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こちらの話は、前々ブログからの移行分を手直ししたものです。
移行忘れを見つけたのでUPしてみました。

そして、この作品は、【精悍な狼は何を想う?】の夕鈴sideと及び補足となります。







黎翔は浩大から聞い出した下町の明玉の自宅へと馬を走らせる。

「夕鈴・・・夕鈴・・・夕鈴」

呟くのは愛しき妃の名。

夕鈴がどうして怒っているのか位は、ホントは見当はついてた。
でも夕鈴を守っていきたいから、言いたくなかっただけ。
あんなどうでもいい縁談の事なんて、
自分が揉み消した時点で夕鈴が知る必要無いと思っていた。

でも、それが夕鈴の重荷になっていただなんて―――。
そんな事、思いも寄らなかったんだ。
だって夕鈴は自分の跡を継ぐべき公子を生んでくれていたし、
押しも押されぬ正妃となっていると思っていたのだから。

黎翔は、ただ必死に町中を馬を走らせていた。
そうしてようや目的の家へと辿り着くと、すばやく馬から降り戸を激しく叩く。

『ドンッ、ドンッドンッッ』
『はい、は~~い!!今出ますから!!
そんなに強く叩かないで下さい・・・こんな遅くに誰なんです??』

中から、夕鈴ではない声が聞えてくる。
案の定、中から出てきたのは・・・夕鈴の友人である明玉だった。

「あら・・・・確か、李翔さんでしたよね。
お久し振りです。あ、あの・・・夕鈴ですよね、少しお待ち下さい」

黎翔の姿を見るや否や、足早に夕鈴を呼びに中に入って行く。
少し待つと、夕鈴が明玉に押し出される様にオズオズと出て来た。

「れ、れい・・・・・いや、李翔さん」
「夕鈴、ゴメン!あれは、私が悪かった!!
君がいないと、この闇も夜も明けないんだっっ」

夕鈴は目を丸くしていた。
それもそうだろう_____出て来た直後に、黎翔が捲し立ててきたのだから。

「あの・・その・・・李翔さん・・・・私も黙って出て行って、ゴメンナサイ」
「そんな事は謝る事はないよ。
だってそこまで、夕鈴を追い詰めたのは私なのだから」
「・・・・・・いいえ。
(正妃である)私がこんな事をしてはイケナイ事くらい、重々わかっていた筈なのに」

夕鈴の頬に冷たいものが零れ落ちる。
その綺麗な真珠玉の様な涙を、黎翔は直ぐに指で掬い取る。

そして、ゆっくりと優しく抱きとめた。

「李翔さん・・・・・・・」
「僕は君を守りたくて黙っていた事で、君が深く傷つけてしまった―――。
これでは本末転倒だ、これからはキチンと君に何でも伝える事にするよ。
だから・・・戻って来てくれる?」
「・・・はい。
でも、私で、いいのですか?」
「君じゃないと・・・いや、君だけだよ、僕のお嫁さんはね。
だから帰ろう」

夕鈴は深く頷いて『是』の意味を示した。
それを受け取った黎翔は優しく微笑んで見せた。
そして二人は抱き合い、この何日かのお互いの寂しさを埋めあった。

しばらくそのままでいて、やっと満足したのかようやく離れると、
中で待ってくれているであろう明玉に挨拶する為に中に入る。

「明玉殿、夕鈴がお世話になった・・・本当に有難う」
「いえ、大丈夫ですよ!!お気になさらずに。
私も久々に夕鈴に会えて、沢山話せて愉しかったのですから」
「そう言ってくれると、有難い。
明玉殿・・・いずれ、何かの礼はさせてもらおう」

黎翔は明玉に軽く会釈すると、夕鈴と共に出て行く。
もう離さないという様に、腰に腕を回し共に歩いていく姿をみて明玉はホッと胸を撫で下ろしていた。

「全く・・・愛されてるじゃないの、夕鈴は!!!
離したらダメよ、その優しい腕を」

明玉は、門から出て行く二人の後ろ姿にそっと声を掛けた。



*******************


それから数日後。

明玉に御礼の品として、夕鈴から手の込んだ刺繍の入った手巾が送られた。
勿論、夕鈴のお手製である。

そして明玉の旦那の店には、何故か王宮からのご用達としての王命が下り、たまに王宮から注文が入る事になった。
それが評判を呼び、今まで以上に大繁盛へと繋がる事となった。



夫婦とは一心同体。

隠し事が一番の仲違いの元だという事を今回の事で肝に銘じた黎翔は、
夕鈴に言える事は何でも相談する事にした。
そして正妃として夕鈴も黎翔の助けと為るべく尽力をつくし、
益々国王夫妻の仲睦ましい様子が内外に広く知れ渡り・・・陛下に妃をと薦めてくる者がいなくなった。


今日も、国王夫妻は王宮で仲睦ましく暮らしている。
そう、子どもたちが呆れるくらいに・・・・。
子供たちは口々に『こんな調子じゃ、いつ弟妹が増えてもおかしくないよね』と、
呆れ顔で両親を揶揄するのだった。

仲良きことは美しき事かな―――。
それはきっと白陽国にとっては、もっとも僥倖な事であった。


終。





**************



ご拝読、有り難うございました。

この話は、前ブログに残っていたモノですが。
その際は前・中・後編で書いていました。
今回コチラに移すに当たって書き直すと、
こんなにも長くなってしまってました。

でも書いてて、楽しくて。
スゴク楽しくて。
だからやめられないんですよね。

オリキャラがバリバリ出てきますが、
如何だったでしょうか?
楽しんでいただけましたら幸いです。


瓔悠。





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こちらの話は、前々ブログからの移行分を手直ししたものです。
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そして、この作品は、【精悍な狼は何を想う?】の夕鈴sideと及び補足となります。







一度拗れた事柄は、中々当事者だけではどうにもならない―――。
互いを想い合っているはずなのに、それが伝わらないなんて事は多々あったりする。
本当に、自分の想いを伝えることは何と困難な事だろうか。

それは、この白陽国の国王夫婦にも言えることで。
家出をしてからもう幾日も経つというのに、今だ夕鈴は明玉の家に留まっていた。
毎日・・・王宮では味わう事の出来ない事を満喫していた。
例えば明玉と昔話に興じてみたり、飯店の厨房で手伝いをさせてもらったり。
とてもイキイキとしており、黎翔との喧嘩すら忘れ去っているようだった。
しかし、それは傍から見れば・・・であって。
本当は夕鈴の心の中は、黎翔や子ども達の事ばかりが浮かんでは消え、
消えては浮かんでを繰り返していた。

「夕鈴・・・・このままでいいの?
ウチはいつまでも居ても良いのだけれど」
「そうね。私もこのままじゃダメだという事は解っているのよ。
でもね、ここでスゴスゴ帰るのは、なんだか負けてしまった気がするのよ」

―――夕鈴、それはただ単に意地を張っているだけだと思うのだけれど。

明玉は、フゥと息を吐き出した。
きっと夕鈴は解っているのだ、自分が意地を張っているのを。
だけど、ここまでくると・・・もう、引っ込みがつかないのだ。

「旦那さん、そろそろ夕鈴を迎えに来ないと、
本当に拗れたままになってしまいますよ」

明玉は夕鈴には聞こえない様に独りごちた。



**********


その頃の王宮は―――。
悲惨な事に成り果てていた。

後宮は主である夕鈴がいないだけで、いつも通りの穏やかな刻が流れていた。
末っ子の嘩鈴が初めの頃こそ大慌てで騒ぎ立てていたのだが、
何日も経てば夕鈴が帰って来ない事をキチンと受け入れて、
普段通りの生活を送っていた。

それこそ、夕鈴は今は休暇を満喫しているのだ―――という解釈で以って。

ところが、それを受け入れられない御仁が一人だけいた。
言わずもがな、黎翔である。

今日も、政務室にブリザードが吹き荒れる。


「よくぞこんな中途半端な書簡を提出するとは・・・。
これで良いとでもと思っているのか?
民の声に答えていると?・・・そうではあるまい?
それでこの政務室付きの一員でいられるものだな」
「も、も、申し訳ございませんっっ!!」

叱責されているのは、先程の人事で政務室付きになったばかりのもっとも年若い官吏だ。
確かに・・・黎翔の言うことは正しいが、言い方と言うものがあるだろう。
しかし、誰もその官吏を庇い立てをしようとはしなかった。
それもそうであろう・・・皆、己の身が可愛いのだから。
その官吏は項垂れて自分の席へと向かって歩いていた。
重い足取りは、その官吏の気持ちを代弁しているようで悲し気である。


シーンと静まり返る政務室。
この鬱蒼とした空気を誰が変えてくれるというのだ―――。

いつもなら、正妃である夕鈴が黎翔を宥めてくれることも有るのだが、
その人物はここにはいなかった。
ならば、一番近い側近の李順がその役を担うはずであったが、
魔の悪い事に、李順は別の事案の件で周宰相と方淵・水月を伴って会議室へと行っていた。

「正妃様がこのところ政務室へお越しになられないから、
空気が淀んでしまっているよな」
「正妃様は如何なさったのだろうか?
体調不良なのだろうか・・・いつもお元気で快活な正妃様のお姿が見えないのは寂しいことだよな」

小声で囁き合う数名の官吏達。
この政務室での夕鈴の評判はバイト妃の頃から上々で、
今もこうして年若な官吏達から慕われてる。
その年若い官吏達の小さな囁きを聞いていた人物が、
小さく息を吐き出して叱責された官吏の元に進み出た。
卓上に置かれた書簡を覗き見て、その官吏の肩を優しく叩く。
それは激励であり、その官吏を奮起させるためである。

「ここまで出来上がっているのだから、もう一詰めしてみましょう。
全てが悪いわけでは無いですよ」
「・・・・・・はい」
「陛下がああ仰ったのは、君に期待しているから。
だから、君はその陛下のご期待に添える様にしなければ」
「はっ、はい!!!」

その官吏の瞳の奥に、やる気が満ちる。
そして、その人物は柔和にニッコリと微笑んだ。
その微笑みは、ある人物に酷似していた。

叱責を受けたその官吏が書簡のやり直しを始めた事で、
安堵したその人物は黎翔の元に自分が処理した一つの書簡を持って進み出た。

「陛下・・・こちらの書簡をお目通しして頂きたく、お願い申し上げます。
私の考えではありますが、この様にしては如何でしょう」
「ああ、青慎 か。そうだな、このまま進めるように」
「かしこまりました」

そう、この人物は青慎だった。
今は、政務室付きの官吏として、自分の能力をいかんなく発揮しているのだ。

黎翔の元から去り際、青慎は黎翔に聞こえるだけの音量で囁いた。

「義兄さん、姉さんの事はお任せください。
何処にいるかはきちんと掴んでますし、もう少ししたら王宮へ戻りますでしょうから」
「ああ」

黎翔へと深々と一礼した後、青慎は困り顔をしつつもフンワリと微笑んだ。



***********


そうして、遥翔が浩大を動かす事にしたのは、あの朝から四日後。
聞く所によると・・・・その間の政務室は荒れに荒れた極寒の地へと変貌し。
狼陛下は今も健在だと、周りに知らしめていた。
余りの過酷な政務に胃痛を訴えるものも続出し、李順が頭を抱えていた。

いい加減これ以上、王宮が荒れまくるのは困ると李順に泣きつかれ、
遥翔もいい加減休暇を満喫したであろう母を呼びもどすには頃合いがいいと判断した。

浩大に高級酒を渡し、黎翔をけしかけてもらった。
これが功を奏し、黎翔は直ぐに王宮を飛び出した。



続く。











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「ねぇ夕鈴、あれで良かったの?
息子君・・・遥慎君、だったっけ。心配して迎えに来てくれたのに」
「・・・・・う・・・・・ん」
「今の間は何よ。ホントは、かなり後悔してるんでしょ」
「確かに、後悔していない事は無いのよ。
でも、遥慎と一緒に帰ったら、多分なんの解決にはならないから」
「ふぅん~~まぁ、夕鈴がそう思うんだったら、まだここに居てもいいけど。
そう言えば・・・まだ私、詳しい家出の原因を聞かせてもらってなかったわね」
「え~~話さないといけない?」
「もちろんっっ!!」
「はぁ~~~~~~~。
いくつになっても明玉は明玉だわ」

夕鈴はこの快活で面倒見の良い親友には、
いつまでたっても恐らく自分は敵わない!と思った。

どう、話せばいいのか?
正直分からなくて、夕鈴はコクリと首を傾げる。
頭の中で言っていい事と言ってはいけない事を選別するのに、
少し時間が掛かるらしく二人の間に沈黙が走る。

それでも、明玉は夕鈴を急かすことは無かった。
静かに立ち上がると、お茶の準備を始めてしまった。
それは、明玉なりの心遣い。
夕鈴はそれが分かっていて、安堵の息を吐き出した。

『コトッ』

卓上に茶杯が置かれる音で、夕鈴は我に返った。
どうやら明玉がお茶の準備が出来たようで、自分の前には茶杯があった。
鼻を擽る芳醇な香りが漂う。
心を落ち着かせてくれるような香り。

「あっ、明玉・・・・ありがとう」
「いいえ、どういたしまして。
さてと、そろそろどうかしら?」
「ああ、うん・・・・聞いてくれる?」
「勿論ちゃんと聞くから、明玉さんに話してみなさい」
「ふふっ、明玉は変わらないわね。分かった!話すわね・・・・」

その前に!と夕鈴は目の前の茶をコクリと一口飲んだ。
それで落ち着いたのか、徐に話し始めた。

「それがさ・・・・・・・・実は、隠し事をされていたの。
私がその事に気がついて少し問いただしてみたのだけど、
ものの見事に誤魔化されて・・・・。
もう夫婦になって、幾年月も経つというのにね。
それがどうしても悲しくて寂しくて・・・・いたたまれなくて。
気がつくと、『大っ嫌い!』と叫んで、家を飛び出していたのよ」

隠し事が何であるのかは明玉には伝えず、
簡単に事の成り行きを伝えてみた。
明玉はそれを『うんうん、なるほど』と相槌を打ちながら、キチンと聞いてくれている。

「確かに、家出したのは悪かったかも知れないけど・・・・・・。
でもね、私は夫婦なら私だってキチンと知らないといけない事もあると思うのよ。
例えそれが私にとって辛いとかもしれなくても」
「なるほどね・・・・・・・・夕鈴は、旦那さんの過保護な思いやりが重いってわけだ」
「まぁ、そういう事になると思う」
「夫婦だから・・・・・か。
それは確かにそうかもしれないけど。
ウチも旦那が私に黙っていることはあるわよ」
「えっ?例えばどんな事?」
「そうね・・・・・・ウチは旦那の一族で飯店を経営しているって言ったわよね」
「うん」

明玉は話しつつ、空になった夕鈴の茶杯にお代わりを注ぐ。
それを見た夕鈴は、チョコンと会釈して受け取る。

「私には、飯店の経営状態は何も話してはくれないわよ」
「えっ?旦那さんが継いでいるのよね」
「そうよ、もう旦那の両親は隠居で、手伝い程度よ。
だから、私と旦那で切り盛りしている感じかな~。
でも帳簿とかは旦那が管理していて、実は私は一切知らないの」
「それって、信用されてないって思わない?」
「そうでもないわ・・・・。
旦那の言葉がさ、『やっぱり、一家の大黒柱であるオレに経営は全て任せて欲しい』って事で。
どうも、それは旦那なりの男の矜持ってモノみたいだから」
「へぇ~~~男の矜持ね。
そう言われると、奥さんである明玉は何も言えないわね」
「そう、だから私は全部任せているの」

夕鈴はふと自分の事を思い返してみた。
どうして陛下は自分に黙っていたのかくらいは、容易に分かる。
自分を傷付けない為。
でもそれだけでは無いのかもしれない。
明玉が言うように・・・・・・・・。

「私も、もっと旦那様の気持ちに寄り添わないといけなかったのかもしれないわね」

夕鈴は、ポツリと呟いた。
でもだからと言って、このまま自分から王宮に大人しく帰るかと言えば、
それは良しとしなかった。
それが、夕鈴の夕鈴たる所以だった。
そう、頑固で意地っ張りな自分がいて、素直になれないのだ。

捻じれた赤い糸は、そう簡単には解けない。
夕鈴の瞳がそれを物語っていた。



続く。















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ここは王都。
章安区からは少し離れた大通り。
目的の場所にほど近い、夕鈴がいるはずの所。

一晩開けて、遥翔は夕鈴を探すべく王宮から抜け出した。
探すと言っても、浩大が場所を知っているから専ら説得役と言う所だ。

「ここら辺なの?」
「そうだよ~~」

軽口の浩大は、この状況を明らかに楽しんでいる風に見える。
それを見て、遥翔はため息を吐きたくなった。

僕はと言うと、兎に角早く王宮に平和をもたらしたいんだ。
もう父上は限界値が見えている。
そろそろ理性の均衡が崩れそうな気がする。
ホントにギリギリで、今や決壊一歩手前である。

遥翔は自分の父親の性質をよく知っていた。
だからこそ、自分が動いたのだ。
さぁ、キリキリと役目を果たさないと。

「兎に角、母上には早急にお戻り頂かないと・・・・ね」
「上手くいくと思うのかい?」
「そういかないと困るんだよ」
「確かに、公子クン的にはそうだろうね。
でもさ、相手はあの正妃ちゃんだよ・・・・あの人は頑固だからね」
「分かっているよ。
母上相手だから、そうそう自分の思い通りになんていかないのは百も承知だよ」
「そこまで分かっているんだったら、オレはもう何も言わないよ。
ほら、あそこだよ」
「ありがと、浩大!!」

浩大が指し示した先には、ここいらの邸宅の中では結構大きい邸宅が見えた。
遥翔は、恐々と近寄って中を伺った。
静かで中からは特に声などは聞こえてこない。

「母上はここにいるんだよね・・・・・」
「そうだよ」
「じゃあ、行って来る」

一言呟いて、自分を奮起する。

『トン!トン!トン!!』

玄関先にある戸を叩いてみた。
さぁ、これで賽は投げられた。



********


こんな朝早くに玄関の戸を叩く音がする。
どうやら、来客らしい。

慌てて飛び起きた二人には、窓から差し込む眩い光りでもう朝が来ている事に気がついた。
明玉が来客へ返答をする。

「は~~~い、今いきます!!」
「お客さん??」
「そうみたいね・・・それにしても、朝っぱらから誰よ??」

居間でそのまま話しながら寝込んでしまった二人は、突然の来訪者に驚きを隠せない。
明玉は、夕鈴が家族に自分の居場所を伝えていることなんて知らないから、
来訪者の見当がつかない。


「あら?どなた?」
「申し訳ございません、朝早くから・・・・・。
ここに母がいると聞いたものですから」
「母??ああ、夕鈴ね。
もしかして、息子クンかしら?」
「あっ、はい!息子の遥慎と言います」
「ちょっと、待っててね~~」

そう言うと、母上の友人だと言う明玉さんは、中へと颯爽と入って行った。

「夕鈴・・・・・お客さんよ」
「私に?」
「そう」
「誰?」
「それは行ってから、確かめて」
「ええ、分かった」

明玉に促されて、夕鈴は重い足取りで玄関先へと赴いた。

・・・・もしかして、陛下が来ていたり?
こんな朝早くに?
でも陛下だったら、どんな顔をして会えばいいのよ。

夕鈴は複雑な想いを抱えていたが、
玄関の扉を開くとそこに立っていたのは____黎翔、ではなかった。

「遥翔・・・・イヤ、遥慎。どうして貴方がここにいるの?」
「母様が家出したらしいと聞きまして。迎えに来ましたよ、帰りましょう」

夕鈴は、何も言えずに黙り込んでいた。
それを見た明玉が助け船を出すかの様に、親子の会話に割り込んだ。

「夕鈴・・・・家に知らせていたの?」
「ええ、実は子どもたちが気になって・・・・」
「あっ、すみません!母が大変お世話になったようで・・・・」
「フフッ、私の事は覚えてないわよね・・・昔、あなたが幼い時に会っているのだけれど」
「あの・・・おぼろげながらなら、覚えてます・・・でもごめんなさい、ハッキリとは記憶にないです。
でも、母のご友人だったですよね」

明玉は、嬉しそうにニコニコ顔で遥翔に接していた。
それを遥翔も悪い気もしない様で、キチンと受け答えしている。
夕鈴は浩大に詰め寄ってる遥翔の様子が目に浮かび、眉根を潜める。

「遥慎・・・・・ゴメンナサイ。父様に伝えて・・・・まだ帰りません!!と」

こう言えば、夕鈴の意志の強さが遥翔にも伝わると思って黎翔をダシに使う。
その薄茶の瞳は、ガンとして譲らないと訴えている。

それを見た遥翔は、深い溜め息を吐き出す。

「分かりました、父様にも伝えておきます。
それでは母をお願いします、明玉さん」

ただ、そう言うと遥翔は深々と礼をして大人しく帰って行った。

母を動かすのは、やはり父の力が必要だと。
そして、その父を動かす為には自分が動かないといけないと。
浩大ならば、自由に動いてくれそうだし・・・あの厄介な二人を何とかしてくれそうだな。

遥翔の脳裏には、ここに連れて来てくれた隠密の顔が浮かんでいた。



続く。






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側近李順は、頭を抱えていた。
まぁ、それはいつものことではあるが・・・。
この国の王である、黎翔が絶賛不機嫌モード全開中なのである。

筆を一体何本折れば気が済むのか?!
可哀相な罪無き筆の残骸を見て、ため息が出てくるのである。
筆だってタダじゃあない。
それなりの値段がするってもんだ。

しかし、そんな事を黎翔に進言出来れば良いが、
今そんな事でもしようものなら自分の首が危うくなる事だってあり得る。
誰が、そんな危険極まりない事をするというのだ。

不機嫌な黎翔を御しえるのは、この世でたった一人だけ。
それは自分などでは無く、陛下の唯一の花だけだ。
その花がここにいないとなると、もう自分になす術はない・・・・・。

「はぁ~~~正妃様、早くお戻りくださいませ。
官吏達への被害がそんなに広がらない前に・・・・」

誰もいない執務室で天井を仰ぎつつ、李順は独り言を吐き出した。

「李順・・・・・優秀なあなたでも手に負えない事もあるんだね」
「公子っっ!!」
「母上は一体何処に行ったんだろうね。
浩大は知っているようだけど・・・・」
「その様ですね」
「で・・・父上は特に聞かなかったらしいよ。
だから、いつ探しに飛び出して行くか分からないから、
気を付けていた方がいいと思うけど」
「それは、困りますっっ!!
今、陛下に王宮から出て行かれると重要案件が滞ってしまいますから]
「そうだね~~じゃあ、僕が何とかしてみようか?」

遥翔の提案に、李順は安堵の息を吐き出す。
それを見て、遥翔は段々李順が気の毒になってきた。

全く、ウチの父上と母上がスミマセンっっ!!
関係の無い李順まで諍い事に巻き込んでしまって・・・。
この上は、僕が何とかしてみますから。

遥翔は、胸の内で李順へ謝り倒すのだった。

「ただ、母上の居場所が分からないと説得に行きようがないんだよ。
李順は、心当たりはない?」
「そうですね・・・まずは岩圭殿と青慎の所には行かないでしょうし。
水月が出仕している所をみると、紅珠の所で無い事も確か。
正妃様はここ後宮に上がられてからは、そう度々は帰省なさってはいませんから、
交友関係もそんなに複雑では無いと思うのですが・・・だから、昔からの友人が一番可能性としてはありますね」
「昔からの交友関係・・・・・か。
あっ、そう言えば!昔僕を連れて下町に行った事があって、
その時に昔の友達という人に会ったよ。
誰だったかな・・・・・・・確か、明・・・何とかって言っていたような」

う~~んと唸りながら、遥翔が考え込む。
それを李順はただただ見守っていた。

「公子クン、スゴイね~~とってもいいセンいってる!!」

執務室の窓の外から、呑気な声が聞こえてきた。
この声は、遥翔も李順も知っている人物のモノだ。

「「浩大!!」」

二人の声が重なる。
これで少しは進展しそうだ。

「まぁ、そこまで出てきたのなら答えを教えるよ。
正妃ちゃんがいる所はね~~昔の幼馴染である明玉殿の所だよ。
場所は、章安地区からは少し離れてもっと大通りにある所なんだけど、
案内しようか?」
「僕が行くから、浩大も同行して教えてよ」
「りょ~~かい!!!」

軽~い口調で、浩大は遥翔からの頼みを請け負う。
これで何とかなるかも知れないと遥翔は微かに笑みを浮かべた。



続く。








瓔悠

Author:瓔悠

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