【極めて非日常的な出来事・9】
2017年10月13日 (金) | 編集 |
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【注意事項】

こちらの作品は【アリスの口づけ】とは、
全く違う設定の現パロとなっております。

二人が出会い、そして繋がり結びゆく展開を
お楽しみいただけましたら幸いです。




店に入ると、そんなに混んでない時間帯らしくアチコチに席は空いていた。
私は、キョロキョロと見渡して、窓際の陽当りの良い席を見つけた。

「あの・・・・社長さん、あそこの席がいいと思うんですけど」
「夕鈴、僕の事は黎翔って呼んでって言っているよね」
「・・・・・・・そう、でしたね。
れ、れ、黎翔さん、あの席は如何ですか?」
「そうだね」

社長さんはそう言うと、さらりと私を席へとさりげなくエスコートした。
でも私は椅子に座る事が出来ずにいると、社長さんが注文を聞いてきた。

「夕鈴は何がいい?」
「・・・・え~~と、甘いのがいいので。
そうですね、キャラメルが入っているのがいいです」
「僕はブラックにしておくよ」
「では、私が行ってきますね」

私は、そそくさとカウンターに向かおうとした。
しかし、それは社長さんの手が寸でで私の腰を浚って止められた。

「夕鈴、そんなことはしなくていいんだよ。
そう言うのは、男性の役目なんだからね」
「いやっ、そう言う訳にはいかないですっっ!
私、バイトだし・・・・だから社長さんの役に立たないと」
「あのさ・・・夕鈴は、僕が女性にそんな事をさせる甲斐性の無い男だと思っているの?
そう言うのは、僕は好きじゃないよ。
夕鈴は、ここで大人しく待ってくれていればいいんだから、僕に任せて」
「・・・・・・・・は、はい」

社長さんに押し切られてしまった。
私は仕方なく椅子に腰かけると、注文カウンターに向かう社長さんの後ろ姿をボォ~と見送った。

でもホントにいいのだろうか?と私は不安になる。
だってこんな風に扱われたことなんてなくて。
女の子として大切にしてもらって。
何だかバチが当たりそうな気になってくる。

今まで男の人と付き合ったことなんて無くて、
どうすることが可愛い女の子としての振る舞いなのかなんて知らない。
誰も教えてくれたりしなかったし、
そんな事を考える事も無かった。

だって、バイトばっかりで普通の女子高生らしい事なんて、
あんまりしてこなかったから。
たまに明玉とショッピングに行くくらいで。
こんなの・・・・・そうしたらいいのか分かんなくて、正直困る。

「はい、お待たせ!」

ハッと我に返った時には、社長さんが両手でコーヒーカップを持って私の前に立っていた。
どうやら、私は自分の考え事に必死で何処かにトリップしてたみたい。

「あっ、スミマセン!有り難うございます!!」

ガタッと音を立てて立ち上がると、私は米つきバッタの様にペコペコを頭を下げた。

「そんなに恐縮がらなくていいよ」

社長さんは、口元を柔らかく緩めて笑ってくれた。
私はそれに安堵して、フッと小さく息を吐き出した。
そして恥ずかしさに、自分の頬が熱くなるのを感じた。
多分、真っ赤になっていると思う。

「ほら、飲もうよ」
「はい」

コーヒーカップを受け取ると、ストローに口をつけてコクリと一口飲み込んだ。

「美味しいです!!」
「そう、それは良かった。
実は、僕はこの店初めてで・・・・注文するのも少し戸惑った」
「やっぱり・・・・」
「えっ、やっぱりって?」
「だって、社長・・・いや、黎翔さんこの店に入って来た時、
いやに辺りを見回しているなぁ~って思ったんです」
「バレてたんだ」
「はい」

社長さんが照れ隠しに、微笑んだ。
その表情に、ドキッと私の心臓が跳ねた。

何。
これ。
何か、可愛いなんて思っちゃった。
・・・・・・・この気持ちって。

私はその先の答えを知りたくなくて、
甘いキャラメル味のコーヒーをゴクゴクと飲んだ。

「ねぇ、夕鈴。
今日のパーティーの件だけど」
「えっ??は、はい!!!」

またしても、私はトリップしていたようで、
社長さんの低くて心地良い声で引き戻された。

「多分、君と同学年くらいの女の子が来ていると思うんだ。
その子に会ったら、気を付けてね」
「気を付けるって、何をですか?」
「うん、僕の傍から離れないで欲しいんだ。
実は・・・その子が僕の婚約候補者の筆頭で、その子に向けて特に牽制したいんだ。
僕にはもう恋人がいて、近いうちに婚約するつもりなんだと・・・ね。
結構有力な家の娘さんでね・・・・・その子の父親が、色々と煩いんだ」
「私と同じ年で・・・・・親御さんが結婚を勧めているんですか?」

私は、ビックリした。
まだ女子高生なのに、親主導で色々押し付けられてるなんて。
遊びたい盛りだよ、高校生なんて。
まぁ、私は遊ぶよりもバイト優先だけどさ。

「分かりました!私、頑張ります!!
壊したパソコンの弁償代くらいはキチンと婚約者になります」
「フフッ、良い心がけだね」

社長さんは私の頭に手を乗せて、いい子いい子と撫でてくれた。
それが心地よくて、私は俯くと社長さんに気付かれずにそっと微笑んだ。
実はそれを社長さんにバッチリと見られていて、
社長さんも笑ってくれていたなんて私は知らずにいた。


続く。








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【極めて非日常的な出来事・8】
2016年11月13日 (日) | 編集 |
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こちらの作品は【アリスの口づけ】とは、
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大通りを、二人黙ったまま歩いていく。
それも手を繋いだまま。
繫がれた手の温もりに安心感を覚えながらも、
それでも何処へ連れて行かれるのか?夕鈴はボンヤリと不安が纏わりつく。
でも行先を訊いても良いのかが分からず、疑問を胸の奥に押し込めた。

そして、黎翔は怒っていた。
それは自分に対して……。
あんな所に彼女を放ったまま離れた事で、怖い目に遭わせてしまった事を。
自分が戻ってくるのがもう少しでも遅かったら……と考えただけで、
先程の奴らをあのまま逃がした事を正直後悔していた。
でも彼女が『もう、いい』と言ったから、彼女の言葉に従った。
そう、彼女が言ったから………普段ならあんな奴らを野放しにするなどと、有り得ない事で。
自分の二つ名が『狼陛下』と呼ばれる事の意味を再確認しないといけない!と自分を叱咤した。

「あの、れ、れ、れ、黎翔さん!
このまま、ど、ど、何処に行くんでしょうか?」

私はこの沈黙と不安感に耐えられなくなり、
しどろもどろになりながら社長さんに訊いていた。

「ハハハ……あの、夕鈴。そんなに大変な事を強いているのかな、僕は。
そんなに言いづらい?僕の名前。
さっきはすんなりと言ってくれていたのに」

何だか怒りが潮が引いて行く様に、治まった。
だって、彼女のあのつっかる様が……可愛らしくて。

「いえ、その、あの……さっきは勢いで言えたんですけど、
やっぱりよく考えたら社長さんなのに名前で呼ぶなんて恐れ多くて」
「そう?」
「……はい」
「でも、今は恋人なんだし」
「はぁ……でも、それはあくまで偽で、バイトで」
「でも、恋人でしょ」
「まぁ、そう言われれば、そうですけれど。
(それって、屁理屈って言わない?)」
「じゃあ、それでOKって事で!!」
「はい?」

社長さんは、ニコリと微笑んで片目を瞑った。
所謂ウインクっていうヤツだ……納得はいかないけれど、雇用主の言は絶対で。
仕方なく、私は小さくため息を吐き出した。

「あの、それで、今から何処へ?」
「そうだったね。パーティまでまだ時間があるから、
お互いの事をもっとよく知る為にお茶でもどうかなぁ~と」
「お茶ですか?」
「うん、そうだよ」

お茶ですか………何処に連れて行くつもりなの?
堅苦しい高級ホテルのラウンジなんて言わないわよね。
あんな所は、TVで見てるだけで十分!
高級なコーヒーも紅茶も喉を通らないわよっっ!

「どの辺りの?」
「どの辺り?ああ、場所って事?」
「はい……」
「その辺りで」

ハイ?その辺りでどの辺りなのよ!
全く謎掛けをしてるんじゃないんですけどっっ。

「あはははは。夕鈴ってホントに可愛くていいね」
「はぁ、ありがとうございます……」

いい大人に振り回されている。
いや、からかわれてる。
そんなに私って、ちょろいって思われてるのかしら?
確かに男性とこうして二人きりでいる事なんて、無いけどさ。
一応私だって女子高生なんだから、
恋人とデートって言うか…男性と出掛ける事くらいの憧れはあるわよ!

「ああ、場所だったね……あそこに見えるホテルの……「ちょっと待ってください!あんな高級そうな所は困ります」」

社長さんの指差す先は、超高層ビルのホテル。
それだけは阻止しようと、私は社長さんの言葉を遮った。

「そう言うだろうと思って、場所はあのホテルを曲がった先にあるスターホックスにしようと」
「あっ、スミマセン!!!スタホですね、分かりました。行きましょう」

私は恥ずかしさで、頬を染めながら先をスタスタ歩き出す。
それを後ろから追いついて、社長さんの手が私の手に絡まる。

「ほら、行こう!」

朗らかに聞こえる社長さんの声に一瞬聞き惚れながら私はそれを見透かされない様に、
行先のスタホを真っ直ぐに見詰めながら歩いた。


続く。









【極めて非日常的な出来事・7】
2016年05月07日 (土) | 編集 |
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ポロッ。

私の頬を流れていたのは、透明な雫だった。

『・・・・・・・・私、なんで泣いてるのよ』
心の中で自分に突っ込みを入れる。
でも、私が意図して流した涙で無い以上、私にも理由なんて分からない。
それに困った。
『これじゃ、社長が困ってしまう』
ホント、こんな往来で男女が一緒にいて女の子が泣いているなんて、
道行く人が見れば、悪者になるのは社長であって。

「す、す、すみませんっっ」

私はペコペコ頭をさげて社長に謝った。
でも涙が止まらない。

「そんなに嫌だった?」
「そんなんじゃ、ないんです・・・・多分」
「多分?」
「・・・・・・・・・・・・・私、女の子扱いされたことが無くて。
だから、あんな風に言われたことにビックリ・・・・したんだと・・・思うんです」

私は社長さんに言いながら、自分で納得していた。

そうだ、私・・・・・・自信が無くて。
でも社長さんが褒めてくれたことが、信じられなかったんだ。

分かった途端、私の胸の奥の恐慌が静かに治まったような気がした。

「大丈夫?」

俯いた私の顔を覗き込む社長さんの声音が、優しく聞こえてきた。
それがひどく安心出来た。

「・・・・・大丈夫です」

私は顔をクイッと上げて、微笑んでみせた。

「嫌なら・・・・・・「いえ、大丈夫です!だって、今日はこの後パーティですよね。
だったら、人にこの姿を見られるのだから慣れておかないと」」

そう、私はバイトの為にこんなキレイなドレスを着ているんだった。
一度引き受けたからには、まっとうしないといけないってことくらい分かる。

「このままで・・・いいです」

でも恥ずかしいって事には変わりはないのだから、私の声は小さくなる。
それでも私は顔をシャンと上げて、社長さんを見詰めた。

社長さんの深紅の瞳は、柔らかく私を見詰めていた。
透き通った紅玉は、温かみを帯びていた。

「ちょっと、待っててくれるかな?」
「は、はい」

私の返事を聞くや否や、社長さんはこの場から立ち去っていた。
何処へ?とは問う間もなく。

私は一人残されて、道の端っこで待っていた。
行き交う車が目に映る。
でも私の意識はそこには無く・・・・・。
いなくなった社長さんの事を考えていた。

私の子供っぽい我儘に嫌気が差したのだろうか?とか。
こんなに着飾っていても十人並みの容姿の私だから、ちゃんと婚約者に見えるのだろうか?とか。
たわいのない事を・・・・・。

だから、私に近寄って来ている人には気がつくなんてことは無った。

「ねぇ、オレらと遊びに行かない?」
「はい???」

いつしか、私の前には3人の若い男性がいた。
でも、私の知り合いでは無くて。

「いえ、私・・・人を待っているので」
「ええ~~さっきから見ていたけど、誰も来ないじゃん」
「オレらが捜してやろうか?」
「お気遣いなく、大丈夫ですから」
「そんな事、言わずに。オレらの親切心を無駄にすんなよ」
「いや、だから、私に構わないでください」

私がいくら断っても、3人の男性は一向に立ち去ってはくれなくて。
ホトホト困りかけていた時。
グイッと私の腕を引っ張られた。

「ほら、オレらと遊ぼうって言ってるだろっっ!!!」

それは、3人の中の1人だった。
強引に連れて行こうとする。

「やめて下さい!!」

私は掴まれた腕を離してもらおうとブンブン腕を振ってみたけど、
思いのほか強く掴まれているらしく外れなかった。

「離して!!!!!!」

怖い。
そう思って目を瞑った瞬間、捕まれた腕が外れて・・・・。

「おいっ!!!人の連れに何をしているんだ!!!」

押し殺した低い声が、聞こえた。
私が瞳を開くと、私の目の前には大きな背中があった。

「社長さん・・・・・」
「ゴメン、一人にしたのは間違いだった」

私は安堵から、大きく息を吐き出した。

「私の女に手を出そうとするとは、良い度胸だな。
だが、この女性はお前たちが相手に出来るようなそこいらの女じゃないんだ。
サッサと立ち去ってもらおうか」

鋭利なナイフでえぐるような・・・静かだけど、背筋から汗が流れるような声音。
私は社長さんの本気度が窺えた。

ホントに怒ってくれているのだと。

こんな状況なのに、何だか嬉しく感じる自分がいた。
不謹慎だけど、喜んでいる自分に驚いた。

「・・・・・あの、もういいです。
何もされていませんし」
「私の気が済まないのだが」
「いえ、私もはっきりとしなかったですし」
「・・・・・そうか。
だ、そうだ!彼女がお前たちを許すって言っているから、この場は収めるが。
二度目は無いからな」
「「「はいっっ!!!」」」

私に絡んできた若い3人組は、駆け足で去って行った。

「怖い思いをさせて、ごめんね」

社長さんはそう言うと、私の肩にフワリとボレロを掛けてくれた。

「これ・・・・・」
「夕鈴が恥ずかしそうにしてたから、これを取りに行っていたんだ。
まさか、あんな奴らが近寄ってくるとは思わなかったから・・・・」
「いえ、社長さんが助けてくれたから、大丈夫です」
「社長さんじゃないよ、黎翔さん・・・でしょ」
「そうでした・・・・・・黎翔さん」

口元を緩ませ微笑みながら、手を差し伸ばしてくれた社長さん。
私は迷いなくその手を取った。


これが、始まりだった。
恋の。
私の初恋の。




続く。






【極めて非日常的な出来事・6】
2016年04月10日 (日) | 編集 |
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「これなんてどう??」

女性が渡してくれたのは、桃色のミニスカドレス。
ネックラインに白パールが可愛くあしらわれていて、半袖口はフリルになっている。
生地質もシフォン素材でフワフワしてて軽い。

「可愛いですね」
「着てみてくれるかしら??」

手渡されて、試着室に通される。
着てみると、さらりとして着心地はすごくいい。

「どう・・・・でしょうか??」

おずおずと出てくると、そこにはキラキラ目をした女性がいた。

「いいわ!!!うん、すごくいい~~~もう可愛くって!!!ねぇ、社長!!」
「いい感じだな」

いつの間にか入って来ていた社長が、満足げな視線を送っていた。

は、はずかしい~~~~~。
何だか裸にされているみたい。

「これ、もらうぞ!!!」
「はい、有難うございます」

そう言うと、すかさず当然のように社長は私の手を取り、
このままスタスタ出ていこうとする。

「あの、このままなんですか??」
「勿論!!!君の綺麗さを周りの奴らに見せびらかしたんだ」
「いや、でもそれはマズいですよ!!」
「どうしてだ???私が『このままでいい』と言っているのだから、君は大人しく従うんだ!!」
「ええ~~~~~~~~」

私の意見なんて全然聞き入れてはもらえず、そのまま連れ去られた。

強引過ぎる。
こんな扱いをされた経験なんて無いから戸惑うばかりで。
初っ端からこんな感じで大丈夫なのって、不安が募る。
私は人知れず、大きな嘆息を吐き出した。

夜にはパーティという初めての大仕事。
こんな事で無事に終わるのかしら???

ただただ不安しか無くて・・・・・・私は、憎らしいほどの青空を見上げていた。


「さて、時間もまだあることだし、何処に行きたい?」
「私の行きたい所は一つだけですっ」
「ほぅ、それは何処だ?」
「更衣室、だけです!!」
「更衣室?」
「はい・・・・こんな格好で外を歩くのは、正直言って恥ずかしいので」
「こんなに可愛いのに?」
「・・・・・・・」

私は、真っ赤になって黙り込んだ。

可愛い?
私が?

そんな事、今まで言われたことなんて無いっっ!!
幼馴染の几鍔なんて『お前ってさ、格好から所帯じみているから彼氏の一人もいないんだよ!』って、バカにされ通しだし。
そんな直球で言われると、面食らってどうしていいのか返答に困る。

「私は十人並みの容姿なので、いくら着飾っても可愛くなんてなれませんから」
「そんな事は無いっっ!!」

急に大きな声が聞こえてきたから、ビックリして声が出なかった。

「だって・・・・私、そんな風に言われたことなんてありません」
「それは、周りの男どもの見る目が無いだけだ。
君は十分に魅力的だよ」

揶揄われてるって思った。
こんな素敵な大人の男性だよ。
ちっぽけな女子高校生に言う台詞じゃない事くらい、私だって分かる。

「とにかく、着替えたいです」

私は、ただただそれしか言えなかった。





続。






【極めて非日常的な出来事・5】
2016年03月29日 (火) | 編集 |
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繋がれた手がこそばゆい。
お願いしても離してはくれないのだから、もう我慢するしかない。
これもきっとお給料の内なんだと・・・・。
そう思わないと、羞恥心で平常心が保てなくなる。

でも、そもそもこれはバイトの範疇なの??
それともセクハラだったりするの??

私は、そんなことを頭の隅で考えていた。
何かを考えていないと、この状況が我慢出来なくなるから。

ズンズンとただ歩いていた。
それこそ、ただひたすらに・・・・。
だって社長さんが黙ったままだから、私も押し黙るしかなくて。
それに、会話の糸口も見つかりそうもないから。

でも、一体何処に連れて行かれるんだろう??
私の頭の中では、疑問符が駆け巡る。
パーティは夕方からとのことで・・・でも今は午後2時。
まだ夕方には少し時間はある。

「あの・・・・・・何処に行くんですか??」」

私は勇気を出して、社長さんに話しかけてみた。
ホントは聞きづらい。
だって、私はただのしがないバイト。
だから雇い主である社長が連れて行くところには、黙ってついて行かないといけないはずで。
でも、そこはそれ・・・・・気になる性格が無意識に出てくるもので。

「ああ、言ってなかったよね。いいところだよ」
「いいところ・・・・ですか??」
「そう!!!」

ウキウキと柔らかく微笑んで、それ以上は教えてはくれなかった。
だから、これ以上は突っ込めなかった。
黙ってついていくしか・・・・ない。

「ほら、ここだよ」

不意に止まった先は、高層ビルの入り口。
会社からもそんなには離れてはいない。
15分ぐらいのところ。

「ここは???」
「知り合いのデザイナーが経営している会社だよ」
「ほぇ~~~」

私は目の前にそびえ立つビルを見上げて、つい呆けた声が漏れる。

もしや・・・・・・・・パーティの為の服を調達ですか??
こんな素敵なビル内の会社がお作りになるドレス??
それは・・・・もちろん・・・・・お高いのですよね。

一気にぐるぐる円マークが回り、それに0(ゼロ)がどんどん追加される。

「あの・・・・ここで何を?」
「それは、今日のパーティドレスを調達するんだよ!!」
「えっ?はい?いえ、そんな・・・・パーティドレスなんて、街中のお店で買えるもので十分だと思いますけど」
「そんなっっ、ダメだよ!!折角僕の婚約者になってくれたのに、
綺麗で素敵なドレスくらい着せてあげるよ!!ここは僕の甲斐性だと思ってっっ!!ねっ!!!」

端正なお顔で微笑まれたら、もう『NO』とは言えなくなる。
仕方なく、「お願いします」と頭を下げた。

「じゃ、入るよ」
「はい」

社長さんには気づかれないように、私は小さく溜息を吐き出して後について行った。
中に入ると、豪奢でセンスのいいインテリアだらけで、私はキョロキョロ周りを見回す。
その様子を横にいる社長さんは、微笑ましいといった表情で見ていた。

呆れられたのかな??とかちょっと思ったけど、自分の好奇心には勝てない。

「まぁ、珀社長!!お珍しいですね~~こんなに可愛い子と一緒だとは」
「久しぶりだな・・・益々盛況のようで。ウチとしても出資し甲斐があるというものだな。
でも、先日のショーは少し手ぬるいのではないかと思ったのだが」
「お若いのに手厳しいですのね、ホントに良くみてらっしゃる。
若い子に任せたのだけど・・・・少し企画が足りなかったとは思いましたよ。
それで今日は何用でしょうか??」
「今晩、パーティがあって、この娘のドレスを至急用意して欲しくてね」
「まぁ、社長とはどういう関係かしらね」

懇意にしているらしいデザイナーの女性は、私を上から下まで眺め見してきた。
私は不意に背筋がピンとなる。
これは一種の面接という感じだ。

「ああ、その子は婚約者殿だ」
「まぁ~~~~こんな可愛らしい子が婚約者ですの??
社長も隅に置けないというか・・・・」
「煩い!!!さっさとしてくれ!!」
「ハイハイ。お嬢さん、こちらにどうぞ~~」

綺麗な女性が手招きして、奥の部屋に通してくれた。
そこには、煌びやかなドレスがそこかしこにかけてある。
赤、桃、青、紫、橙、白、黄、緑・・・・・・・・あらゆる色のドレスで彩られた部屋。

「綺麗~~~~」

私は目を釘付けにさせられ、ホォと頬が紅潮してくる。
こんなに艶やかなドレス見たことない。
そこら辺のお店では見かけないほどの手の込んだモノばかりだ。
綺麗な刺繍が施されたモノ。
キラキラ光るスワロフスキーが散りばめられたモノ。

女の子なら憧れるようなドレスたちが、一斉に私を見ているような錯覚に囚われる。

「さてと、どれがいいかしらね~~貴女ならどれでも似合うとは思うけど」
「えっ??私は平凡な容姿ですから、似合うものがあるのでしょうか??」
「自分を知らないって、怖いものね~~~私は職業柄色々な女性を見るけど、間違いなく貴女は一流の部類に入るわよ。
但し、後3年くらいは待たないと駄目だけど・・・」
「私が・・・・ですか??」
「そうよ~~それに、あの狼陛下と呼ばれる珀社長のお眼鏡にかなった女性なのだから、もっと自信を持つべきよ」

目の前の綺麗で大人な女性は、微笑んで頷いてくれている。

私・・・・・・・・偽物なんです。
なんてこと言えないから黙るしかないけど。
私はそんなに褒められるような容姿ではないですし、
社長に釣り合うような女の子では無いんですよ!!!

私は一人、心の中で恐縮していた。




続。