想を言った僕におかみさん達が、色々味見を持ってきてくれた。
普段は口にすることが出来ない婚礼の際の特別な料理が並んでおり、どれもこれも美味しかった。

僕が『美味しい、美味しい』と伝えると、おかみさん達は自慢げに料理の説明までしてくれた。
そして会場へと運ぶ手筈を整えたおかみさん達は、満足気に会場へと団体で向かった。
その波に遅れまいと僕もトコトコついて行った。
会場に入る前に隣の控室に姉さんの様子を見に行くと用意された大きめの椅子に腰かけ、
緊張しているのか何度も深呼吸を繰り返していた。

「姉さん、大丈夫?」
「青慎・・・・何だか、緊張して来たのよ。
王宮での婚礼の式典はちゃんとやってのけたのだから、
もう緊張はしないと思っていたのに・・・・」
「姉さん、大丈夫だよっっ!!出席しているのは友達や近所の人で知らない人はいないんだから、普段の姉さんでいいんだよ」
「そうよね!ここでただの汀 夕鈴だものねっ。忘れていたわ・・・・陛下も『李翔さん』だもんね」

お互い顔を見合わせて『あはは』と笑うと幾分緊張が解けたのか、姉さんの表情は柔らかいものに徐々に変化して行った。
そう、いつもの見慣れている僕の自慢の姉さんの顔だった。

「じゃあ、僕は先に行くから・・・・・って、そう言えば李翔さんは?」
「ああ、李翔さんなら、さっき几鍔が来て『話がある』って連れて行かれてしまったのよ。
どこまで行っているのかしら??」
「そう、几鍔さんが・・・・・」

恐らく、几鍔さんは色々聞きたい事や言っておきたい事があるんだろうな。

僕は二人が何を話しているのか何となく予想はついたのだが、
姉さんに余計な心配を掛けることもないので黙っておく事にした。

「きっと直ぐに戻ってくるよ。姉さんは心配しなくてもいいと思うよ」
「そうね」
「僕は父さんも気になるし、先に会場に入るからね」

姉さんに断りを入れてから、僕は控室を後にして会場へと入って行った。


続。




****************


ずっと更新無くて、スミマセン。
兎に角、毎日忙しく過ごしてます。
身体が持ちません・・・・正直言って。


コメント返信、少し待っててくださいね。
何か更新したくて、更新を優先してしまったので。
いつも有り難うございます!!!


瓔悠。









瓔悠

Author:瓔悠

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